和犬のサンド君は、7才になったばかりの男の子なのですが。この犬種に有り勝ちな性格、即ち異常に臆病でなおかつ攻撃性が強いために、先日から患った外耳炎の治療をなかなか許してくれません。
飼い主様でも、嫌なところを触ろうとすると、咬み付いて来ますので、危なくて処置のしようがありません。
仕方が無いので、飼い主様と相談の上、深い鎮静をかけて、耳の中から細菌培養の材料を取るのと、徹底的な耳掃除を敢行することに致しました。
本日午後に、胃の中を空にした状態で来院してもらいます。
何せ、飼い主様もきちんと保持出来ない子です。
当院で「仲良し君」と呼び習わしている保定棒で動きを止めておいて、鎮静剤を2種類組み合わせた注射を筋肉内に打たせてもらいました。
注射の後、10分もしないうちに横たわって、なすがままという状態になります。
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まず耳の中を覗いて見ます。
左耳は、出口付近にまで膿が出て来てました。矢印の先に膿が見えています。
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右耳には、膿こそありませんでしたが、パサパサとした黄粉が一旦固まってまたバラケたような耳垢が沢山付着していて、耳の皮膚はガサガサです。
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滅菌生理食塩液で湿らせた滅菌綿棒を膿のある左耳に挿入して、培養の材料を取ります。
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綿棒に付着した汚れは、培養の基材に塗り付けて、恒温室で培養すると共に、抗生物質感受性試験も同時に行ないます。
明日の夕方には感受性試験の結果が出ていると思います。
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次いで、耳掃除を徹底的に行ないます。
まず耳の中に専用の洗浄液をたっぷりと注いで、ティッシュを当てがって入念にマッサージします。
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更に、綿棒を使用して、外耳道の中の耳垢を丹念に除去します。
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耳の中が綺麗になったら、抗菌剤、抗真菌剤、ステロイドホルモンの合剤の軟膏を注入して、耳道をマッサージして、お薬を耳の中に塗り拡げてやります。
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片方が終わったら、もう片方も同じように耳掃除と点耳を実施して。
全部終了したら、鎮静剤の拮抗薬を筋肉注射して醒ましてやります。
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小型犬で寒い季節だったら、入院室で保温しながら醒ますのですが、10キロ台半ばの中型犬で、まだまだ外気温は暑いですから、待ち合い室で飼い主様に見てもらいます。
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拮抗剤を注射して10分も経つと、起き上って来ます。
十分に覚醒したのを確認してから帰宅していただきます。
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明日の午後診に、飼い主様だけ来院していただいて、培養と感受性試験の結果に基づいたお薬を処方することになると思います。
しかし、サンド君、今回はそれで切り抜けても、再発予防のための日々の耳のホームケアが出来ないと、また再発する可能性があります。
7才の今更ではありますが。飼い主様にはサンド君の身体を何処でも自由に扱えるようになって欲しいです。
でも、難しいし、無理かな?
私としては、与えられた条件の中で何とか疾病を治療して行くしかありません。
猛犬の外耳炎の治療のやり方を、今日は書いてみました。
ではまた。