兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2016 9月
院長ブログ

月別アーカイブ: 2016年9月

痒みをコントロールする新しい分子標的薬

今年の夏は、獣医皮膚科診療においては、非常に画期的な新薬が発売されました。

その薬は、オクラシチニブという成分名で、商品名はアポキルと言います。

欧米では数年前から日常診療に使用されていて、素晴らしい効果を上げているということでしたので。  勉強熱心な先生方は、既にその存在を認識していて、日本国内販売を渇望されていたようですが。

我が国でもやっと農林水産省の審査が通って販売されるようになったものです。

アポキルは、分子標的薬という特定の分子に作用してその働きを制限するお薬の一種で。  ターゲットになる分子は、皮膚の痒みを生じさせるサイトカインの信号伝達に関与するヤヌスキナーゼという物だそうです。
小難しい話しは省略して。  要するに痒み生じさせる生体の連鎖反応を途中でブロックするお薬だと考えれば良いと思います。

どんな薬もそうですが。このお薬にも、それなりに特徴があります。  それは。

1、基本的にアトピー性皮膚炎の痒みに対しては非常に有効である。  メーカーの推奨量を守って投薬する限りにおいては、ステロイドホルモンのような副作用はまず生じない。

2、食物アレルギーに対しては、アトピー性皮膚炎ほどには利かない。 通常量の倍を使用すれば何とか抑えることは出来るけれども。 倍量使用を継続すると他の免疫反応一般を低下させてしまうという問題を生じさせる可能性が出て来る。

3、痒みに対して有効な症例では、投与の当日から痒みの著しい低下が認められ。 素晴らしい即効性が確認された。

4、アポキルを使用する場合。  最初の2週間は維持料の2倍の量を投与する。  2週間経過して良好な反応が得られたら、導入量の半量の維持料に減薬するが。  その際に少し痒みが戻って来ることがある。  その場合には。 局所使用に特化したステロイドのスプレーを使用したりすることもあるが。  たいていの場合戻った痒みも我慢が出来る範囲のことが多く、2週間から3週間経過すると再び落ち着いて痒みを感じなくなることが多い。

5、総てのアレルギーの犬について、ステロイドホルモンよりも有効であるとは限らない。  当院でのほとんどの症例ではアポキルの導入により、ステロイドから離脱出来たのであるが。
たった1例だけ、投薬何回かに1回嘔吐して、痒みのコントロールも上手く行かないで。 飼い主様のご希望で少量のステロイドホルモン1日置きの投与で快適な生活に戻った症例もあります。

しかし、ごく少数の例外を除けば、適切な症例として判断して投与している多くの子らは、このアポキル錠のお陰で夜も痒くて眠れないこともなくなって、快適な生活を送ることが出来るようになっています。

apokill1

 

 

顕微鏡新調

検査機器もいろいろとありまして。  顕微鏡なんかも、本当にピンキリです。

性能の良い顕微鏡は、他の顕微鏡では見えないような物でも発見することが出来ます。

この度、長年の懸案であった、ちょっとこましなオリンパスの顕微鏡を購入しました。

ディスプレイも解像度の高いのを外付けで設置しましたので。 これからは飼い主様に画面に映る対象物を指さしながら丁寧に説明することが可能になると思います。

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しかし、検査台が機器で一杯で狭いです。