兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 消化器内科
院長ブログ

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犬の蛋白喪失性腸症

犬のお腹が膨れて来て、腹水が溜まっているという状態で受診して来た時に。 血液検査を行なってみると、 血液中の蛋白質の一種であるアルブミンの量がひどく少なくなっている場合があります。

血清アルブミンは、 比較的分子サイズの小さな蛋白質でして。 肝臓で造られています。 アルブミンにはいろいろな働きがありますが。 そのうちの一つに、 血液の膠質浸透圧の維持と言って。 血管内に水分を保持する役割があります。

従って、血清アルブミン濃度が低下すると、 血管から水分が周囲組織に漏れて出てしまい。 漏れ出た水分が腹水や胸水という形になって目に見えるようになるわけです。

それで、血液中のアルブミンがどういう理由で減るのか?という話しなのですが。

単純に羅列してみますと。

蛋白喪失性腸症。 蛋白漏出性腎症。 肝臓機能不全。 火傷などの広範な皮膚障害。 出血。 腹膜炎。 膵外分泌不全。 アジソン病などいろいろであります。

前置きはこれくらいにして。 今回の症例の子は。 もうすぐ10才になるヨークシャーテリアの避妊済み女の子です。

この子は、 丁度1年前に歯の根に細菌感染が生じて眼の下に膿が溜まり。 眼の下の皮膚が破れて膿が流れ出て来るようになったので。 麻酔下で処置をする際に、 術前検査をしましたが。 その時にはアルブミンは2.5g/dlと異常はありませんでした。

その後、この秋に乳腺にしこりが出来まして。 乳腺腫瘍であろうということで外科的処置をする際に、 やはり術前検査を行ないましたが。 その際にアルブミンが1.7g/dlと明らかな低アルブミン血症になっていたのです。

一応一般状態は良好だし、肝機能にも問題は無かったので。 蛋白漏出性腎症を除外する目的で、尿中のアルブミン検査を行ないましたが。 アルブミンが尿に漏れているということもなくて。

アルブミン濃度が低い状態で大きな傷を作ると癒合不全に陥る可能性がありますので。 乳腺腫瘍はいつものように広範囲にマージンを付けて切除することは避けて、ピンポイント切除で病理検査を実施しました。

乳腺腫瘍は良性の物であり、 ほっとしました。

乳腺腫瘍摘出から2ヶ月経った先日。 ここ数日嘔吐が続いていることと、昨日から軟便になっているということで来院されまして。
飼い主様が、最近お腹が張っている感じなのが気になると言われますので。

血液検査と腹部エックス線検査を行なってみたところ。

血液中の総蛋白が2.9g/dlアルブミンが1.0g/dlと明らかにひどく低下しています。

腹部エックス線検査では、お腹の中に腹水が貯留しているという結果でした。

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お腹がポッコリと膨らんで、 お腹の中はスリガラス状にぼやけて見えます。 直腸にコントラストが強く見える粒子状の物体が見えますが。 これは同居の猫の使う猫砂を食べているのであろうということです。

2ヶ月前の検査では、尿中にアルブミンが出ていなかったので。 蛋白漏出性腎症は一応除外して考えることにして。

腹部エコー検査で肝臓や腸管を観察することにしました。

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肝臓は問題なく。

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胆嚢も問題なく。

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お腹の中には液体が充満していて。

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液体の中で大網膜や腸間膜の脂肪がヒラヒラ揺らめいていて。

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リニアのプローブで探って見ると。 腸管は特に異常はありません。 小腸粘膜の高エコー線状パターンが見られたら診断は腸リンパ管拡張症で決まりなのですが。 もう一つはっきりしません。

因みに小腸粘膜高エコー線上パターンとは。 下の画像のように見えます。

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著作権の問題がありますので、出典を明らかにしておきますが。 この画像は、インターズーさんの「犬と猫の治療ガイド2015」の306ページから引用させてもらいました。

確定診断をしようと思えば、 麻酔下で消化管内視鏡検査あるいは腸の全層生検と病理検査をするべきだとは思いますが。

私はここで、試験的に治療してみることにしました。

処方の内容は、 副腎皮質ステロイドホルモン。 利尿剤。 抗生物質。 下痢止め。 整腸剤。 嘔吐止めというものです。 なお、内服以外には、腸管の慢性病変ではシアノコバラミンというビタミンの一種が不足して状態が悪化しますので。 シアノコバラミンの皮下注射も行いました。
食事は非常に重要ということですから。 低脂肪食を処方しました。

それで4日間治療してみると。

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下痢嘔吐は治まり。 腹囲は減少しまして。 お腹の中の液体も減少あるいは消失してました。

血液検査はさらに1週間投薬してから行なう予定ですが。 おそらく血漿アルブミン濃度は増加していることと確信しています。

今後は定期的に血液検査を実施しながら、 ステロイドホルモンの内服と、シアノコバラミンの皮下注射を続けて行く予定です。

この病気の多くは生涯にわたる治療が必要になることが多いようですから。 ステロイドホルモンを副作用が生じない最小限の用量で上手くコントロール出来るよう頑張ってみたいと思います。

ではまた。

高齢黒ラブちゃんの腸内紐状異物

今朝来院されたもうすぐ14才になる黒ラブちゃんですが。

昨日からいきなり嘔吐が始まって。何回も吐くし、食欲は全く無いし。ということです。

今まで特段の基礎疾患も無い子ですから。いきなりの発症では消化管内異物か?とも思いますが。あまり先入観を持ち過ぎても誤診に繋がりますから。

症状が厳しいし、一般状態もひどく悪い感じでもありますし。血液検査と腹部エックス線検査、必要に応じて腹部エコー検査を行なう旨飼い主様の了解を得て検査に入りました。

血液検査では、総コレステロールが高いこと。アルカリフォスファターゼが高いこと。犬CRPがひどく高値であること。総白血球数と好中球、単球がかなり高いという結果です。

腹部エックス線検査では、胃の中に妙な陰影が観察されます。

黒い矢印の先が胃底部ですが。紐のような物がありそうです。
腸の方にはガスの貯留は見当たりません。
その他の所見としては、もう一つの横向きの画像で前立腺肥大が観察されました。

念のために腹部エコー検査も実施しましたが。腸管の妙な拡張像があるくらいです。今回の症状とは関係が薄いでしょうが、副腎が大きくなっていることも観察されました。

私としては。絶対とは言い切れませんが。消化管内異物で苦しんでいる可能性があると判断しまして。午後から試験的開腹を試みたいと飼い主様に提案して。了解を得ました。

それから手術までの間、前腕の静脈に留置した静脈カテーテルから乳酸リンゲルの輸液を実施します。

午後1時過ぎから麻酔導入にかかります。

気管挿管をして。各種モニターを装着し。術野の毛を刈り。消毒を実施して。術者、助手は手洗い、消毒、滅菌した術衣手袋の装着と、基本通りの手術の準備を進めて行きます。

画像は、助手が準備を済ませて入室するのを待っているところです。

準備が整ったら、皮膚切開から始まり。みぞおちからペニスの横にかけて大きくお腹を開けて行きます。

胃を外から触ってみると、明らかに大きな異物があります。腸を出してみると。アコーディオンのようにヒダヒダに折り畳まれて窮屈そうです。

画像がちょっと拡大し過ぎですね。この腸管の状態は、紐状異物が入った時に特有の所見です。

胃や腸を優しく触って調べて行くと。腸の異物は胃の異物と繋がっていることが判りました。

腸の異物を胃の方に優しくしごいてみると。胃の方に移動して行きます。腸をひどく傷めないように注意しながら、腸の異物を胃に戻してやることが出来ました。

その後は、胃を切開して異物を取り出します。

えらい物が引っ張り出されてますね。

取り出された異物はこんな物でした。

その後は、胃の切開創を縫い合わせて。もう一度胃や腸を優しく触って異物が残っていないことを確認して。腹膜、腹筋、皮下織、皮膚と、縫合を実施してお終いになります。

麻酔は安定してますので。事前に飼い主様の了解を得ていた通りに前立腺肥大対策として、去勢も併せて実施しました。

縫合が済んで、術創にフィルムを貼ったりしながら、覚醒をさせているところです。この後しばらく時間はかかりましたが。無事に覚醒してくれました。

これから数日入院してもらって。翌日以降に食事を食べるようになれば退院ということになる予定です。

何せ生き物のことですから絶対という言葉は使えませんが。一応回復してくれるものと考えております。

早く元気になってお家に帰って。幸せな生活を送って欲しいものであります。

ではまた。

 

 

ミニチュアダックスフントの難治性下痢症

糸付き縫い針を飲み込んだ猫ちゃん

猫という動物は、とても遊び好きで。特に紐や糸のような物で遊ぶことが大好きです。人間がネコジャラシで遊んでやったり、自分で毛糸玉にじゃれついたりする姿は誠に可愛らしいものです。

しかし、困ったことに猫は、遊んでいるうちにそんな紐や糸を飲み込んでしまうことがあります。

猫の紐状異物誤嚥は、獣医療の中ではかなりクラシックにして重要な問題です。飲み込まれた細い紐や糸が腸管で動けなくなって、腸が切れたりして腹膜炎を生じて死に至る転機を取ることになるのです。

今回の子は、1才少々のスコティッシュフォールドの女の子ちゃんですが。「裁縫用の針を飲み込んだ。」ということで来院されました。

稟告から金属製の針を飲み込んだのは間違いなさそうなのですが。診察台上の猫ちゃん、少し不穏な表情です。


お互いに怪我をしたり、猫ちゃんがショックを起こしたりするのも困りますので。無理に口をこじ開けるのは避けて、エックス線検査を行なうことにしました。

エックス線検査の結果です。腹部や胸部には金属異物は見当たりません。よくよく見ると。頭部の辺りに細長い陰影が見えます。

拡大してみると、こんな感じです。首輪の留め金の上の方に縦に見える細長い直線状の陰影です。

少し強めに鎮静をかけて、無抵抗状態にしてから。口を開けて見ます。

赤い矢印の先が飲み込まれた針です。突き刺さってますね。
鉗子で挟んで取り出しました。

トレイに乗っているのが、取り出した糸付き縫い針です。糸が赤いのは元々の色でして。決して大量に出血したわけではありません。

猫ちゃんは、この後鎮静剤の拮抗薬を使用して、速やかに覚醒しました。

今回は、簡単な処置で異物を取り出すことが出来ましたが。異物の存在する場所によっては開腹手術を必要とする場合もあります。

猫ちゃんの玩具についてはくれぐれも注意して、このような事故を起こさないように。もし万が一異物誤嚥に気がついたならば、速やかに受診されますようお願い致します。

 

 

 

 

 

 

石を食べて重度の貧血?

今回の症例は、もうすぐ10才になるミニチュアダックスフントの避妊済み女の子です。

近くの動物病院の院長先生から電話があって、重度の貧血なのだが、診てくれないか?ということでした。

院長先生自ら連れて来られたわんこを見ると、横になって動きませんし。舌の色は真っ白です。わんこと一緒に持参したデータでは、赤血球容積(PCV)は4.4%と、もう一押しであちらの世界に逝ってしまいそうな数字です。

少ない血液のところを申し訳ないと思いつつ、ちょっとばかり採血して、レーザーフローサイトメトリーで検査をすると共に、血液塗抹標本を作製して、顕微鏡で観察してみます。

血液の再生量の目安になる網状赤血球は存在はしていますが。その数は多いとは言えません。

機械から出て来たデータも、網状赤血球数は増えていないとされています。

こういう貧血を非再生性貧血というのですが。その原因を確定するには基本的に骨髄生検と病理検査が必要になって、結構ハードルが高い病気です。

しかし、診断はともかく、現状のPCV4.4%は早急に対応しないと死んでしまいそうです。

さきほど採血した血液で血液型の判定試験をやって、DEA1.1陽性という結果を得ました。動物病院に私と一緒に出勤しているベルジアン・マリノワのゴーシュの血液型と同じです。ゴーシュから200mlほど採血して輸血を実施しました。

輸血に先だって静脈留置を行なうのですが。血圧がかなり低下している感じで、随分難しかったです。

輸血の後随分気分が良さそうになりましたので。院長先生、とりあえず連れて帰られました。

翌日、お昼の休憩時間に、外出していたら。院長先生から電話が入りまして。「昨日の子の経過観察をしていたら、血便が出始めたので、腹部エックス線検査を行なった。胃や腸に多数の小石が詰まっているので、手術をして摘出してやって欲しい。」という内容でした。

動物病院に戻るから、連れて来るようにとお伝えして。急ぎ帰院しました。

約30分後に、飼い主様がエックス線フィルムと一緒にわんこを連れて来ました。

フィルムをデジカメで撮影しなかったので、最初の画像はここに提示できませんが。石は胃、小腸、直腸と大きく3ヶ所に分かれて存在していました。

昨日の輸血の効果については、きちんと血液検査が出来ていないようなので。こちらで採血してレーザーフローサイトメーターで測定してみたところ、4.4%だった赤血球容積は17.3%にまで回復してました。

エックス線フィルムを眺めていると。お腹を開くような侵襲性の強い処置までしなくても何とかなるか?と感じられます。
最初に直腸の石の塊を、ゴム手袋にゼリーを付けて指を挿入して、下腹部を優しくマッサージしながら1個ずつ掻き出してやったら、ほぼ全部が摘出出来ました。

下の画像が直腸の石ころたちを掻き出した後のエックス線検査の結果です。

胃の中にはそれなりに多くの石がありますが。腸管に存在する石は何とか自力排出が出来そうな感じです。

この時点で、私は、飼い主様に断りを入れると共に、紹介してくれた院長先生に電話をかけて、近くの内視鏡で頑張っている獣医さんに麻酔下で内視鏡により胃内の石ころを取り出してもらう旨了解を取りました。

何でもかんでも自分の動物病院でやるために、不必要な侵襲を動物に与えるというナンセンスなことは避けたいものです。

さて、内視鏡の先生に行ってもらったわんこは。翌朝胃内の石ころは総て摘出出来たということで退院して来ました。

内視鏡の先生の話しでは、胃内の出血がひどくて、大変だったということです。

となると、貧血が石ころによる胃粘膜の損傷で出血が生じたためという可能性も出て来ます。
だったら、今回の処置でこの子は貧血から脱することが出来るかも知れません。

ただ、それだけひどい出血だったら。もしかして石ころ以外の重大な胃の病変を確認出来ていない可能性も、それなりにあるかも知れません。
その場合は、石ころを摘出した後も貧血が回復しない、あるいは進行するということになると思います。

でも、内視鏡の先生、きちんとした方ですから。大丈夫ではないか?とは思っています。

わんこは、その後最初の院長先生の動物病院に帰って、そこで治療を継続しておりますが。経過については、また教えていただくことにはなっております。私も今後の経過に注目して行きたいと思います。

 

ボーダーコリーの炎症性腸疾患(IBD)

ボーダーコリーの、もうすぐ1才4ヶ月令になる女の子の話しですが。少し遠い街に住んでいる子でして。飼い主様がグリーンピース動物病院のHPとか私のブログをお読みになってこちらに受診されたということです。

この女の子ですが。2月の半ばに、野鳥の糞を食べてから急に下痢が始まったとのことです。

それで、近くの主治医の先生のところで、それこそいろいろやってみたのですが。新しい治療を試みると、少しの間反応した後、すぐに下痢が再発してしまうということでした。

最近やった治療としては5月の14日からパンクレアチンという消化酵素を食事に添加するというものでしたが。これも最初の1週間はそれなりに効果があったようだが。すぐに下痢が再発して。パンクレアチンの量を7グラムから15、20、30グラムへとどんどん増やしていっても、改善しないということです。

今までやった検査の資料を見せてもらいましたが。それこそ、内視鏡を使った十二指腸粘膜の病理検査から、私が昔利用していたことのある広範なIgEの検査までやってました。

しかし、いくつか気になることがあります。
それは、パンクレアチンを投与しているし、利きが悪くなったのにしつこく増量している割りには。消化酵素が不足している症例のエビデンスとなるはずの犬トリプシン様免疫反応物質(c-TLI)という検査を行なっていないということ。
実施していた血清のIgE検査は、やってみれば全く症状の出ていない子でも全部で90以上の項目のうち20や30くらいは普通に陽性反応が出て、検査結果と臨床症状との間の関連性が不明確なものであること。
院内の血液検査は実施しているものの、下痢症状が存在している時には必須であると私が感じている数項目が測定されていないこと。

などであります。

そこで、アレルギーの疑いに対しては、動物アレルギー検査株式会社の「アレルギー強度試験」を実施することにしました。

また、初日には食事を摂った状態でしたので。翌日空腹状態にして再来院してもらい。c-TLIを測定すると共に、検便にて寄生虫の検査を実施します。

検便では特にこれといった寄生虫は見つかりません。また翌日に帰って来たc-TLIの数値は正常範囲内でしたし。アレルギー強度試験では一応陽性でしたが。そんなに激しいものではありません。

c-TLIの検査結果が帰って来て翌日に、腹部エコー検査と、院内の血液検査を実施しました。

腹部エコー検査では特段の異常は見つかりません。腸管の粘膜の構造とか全然正常な感じです。
院内の血液検査でも膵炎関連の数値や炎症マーカーである犬CRPも全くの正常値です。

それで。今までの動物病院で実施して来た検査の結果も含めて考えると、炎症性腸疾患(IBD)の可能性が非常に高いと考えました。

因みに、世界小動物獣医師会(WASAVA)によるIBDの臨床診断基準では。
1、慢性消化器症状が3週間以上続いていること。
2、病理組織学的検査で消化管粘膜の炎症性変化が明らかである。
3、消化管に炎症を引き起こす疾患が認められない。
4、対症療法、食事療法、抗菌薬などに完全には反応しない。
5、抗炎症薬、免疫抑制療法によって症状が改善する。

というもので。IBDと診断するにはこれらの総て、あるいはほとんど総てを満たす必要があります。

この子に対しては1から4までは、軽いアレルギー以外は既に満たしていると思われますので。残るは5のみということになります。

そこで、IBDの第1選択薬であるプレドニゾロンというステロイドホルモンを、初期用量とされる量を1週間処方し。それまで食べていた中途半端な加水分解タンパク食を、徹底した完璧に近い加水分解タンパク食に変更してもらいました。

ステロイドホルモンを処方して1週間経った今日。来院されて言われるには。「この数ヶ月来有り得ないくらい正常な便が出るようになった。」ということでした。

この子は、今後の経過はどうなるのか?まだ完璧ではないにせよ。今のところIBDと言って良いのではないか?という感じです。

今後3ヶ月間は今の治療を継続して。状態が良ければ1ヶ月くらいかけてステロイドからの離脱を図る予定で行きますが。
ステロイドからの離脱が無理ということになったら。生涯にわたる免疫抑制療法が必要になる可能性がありますので。

その時は、ステロイド以外の長期投与が可能な免疫抑制剤を処方することになるかも知れません。

いずれにしても、遠くから訪ねて来られて、何とか恰好が付きそうですので少しホッとしています。

若く美しいボーダーコリーちゃんと飼い主様には、これから元気で幸せな生活をいつまでも続けて欲しいものであります。

 

 

 

通称「下痢セット」

グリーンピース動物病院では、下痢を主症状とする一般的な腸炎の治療薬として、①嫌気性菌(腸管内悪玉菌)を殺すペニシリン系の抗生物質と②腸粘膜を引き締めて便の形を作り、悪玉菌の形成する腸管内毒素を吸着したりする止瀉剤、それに③善玉菌(使用した抗生物質では死なないように加工してあります)を補給する整腸剤の3剤を組み合わせて使用することが多いですが。

この組み合わせを、「下痢セット」と称しております。

最近の下痢セットの使用例ですが。当院では初診に当たる2才10ヶ月令になるキャバリア・キングチャールス・スパニエルの男の子が、2日前から下痢が始まって。現在は1時間に1回か2回水様便を排出し続けているという稟告で、先日来院して来ました。

診察を待つ間も、待合室で水様便を垂れ流すような有り様でしたが。診察をした限りでは、脱水もそうひどくはなさそうですし。検便も浮遊法直接塗抹法共に陰性。発症前に食事を変更したり、変わった物を与えたという事実も無いそうですし。
食欲もそれなりにあるということです。

気になったのは、お家の人が全員順番に感染性胃腸炎に罹患して。この犬が最後に下痢を発症したということです。
はて?人間のノロウィルスは犬に感染することがあったのでしょうか?

犬に下痢や嘔吐などの消化器症状を発症させる原因は、それこそ無数に存在しますけれども。
最初から難しいことばかり考えていても話しがややこしくなるばかりですから。

一般状態がそう悪くなければ、「下痢セット」を処方して、お薬に対する反応を見るということをすることもあります。

この子の場合も、下痢セットを処方して。少なくとも1食は食事を与えないで、投薬のみとして、翌日に再来院して投薬に対する聴かせてもらうということでお帰ししました。

翌日の来院では。最初の投薬のすぐ後から下痢はすぐに止まり。2回目の投薬でもその状態が維持されていて。

すごく調子がよろしいというお話しでした。

続きの処方を行なうについては。犬猫の腸粘膜絨毛の細胞は、そのすべてが入れ替わるのに通常で4日必要だということですから。
お薬が効いてから6日ないし7日は投薬を継続する必要があると考えております。

今回の症例の場合。年末年始の休診日のこともあり。不測の事態に備えて、少し長めに8日分の処方をさせていただき。年始は1月4日に来院して最終チェックを行なう段取りに致しました。

「下痢セット」嵌まれば抜群の働きをしてくれる頼りになる処方であります。

今日は、難しい話しを避けて、ちょっと簡単系の話しをさせていただきました。

年末年始は、12月29日から1月3日まで休診とさせていただき。年始の診察は、1月4日となります。
ただし、1月5日は臨時休診をいただいておりますので、グリーンピース動物病院に年明けに受診の方はよくよく注意して下さいませ。

 

イングリッシュ・セターの異物誤嚥による腸閉塞

週末に来院したイングリッシュ・セターのローラちゃん。

1週間前から嘔吐と下痢の症状を呈し始め。発症3日目に他院にて診療したのですが。一時好調になったので更に3日間経過を見ていたところ、やはり調子が悪いという事でその動物病院に行くも、そこの先生が週末にどうしても外せない用事があるということで。

当院に受診されたものであります。

血液検査では白血球数、特に好中球数の増加が著明で。持参したエックス線フィルムからは腸閉塞が強く疑われます。

他院で3日目のエックス線フィルムですが、診療初日と同じように胃に内容物が充満しています。

腹部エコー検査を実施してみると、腸管の拡張著しく、拡張した腸管の中に紐のような構造が見られました。

こうなると、少しでも早くに開腹して中を確認するべきと思いますので、残業して手術という事になりました。手術前の数時間は静脈輸液を行ない、少しでも水和状態の改善をはかります。

麻酔導入してお腹を開けて見ると、胃の中には大量の葉っぱ。胃の幽門付近から腸管にかけて撚れて紐状になったタオルのような繊維性異物が詰まってにっちもさっちも行かない状態になっていました。

画像の羅列だけである程度ご理解いただけたと思いますが。手術は無事に終了。本犬は術後から気分良くなって、術後24時間後から飲水し、36時間後には胃腸病用の処方食をモリモリと食べていました。

手術の2日後には元気で退院して行きました。

今日もまたお役に立てて嬉しかったです。紹介状を書いていただいた先生には今から報告をしなければなりません。

 

 

ミニチュアダックスフントの結直腸多発性炎症性ポリープ

2才の頃より当院で健康管理のお手伝いをさせていただいている、ミニチャダックスフントの避妊済み女の子の話しです。今年で8才になります。

実は、この子は従前から免疫に関して怪しいという印象を強く持っておりました。

4才の頃に頑固な慢性嘔吐を発症しまして。内視鏡を持っている近くの先生に依頼して胃の組織生検を実施し、胃炎を患っており、炎症部位に形質細胞や好酸球が浸潤しているという所見が得られていたのです。

胃炎の方は投薬と処方食で何とかコントロール出来て。その後に発症した膀胱炎も何とか上手く管理出来ているという状態だったのですが。

5月23日に来院した時に、5日前から鮮血を混じる下痢をしているということでした。

これが、しかし、通常の下痢セットの処方では全然反応が見られず。

検便も問題無く。原虫や嫌気性菌の感染をコントロールする薬も奏功せず。

試しに与えたステロイドに対してだけかなり良好な反応だったので、大阪府立大学の内科系の先生に一度診てもらおうと飼い主様と相談していた矢先のことでした。

6月27日朝にいきなり直腸脱が生じてしまったのです。

緊急でお昼に手術を行ないました。当日予定していた猫ちゃんの避妊手術は夜に残業して行ないました。

脱出した直腸には、顆粒状の病変が多数見られます。直腸の腺癌のような超悪性の病気を予想して随分ビビリました。

病変部を切除して、縫合が終了したところです。直腸脱の手術は 一番最初に脱出した直腸が2層重なっているのをきちんと拾った支持縫合を実施して、その縫合を頼りに、内層の腸管が、断端が遊離したままお腹の中に戻ってしまわないように、丁寧な全層並置縫合を実施することが、失敗しないコツと言えばコツだと思います。

手術が終了して、直腸をお腹の中に戻してやった状態です。

手術当日に退院させました。

大学の先生のアドバイスもあり、病理検査の結果が出るまで抗菌剤以外にステロイドホルモンを控えめに使用しました。

術後の経過はすごく良好で、下痢も改善しました。

病理検査の結果は。

多発性炎症性ポリープというものでした。

この病気は、最近ミニチュアダックスフントで問題になっている免疫が関与すると言われる炎症性の疾患です。

治療は、ステロイドホルモンと免疫抑制剤の併用で実施します。丁度タイムリーに、6月30日に岡山で受講した動物臨床医学研究所の卒後教育セミナーでこの病気の解説がありました。

診断はきちんとつきましたので、後は上手く管理出来るかどうか?です。今のところ順調なので、何とかなると予想しております。

免疫の病気に負けずに、幸せに長生きして欲しいと切に願いつつ治療を遂行しております。

 

 

 

 

 

マンソン裂頭条虫

今日の午後診で3種混合ワクチンを接種に来られた猫ちゃんの話しですが。

私は、犬でも猫でも年に一度のワクチン追加接種の際には、なるべく検便と胸部聴診を欠かさないように心掛けています。

歳を経て心雑音が聴こえるようになって、心臓病の存在が明らかになる犬猫も居れば。消化管内寄生虫の感染が明らかになって、重症になる前に駆虫することにより事なきを得る事例も多いです。

この子の場合は、直接塗抹検便によりマンソン裂頭条虫という寄生虫の卵が発見されました。

検便は直接塗抹という方法と、浮遊法という方法と二通りの方法を同時に行なうことにより、検出可能な寄生虫卵のバリエーションが多くなります。

マンソン列頭条虫の卵は浮遊法では検出されることは普通はありません。この卵を見つけることが出来る方法は、直接塗抹法か、あるいは遠心集虫法と呼ばれるかなり手の込んだ検便のやり方になります。

それで、マンソン裂頭条虫とはどんな寄生虫かというと。自然豊かな土地に住んでいる、世間で「真田虫(サナダムシ)」と呼んでいる寄生虫です。真田という名前の由来は、和服の着付けに使用する真田紐という小道具に姿が似ているためと記憶しております。

マンソン裂頭条虫がどんなやり方で動物に寄生して行くのか?と言えば。まず、動物の腸管に棲んでいる親虫が卵を産んで。その卵が川や池の水の中に流れて行ったら。
そこでミジンコなどのプランクトンに食べられて。
そのプランクトンを魚やオタマジャクシたちが食べて。
その魚や、オタマジャクシが成長したカエルを犬や猫や人間が生で食べると、犬や猫や人間の腸管に親虫が寄生することになるわけです。

特筆すべきは、親虫が産んだ卵を、犬や猫や人間が直接口にしても、その卵はお腹の中で成長することはないということで。必ずプランクトンや魚やオタマジャクシなどの小動物の身体を経由しないと成長出来ないということなのであります。

因みに今日検便でマンソン裂頭条虫が発見されたにゃんこは、普段かなりワイルドな生活を送っていて。カエルやスズメやヘビや何やかやを狩りするのが日課だということでした。

このまま寄生を放置していると、お腹が具合悪くなったり、最悪虫が分泌する毒素にやられて神経症状が出たりすると言いますから、一応駆虫はしようという話しをさせていただいて。

この子の場合注射で駆虫しました。

しかし、猫にとって狩りをするというライフスタイルはなかなか改めることは困難だと思いますので。今後は定期的に検便を駆虫を繰り返す必要があると思います。

でもにゃんこちゃん。楽しい毎日を送っているのですね。ある意味素晴らしいことと思います。