兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 毛包虫症(ニキビダニ症、もしくはアラカスともいいます。横着がらずにこまめに掻き取り検査をすべきです)
診療方針

毛包虫症(ニキビダニ症、もしくはアラカスともいいます。横着がらずにこまめに掻き取り検査をすべきです)

毛包虫症(ニキビダニ症、もしくはアカラスともいいます。横着がらずにこまめに掻き取り検査をすべきです)

犬の外部寄生虫の1種であるデモデックス・カニス(毛包虫)というダニの一種が、皮膚の毛穴で増殖して皮膚炎を起こす病気ですが、最初は痒みの比較的少ない脱毛という形で始まることが多いです。
しかし、それを放置していると、細菌の二次感染とかが生じて酷い状態になる場合があります。

毛包虫は、もともとほとんどの犬が普通に持っている寄生虫だと言われていますが、それが皮膚病を引き起こすということは、その犬の免疫系に弱さが存在するということです。

毛包虫症には、その犬の免疫不全の程度によって、局所性のものと全身性のものがあり、局所性毛包虫症は比較的対処しやすいのですが、全身性毛包虫症は、重度の免疫不全が素因になっていることが多く、治療困難な場合があります。
特に中年以降に毛包虫症を発症した犬の場合、皮膚炎の治療にばかり気を取られていないで、基礎疾患として存在するかもしれない副腎皮質機能亢進症のような免疫を抑制する病気の存在を追及することが大切です。
全身性毛包虫症が行き着くところまで悪化すると、全身がボロボロに化膿し、吐き気を催すような恐ろしい悪臭が漂うようになって、食欲不振、リンパ節の腫大、削痩などの状態になって行って、最後は死亡したり、安楽死を余儀なくされたりすることになるのです。

局所性毛包虫症は、比較的若い犬に発症することが多く、私の最近の症例は、1才のブルテリアで、顔面を含む全身に数箇所スポット的に痒みの少ない脱毛が生じたものです。

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これを診断するには、鋭匙というエッジのついたスプーンとかメスの刃で皮膚を少し深く掻き取って、取れた組織を薬液で溶かし、顕微鏡で観察します。
毛包虫症の場合には、次の画像のような細長いダニが見つかります。

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さて、毛包虫症の治療ですが、いろいろなやり方があります。
最近は、第1選択としてはイベルメクチンというお薬を、毎日内服する方法が取られているようですが、この薬、犬によっては結構きつい副作用が出ることがあります。

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特にコリー、シェトランドシープドッグ、ボーダーコリー、オーストラリアンシェパードのような犬種では、血液脳関門の構造が普通の犬と少し違っていることがあって、副作用としての神経症状が出やすいとされています。

最近では、イベルメクチンで副作用が出やすいかどうかを血液検査で前もって調べることが可能になっています。

血液を採取して、それを検査センターに送れば、MDR-1遺伝子という遺伝子の欠損があるかどうかを調べて2日か3日で返答が帰って来ますから、そ れを待って投薬を開始するのです。 私が現在このブルテリアに試みている治療法は、ドラメクチンというお薬を週に1回皮下注射するという方法です。
このドラメクチンというお薬も、イベルメクチンと同じようにMDR-1遺伝子の検査を済ませてから投与した方が安心です。

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MDR-1遺伝子欠損が存在するような犬の場合、薬浴で治療します。
ダニを抑制する作用のあるシャンプーを使って毛穴を洗い、ダニを殺す乳剤をリンスのように使用して、 乳剤は洗い流さずに風乾するのです。 シャンプー療法は、最初は週に1回のペースで繰り返し、 3回か4回続けるとかなり症状が改善しますから、それからは2週間に1回のペースで続けます。 毛包虫症の治療で大切なことは、どのような治療法でも、犬の皮膚からダニを完全に駆逐することは不可能だということです。
ダニの数が減って臨床症状が消失したら、さらに1ヶ月以上治療を継続してから打ち切るのですが、 大方の犬は再発することはありません。 ただ、最初にも書いたように、免疫のひどく弱い犬の場合再発もありえます。
その時には、気長に対処して行かなければならないと思います。