兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 停留睾丸
診療方針

停留睾丸

停留睾丸(停留精巣) 腹腔内にあった睾丸が陰嚢に降りる時期は、普通4週令、遅い例では6ヶ月と言われていますが、生後1歳で睾丸が陰嚢に降りて来ていなければ、その子は停留睾丸(停留精巣)であると診断されます。

停留睾丸が両側であれば、精子が造られないから繁殖能力はありません。
片方でも降りていれば陰嚢に降りた精巣は精子を造ることが出来るので、交配すれば子供を造ることが出来ます。

停留睾丸は遺伝すると言われています。 しかし、その遺伝様式は正確には判っていないようです。
ある掛け合わせで停留睾丸が発生した場合でも、同じ掛け合わせの別の胎では1頭も発生しない場合も有るのです。

普通に陰嚢に降りた睾丸も犬が老齢になれば腫瘍化し易いものですが、停留睾丸は正常に降りた睾丸の10倍以上の確率で腫瘍化すると言われています(マルピーライフテックの病理組織検査報告書より引用)。 睾丸の腫瘍のあるものは転移し易く悪性です。

睾丸の腫瘍の種類としては、間細胞腫、セルトリ細胞腫、精上皮腫の3種類がありますが、このうち間細胞腫は通常は転移を起こさず割りと良性のものです。
セルトリ細胞腫のうち15%は悪性で転移の可能性があり、精上皮腫も5%から10%で転移が報告されています(犬と猫の腫瘍学、2005年発行 インターズーより)。

従って、普通、停留睾丸の牡は去勢手術を早めに実施して繁殖に使わないように勧めるのが我々獣医師の常識になっています。 停留睾丸の去勢術は、睾丸が腹腔内にある場合は開腹しなければならないので、通常の去勢術と違って牝犬の卵巣子宮全摘出並みの大きな手術になります。

画像は、両側停留精巣の雑種犬で、右側精巣が腫瘍化して大きくなったものです。

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そして、手術で摘出した精巣です。右側の精巣は非常に大きくなっていて、左側の精巣は萎縮しているのが判るでしょう。

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