兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の ウェスティーの皮膚病の1症例
院長ブログ

ウェスティーの皮膚病の1症例

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2ヶ月前に初診の、少し離れた街から来院されているウェストハイランドホワイトテリアのもうすぐ9才になる女の子の話しです。

昨年8月(初診の7ヶ月前)から脱毛とひどい痒みに悩まされているそうです。

近医でアポキルという痒みを強力にコントロールする錠剤を処方されて。最初の2週間の導入量を内服している間は痒みは止まっていたのが。3週間目に入って導入量の半分の維持量に移行すると利かなくなってしまい。その後ノルバサンシャンプーという細菌を殺す効果の強いシャンプーを続けながら、現在に至っているということでした。

その時の皮膚の状態は。

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こんな状態です。脱毛部の皮膚はひどく分厚く硬くなっていて、皺だらけです。この状態を苔癬化といいます。

因みに、背中側の皮膚には異常は見られません。

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病変が喉元から尻尾にかけての主に腹面に集中しているのが一つの特徴です。

一般的なアトピー性皮膚炎の発症年齢は生後6ヶ月から3年の間が多いので。それとはかなり異なります。

聴けば、2年前に同居犬のウェスティーも同じような脱毛症を患って、結局死亡してしまったということです。

飼い主様に、一般的に痒みを伴なう皮膚の病気は7種類ほど存在しているので。それらを除外して行くようなやり方で診断と治療を試みてみますとお伝えして。

初診日には、皮膚の搔き取り試験(ニキビダニと疥癬虫の検査)、細菌培養と薬剤感受性試験、皮膚糸状菌の培養検査を行なうと共に、基礎疾患としての甲状腺機能低下や副腎皮質機能低下症などを除外するための血液検査を実施しました。

この日は、ニキビダニと疥癬虫を強力に駆除する内服する皮膚の殺ダニ剤を処方して。ノルバサンシャンプーの後に皮膚に滴下する保湿剤と皮膚の必須脂肪酸のサプリをお渡しして帰ってもらいました。

翌日、細菌培養と薬剤感受性試験の結果が出ました。生えて来た菌はかなり手強そうな薬剤耐性菌であります。
その結果に基づいて、最も有効である抗生物質と、導入量のアポキル、抗生物質が胃を荒らして食欲不振を起こす可能性が高い薬なので、胃酸分泌を制限して嘔吐を防ぐお薬の組み合わせを処方しました。

1週間後の再来院時には、痒みがコントロールされていて夜に眠れるようになったことと。手足の毛が気持ち長く伸びて来たということです。

最初と同じ処方でお薬を出します。

同時に、加水分解蛋白質を蛋白源にした食事性アレルギー対応の処方食をお渡ししました。この食事と水だけで少なくとも2ヶ月間は食事性アレルギーを除外する試験的治療を行なうのです。

また、違うとは思うのですが。一応念のためにアトピー性皮膚炎の際に見られる環境中のチリダニグループのダニに対するIgE抗体が存在するのかどうかという血液検査も実施しました。

次の診察は、初診から約2週間です。発毛しつつありとのことです。前回の近医での治療では、アポキル単独の投与でして、導入量で痒みはコントロールされていたが、発毛はしなかったということです。
なお、アトピーのIgE抗体検査では(-)という結果でしたのと。皮膚糸状菌の培養検査結果は陽性でした。

皮膚糸状菌のコントロールは、今のところ症状がコントロールされているので、主原因はアレルギーか細菌の2次感染と判断して、糸状菌をやっつける内服薬は当面処方しないこととしました。

この日の処方から、アポキルは維持量にします。導入量の半分です。半量にすると普通に軽い痒みが発現するのですが。それをどうクリヤーするのかがある意味課題になります。
アポキル以外の処方はそれまでと同じでした。

約2週間目の皮膚の状態の画像です。

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皮膚の苔癬化はなかなか改善しません。相変わらず皮膚は分厚くて、あちこち溝が見えています。脚の辺りは若干の発毛が見られます。

アポキルを維持量に変えて1週間経過した時の診察では。やはり少し痒みが発現していました。

ここで、次の一手を出してみます。

アンテドラッグという形態の皮膚に直接塗布するステロイドホルモンです。

このお薬の特徴は、強力に皮膚の痒みを抑え込んだ後は、局所で分解されて全身には副作用を及ぼさない形になってしまうので。長期かつ基準量をしっかり使用しても、全身に副作用を及ぼさないということです。

このお薬は日本に入って来て数年経過していますが。どこの獣医さんでもそんなに素晴らしいという評価を聴きません。
しかし、それにはちゃんと理由がありまして。飼い主様に使用する部位と使用量をきちんと説明されていないために、絶対的に使用量が不足しているということが原因なのであります。

そこで、飼い主様に説明する際に。お薬に添付の犬の画を使用して。症状のひどい脱毛部で10センチ×10センチの四角を体表にイメージしていただきます。そして、その四角のひとつ当たりにスプレーの頭を2押しして液を皮膚に付けて。それを指で擦り込むように塗り広げてやることと。
お薬を皮膚に塗り広げた後は30分だけ犬がお薬を舐めない時間を作ってやることを理解していただきました。

この子は、10センチ×10センチの四角が14区画ありますので。毎回28プッシュを投与することになります。1プッシュが0.13ミリリットルになりますので。毎回3.64ミリリットル消費する計算になります。1週間で25.5ミリリットルくらいです。

そういうことで、最初の1週間は31ミリリットルのボトルを処方して。1週間後にそのボトルを持参していただき、実際に投与した量が指示通りかどうかのチェックまできちんとやります。

内服薬はそのまま維持します。

塗り薬の投与を2週間毎日実施していただいた後の皮膚の状態は下の画像の通りです。

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胸と腹の皮膚にはまだ発毛がまばらですが。首や肩、脚部に尻尾の皮膚には白い綺麗な毛がかなり生えて来ています。
それと、皮膚の肥厚がかなり改善して来て。皮膚が薄く滑らかになっています。
痒みは全くと言って良い程生じていなくて。夜も熟睡出来ているということです。

この時点で、細菌の2次感染はコントロール出来たと判断しまして。抗生物質の内服は中止しました。
それまで使用していた抗生物質は、やはり胃や腸に負担をかけているみたいで。どうしても処方食の喰い付きが悪いという訴えもありました。

従って、内服はアポキルの維持量のみとなります。アンテドラッグステロイドの塗り薬は、毎日から1日置きと投与間隔を少し開けることにしました。

その2週間後、本日ですが。皮膚の状態は以下の通りです。

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発毛が進んでいます。皮膚もほとんどが滑らかで薄く、かなり健康的な感じです。

ただ、少し課題もあるのは。喉元の皮膚に若干の苔癬化が残っていること。この2週間の間3回ほど足の裏を舐める行動が見られたことです。

その対策として。喉元と足先だけ塗り薬を毎日使用することを指示しました。その他の部位は1日置きで行ないます。
内服はアポキル維持量のみ。食事は加水分解タンパク食のみを継続します。
2週間後には血液検査を実施して、アンテドラッグステロイドが内臓機能に副作用を及ぼしていないかどうか?をチェックする予定です。

ここまで来ればこのウェスティーちゃんのアレルギーの管理は道筋がついたと考えています。
今後、食事面ではどんな蛋白質に反応して症状が出るのか?を検証することと。皮膚が健常な状態になった後は、アポキルの内服と週に2回程度のアンテドラッグステロイドの継続使用により再発を予防して行くことが肝要であります。

最後に、初診時と約50日後の同部位の画像を並べてみて、治療効果を実感してみたいと思います。上の画像が初診時、下が約50日後になります。

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今日のところは以上です。お読みいただいて有り難うございました。

ではまた。