兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 手術風景(犬の片側乳腺摘出と卵巣子宮全摘出)
診療方針

手術風景(犬の片側乳腺摘出と卵巣子宮全摘出)

6才以上の未避妊中高齢犬の場合、乳腺に腫瘤が出来る確率が高くなります。 乳腺に出来た腫瘤は、犬の場合約半数が悪性、半数が良性で、悪性のうち更に半数が転移を起こしやすい悪性度の高いものになります。
治療はまず手術で乳腺を摘出するのですが。 片側の乳腺全部とか、リンパの流れを考慮して前半分とか後ろ半分とかの大規模な切除になります。
また、乳腺に出来た腫瘤の場合、性ホルモンの刺激が細胞分裂を促進して腫瘤が早く大きくなりますので、卵巣子宮全摘出を同時に行なうことが必要になります。

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手術前には血液検査で全血球計数、生化学ひと通り、血液凝固系のデータを取り、胸部エックス線検査で転移の有無。心臓や肺の状態を確認し、コンピュータ解析装置付き心電図検査も取って、麻酔の安全性を確認しておきます。
写真は、麻酔導入が済んで、毛刈りとか術野の消毒を始めるところです。

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一応手術準備が大方終わって、助手の手洗い術衣手袋装着が終わるのを待って手術がスタートします。

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いきなりですが、乳腺の後ろの部分の切皮をやったところです。ここからは乳腺を腹筋からはがして行きます。止血作業はなるべく丁寧に実施して、出血のコントロールは完璧を期します。

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乳腺の後ろ半分の分離が終わって、最後、切り離すところです。

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乳腺を外した後、腹腔にアプローチして、卵巣と子宮を摘出しているところです。基本的には超音波メスを使用した作業になりますが。子宮頸管の部分だけは、経験的に血管を丁寧に結紮した方がトラブルが少ないです。

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卵巣と子宮を摘出した後、腹筋と腹膜を縫合して。その後乳腺の前半分を切除したところです。この症例は、乳腺の前の方にも小さな腫瘤が沢山ありましたし、乳腺に付属したリンパ節も一部大きくなってましたので、病理の結果が心配です。

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画像は皮膚の縫合に移っていますが。 実はここに至るまで皮下織を合成吸収糸で寄せて縫合する作業を延々と実行してました。皮下織の縫合は、デッドスペースが生じないようにしないと、術後のトラブルが頻発しますので、非常に大切な作業です。

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創の縫合が終了しました。 術創には水蒸気は通しても、細菌と水は通さない特殊な医療用プラスチックフィルムを貼り付けてあります。 こういうところに材料費をケチらないことが大切です。
この後、ストッキネットという筒状のメリヤスでシャツを造って着せてやり、回復する間の術創の保護を図ります。
通常は当日退院です。 術後の経過のチェックは、翌日と5日後とか6日後に行ない。 傷の治りが悪かったら分泌物の細菌培養と薬剤感受性試験と行なったりしながら、こまめに管理して、抜糸は術後10日から2週間で行なっています。

当然のことですが、摘出した乳腺は病理検査に出します。 病理の結果によっては、 抗がん剤療法を実施することもあります。

この手術に関しては以上です。 長文にお付き合い有り難うございました。