兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 軟部外科
院長ブログ

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犬の急性フィラリア症の手術

先週土曜日に、柴犬が急性フィラリア症を発症したのだが。近医では内服薬を処方されただけなので、グリーンピース動物病院で手術して欲しいと、午後に電話がありまして。

聴けば、一般道高速道乗り継いで1時間は離れた町からだそうですが。

果たして本当に急性フィラリア症なのか?と半信半疑ではありましたが。午後診に来院していただいて。

問診で経過を聴いて。身体検査、血液検査、心エコー図検査、等々やったところ。

本当に急性フィラリア症でした。

フィラリア症は、春から秋までにフィラリアの幼虫を持っている蚊に刺されることにより、犬科の動物や猫の心臓にフィラリア虫という素麺のような線虫が寄生することによって発症する循環器疾患ですが。
犬フィラリア症には、肺動脈に虫が寄生している慢性フィラリア症と、肺動脈に居た虫が右心房から大静脈洞付近に移動することにより発症する急性フィラリア症があります。

急性フィラリア症は、フィラリア感染が証明されていること。急な発症でショック状態に陥っていて、苦しそうな呼吸、食欲は減少から廃絶になり、胸部聴診すると特有のガリガリゴロゴロという心雑音が聴取されて、血色素尿症になっていることくらいで診断されます。
発症が多く生じる季節は気温が急激に上昇する春先が多いです。

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この柴犬ちゃんは、フィラリア成虫抗体の検出キットで、反応窓に2本バンドが現れていますので。寄生は証明されました。

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尿検査をしてみると、遠心分離後の上澄みが血色素尿特有の色をしてまして。ここには出していませんが尿検査試験紙でヘモグロビンの反応が生じてました。

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エコー検査を実施してみると。右心房にフィラリア虫体が団子状になって詰まっています。上の画像の向かって左中ほどからやや下の点々ブツブツという感じの部分がそれです。

静止画では随分判り難いですので。YouTubeにアップした動画をご覧いただくことにしましょう。

静止画の説明でお伝えした向かって左側中ほどから下の部分に団子状になったフィラリア虫が心臓の動きに合わせて動いているのが判るかと思います。

というわけで。診断が付いた頃に外来診療が終わりましたので。そのまま残業して頚静脈フィラリア吊り出し手術を実施しました。

飼い主様には、一般的にはこの手術は死亡率3割の非常に危険な手術ではあるが。実施しないとほぼ100%死亡するので、犬を助けようと思えば選択の余地は無いということを説明して同意を得ました。

術前の血液検査では、血小板数の減少がありますので。DIC(播種性血管内凝固)が始まりつつある可能性大であると判断して。低分子ヘパリンの投与も開始します。

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麻酔導入して、気管にチューブを入れる時が、この手術の最初の試練なのですが。妙に徐脈になって心停止来るか?という雰囲気になって、相当ヒヤヒヤしました。

何とかそこを乗り切って、麻酔が安定したので、首の毛を刈ります。フィラリア吊り出し手術は頚静脈からアリゲーター鉗子という器械を心臓まで入れてフィラリア虫を摘まみ出すのです。

麻酔導入、術野の毛刈り消毒、術者の手洗い消毒、術衣帽子マスク手袋の装着は迅速に行って、ちょっとでも時間短縮を図らなければなりません。

それで、手術を開始して。アリゲーター鉗子を頚静脈から挿入して、途中引っ掛かる場所があるのですが。犬の首と身体の角度を微妙に動かして、真っ直ぐな鉗子が無理なく入って行く角度をみつけます。

いったん鉗子が心臓内に入れば。その角度を保持するようにして。鉗子の顎を開いて、手探りで虫を捕まえます。

吊り出した虫を拡大するとこんな感じです。

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これで4匹か5匹は獲れているでしょうか?

この操作を何回も繰り返して。最後には鉗子を心臓に3回も4回も入れて探っても虫が摘まめない状態になったところで。看護師さんに聴診器を犬の胸に当ててもらって、心音を聴取して。心雑音が消失していれば完了なのですが。

この子の場合心雑音は消失しなくて、音調がガリガリゴロゴロという感じからシャーシャーという透明感のあるものに変化していました。

心雑音が消失していないと、取り残しが心配になりますが。そうこうしている間にまた徐脈になって、心電図も上手く取れなくなって行きます。

これはヤバいか?と心配になりまして。心臓マッサージを試みたりして。

ちょっと回復したところで、頚静脈、皮下織、皮膚の順に縫合を行ない。麻酔からの覚醒を図ります。

あれ以上粘っても、既に虫は鉗子で探れる位置には居なくなっているわけですから。リスクが増えるだけです。

時間はかかりましたが。何とか回復しまして。麻酔からも覚醒することが出来ました。

ほんのちょっとだけエコーの探子を胸に当てて、心臓の中の様子を観察します。

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静止画でも判りますが。最初に見られた団子状のフィラリア虫が消失しています。

動かしてみると良くお判りになると思います。

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手術後は、静脈輸液を継続しながら入院ケージにて治療を継続します。

その晩は、コーヒー色の尿を何回か排泄し、コールタール状の下痢便も少量排泄し。意識も相当低下してましたが。何とか夜を乗り切りました。

翌日は朝から水を欲しがりますので、少量与えてみるのですが、水を飲めばすぐに吐いてしまい。
夕方には元気もかなり回復して来て、飼い主様が面会に来られた時には起立出来るまでになりまして。しかし、水を与えるとやはり吐いてしまいます。

術後2日目に血液検査を行なってみると。来院時に異常に高かった尿素窒素とクレアチニン、無機リンはかなり低下しましたが。肝酵素が上昇して来ているのと。リパーゼの上昇が見られます。
もしかすると、循環不全の影響で膵臓が傷んで膵炎を継発しているのではないかと、心配になります。

それやこれやに対応しながら治療をやっていると。術後3日目の朝には何とか流動食を水で薄く溶いたものは摂取出来るようになりまして。その量も夕方には増えて来て。濃度を濃くしても何とか行けそうです。

この時点で試験的に退院させました。

中1日置いて再来院してもらいましたが。すっかり元気になってまして。心雑音は完全に消失してましたし。固形物も食べるようになってました。

この子の場合、手術前に一般状態が相当悪くなってましたし。内臓機能も恐ろしく傷んでましたので。回復がかなり困難でしたが。
発症後速やかに診断が付いて手術を早期に行なえば、こんなに苦戦することはなかったと思います。

それでも何とか助けることが出来てホッとしました。

しかしです。私はこの子を最初に診察した獣医師にかなりイラっと来るものがあります。

急性フィラリア症は、そんなに診断が難しい病気ではないと思うので。手術を行なうことが出来ない獣医師でも診断は容易に付けれるはずであります。
そして、診察後に何で急性フィラリア症であることを飼い主様に告げなかったのか?内服薬の処方だけで済ませてしまったのか?

自分が手術を出来ないことは別に恥でも何でもありません。私だって出来る手術よりも出来ない手術の方が圧倒的に多いです。

そして、自分には出来ない手術症例に出逢った時には、出来る獣医師に速やかに紹介すれば良いだけの話しではないですか。

最初に診察した獣医師が、この子の状態を急性フィラリア症であると判っていて手術の必要性を飼い主に説明することなく投薬だけで済ませたのであるならば。
その獣医師は、獣医師である前に人間としてどうなんだと訊きたいところであります。

そんなことを考えながら、昨日いつもお世話になっている整骨院で治療を受けた時に。この話しが出まして。その時に院長先生が、自分の犬がフィラリア症と診断された時に今の話しとそっくりの症状だったけれども。診察した市内の若い獣医師は急性フィラリア症であるということや手術をしないと死んでしまうことなどは言わずに10日間の薬だけをくれただけで。
愛犬が苦しみながら日々弱って行って、とうとう死んでしまって。ものすごく悲しい気持ちになってしまったのだと言われてました。

本当に辛い話しです。

そんな話しを聴くと。私はこれからも自分の仕事に誠実に、仕事の対象の動物たちに愛情を持って、飼い主様には正直に、誠意ある獣医療を頑張って行きたいと心から思う次第であります。

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ではまた。

子宮蓄膿症と胃内異物の合併症例

もうすぐ9才7ヶ月令になるシェトランドシープドッグの女の子の話しですが。

昨日から気分悪そうにしていて、食事も摂らないという稟告で来院されました。

連れて来られた方がその家のお嬢さんで、症状とか詳しく把握していないみたいですから。最初どの分野の問題なのか?私も正直迷いました。

身体検査を行なってみると。体温39.5℃、脈拍毎分124回、呼吸毎分56回。両眼の瞬膜突出、膿性眼脂あり。両眼共対光反射は正常。

ちょっと気分悪そうな感じです。

仕方がないので、血液検査と腹部エックス線検査を行なうことにしました。

血液検査で目立ったのは、白血球のうち細菌と闘う好中球が増加していることと、炎症マーカーのCRPが7.0mg/dlオーバーと振り切っていることくらいです。

腹部エックス線検査ではお腹の中にとぐろを巻くように太いソーセージのような構造が白っぽく見えます。

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画像の向かって右側の2本の矢印の先に見えるのがその構造です。

同時に、この画像ではもうひとつはっきり見えないかも知れませんが。胃の中に異物が見えています。

とぐろを巻いている太い構造は、多分ですが、子宮に膿が溜まったものだと思います。

胃の中の異物は何なのか?不明ですが。このまま放置して置くと腸閉塞の原因になるかも知れません。

ワンコを連れて来たお嬢様に状態を説明して。腹部エコー検査を追加で実施しました。

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赤い矢印の先に見えるのが、膿を充満している子宮です。子宮蓄膿症と胃内異物合併症例という診断が確定です。

そのまま左手に静脈カテーテルを留置して、乳酸リンゲルの点滴を開始しまして。午後から麻酔をかけて手術を行いました。

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最初に子宮を取り出しました。正常だったらもっともっと細く短い子宮がボコボコに膨れていまして。突いてみると膿が噴出して来ました。

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出て来た膿で細菌培養と感受性試験を行ないます。

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次に胃を開けてみると、プラスチックの吸盤みたいな構造が出て来ました。

胃を2重に縫い合わせ。お腹を閉じて手術は終了です。

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麻酔を切ってしばらくすると覚醒しましたので、気管チューブを抜いて、回復室に入ってもらいます。

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多分ですが。明日の夕方には食欲も回復しますので、最短では明日の夕方に退院ということになると思います。

今回の症例のような例は、今まで何回もアップして来ていますので。目新しさも無いかも知れませんが。

繁殖予定の無い犬猫の、早期の避妊去勢手術は、その動物のいろいろな病気を予防し、性的なフラストレーションを防ぐことが証明されていて。動物愛護の観点からも強く推奨されているのが、現代獣医学の常識になっています。

この記事を読まれた飼い主様で、単に現在病気でないというだけの理由でご愛犬の避妊去勢手術をためらっている方が居られましたら。是非とも主治医に相談するようになさって下さい。

ではまた。

猫の子宮蓄膿症にはアリジンは利かなかった?

先日からアリジンで治療していた猫の子宮蓄膿症ですが。

初回のアリジン皮下注射から1週間が経過しまして。再来院しました。

食欲はそれなりに回復しているものの。目視出来る性器からの排膿は無しとのことです。

エコー検査を実施してみたところ。先週と変わりない膿らしき液体を含んだ子宮と思われる陰影が確認出来ました。

アリジンが食欲回復に一役買っているのかどうか?は不明ですが。同時に使用している抗生物質が子宮内の細菌を殺してくれて、その結果状態が改善している可能性は高いです。

しかし、このまま内科的に治療を続けても、いずれ抗生物質は利かなくなって破たんが来るのは目に見えてますから。
状態が少しでも改善している今が、外科手術を決行するチャンスと思いまして。

飼い主様に、「今日残業してでも手術を行なって治療しましょう。」と提案しました。

飼い主様は、どちらかというと手術は怖いというお考えの持ち主のようで。少しためらっている感じでしたが。

このままでは、いずれ状態が悪化して、播種性血管内凝固(DIC)や多臓器不全に陥って亡くなってしまうということを説明すると。何とか同意してくれました。

手術同意を取り付けてすぐに静脈カテーテルを留置し。乳酸リンゲルの点滴を開始します。
午後7時に午後診外来が終了した後。麻酔導入して。各種モニターの装着、気管挿管の実施と進めて行って。

開腹手術を開始しました。

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お腹を開けますと。出て来ました。正常よりも何倍にも腫大した子宮です。多量の液体を含んでいます。

関連する血管を合成吸収糸で結紮して、卵巣と子宮をセットで取り出しました。特に子宮頚管の部分については、子宮体部の取り残しが無いように神経を使いました。また、腎臓から膀胱に尿を送る尿管という管を結紮で巻き込まないように留意しました。

手術は無事に終了し。覚醒も速やかで。午後9時には無事に手術終了です。

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取り出した子宮をメスで突いてみると。膿が大量に出て来ます。細菌培養と薬剤感受性試験を実施しました。

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一夜明けて。細菌培養と薬剤感受性試験では細菌は生えませんでした。

で、猫ちゃん本体はどうか?というと。すごく元気です。朝食に猫缶を与えてみると。意欲的に食べてくれました。

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疑いの眼でこちらを見ているのは。治療の意義を理解していないので仕方がないことと思います。

手術翌日の夕方には退院となりました。

術創を舐めて破壊しないように、メリヤスのシャツを着せています。

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今回は、何とか元気な猫ちゃんに戻すことが出来ました。しかし、獣医のテキストにあれだけしっかりと「アリジンは猫の子宮蓄膿症にも犬同様利いて、副作用もありません。」と記載されていたのに。実際に使用してみると思ったほど利いてくれなかったのは、正直心外でした。
もしかすると、それなりに利いてはいたのかも?知れませんが。少なくとも子宮からの排膿は無かったです。

次回同様の症例が来た時に、どうするか?ちょっと迷うところであります。

 

重度肛門嚢炎に対する肛門嚢摘出術

犬や猫などの肉食獣には、 他の科目の動物に無い組織として、 肛門嚢という強烈な臭いを発生させる袋状の器官が肛門の辺りに存在します。

犬の肛門嚢は、 排便の際にその分泌物が糞便の上に少量落とされて、 他の犬たちに対するメッセージの役割りを果たしていると言われていますが。 本当かどうか?は実際に犬に訊いて返事をもらった人はおそらく居ないと思いますので。 一応推測の範囲ではないか?と勝手に思っています。
しかも、 都会生活を送っている最近の我が国のワンたちは、 散歩の時に排便してもマナーをきちんと守る飼い主様が糞便を回収してしまいますから。 糞便と肛門嚢分泌物によるコミュニケーションは非常に困難な時代になってしまっております。

この肛門嚢は、 分泌物の出口が肛門のすぐそばに開口しておりますので。 しばしば大腸菌などの細菌が侵入して繁殖し、 炎症を起こすことがあります。

大抵の肛門嚢炎は、 適切な抗生物質を使って治療することにより治ってしまうものですが。 時たま薬剤耐性菌が感染していたり、 肛門嚢が拡大して大きな袋状になってしまい、 内部まで薬の効果が及び難くなってしまっていて、  内科治療が困難な症例に出くわすことがあります。

内科治療困難な肛門嚢に対する治療法は、こまめに絞って中身を溜めないようにしながら、細菌培養と薬剤感受性試験を繰り返して、その結果に基づく適切な抗生物質を投与するという地道な内科療法を行なうのですが。 それでも治って行かない場合。 最終的には外科的に肛門嚢を摘出する方法があります。

この外科療法には、やはり落とし穴が存在しておりまして。

肛門嚢の組織を取り残した場合に、あの臭い中身が傷の中に分泌され続けるので、瘻管という非常に不愉快な結果が残ることになります。

いったん瘻管が形成されると。 その原因である残存肛門嚢組織を綺麗に除去しない限りいつまでも不愉快なジクジクとした悪臭を伴なう不潔な肛門周囲組織と付き合わなければなりません。

そして、瘻管を摘出しようとすると、これが結構難しい手術になることと思います。 仮に瘻管がそっくり摘出された場合でも、周囲組織を大きくごっそりと切除しなければならなかったりして。その結果、排便をコントロールしてくれる肛門括約筋を損傷して。 頑固な便失禁が残るということになりかねません。

どんな手術でも、最初に上手く行かなくてやり直しをする方が、難しいものであります。

肛門嚢摘出手術も、 簡単なようで、 意外に難しかったりします。

というわけで。 私は犬猫の肛門嚢摘出手術をする際には、 アナルサックゲルキットという熱可塑性樹脂の製品を、切除直前に肛門嚢内に注入して、肛門嚢を周囲組織とはっきり区別出来るようにしてからやることにしています。

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画像がアナルサックゲルキットの内容です。 グリーンの円筒形容器には熱可塑性樹脂が入っていまして。 使用直前に沸騰水で熱して、これを上のステンレスの注入器にセットして肛門嚢の出口の穴から中に充填するのです。

麻酔下で行なう作業なので、100℃とは言いませんが70℃とか80℃くらいの樹脂が嚢内に入ることになります。

実は、これが万が一にも肛門嚢組織を取り残した場合でも瘻管が出来ない保険のようなものなのです。 通常の生き物の細胞は、細菌でも、我々や犬猫の身体の細胞でも、70℃くらいの高温に数秒でもさらされると、死んでしまうのです。

高温のアナルサックゲルキットを空の肛門嚢に注入することにより、 肛門嚢の内貼りにあたる悪臭液分泌細胞を殺すことが出来るので。 万が一組織の取り残しが出来ても、 瘻管形成を防ぐことが出来るかな?と一応考えているところであります。

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一応、手術の光景も掲載します。 まず手術準備の消毒のところです。

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覆い布をかけます。

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何故か、左側が終わって右側の皮膚切開をしているところです。

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矢印の先が肛門嚢の組織ですが。 丁寧に分離しているところです。

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手術が終わって。 肛門が開かないように肛門を絞めていた縫合糸を抜いたところです。

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術後1週間が経過して、来院して来たところです。 この段階で、手術後の排便のし難さとかは完全に消失して、抗生物質の内服とエリザベスカラーで舐めないようにしている以外はほぼ通常の生活が出来ています。

肛門嚢摘出術は、 そんなに件数の多い手術ではありませんが。 やる時はやらなければならない手術でもあります。 今のところ私がやった手術で瘻管形成に陥った症例はありません。 これからも心して取り組みたいと思います。

ではまた。

 

 

猫の子宮蓄膿症

今回の症例は、特に症状があって来院したわけではない子でした。

一緒に暮らし始めてすでに数年経過した子なのですが。 発情のことと、病気予防のことが気になっていて。 避妊手術を希望されて連れて来られたのです。

術前検査はそんなにお歳でもなく運動能力に異常もないとのことでしたから。 全血球計数と血液生化学検査、血液凝固系検査だけやりましたが。 特段の異常はありませんでした。

手術当日、麻酔導入して、仰向けに保定し、お腹の毛刈りを始めたところ。 お腹の中に何やら硬い大きな物体が触れまして。

妊娠か?と疑って。 飼い主様にお電話をかけつつ、エコーで確認してみましたら。 それは胎児ではなかったです。

お腹を開けて、中身を確認すると。 硬い大きな物体は大きく膨らんだ子宮でした。

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普段の手術よりも子宮頚管の結紮と切断に随分気を使って。 私が「コピオ」と称している、取り残した子宮に膿が溜まった状態をつくらないようにしました。

子宮卵巣の除去後は普通に閉腹して。 手術は完了です。

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取り出した子宮を無菌的に突いて穴を開けてみると。 中から赤っぽい色調の膿が出て来ました。

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出て来た膿を材料に、細菌培養と薬剤感受性試験を実施しましたが。 翌日確認してみると、細菌は生えて来ませんでした。
普通の培地で普通に培養して細菌が生えないということは。 酸素がある環境では生えない菌が居るのか?普通のお肉のスープで溶かした寒天では生えない、栄養要求度の難しい細菌が居るのか?あるいは無菌的な化膿だったのか?のいずれかなんだと思います。

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猫ちゃんの覚醒は普通に順調でしたので。 当日夕方に退院して行きました。

子宮蓄膿症。 無症状の状態で手術が出来て良かったです。

ではまた。

子宮蓄膿症

今回の症例は、3才になるポメラニアンです。

子宮蓄膿症は、未避妊の女の子のワンちゃん猫ちゃんがかかる病気ですが。 この子は、飼い主様が子供を残したいという希望がありましたので。 避妊手術をやってなかったのです。

ただ、 飼い主様の意図に反して、妙に病気がちの体質でして。

ここ1~2年は頑固な便秘と食欲不振で、緩下剤と消化管運動促進剤を投与する治療を続けてました。

ところが、最近食欲不振の度合いがひどくなった上に元気が無くなったということですので。

心新たに、身体検査を行なってみると。 性器が妙に大きくなっていて、なおかつ下り物が見られます。

血液検査では、白血球数、特に細菌と戦う好中球の増加とC反応性蛋白の数値が高い方に振り切ってしまっています。

お腹のエックス線検査では、矢印の先に異常なソーセージ様の陰影が見られますし。

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腹部エコー検査では、そのソーセージ様の陰影は、内部に液体を貯留した管状の構造であるということが判明しました。

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これだけの証拠が揃えば。 この子の病気は「子宮蓄膿症」と言い切って良いと思いますが。

かなり怖いと思ったデータとしては。 血液を固める機能を持っている血小板の数が、1ミリ立方メートル当たり5万個台に減少しているということでした。 血小板数は、採血の時に針先が血管から外れたり、採血にひどく手間取ったりすると少なくカウントされることがありますが。 今回の採血は普通にスムーズに出来てましたから。 この数値は信頼性があると思います。

子宮蓄膿症のような基礎疾患があって、血小板数が少なくなっているような場合。 DICという血液凝固系の暴走とも言うべき致命的な状態になっている可能性が高いと思います。

DIC[で回復しない場合を考えて。 DIC[治療の奥の手ともいうべき新鮮血漿輸血とかも考慮して。 血液型を簡易キットで判定しようと試みましたが。 自己凝集反応が出現していまい。 血液型判定は出来ませんでした。

犬猫の血液型判定は、健康な時に前もって実施しておくべきものであると改めて思い知りました。

子宮蓄膿症は、状態が悪いからとか言って手術を延期したりすると、逆にますます状態が悪くなって、 結果的に死に至る症例を過去に見て来た経験から、発見したらとにかく手術して悪い臓器を取り出してしまうというのが私の考えです。

この子も、即日手術を実行しましたが。 手術の前から、DIC対策のお薬を静脈輸液に添加して持続点滴で投与しました。

 

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手術は、 過去のブログにも何回となく掲載したように、麻酔導入したら気管チューブを挿管し。 静脈カテーテルからの乳酸リンゲルの輸液。 各種モニターの装着と。 決して手抜きをせずに丁寧に準備します。

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お腹を開けると。 液体が充満した子宮が出て来ました。 超音波メスで血管をシールしながら摘出します。

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摘出した子宮ですが。 健康な子宮に比べて、長さはともかくひどく太くなっています。

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メスで突くと、イチゴミルクのような?膿が出て来ました。 この膿を材料にして細菌培養と薬剤感受性試験を行ないます。

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麻酔からは普通に覚醒しました。 一晩入院させて、DIC対策のお薬を添加した乳酸リンゲルの点滴を続けます。 翌日に食べれば回復に向かっていると判断して退院させます。

幸いなことに、翌朝食欲が回復して、与えた食事を食べてくれました。

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筒状のメリヤスを使ったシャツを着せてやって、退院させました。

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術後約9日で再来院した時には、すっかり元気になったということなので。 抜糸して今回の子宮蓄膿症騒ぎは一件落着ということになりました。

普通に回復してくれて、本当に良かったです。

今回の子は、一応繁殖予定があったので。 早期の避妊手術をしなかったために、こんな事態になってしまいましたが。
やはり、繁殖の可能性が無くなった時点でなるべく早期に避妊手術をお勧めするべきだったと思います。

ではまた。

未避妊の女の子の乳腺腫瘍

9才と8ヶ月令になるトイプードルの女の子の話しですが。

先日、左第3乳頭の際に小さな腫瘤があるということで来院されました。

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腫瘤は小さな物で、これ1個だけです。

しかし、未避妊であることとか考慮すると、乳腺腫瘍の可能性が高いと思います。

そもそも、犬の乳腺腫瘍は、統計的に良性と悪性の割り合いが半々で、更に悪性のうち約半数が転移や再発の起こりやすい悪性度の高い物であるとされています。そして、犬の乳腺腫瘍は、初めての発情の前に避妊手術を行なった牝犬に比べて避妊手術を行なっていない牝犬は約200倍の発生率であるということです。
更に、一般の腫瘤に対して実施する針吸引と細胞診という侵襲性の低い診断法は、乳腺腫瘍に限っては当てにならないと、腫瘍学の教科書には記載されております。

故に、乳腺の腫瘤が発見されたら、リンパの流れを考慮してなるべく広い範囲で乳腺を切除し、併せて卵巣子宮全摘出を実施して、切り取った乳腺については病理検査を行なって今後の対応を考えなければりません。

飼い主様にはその旨を説明して、左側乳腺を第3から第5まで3個切除することと、卵巣子宮全摘出をすることについて了解を得ました。

手術前の検査としては、採血して全血球計数、血液生化学検査15項目、血液凝固系検査を行なうと共に。胸部腹部のエックス線検査。コンピュータ解析装置付き心電図検査を行ないました。
いずれの検査でも特段の異常は見当たりませんでした。

4日後に、朝からお預かりして術前の静脈輸液を行ないますが。この子は少し激しいところがありまして。ケージ内でかなり暴れますので、静脈輸液が困難でした。

仕方なく、早い時間に静脈輸液を諦めまして。皮下輸液で水和状態を調節して。飼い主様に迎えに来てもらい。 午前は飼い主様と過ごしていただきました。

午後の1時過ぎに再度連れて来ていただき。 飼い主様にワンちゃんを安心させてもらいながら麻酔導入をします。

鎮静剤、鎮痛剤、抗生物質等の麻酔前の投薬も普通に実施出来て。 麻酔導入は昨年から使われるようになった、呼吸抑制心抑制が生じ難く安心感の強いアルファキサロンというお薬で行ないました。

 

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画像は麻酔導入後術野の毛刈りを済ませた段階のものです。 少し暗いですがワンちゃんの口の前に突き出ているのが気管チューブで、その先に緑色の物体が見えるのが人口鼻といって、麻酔ガスの湿度とか調整する器具です。両腋と右足に付いているクリップは心電図モニターの端子です。

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今から切皮するところです。

具体的に術中の画像は撮影してますが。見られて気分を悪くされる方も居られるかも知れませんので、途中省略します。

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で、これが縫合終了時の画像です。左第3から第5乳腺を切除しました。第5乳腺の最後部は性器の横まで伸びていますので、そこまで丁寧に分離して完全切除を目指しています。

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切除した子宮は、正常の状態ではなくて、内部に薄く白濁した液体が貯留してました。液体は一応細菌培養と薬剤感受性試験に供しましたが、細菌は生えませんでした。

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切除した乳腺です。これをホルマリンに漬けて病理検査に外注しました。

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麻酔覚醒後、朝のように騒ぎましたので、待機していただいていた飼い主様にしばらく抱っこしてもらい、落ち着いてからケージ内で休ませました。

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そうは言っても、麻酔から醒めて間無しはまだ鎮静剤が利いてますので、最初のパニック状態が落ち着けば、静かにまどろんでいます。
夕方6時には安定した状態でかなりはっきりして来ましたので、退院させました。

手術の後の動物は相当不安な気持ちになっているでしょうから、危険な状態でない限りなるべく自宅に帰って慣れた環境で夜を過ごしてもらった方が経過が良いように感じております。

病理検査に出した乳腺は、後日の報告で最初に見ていた腫瘤以外にも腫瘍成分が見つかったようですが。いずれも良性のものであるという結果でした。

今回の腫瘍は良性でしたが。犬の乳腺腫瘍は良性悪性の割合が半々で。悪性のうちの半数が悪性度高いという統計がありますので。 繁殖予定の無い伴侶犬の場合、なるべく早期に、最初の発情前に避妊手術を受けておくことをお勧めする次第であります。

とにかく、今回の件は無事に済んで良かったと思います。

ではまた。

 

 

 

犬の子宮蓄膿症

8才と8ヶ月令になるミニチュアシュナウザーの女の子のなっちゃんの話しですが。

飼い主様はなっちゃんの子が欲しかったとのことで、避妊手術をせずにこの齢まで来ましたが。肝心の子供の方は、発情が微弱で判らなかったらしく、交配をするに至らなかったそうです。

ところが。この度の来院の約1週間前から食欲がひどく低下して。2日前から下り物が出るようになったということで、来院されました。

これは多分子宮蓄膿症であろうと思うのですが。あまりにも先入観をもって事を進めて、致命的な誤診に陥っても困りますので。

血液検査、腹部エックス線検査を行ないます。

血液検査では、白血球数の増加。特に好中球数と単球数の増加が著しく。軽い貧血があります。血液生化学検査では血液総蛋白の増加と、犬CRPの高値が目立つ異常でした。

白血球数、特に好中球と単球の増加、及び炎症マーカーである犬CRPの高値は体内に炎症が存在しているということを示唆しております。血液総蛋白の増加は、継続する抗原刺激によって免疫抗体が増加しているということなのかも?知れません。

となると、経過は結構長い?

腹部エックス線検査では。

横から撮った画像では、お腹の中央部分に白く大きなマスが見えています。

画像が小さいので判り難いかも知れませんが。小腸のガスが画面向かって左と上に押しやられています。

子宮が膨れて蛇行している陰影がはっきりと確認出来ているわけではありませんので。腹部エコー検査を行ないました。

画面やや右側にくっきり真っ黒に見える逆台形みたいな像が膀胱でして。その左側に見えているのが膿で充満された子宮かな?という感じです。

それで、その像を辿ってみます。

ぶっとい筒状の構造が前の方に延びて行っております。そして、それは2本存在してました。

以上で子宮蓄膿症の診断確定です。

私の場合、子宮蓄膿症と診断を付けたら、動物の状態が許す限りなるべく早期の手術を行なう方針で臨みます。

この子の場合も、残業してその日のうちに手術を実施しました。

手術までの数時間、静脈カテーテルより乳酸リンゲルの輸液を行ないます。

外来診療の時間が終了したら、すぐに麻酔導入を行ない。術野の毛刈り、消毒、術者、助手の手洗い消毒、術衣と手袋の装着と、手術の準備をどんどん進めて行きます。

で、お腹を開けて見ると。こんな物が出て来ました。

アップすると。

こんな感じです。大きな子宮です。普通に正常な子宮は、この子のサイズの犬だったら、ボールペンくらいの太さで長さはボールペンよりも少し短いくらいでしょうか?

摘出した子宮は、無菌的にちょいと突いて。出て来た膿を使って細菌培養と薬剤感受性試験を行ないます。

膿の色が気持ち悪いです。

術中に血液酸素飽和度が若干低下気味で不安になる時間もありましたが。何とか手術は終了。画像は丁度覚醒して気管チューブを抜く瞬間です。

麻酔から覚醒して入院室で一晩過ごしたなっちゃんです。

この後、翌日には食事を摂るようになりましたので。手術後2日で退院して行きました。

何とか無難に手術を終えて良かったです。

繁殖予定の無い女の子のわんちゃんは、なるべく早期に避妊手術を実施することによって健康で長生きすることが獣医学的に証明されております。未避妊のわんちゃんと一緒に暮らしている飼い主様には、是非そこのところに想いを致していただきたいと思います。

ではまた。

 

 

高齢黒ラブちゃんの腸内紐状異物

今朝来院されたもうすぐ14才になる黒ラブちゃんですが。

昨日からいきなり嘔吐が始まって。何回も吐くし、食欲は全く無いし。ということです。

今まで特段の基礎疾患も無い子ですから。いきなりの発症では消化管内異物か?とも思いますが。あまり先入観を持ち過ぎても誤診に繋がりますから。

症状が厳しいし、一般状態もひどく悪い感じでもありますし。血液検査と腹部エックス線検査、必要に応じて腹部エコー検査を行なう旨飼い主様の了解を得て検査に入りました。

血液検査では、総コレステロールが高いこと。アルカリフォスファターゼが高いこと。犬CRPがひどく高値であること。総白血球数と好中球、単球がかなり高いという結果です。

腹部エックス線検査では、胃の中に妙な陰影が観察されます。

黒い矢印の先が胃底部ですが。紐のような物がありそうです。
腸の方にはガスの貯留は見当たりません。
その他の所見としては、もう一つの横向きの画像で前立腺肥大が観察されました。

念のために腹部エコー検査も実施しましたが。腸管の妙な拡張像があるくらいです。今回の症状とは関係が薄いでしょうが、副腎が大きくなっていることも観察されました。

私としては。絶対とは言い切れませんが。消化管内異物で苦しんでいる可能性があると判断しまして。午後から試験的開腹を試みたいと飼い主様に提案して。了解を得ました。

それから手術までの間、前腕の静脈に留置した静脈カテーテルから乳酸リンゲルの輸液を実施します。

午後1時過ぎから麻酔導入にかかります。

気管挿管をして。各種モニターを装着し。術野の毛を刈り。消毒を実施して。術者、助手は手洗い、消毒、滅菌した術衣手袋の装着と、基本通りの手術の準備を進めて行きます。

画像は、助手が準備を済ませて入室するのを待っているところです。

準備が整ったら、皮膚切開から始まり。みぞおちからペニスの横にかけて大きくお腹を開けて行きます。

胃を外から触ってみると、明らかに大きな異物があります。腸を出してみると。アコーディオンのようにヒダヒダに折り畳まれて窮屈そうです。

画像がちょっと拡大し過ぎですね。この腸管の状態は、紐状異物が入った時に特有の所見です。

胃や腸を優しく触って調べて行くと。腸の異物は胃の異物と繋がっていることが判りました。

腸の異物を胃の方に優しくしごいてみると。胃の方に移動して行きます。腸をひどく傷めないように注意しながら、腸の異物を胃に戻してやることが出来ました。

その後は、胃を切開して異物を取り出します。

えらい物が引っ張り出されてますね。

取り出された異物はこんな物でした。

その後は、胃の切開創を縫い合わせて。もう一度胃や腸を優しく触って異物が残っていないことを確認して。腹膜、腹筋、皮下織、皮膚と、縫合を実施してお終いになります。

麻酔は安定してますので。事前に飼い主様の了解を得ていた通りに前立腺肥大対策として、去勢も併せて実施しました。

縫合が済んで、術創にフィルムを貼ったりしながら、覚醒をさせているところです。この後しばらく時間はかかりましたが。無事に覚醒してくれました。

これから数日入院してもらって。翌日以降に食事を食べるようになれば退院ということになる予定です。

何せ生き物のことですから絶対という言葉は使えませんが。一応回復してくれるものと考えております。

早く元気になってお家に帰って。幸せな生活を送って欲しいものであります。

ではまた。

 

 

牝犬の子宮蓄膿症とDIC(播種性血管内凝固)

本日、午前診の時に子宮蓄膿症の手術を受けた柴犬が退院して行きました。

この子は、一昨日に「2日前から急に食べなくなって、元気も無い。」という稟告で来院して来たものです。

症状とか既往を丁寧に聴き取りしていると、少し前に発情があったということです。念のために性器を診てみると。膿性の下り物が観察されます。

発情が終わって、このような下り物があって、元気食欲が急激に低下するとは、子宮蓄膿症の疑いが強くなります。

水を大量に飲んで排尿量が多いという、いわゆる「多尿多飲」の症状もあったということです。

飼い主様には、子宮蓄膿症の疑いがあること。診断を確実にするためには、血液検査、腹部エックス線検査が必須で。必要に応じて腹部エコー検査も実施すべきであると説明し。同意を得て、これらの諸検査を行ないました。

やはり子宮蓄膿症でした。

悪いことに、全血球計数検査において、血小板数がかなり減少しているという所見が見られます。採血は普通にスムーズに出来てますから。キャバリア犬ででもない限り血小板数の異常が見られたらおかしいと思わなければなりません。

何がおかしいか?と言えば。子宮蓄膿症や急性フィラリア症、熱中症のような一般状態が厳しく悪くなる全身疾患の際に、血液凝固系が暴走するDIC(播種性血管内凝固)という状態に陥ることがしばしば生じるのです。

子宮蓄膿症の手術の後にDICに陥った症例は。先週に他院で子宮蓄膿症の手術を受けたが、状態がひどく悪くて心配だということで当院を受診されたわんこがそうでして。
一生懸命に治療して。輸血までやったのですが。結果として亡くなってしまったという症例があります。

その他、他院で熱中症の治療をやって、一旦はそこそこまでは回復したものの、経過がダラダラと悪く。結局死亡してしまった子も診ましたが。これもDIC が強く疑われた症例です。

やはり一般状態の悪い全身性疾患を診る際には、常にDICの可能性を疑って、必要な予防策を講じる必要があると思います。

一旦DICに陥ると、治療はかなり困難で。死の転帰を取ることが多いです。

今回の子もDICを継発していることを念頭に、血液凝固系検査とFDPという項目の検査を外注すると共に。手術前の数時間の静脈輸液の際に低分子ヘパリンの持続点滴を行ないました。

手術は普通に行われて。膿が充満した子宮が摘出されました。

摘出した子宮から少量の膿を採取して、細菌培養と薬剤感受性試験を実施し。翌日からの投薬はその結果に基づいて行ないます。

血液凝固系とFDPの検査結果は、それぞれごく軽度ではありますが、正常値から逸脱しているという報告がなされて来ました。

ただ、教科書を開いてみると、DICの診断基準には総て当てはまる感じではありません。強いて言うならば、DICの前段階程度と考えるべき状態なのかも?知れません。

わんこの一般状態は術後かなり改善して。翌日には少しずつではありますが食べるようになり。最初1μl当たり6万まで低下していた血小板数は、手術の翌日には11万に回復し。本日の時点では15万まで回復しました。なお、犬の血小板数の正常値は、1μl当たり17万5000個以上50万個以下です。

血小板数が完全に正常値ではないので、少し不安はあるにしても。一般状態はかなり良い感じですので。
本日は一応試しに帰宅させて、本格的に食べるかどうか?経過を見ることにしました。
飼い主様には、少しでも状態の悪化とか見られたらすぐに連絡して連れて来るようにお伝えしてあります。

このまま無事に回復しますように。