兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 内科(肝、膵、内分泌)
院長ブログ

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犬猫の膵炎(当院における診断と治療の最近について)

永らくブログ更新をサボってました。この2ヶ月か3ヶ月はホームページ管理会社の方にブログを書くのをお任せしてましたが。しっかりとした内容で、それは素晴らしいのですが。どうも自分が書く内容とは幾分異なる内容ですし。多分ですが、皆様がこのブログに期待されている内容とは少し乖離したテーマになってしまっているようにも思われますので、最近その継続をお断りしたような次第です。

それで、本日は私自身が最近の診療内容について少しだけ書いてみようと思います。

 

膵炎は、甚急性から慢性まで様々の程度で見られます。

そもそも膵炎ってどんな病気かと言うと。動物が食べた物を小腸の中で、炭水化物はアミラーゼ、脂肪はリパーゼ、タンパク質はパンクレアチンという消化酵素で腸粘膜から吸収出来るサイズまで分解するのに、それらの消化酵素を分泌しているのが膵臓です。

それで、タンパク質や脂肪を溶かしてしまう強力な酵素を作っているのに、何で膵臓自体が溶けてしまわないのか?というと、健康な膵臓の構造は、酵素から自分を守るバリアが存在しているのだという事です。

膵炎は、その膵臓を守るバリアが、高脂肪食や、人間であれば飲酒などの原因で機能しなくなる事によって、自分が分泌する酵素によって自分が溶けていくという如何にも恐ろしい病気でありまして。
症状としては、急性膵炎であれば、激しい腹痛、何か食べても水を飲んでも、ひどい時には飲み食いしなくても激しい嘔吐をしますし、下痢もします。食欲は廃絶することが多いです。
しかし、慢性膵炎の場合はその程度がかなり穏やかで、食欲不振、下痢、軽い腹痛と腹鳴(お腹がゴロゴロとかキュルキュルと鳴る)、少しひどいと軽度の嘔吐くらいで治まる事が多いです。

この膵炎の診断は、以前はすごく難しくて、膵炎を膵炎としてきちんと診断出来る検査項目が、米国のアイデックスラボラトリーズという検査センターから、犬で犬膵特異的リパーゼとしてサービス提供されたのが10数年前でしたか?
その後猫膵特異的リパーゼとして利用可能になったのが数年前?でした。

しかし、検査項目のサービス提供がなされるようになったとは言え、検査結果を数値で得ようと思うと東京の検査センターまで検体を送付しなければならず。結果が出るのに二日か3日かかるし。簡易な院内検査キットも販売されましたが、価格も高く販売単位多くて使用期限短くて、非常に使い難いものでした。

それが、最近になって。特許が切れたのかも知れませんが。アークレーという医療機器メーカーから、院内で迅速に犬の膵リパーゼと猫の膵リパーゼが測定出来る検査機器が販売されまして。

Vcheck

今まで比較的難しかった膵炎の診断が簡単迅速に受診して1時間以内に出来るようになりました。

現在は、嘔吐や下痢、食欲不振を症状として受診された犬猫については、飼い主様の同意を得られたらこの膵リパーゼを測定するようにしています。

膵リパーゼの積極的な測定により、従来は見落としていたであろう膵炎の症例が確実に診断出来るようになると。

今まで重度の胃腸炎として治療して来た症例や、慢性の胃腸炎として治療して来た症例。
他院で膵炎を見落として難治症例として苦戦していた症例なども確実に膵炎として治療出来るようになりまして。膵炎って意外に件数多いのだなあというのが最近の実感です。

それで、膵炎の治療ですが。私が開業した30年以上前には、膵炎は入院させて静脈輸液をしながら、抗生物質、消化管運動改善剤、嘔吐止め、鎮痛剤を静脈注射や皮下注射で投与して。症状が治まるまで絶食させるのが常識でした。

それが、20年くらい前?から動物が食べてくれるようになり次第給餌する方が治癒率が高いという、それまでと真逆の治療法が定説になりまして。

最近では、急性期の膵炎については特効薬と言えるような注射剤が使えるようになりまして。膵炎の治癒率がかなり向上すると共に、治癒にかかる日数もかなり短縮されるようになりました。

最近の私の膵炎治療は、甚急性で入院が必須の症例でなければ、輸液は皮下輸液、抗生物質、消化管運動改善剤、嘔吐止め、鎮痛剤は皮下注射をするようにして。飼い主様の通院可能の状態に合わせて、1日に1回か2回通院で治療するようにしています。

何せ院長がガンサバイバーの高齢者ですから。入院患者を寝ないで見守るという事が出来なくなっています。

絶対に入院が必要と思われる、あるいは入院治療を希望される患者様については市内の二次診療施設に紹介させていただいています。

以上が最近のグリーンピース動物病院の膵炎治療の状態であります。

ではまた。

犬の糖尿病のインスリン抵抗性(インスリンが利かない、あるいは利き過ぎる糖尿病について)

先日から当院に転院して来られた日本犬の女の子ですが。

最初にかかっていた近くの動物病院で、糖尿病と診断されて。 インスリンによる血糖コントロールを試みていたのですが。

なかなかコントロール出来ないで。 インスリンを注射するとフラフラになったりして。 とても可哀相なんだと。 その上にどんどん痩せて来て、多尿多飲も全然改善しないということで。

最近、 そこの獣医さんに、 「もうこの子は長く生きられません。」と宣告されてしまったとのことで。

インターネットでいろいろ調べていたら。 グリーンピース動物病院にヒットしたということでの転院だったそうです。

糖尿病で、 インスリンが利かないという子は時々診ますが。 インスリンが安定して利き難い原因として。 まず考えなければならないことは。 その子の身体の状態が、 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)でないか?ということと。 その次に考えなければならないことは。 女の子で避妊手術を受けていないということです。

その他にもいろいろありますが。 この子の場合はこの二つをまず考えなければならないと思います。

血液検査を実施しつつ、 身体検査を行なって行くと。 飼い主様が膿性の下り物が性器から出ていると言われます。

となると。 血糖コントロールが難しいのは、 子宮蓄膿症あるいは子宮内膜炎の存在が原因ではないか?と強く疑われます。

血液検査の結果を見ると。 ひどい高血糖に総コレステロールが450mg/dlオーバー、カリウムイオンが5.2mEq/lとそろそろ糖尿病性ケトアシドーシスで危なくなって来ている感があります。

何はともあれ、感染した子宮を卵巣と共に摘出して。 インスリンが利くような身体の状態に持って行きたいところです。

その日は。 インスリンを体重1キロ当たり0.4単位くらい注射してやって。 飼い主様に当院で使うインスリンをお渡しして、打ち方を指導させていただきました。

翌日、速攻で麻酔をかけて、 卵巣子宮全摘出を実施しました。

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画像は麻酔をかけて、今から術野の毛を刈ろうかという状態のものです。 麻酔前に血液検査で血糖値を調べて。 極端な低血糖でないことは確認済みです。

手術は最短で終了しまして。 子宮は膿でパンパンという感じではありませんでしたが。 取り出した子宮の内容を無菌的に採取して、 細菌培養と薬剤感受性試験を実施しますと、 しっかり細菌が生えて来ました。

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卵巣子宮全摘出の手術の際に、 右第4乳頭すぐそばに小さな腫瘤を発見しましたので。 今回は大きくは取らずに、小さく切除して病理検査に供しました。 後日良性の物であるという報告が来ました。

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手術の翌々日に再来院しましたので。 状態を聴いて、 すこぶる調子が良いということですから。 静脈留置を抜去して。 抗生剤の内服とインスリンの注射を自宅でやってもらいました。

術後1週間での半日預かっての2時間毎血糖曲線の結果は。 今ひとつ高めだったので。
ほんの少しだけ増量を指示させていただき。 更に1週間後の本日、半日預かって抜糸と2時間毎血糖曲線の検査をやっております。

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今のところ、非常に良好に血糖値がコントロールされておりまして。 半日の間で100から200mg/dlの間に収まりそうです。

初診時ガリガリに痩せていた身体も、少し筋肉や脂肪が戻って来て、幸せそうな雰囲気の犬になりつつあります。

朝一の採血での血糖値以外の項目でも。 総コレステロールが随分低下したことと。 カリウムイオンも4.3mEq/lと程良い数値になっておりますし。 少し高めだった肝酵素の数値もかなり改善しております。

これからのこの子は、 多分ですが。 血糖値は良好に管理されるようになることと予想しています。

次回の2時間毎血糖曲線検査は1ヶ月後に実施する予定です。 数回月一の検査を行なって、安定しているようであれば、 それも間隔を開けて行く予定です。

犬の糖尿病のインスリン抵抗性については、鑑別リストがきちんと教科書に載ってますから。 それをひとつひとつ解決して行けばかなりの症例で救うことが出来ると思います。

今回はかなり早くに解決出来て良かったと思います。

しかし、惜しむらくは。 3ヶ月前の発症時に診させていただければ、 糖尿病性白内障で失明せずに済んだかも知れません。
ただ。 糖尿病性白内障については。 網膜さえ傷んでなければ、 水晶体を眼内レンズに交換することで、 再び視力を取り戻すことも可能かと思います。

御年11才のこの子ですが。 以前に管理していた同じような糖尿病の日本犬でも、16才で老衰で亡くなるまで元気に過ごせてましたから。 この子もそこまで幸せに生きて欲しいものであります。

ではまた。