兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 腫瘍科(外科内科含む)
院長ブログ

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猫の腸閉塞の病理検査結果

11月に腸閉塞の手術をして、腸管に出来ていた腫瘤を摘出した猫ちゃんの件ですが。

取り出した腫瘤を病理検査に外注していたのが、結果が帰って来ました。

「盲腸腺癌」という良くない結果でした。

既にリンパ節転移も生じていて、転移巣が大きくなって来るのがどれくらい先なのか?は正直読めておりません。

縫合糸反応性肉芽腫ではなかったです。

化学療法、一般的に言う抗がん剤療法も考えないではないですが。今までのいろいろの治療で両手の静脈が状態が悪いのと、基本的に野良猫ちゃんで抜糸まで入院で治療しましたけれども、なかなかに治療に抵抗しますし。

これからは経過を見て行って、出たとこ勝負で対応するということになりました。

今回の手術自体は上手く行ってくれて、今日退院した現在は食欲元気さ完全に回復しております。

最後の病理の結果が辛いところですが。少しでも長く良い状態が続いてくれますよう祈っております。

 

 

エアデールテリアの皮膚扁平上皮癌

もうすぐ11才になるエアデールテリアの男の子の話しですが。

5月21日に、6ヶ月くらい前から左胸の皮膚の腫瘤が自壊してずっと気になるのか?舐めたり咬んだりしているということで相談されました。

針吸引&細胞診をすることと、自壊部分から出る膿の細菌培養と薬剤感受性試験を実施して、抗菌剤を投与しました。

細胞診の結果では、良性の皮膚腫瘍であろうということでした。

しかし、薬剤感受性試験に基づいて利く薬を投与しているのにも関わらず感染のコントロールが出来ません。膿はずっと出続けています。

どうもおかしいな?と感じておりましたが。飼い主様は膿が出続けて生活の質がかなり損なわれていることが可哀相に感じられたようで。
摘出を希望されました。

この子は以前に肝機能障害を患ったことがありましたので。術前検査として全血球計数、血液生化学検査ひと通り、胸部エックス線検査、心電図検査を実施します。

やはり、予想通りGPTが405U/L GOTが50U/L ALPが1272U/L と肝障害が存在しておりました。

一応、幹細胞保護のお薬を2週間内服させてもう一度血液検査を行なうと。
GPTが166U/L GOTが31U/L ALPが882U/L とかなり改善しました。

2回目の血液検査から6日後に手術を実施しました。

高齢の子とか、体力的に不安のある子については、手術当日朝一番にお預かりして、午前中は静脈カテーテルから輸液を行なうことにより体調を整えるのですが。

エアデール君、暴れて静脈輸液を行なうことは適いませんでした。

午後1時頃より麻酔導入して、術野の毛刈り消毒、術者助手の手洗い等基本通りの手抜き無しの手順で進めて行きます。

腫瘤周辺の毛を刈ったところ。

術野の消毒が済んで覆い布をタオル鉗子で止めたところ。

腫瘤を切除したところ。判り難いとは思いますが、垂直方向のマージンとして、皮筋という筋肉を一枚切除しています。治療に対する反応が怪しいので、一応用心して。悪性腫瘍だったとしても後で慌てないように最大限の用心をしております。

切除された腫瘤。これからホルマリンに漬けて、病理検査に出します。

 傷を縫合し終わったところです。この部分に出来た腫瘤は、比較的手術が容易です。

抜糸は術後13日で実施しました。この時に血液検査を行ないましたが。GPTは前回少し下がったのとそう変わらない数値でした。肝細胞保護剤は継続することにしました。

病理検査の結果ですが。扁平上皮癌という悪性度の強い物でした。用心のために大きくマージンを取って正解でした。
扁平上皮癌は転移する率は低いということですが。今後局所再発については注意して行きたいと思います。

 

 

 

今日も乳腺腫瘍でした

今日の手術の子は、高齢のアメリカンコッカースパニエルの女の子です。

この春先に、左耳に大きな腫瘍が出来てそれが自壊して大変な状態だったのを、大阪のネオベッツVRセンターに紹介させていただいて、そちらで左全耳道切除術を実施して何とか回復したところでした。

今回は左の乳腺に何ケ所も腫瘤が出来ていて、それを何とかして欲しいというお話しでした。

右の乳腺は全然何ともありません。乳腺という組織は左右の連絡がありません。もしあう性腫瘍が発生した場合には片側前後4個から5個ある乳腺の間で血液やリンパ管の流れで腫瘍細胞が移動して行く可能性があります。

乳腺腫瘍については、他の部位の腫瘤のような細胞診による悪性良性の判定はあてにならないので、基本的には外科手術による切除と病理検査が必要です。

今月の片側乳腺全摘出と卵巣子宮全摘出の症例数はこの子を含めて3頭です。

午前中から預かって、静脈カテーテルを留置し、そこから静脈輸液を実施して手術前の体調を整えます。

午後1時から麻酔導入を開始し、手術を始めました。

画像は手術前の毛刈りが済んだところです。向かって右側、犬の左側の乳腺には乳首が過剰に7個あります。腫瘤は乳腺の中程に数個見えると思います。

発情が先月にあって、その後ずっと下り物が続いているというお話しでしたので、子宮卵巣の異常を予想していたのですが。子宮の状態は思ったよりも正常に近かったです。下り物は赤色でサラサラとしか感じでしたので、発情が長引いていたのかも知れません。

お腹を開けると、腹腔内脂肪の中から妙に大きな腫瘤が出て来ました。一応採取して病理に出しておきました。

手術は意外に時間がかかって、午後4時頃に終わりました。

長い長い傷です。縫合は外科用クリップも併用しましたが、かなり時間がかかりました。

本当に何回も書きますが、繁殖予定の無い犬は男の子も女の子も去勢手術避妊手術を思春期前に実施することによりこのような生殖器関連の病気に罹患しなくなります。繁殖をさせるのであればそれはそれで素晴らしいことと思いますので、頑張って欲しいのですが。

繁殖予定の無いワンちゃんの飼い主様についてはご愛犬の生涯全体の得失をよく考慮されて、避妊手術去勢手術も検討していただいきたいと思う次第です。

さて、そして、この度取った腫瘍が良性で、この子が幸せに長生き出来ますように。

 

 

 

育て過ぎ

何を育て過ぎたって?

乳腺腫瘍です。先日初診で来院されたミニチュアダックスフントの未避妊の9才5ヶ月令の女の子ですが。3ヶ月前に乳腺腫瘍が気になって、その後どんどん大きくなって来て。

来院時には、有り得ないくらい大きく育ってしまってました。

外科的対応を希望されたので、すぐに院内の血液検査(全血球計数、血液生化学検査ひと通り)と外注の血液凝固系検査、胸部腹部のエックス線検査、コンピュータ解析装置付き心電図検査としっかり術前検査を実施して、来院2日後に乳腺腫瘍の摘出と卵巣子宮全摘出の手術を行ないました。

麻酔導入後仰向けに保定して、毛刈り消毒の前の状態です。

準備が整って、切皮直前の態勢。

術中の過程は省略して、手術終了直後の状態です。

しかし、疲れました。何とか取り切ったとは思いますが。3ヶ月で急速に大きくなっているという事はまず悪性の乳腺癌の可能性が高いです。

乳腺癌は転移や再発の起きやすい厄介な悪性腫瘍で、切除時点のサイズが大きければ大きいほど転移している可能性が高いですし。今回でも切除に結構な労力を要したのですが。
まだ腫瘍が小さい頃に手術させてもらえれば、転移の可能性も少なく。手術も比較的容易です。

繁殖予定の無い犬の女の子の場合、最初の発情が始まる前に卵巣子宮全摘出を実施すれば、その子の乳腺腫瘍の発生率は、何にもしなかった子に比べると200分の1であるという統計的データが発表されていて既に定説になっているとのことです。

自然のままの犬を飼育するのも一つの楽しみかも知れませんので、避妊去勢を絶対的に強制するつもりは毛頭ありませんが。

避妊手術、去勢手術を受けた犬たちは受けなかった犬たちに比べて病気になる確率が低くなり、長生きするという情報をお伝えして、避妊手術去勢手術を選んでいただく努力は惜しまないようにしているつもりです。

本日手術2日後に来院して、術後の経過を診させていただきましたが、経過としてはまあまあ順調な方だと思います。

鬱陶しい巨大腫瘍が切除出来て良かったと思います。でも、次回があるとするならば、次はここまで育てないように早目に受診していただきたいと切に願う次第であります。

ではまた。

 

 

11/12 モモちゃん、中皮腫ではなかったようです

最初の臨床的問題点が腹水からスタートしたフレンチブルのモモちゃんですが。

大阪のネオベッツVRセンターにていろいろ精密検査を実施しても診断がつかず。

一時は抗生物質と利尿剤を使用したところ、劇的に改善して。

でも、投薬を中止してしばらくしたらまた再発して。同じ内容の投薬では利かなくなってしまって。

腹水の細胞診をこちらで再検査に出したところ、臨床的には中皮腫を疑うべきとの、良くない結果が帰って来たので、どうなるのか?ヒヤヒヤしながらの診療ではありましたが。

抗生物質を変更するとまたまた劇的に改善して。

ある日、腹部エコー検査を行なってみたら、最初に実施したエコー検査では見えなかった、管状の異常な構造が見えたので。

試験開腹したら子宮蓄膿症と判明して。

手術から10日経過したので、抜糸を行ないました。傷の経過は非常によろしいです。

飼い主様の曰くは、元気食欲とも快調になったということであります。

手術の際に腹膜を一部分切り取って、病理検査に出していた結果が帰って来てましたが。炎症性の変化であって、悪性腫瘍ではないということでした。

やれやれであります。

しかし、子宮蓄膿症にもいろいろなパターンがあるのですね。最初に子宮が膨れて来ないで、いきなり腹水という症例は今回が初めてでした。

でも。結果オーライで本当に良かったと思います。

モモちゃんも飼い主様もご苦労様でした。これから元気で長生き出来ますように。

 

08/20 エアデールテリア足先の悪性黒色腫手術完了

7月13日に初診で針吸引と細胞診を実施して、診断がつかず。
7月19日に、生検切除で病理検査をやって、やっと悪性黒色腫と診断がついて。

7月30日に腫瘍切除の手術を行なった後、この子の皮膚の常在菌の問題なのか?薬剤耐性菌が感染しまして。
しばらく細菌培養と抗生物質感受性テストを行った結果に基づいて、一生懸命治療を行ないまして。

本日晴れて抜糸完了しまして。

手術の際に切り取った腫瘤の病理検査も、マージン10ミリで完全切除とお墨付きを戴きました。

 何せ、中指と薬指に相当する指を2本セットで切除してしまったものですから、肢は一見チョキ状態であります。

それでも、肉球は温存されていて、普通に歩行可能ですから。執刀獣医としては我ながら上手に出来たと自画自賛しているところであります。

悪性黒色腫は、しかし、悪性度が高くて転移や再発が生じやすい腫瘍です。
完全切除はされてはいますが、今後の経過を注意深く診て行きたいと思います。

07/30 エアデールテリア趾間腫瘤の摘出

7月13日と19日の2日にわたって過去の院長ブログに掲載しておりました、エアデールテリアのエルちゃんの左前肢第3-4趾間の腫瘤は、結局切除生検までやって、「悪性黒色腫疑い」という診断が付きました。

「疑い」ということは、細胞とその配列が典型的な悪性黒色腫の形態をしていないということなのでしょうね。

しかし、そこまでの診断が付いたわけですから。切除するということになりました。

切除手術は本日午後に実施致しました。

切除生検の際に大きく取りましたので、何か腫瘤が無くなったように錯覚しそうですが、皮膚が黒っぽく見えている部分はメラノーマが浸潤しているのではないか?と疑っています。

午後1時から型通りに麻酔導入をして、術野の毛刈りと消毒、術者助手の手洗い消毒術衣手袋の装着を行ない。切皮開始は50分くらいでしたか?

手術時間は切皮から縫合終了まで約1時間でした。

出来上がりの画像はこんな感じです。

足の裏の大きな肉球と人間で言う人差し指、小指を残したのは、なるべく自然に歩行出来るようにと考えたからなのですが。
もしかして、その結果として健康な部位を付けて完全切除をする、いわゆるマージンが不足して、腫瘍細胞が残ってしまう可能性もあります。

そこで、摘出した組織はもう一度病理検査に出して、完全切除が達成出来ているのかどうか?を組織学的に見てもらうことにしました。

ボトルの中に見えているのは、摘出した中指と薬指に相当する趾です。

エルちゃんは、術後はケージで休んでおります。今日の午後6時には退院出来ると思います。

完全切除が出来ていて、再発や転移が生じませんように。