兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 歯科&口腔外科
院長ブログ

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晩期遺残乳犬歯を残しているとこうなりました

そこそこ高齢のヨークシャーテリアの男の子の話しですが。

晩期遺残乳歯が残っていました。晩期遺残乳歯は、通常避妊や去勢手術の時に一緒に抜いてしまうのですが。この子は去勢手術をしなかったので、そのまま見過ごされてしまったみたいです。

歯石が増えて来たのが気になったとのことで、デンタルスケーリングを希望されたので、手術前の検査を、血液検査は全血球計数、血液性化学検査、血液凝固系検査を実施して。それ以外は胸部エックス線検査と心電図検査を行ってから。

麻酔をかけて口を開いて見ます。

歯石はそこそこ付着していますが。歯肉の後退は全体的には軽微です。

ただ、犬歯周りは特に歯石が多く付着していて、歯肉の後退が著しいのが見て取れます。

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犬歯の辺りを拡大してみますと。下の画像になります。

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晩期遺残乳犬歯が残っているために、永久犬歯との間に歯石が付着しやすくなっていて、この付近の歯周病が特に進行しているのが判ると思います。

ひと通り処置を済ませて、遺残乳歯も抜歯しました。

処置後の全体像です。

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犬歯周辺の拡大像です。乳犬歯は抜いてあります。

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今後は毎日歯磨きをすることで、この子の口の中は清潔に管理出来ると思います。

それにしても、晩期遺残乳歯はあなどることなく早期に抜いておく必要があることを再認識しました。

ではまた。

犬猫の歯周病治療 劇的ビフォー&アフター (画像は順次追加してます)

特にリフォームの記事ではありませんが。
最近高齢犬猫で大きな問題になっているのが、口の中の衛生です。

いろいろ能書きを書くのも大切ですが。 一目瞭然のビフォー&アフター画像を掲載してみるのも判り易くて良いかも知れません。

では。 ご覧下さい。

ビフォー

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猫の重度の口内炎で歯周病を伴っています。 猫白血病ウィルスに感染していて、免疫力が低下しているところに、歯周病が発生し、口内炎でひどいことになっています。 ステロイドの投与で痛みはある程度コントロールされていましたが。 ものすごい口臭で飼い主様が悲鳴を上げてました。

アフター

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犬歯以外のすべての切歯(前歯)と臼歯を抜歯しました。 下顎の抜歯痕は合成吸収糸で縫合しました。
術後は抗生物質、ステロイドの内服。 猫インターフェロンの希釈液の口腔内散布で管理します。
抜歯の翌日から口臭は消失して、食欲もあり。 生活の質は飛躍的に向上しています。

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抜いた歯はこんな状態です。 臼歯は根っこが2本とか3本ありますので。 歯冠を切断して、ひとつの根っこ毎に抜かないと折れたりして残根が出来る怖れがあります。

ビフォー

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左右共上顎の1番目から3番目までの臼歯は抜けてしまっています。 上も下も臼歯は歯石で覆われてしまっています。

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左目の下の皮膚に穴が開いて、膿が出ているのは、裂肉歯膿瘍とも言いまして。 その側の裂肉歯(上顎第4前臼歯)の歯根が化膿しているために、出口を失った膿がその部位の皮膚から出ているという状態です。 これは原因となっている歯を抜いてしまわなければ治りません。

アフター

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両側共動揺がひどかったり、膿瘍の原因になっているような歯を抜歯して。残った歯については徹底的に歯肉縁下の汚れまで丁寧に除去しました。

ビフォー

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とにかく酷い歯周病です。 犬歯も臼歯も歯石の付着が半端ではありません。 この子も左側が裂肉歯膿瘍になってましたが。 手術までの投薬により一時的に、膿の分泌は止まってました。

アフター

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裂肉歯膿瘍の原因となっていた左上顎第4前臼歯を抜いて。 他の歯は、意外に健全でしたので、徹底的に歯肉縁下の歯石を除去しました。

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ビフォー

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この子も裂肉歯膿瘍で受診して来たものです。 目の下に器具で穴を示してますが。 そこから膿が出て止まりませんでした。 手術前の投薬でも止まらなかったので。 手術の際に細菌培養と薬剤感受性試験を実施しました。

アフター

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右上顎の歯はかなり抜きました。 歯の傷み方に左右で差がありました。 咬み方に左右差があったのでしょうか?

ビフォー

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アフター

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比較的軽度の歯周病の子でした。 まだこれくらいで受診されれば歯を失わずに済む可能性大です。 処置の後の日々のブラッシングなどのデンタルケアで管理が容易な症例です。

ビフォー

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アフター

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だんだん言うことが無くなって来ました。 結果が総てです。

ビフォー

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アフター

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この子は上下顎の前歯とか、下顎の臼歯を沢山抜いたので、抜歯痕を合成吸収糸で縫合しなければなりませんでした。

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抜いた歯の状態はひどいものです。

ビフォー

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アフター

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抜歯した歯は、歯根の根っこの方まで黒くなって、随分傷んでいます。

ビフォー

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この子は、口の中はまあまあましな方ですが。左眼の下がぷっくりと膨れて来まして。 細い針で細胞を採取して検査してみると、 化膿性病変であると判明したものです。 この部分に化膿性病変が出来た時には、 その多くが上顎第4前臼歯の歯根先端が化膿しておりますので。 根本治療としては当該歯の抜歯が必要になります。

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アフター

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膿瘍の原因になっていた歯です。 根っ子が3本ある三根歯なので、 それぞれの根毎にストレス無く抜けるように3分割してあります。

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上顎左側の第4前臼歯は抜歯しました。 術後の抗生物質の投薬で目の下の膨らみは治って行くことと予想されます。

ビフォー

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アフター

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まあ、ひどいものです。 特に左右上顎犬歯は、 根っ子の部分に超音波スケーラーを当てると、 鼻の穴からスケーラーからの冷却水が吹き出て来るような状態でした。 すなわち歯の根っ子の炎症が鼻の穴に貫通してしまっているわけです。
アフターの写真で見て取れるように、 犬歯の抜歯痕は合成吸収糸で縫合しています。
以上、歯周病処置のビフォー&アフターということで、画像紹介の形で書いてみました。

しかし、心すべきは、歯周病処置が治療のゴールではないということです。 せっかく処置をしても、放っておいてはまた同じように傷んで来ますから。 処置後にはブラッシングを基本とした日々のデンタルケアを主従で頑張ってもらわないといけません。

そして、何よりも大切なことは、ここまでなる前に早めに処置をする。 また、歯石が少しでも付着する前に、予防的に日々のブラッシングを怠りなく、愛犬愛猫の歯を綺麗に保つということだと思います。

見るだけで気分の悪くなる画像が続きましたが。 御高覧有り難うございました。

ではまた。

 

 

猫の歯周病処置

今日は、午後に11才避妊済み雌猫の歯周病処置をやりました。

歯周病は。人間でもそうですが。犬猫でも、歯周病の病巣から細菌が血流に乗って全身に循環して行くという怖ろしい状態になるわけで。
その結果、細菌性心内膜炎、腎盂腎炎、肝膿瘍、椎間板脊椎炎、関節炎、などなどのいろいろな部位の感染性の病気の原因となる可能性があります。

この子は、飼い主様の健康に対する意識が強く、かねてより愛猫ちゃんの歯周病について気にされていました。
先日、術前検査の代わりに当院のシニア健康診断サービスを受けて。

本日麻酔下で歯周病の処置を行なったわけです。

上顎第4前臼歯を中心に歯石が付着しています。これくらい付着するともうブラシでこすったくらいでは落ちてくれません。
上顎の犬歯は口唇の陰で判り難いでしょうが。下顎の犬歯は歯肉の後退が生じつつあります。

超音波スケーラーで歯石を落として。歯肉縁下の汚れをキュレットで除去した後。電動モーターに付けたラバーカップとポリッシングペーストで歯の表面を磨きます。画像でお判りになるかと思いますが。ラバーカップの縁を歯周ポケットに差し込むように操作して、歯肉縁下の歯の表面もなるべく滑らかになるようにします。

一応左側は完了しました。上顎犬歯の立て溝に入り込んだ黒い筋は、かなり薄くにはなりましたが。どうしても完全に除去することは困難です。ただ、これは歯の健全性をそんなに損なうものではないと考えています。

左が済めば、右側も同じようにやってから覚醒させます。

麻酔を行なうに当たっては、当然に術前のいろいろな検査をやるわけですが。シニア健康チェックサービスを活用することにより、効率良く済ませることが出来たと思います。

また、術中のモニター装着、静脈輸液、気管挿管など決して手抜きをすることなく安全第一を心掛けて丁寧に仕事をやっております。

この処置が済めば。後は自宅でのブラッシングなどの日常的なデンタルケアを頑張ってやれば、歯周病の進行は喰い止める、あるいは遅らせることが可能だと思います。

最近は、口腔内の善玉菌を増やすことにより歯周病の進行を抑えるという考え方のサプリメントも製品化されております。そういう物を補助的に使用することも良いかと考えます。

ではまた。

 

 

 

03/19 猫の重度歯周病の治療としての全顎抜歯

Pちゃんは最近保護された女の子の猫ちゃんです。

保護された当初、ひどく下痢が続いていて、食欲はそれなりにあるものの食べても太らないという感じで、痩せて毛並みも粗く、猫ハジラミなんかも寄生してたりと、とにかくコンディションの悪い事でしたが。

当院に健康診断のために来院されて、血液検査とかしてみたところ。
猫免疫不全ウィルス(エイズウィルス)や猫白血病ウィルス、猫コロナウィルスなどの免疫不全を生じるウィルスのキャリヤーでもありませんし。
腎機能、肝機能、電解質の異常なども特に認められません。

なお、歯周病はかなりのものです。年齢は不詳ですが。一応10才という事にしておきました。

初診時の対応としては、猫ハジラミの駆除薬としてフロントラインを頸部皮膚に滴下し。翌日か翌々日を目途に滴下剤としての消化管内寄生虫駆除剤と抗菌剤を処方しました。

翌日に持参された便を浮遊集虫法と直接塗抹法の二つの方法で検便しましたが、寄生虫の虫卵は見つかりませんでした。ただ、その4日後に回虫が1匹だけ排出されました。

虫卵が見つからないのに虫が排出された場合、虫の種類によっては1匹だけ寄生、あるいは雄だけ?雌だけの寄生によって虫が卵を産卵出来なかった可能性があります。

検便で虫卵が発見出来なかったので、一般的な下痢止めの処方をしたところ、それからはどんどん状態が良くなって、下痢は止まり、栄養も吸収されるようになったのか?体重も増加して行きました。

飼い主様は歯周病の処置を望まれましたので、初診から1週間後に麻酔下で歯周病の処置を行なうこととしました。

麻酔をかけて口の中を精査してみると、歯が残せるような状態ではありません。

画像の矢印のところの歯なんか典型的な状態ですが。歯肉が後退して歯根が大きく露出して、多くの歯に動揺が見られます。

全顎抜歯の適用と致しました。

ボロボロになった歯周病では、全顎抜歯は意外に簡単に済んでしまいます。

ただ、歯を抜いた跡は歯槽骨を指でなぞってみて、尖った部分があるようならば、ラウンドバーという丸いドリルの先を用いて滑らかになるように削ってやって、歯肉を寄せてモノフィラメントの合成吸収糸で縫合してやらなければなりません。

画像は歯を全部除去した状態ですが、下顎に縫合糸の結び目が見えることと思います。

抜いた歯は以下のようなじょうたいでした。

手術の翌日に経過観察で来院された時には、上顎の歯周病なんかは炎症がかなり治まって来ているのが診て取れました。

これからのことですが。術後1週間くらいでワクチン接種を始めることと、もう少しして初夏になる頃からフィラリア予防を始めれば良いでしょう。

Pちゃん、これからは優しい飼い主様の許で幸せに生きて行けることと思います。

今までが相当不幸だったみたいですから。その分幸せになると確信しております。

 

02/09 高齢Mダックスフントの歯肉の腫瘤生検と歯周病処置

年齢15才という高齢のミニチュアダックスフントの男の子ですが。

この数年前から顔を見る度に歯周病処置が必要ですよとお伝えして来ました。

先日来院された時には、今年に入ってから右下顎の口の中に腫瘤が出来ていて、大きくなりつつあるので心配であるということでした。

口の中を見ると、右下顎の歯肉に黒いやや柔らかい感触の腫瘤が出来ています。嫌な感じです。悪性黒色腫(メラノーマ)辺りが怪しいです。

絶対ではないけれども、あまり良い物ではなさそうだとお伝えしたところ。切除生検と病理検査、それに懸案だった歯周病処置を希望されました。

術前検査として、胸部エックス線検査、コンピュータ解析装置付き心電図検査、採血して全血球計数、院内の血液生化学検査、外注による凝固系検査を行ないました。

歯周病や悪性腫腫瘍などによる慢性炎症に起因するであろう血小板数の軽度の増加と、犬C反応性蛋白の上昇が観察されました。

処置の当日。朝から預かって昼まで静脈輸液を実施して。午後1時過ぎた頃から麻酔導入を行ないます。

麻酔導入後、生検切除を実施する前の腫瘤の様子です。

赤い矢印の先の辺りが問題の腫瘤です。

 

右下顎の歯石を綺麗に掃除して、腫瘤を切除し、これから右上顎の歯石を除去にかかろうかという段階での画像です。歯石が除去された下顎の歯の綺麗さと、未処置の上顎の歯の悲惨な状態のコントラストが強烈です。

右が終了して、左側の上下の歯の歯石も綺麗に清掃した後の画像です。

歯石の付き方が半端ではなく。特に左右上顎犬歯から第1、第2前臼歯までの歯周ポケットがひどく深くなっていて、清掃して行くと食物塊や被毛などがボロボロと出て来るような有り様でした。
本犬すごく気持ちが悪かったのではなかったか?と思慮されます。

生検も歯周病処置も無事に終了して、麻酔からの覚醒も速やかで、元気に退院して行きました。

腫瘤の病理組織検査は10日から2週間で結果が帰って来ることと思います。良性であって欲しいのですが、腫瘤の根っ子に相当する部分が周囲の一見健常に見える部分に沁みて行く有り様が見て取れますので、悪性度の高い腫瘍ではないか?と予想しています。

検査結果が出たら、獣医として出来ることを提案させていただくわけですが。飼い主様はこれ以上痛い思い苦しい思いをさせたくないという気持ちが強いようですので、経過観察になってしまうかも知れません。