兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2013 2月
院長ブログ

月別アーカイブ: 2013年2月

02/24 柴犬の腸閉塞

午前診に来院して来た若い柴犬ですが。

10日前から食欲不振に陥って。近医で検査すると肝臓が悪いということで、治療を受けているのだが、嘔吐が止まらず。昨日は尿素窒素もかなり上昇して来たという事で、点滴を受けたと。
しかし、嘔吐は続くということでした。

犬を触ってみると、ひどく痩せています。1週間食べなくてもここまで痩せることはないと思います。

治療を行なっているのにも関わらず症状が進行しているということは、好い加減な対応をしては絶対に駄目だということですから。

血液検査と腹部エックス線検査をまず行なって、その結果によっては腹部エコー検査が必要になるかも知れないと、連れて来た方にはお伝えしました。

犬をお連れになった方は、現役の泌尿器科の女医さんだということで、犬は御実家の飼い犬だそうです。

血液検査を行なって、それを今まで治療して来た獣医さんのデータと突き合わせてみると、肝機能障害も腎機能の項目の異常も存在はしているが改善傾向にあり、このデータで食べないのはおかしいと思いました。
全血球計数ではほとんど異常値は見られません。

ただ、リパーゼがかなり高値であること、炎症マーカーである犬CRPがしっかり高値であることが目立つ異常値です。
ナトリウムイオン、カリウムイオン、クロールイオンなどの電解質が低値なのは持続的に嘔吐していて、まったく食べれていないという結果だと思います。

腹部エックス線検査では、腸管内に砂と思われる異物が沢山観察されました。それと、腸管内のガスの存在にかなり違和感を感じます。

これらのことから、疑わしい疾患は、膵炎、腸閉塞、何らかの薬物中毒辺り?かと推定しました。

膵炎に関しては、犬膵特異的リパーゼを東京のアイデックスラボラトリーズに外注することにして。

腸閉塞に関しては、午後から消化管造影検査を行ないました。

犬の口にバイトブロックを咬ませて、そこから細めの胃カテーテルを胃まで挿入して。この時に大切なのはカテーテルから液体を注入する前に必ず注射器で陰圧をかけて空気がどんどん入って来ないか?ということをチェックしなければなりません。

滅多に無い事ですが、胃カテーテルが間違って気管に挿入された状態で液体を注入すると、窒息したり誤嚥性肺炎を起こしたりするのです。

この子の場合、胃カテーテルは適切な位置にありましたので、ガストログラフィンという造影剤を注入して。
直後、1時間後、2時間後とエックス線撮影を実施しました。

造影1時間後も2時間後も造影剤はほとんど小腸に流れて行かず。1時間後と2時間後の撮影の合い間に嘔吐してしまいました。

クライアントには、機能性イレウスなのか?どうかは不明だが、イレウスは存在していそうなので、試験的開腹が必要だと思うとお伝えして。手術に同意していただきました。

手術までは、静脈に留置したカテーテルから生理食塩液に塩化カリウムを適量添加したものを輸液してコンディションを整えます。

午後5時を過ぎ、午後診が終了してから麻酔導入を行ない、試験的開腹を実施しました。クライアントも立ち会って見届けてくれました。

開腹してみると、空腸から回腸まで広い範囲の小腸に異物が触知されます。触るとかなり固い感触です。
異物の遠位側では何とか異物を排出しようとして腸が頑張り過ぎているのでしょう。腸重積に陥っていました。

異物が詰まっている小腸の適当な部分を2ヶ所切開して、異物を引っ張り出しました。こんな作業をする場合、術野や周辺を汚染させないように注意しながらやらなければなりません。

異物を取り出した切開部は丁寧に縫合します。なるべく縫合部位が狭くならないようなやり方を取ります。

最後に、胃から直腸まで腸管を順次点検して、その他の異常が無いかどうか?きちんとチェックし終わったら、閉腹の作業にかかります。

腹膜と腹筋、皮下織、皮膚と、順番に縫って行って。手術終了は午後7時半少し前くらいでしたか?

術後は覚醒も順調でした。夜の間、何回か容態点検を行ないますが。眼を離すとクルクル回って、輸液ラインを捩じってキンクさせてしまうのが困りました。

結果、この子は、食品ラップフィルムの誤食による腸閉塞ということでした。

しかし、誤食の原因が単に食いしん坊な犬だということなのか?それとも何か基礎疾患があるのか?2ヶ月か3ヶ月前にサイエンスダイエットから変更したという食事内容に問題は無かったのか?

再発防止に関して思いを致す必要があると考える次第であります。

なお、この子の経過としては、術後24時間くらい経過したら、まず水を与えてみて。異常が生じなかったら消化の良い残渣の少ない食事を少量食べさせて。

翌日からその処方食を食べさせていって。順調に食べるようであれば退院という運びになると予定しております。

 

 

 

 

 

02/22 小さな自然

自然と言えば、私の自宅の小さな庭も、リビングでくつろぐ猫のよっちゃんも、犬舎で狩りの疲れを癒している犬たちも、そして、我々の肉体も総て自然の一部であり、大きな流れの中でぶつかったり合流したり離れたりしながら、曼荼羅のように生きているのですが。

自宅の小さな庭には、毎朝鶏の食べ残しをお皿に入れて置いてありますので、1年中スズメたちが賑やかしく集っております。

ここ数日、庭に訪問して来るのがメジロです。

もうすぐ春とは言っても、寒さが厳しく山野に食べる物の少なくなる時期に、庭に生えているキウイの木の実が熟れて落ちているのを食べに来ます。

12月とか1月には来てないのは、彼らにも何か季節毎に活動のリズムがあるのでしょう。

1月にはキウイが木から落ちそうになるのを、ヒヨドリがつついて賑やかでした。

毎年早春に来てくれるのは、メジロ以外にも、ツグミの一種のシロハラとか、ウグイスとか居ります。

そう言えば、今年はまだキジバトを見ません。昨年とか一昨年にはキジバトのペアが鶏の食べ残しを独占して、スズメたちが不満そうにしていたものです。

このところ、ブログの症例紹介を怠り気味です。 仕事が閑だと却って気が抜けるのでしょうね。いよいよ春が来ますから、気を引き締めないといけません。

ではまた。

02/09 高齢Mダックスフントの歯肉の腫瘤生検と歯周病処置

年齢15才という高齢のミニチュアダックスフントの男の子ですが。

この数年前から顔を見る度に歯周病処置が必要ですよとお伝えして来ました。

先日来院された時には、今年に入ってから右下顎の口の中に腫瘤が出来ていて、大きくなりつつあるので心配であるということでした。

口の中を見ると、右下顎の歯肉に黒いやや柔らかい感触の腫瘤が出来ています。嫌な感じです。悪性黒色腫(メラノーマ)辺りが怪しいです。

絶対ではないけれども、あまり良い物ではなさそうだとお伝えしたところ。切除生検と病理検査、それに懸案だった歯周病処置を希望されました。

術前検査として、胸部エックス線検査、コンピュータ解析装置付き心電図検査、採血して全血球計数、院内の血液生化学検査、外注による凝固系検査を行ないました。

歯周病や悪性腫腫瘍などによる慢性炎症に起因するであろう血小板数の軽度の増加と、犬C反応性蛋白の上昇が観察されました。

処置の当日。朝から預かって昼まで静脈輸液を実施して。午後1時過ぎた頃から麻酔導入を行ないます。

麻酔導入後、生検切除を実施する前の腫瘤の様子です。

赤い矢印の先の辺りが問題の腫瘤です。

 

右下顎の歯石を綺麗に掃除して、腫瘤を切除し、これから右上顎の歯石を除去にかかろうかという段階での画像です。歯石が除去された下顎の歯の綺麗さと、未処置の上顎の歯の悲惨な状態のコントラストが強烈です。

右が終了して、左側の上下の歯の歯石も綺麗に清掃した後の画像です。

歯石の付き方が半端ではなく。特に左右上顎犬歯から第1、第2前臼歯までの歯周ポケットがひどく深くなっていて、清掃して行くと食物塊や被毛などがボロボロと出て来るような有り様でした。
本犬すごく気持ちが悪かったのではなかったか?と思慮されます。

生検も歯周病処置も無事に終了して、麻酔からの覚醒も速やかで、元気に退院して行きました。

腫瘤の病理組織検査は10日から2週間で結果が帰って来ることと思います。良性であって欲しいのですが、腫瘤の根っ子に相当する部分が周囲の一見健常に見える部分に沁みて行く有り様が見て取れますので、悪性度の高い腫瘍ではないか?と予想しています。

検査結果が出たら、獣医として出来ることを提案させていただくわけですが。飼い主様はこれ以上痛い思い苦しい思いをさせたくないという気持ちが強いようですので、経過観察になってしまうかも知れません。

 

 

02/08 老犬の前肢の腫瘤

今日の症例は日本犬雑の相当高齢の男の子ですが。

数年前から右前肢皮膚に腫瘤が出来まして。それが昨年から自壊して、最近そこに感染も加わって、周辺もズルズルの状態になっていて。

今回悪くなる前には近くの動物病院で治療していたのが、症状が悪化してその先生に診てもらおうとしたのに、そこが休診だということで、1月12日に当院に来院しました。

その時の画像を撮影しておいたら良かったのですが。それはひどいもので、炎症は皮下にも広く及んでいて、関節の可動性もかなりおかしな状態になっていたのです。

私が最初にやったのは、まず腫瘤の一部分をメスで切除して病理検査に出すことと、炎症で周囲をひどく濡らしている分泌物を採取して細菌培養と薬剤感受性試験を行なうことでした。

薬剤感受性試験で翌日に得られた結果は、ほとんどの薬に対して抵抗性を持ってしまった多剤耐性緑膿菌の感染があるというもので、唯一マルボフロキサシンという抗生物質だけが効いているような状態でした。

腫瘤周辺の感染は、マルボフロキサシンの投薬2週間ですっかり良くなって、皮膚に開いていた穴も塞がり、関節の可動性も改善して普通に歩けるようにまでなりました。

投薬中食欲が減退気味だったのは、胃酸分泌を抑えたり吐き気を止めたりするお薬を組み合わせることにより何とかクリヤーしました。

2週間の間に外注していた病理組織検査の結果も帰って来て、良性の腫瘍であるという結果でした。

私としては、良性腫瘍でもあり、感染もすっかり良くなって、一応めでたしめでたしという感じだったのですが。

飼い主様としては、如何に良性腫瘍であっても、あんなにひどい展開になるのであれば、是非とも切除して後顧の憂いを絶ちたいという強いご希望をお持ちのようで。

腫瘤の切除を希望されました。

で、術前検査の結果では、血液検査と尿検査、腹部エコー検査から慢性腎不全という診断が得られたのですが。とりあえず初期から中期までのものであり。手術自体は遂行可能であると判断しました。

2月8日に腫瘤の切除を実行しました。

気管挿管を済ませて各種モニターを装着します。それから術野の毛刈り、消毒を行ない。術者は手術帽とマスクの装着、手洗いと消毒、術衣手袋の装着をやって。術野を滅菌ドレープで覆ってから手術を始めます。

今から毛刈りをする腫瘤です。

で、手術は無事に済んで、画像的にはいきなりですが。術後の肢です。腫瘤が良性で比較的小さかったので、形成外科的な皮膚移植のような手技は不必要でした。

術創の上に光が反射しているのは、創傷管理用のテガダームというプラスチックフィルムを貼り付けているからです。

これで忌まわしい腫瘍の自壊と感染が再発する可能性は消失しました。
ついでに見つかった慢性腎不全をコントロールして行けば、推定14才という高齢ながらも、もうしばらく元気に生きて行けそうです。

 

 

 

 

 

02/06 大腸内視鏡検査(自分が受けました)

齢58になって、生まれて初めて大腸内視鏡検査を受けました。

昨年12月26日に神戸百年記念病院で受けた人間ドックの結果から、便潜血が2日間採取した資料のうち1本より検出されたということで、内視鏡検査を指示されたのであります。

神戸百年記念病院の人間ドックは結構人気があるみたいですが、残念なことに、胃の内視鏡検査については、喉頭の局所麻酔が雑い感じがしました。お陰で、胃内視鏡検査の間は何回もえづいてひどい思いをしました。

胃内視鏡検査は今まで数回経験がありますが、あんなひどい目に遭ったのは初めてでした。

しかし、この歳になると、親戚、犬友さん、仕事の関係者などいろいろな人があちこちに癌が出来たと、ある人は早目に発見されて無事に過ぎ、ある人は発見が遅れて命を落とし、ある人はかなり進行はしていたが、現代医療の技術に助けられて、でもかなり苦しんだ上、助かったと。いろいろな経過を取っているみたいです。

人生ここまで来れば、残りはおまけみたいなものでしょうが。仕事でも趣味でも何でも、少しでも長く楽しめるように、健康管理はきちんとやりたいと考えております。

さて、大腸内視鏡検査は、術者の技術レベルによって受ける側の苦痛の度合いに大きく差があること。ポリープや癌などの異常を発見しても検査即治療という対応が出来る出来ないとやはり大きく差があることが予想されますので。
いろいろ聴き合わせをしたりして、JR神戸駅北側にある青山内科クリニックで受けることに決定しました。

実際に電話で連絡を取ってみると、かなり人気のある病院らしくて、予約は1ヶ月以上先になるようでした。

最初に外来受診を1回受けて。検査の前の問診とか行ない、検査用の下剤などの資材をもらって。

検査の前日から繊維性の食物を摂らない食事制限を始めて。

検査当日は朝から絶食し、ポカリスウェットやアクウェリアスと同じ味の下剤を200ミリリットルずつ2時間くらいかけて合計1.8リットル飲んで、腸を綺麗に掃除して。

午後の4時過ぎからクリニックに行って、5時前から検査を開始して。

深目の沈静を希望したので、検査中はほとんど意識を失っていて、痛いも痒いも全く判らず。

約1時間後に検査は終了し、治療や生検が必要な病変は見つからなかったという結果を伝えていただき。

安心して帰宅することが出来ました。

大腸内視鏡を受診すると、年齢にも拠るようですが、100人中癌が発見されるのは2名か3名で、約70名に前癌性のポリープが見られるということであります。

今回は無事に終わりましたが。3年毎の定期検査を受けた方がよろしいということでした。

これで当面の健康についての心配はひと通りクリヤーです。 これからもワンちゃんネコちゃんと飼い主様の安心と幸せに貢献出来るよう一生懸命獣医診療をやって行きたいと思います。