兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 院長ブログ

院長ブログ

02/22 小さな自然

自然と言えば、私の自宅の小さな庭も、リビングでくつろぐ猫のよっちゃんも、犬舎で狩りの疲れを癒している犬たちも、そして、我々の肉体も総て自然の一部であり、大きな流れの中でぶつかったり合流したり離れたりしながら、曼荼羅のように生きているのですが。

自宅の小さな庭には、毎朝鶏の食べ残しをお皿に入れて置いてありますので、1年中スズメたちが賑やかしく集っております。

ここ数日、庭に訪問して来るのがメジロです。

もうすぐ春とは言っても、寒さが厳しく山野に食べる物の少なくなる時期に、庭に生えているキウイの木の実が熟れて落ちているのを食べに来ます。

12月とか1月には来てないのは、彼らにも何か季節毎に活動のリズムがあるのでしょう。

1月にはキウイが木から落ちそうになるのを、ヒヨドリがつついて賑やかでした。

毎年早春に来てくれるのは、メジロ以外にも、ツグミの一種のシロハラとか、ウグイスとか居ります。

そう言えば、今年はまだキジバトを見ません。昨年とか一昨年にはキジバトのペアが鶏の食べ残しを独占して、スズメたちが不満そうにしていたものです。

このところ、ブログの症例紹介を怠り気味です。 仕事が閑だと却って気が抜けるのでしょうね。いよいよ春が来ますから、気を引き締めないといけません。

ではまた。

02/09 高齢Mダックスフントの歯肉の腫瘤生検と歯周病処置

年齢15才という高齢のミニチュアダックスフントの男の子ですが。

この数年前から顔を見る度に歯周病処置が必要ですよとお伝えして来ました。

先日来院された時には、今年に入ってから右下顎の口の中に腫瘤が出来ていて、大きくなりつつあるので心配であるということでした。

口の中を見ると、右下顎の歯肉に黒いやや柔らかい感触の腫瘤が出来ています。嫌な感じです。悪性黒色腫(メラノーマ)辺りが怪しいです。

絶対ではないけれども、あまり良い物ではなさそうだとお伝えしたところ。切除生検と病理検査、それに懸案だった歯周病処置を希望されました。

術前検査として、胸部エックス線検査、コンピュータ解析装置付き心電図検査、採血して全血球計数、院内の血液生化学検査、外注による凝固系検査を行ないました。

歯周病や悪性腫腫瘍などによる慢性炎症に起因するであろう血小板数の軽度の増加と、犬C反応性蛋白の上昇が観察されました。

処置の当日。朝から預かって昼まで静脈輸液を実施して。午後1時過ぎた頃から麻酔導入を行ないます。

麻酔導入後、生検切除を実施する前の腫瘤の様子です。

赤い矢印の先の辺りが問題の腫瘤です。

 

右下顎の歯石を綺麗に掃除して、腫瘤を切除し、これから右上顎の歯石を除去にかかろうかという段階での画像です。歯石が除去された下顎の歯の綺麗さと、未処置の上顎の歯の悲惨な状態のコントラストが強烈です。

右が終了して、左側の上下の歯の歯石も綺麗に清掃した後の画像です。

歯石の付き方が半端ではなく。特に左右上顎犬歯から第1、第2前臼歯までの歯周ポケットがひどく深くなっていて、清掃して行くと食物塊や被毛などがボロボロと出て来るような有り様でした。
本犬すごく気持ちが悪かったのではなかったか?と思慮されます。

生検も歯周病処置も無事に終了して、麻酔からの覚醒も速やかで、元気に退院して行きました。

腫瘤の病理組織検査は10日から2週間で結果が帰って来ることと思います。良性であって欲しいのですが、腫瘤の根っ子に相当する部分が周囲の一見健常に見える部分に沁みて行く有り様が見て取れますので、悪性度の高い腫瘍ではないか?と予想しています。

検査結果が出たら、獣医として出来ることを提案させていただくわけですが。飼い主様はこれ以上痛い思い苦しい思いをさせたくないという気持ちが強いようですので、経過観察になってしまうかも知れません。

 

 

02/08 老犬の前肢の腫瘤

今日の症例は日本犬雑の相当高齢の男の子ですが。

数年前から右前肢皮膚に腫瘤が出来まして。それが昨年から自壊して、最近そこに感染も加わって、周辺もズルズルの状態になっていて。

今回悪くなる前には近くの動物病院で治療していたのが、症状が悪化してその先生に診てもらおうとしたのに、そこが休診だということで、1月12日に当院に来院しました。

その時の画像を撮影しておいたら良かったのですが。それはひどいもので、炎症は皮下にも広く及んでいて、関節の可動性もかなりおかしな状態になっていたのです。

私が最初にやったのは、まず腫瘤の一部分をメスで切除して病理検査に出すことと、炎症で周囲をひどく濡らしている分泌物を採取して細菌培養と薬剤感受性試験を行なうことでした。

薬剤感受性試験で翌日に得られた結果は、ほとんどの薬に対して抵抗性を持ってしまった多剤耐性緑膿菌の感染があるというもので、唯一マルボフロキサシンという抗生物質だけが効いているような状態でした。

腫瘤周辺の感染は、マルボフロキサシンの投薬2週間ですっかり良くなって、皮膚に開いていた穴も塞がり、関節の可動性も改善して普通に歩けるようにまでなりました。

投薬中食欲が減退気味だったのは、胃酸分泌を抑えたり吐き気を止めたりするお薬を組み合わせることにより何とかクリヤーしました。

2週間の間に外注していた病理組織検査の結果も帰って来て、良性の腫瘍であるという結果でした。

私としては、良性腫瘍でもあり、感染もすっかり良くなって、一応めでたしめでたしという感じだったのですが。

飼い主様としては、如何に良性腫瘍であっても、あんなにひどい展開になるのであれば、是非とも切除して後顧の憂いを絶ちたいという強いご希望をお持ちのようで。

腫瘤の切除を希望されました。

で、術前検査の結果では、血液検査と尿検査、腹部エコー検査から慢性腎不全という診断が得られたのですが。とりあえず初期から中期までのものであり。手術自体は遂行可能であると判断しました。

2月8日に腫瘤の切除を実行しました。

気管挿管を済ませて各種モニターを装着します。それから術野の毛刈り、消毒を行ない。術者は手術帽とマスクの装着、手洗いと消毒、術衣手袋の装着をやって。術野を滅菌ドレープで覆ってから手術を始めます。

今から毛刈りをする腫瘤です。

で、手術は無事に済んで、画像的にはいきなりですが。術後の肢です。腫瘤が良性で比較的小さかったので、形成外科的な皮膚移植のような手技は不必要でした。

術創の上に光が反射しているのは、創傷管理用のテガダームというプラスチックフィルムを貼り付けているからです。

これで忌まわしい腫瘍の自壊と感染が再発する可能性は消失しました。
ついでに見つかった慢性腎不全をコントロールして行けば、推定14才という高齢ながらも、もうしばらく元気に生きて行けそうです。

 

 

 

 

 

02/06 大腸内視鏡検査(自分が受けました)

齢58になって、生まれて初めて大腸内視鏡検査を受けました。

昨年12月26日に神戸百年記念病院で受けた人間ドックの結果から、便潜血が2日間採取した資料のうち1本より検出されたということで、内視鏡検査を指示されたのであります。

神戸百年記念病院の人間ドックは結構人気があるみたいですが、残念なことに、胃の内視鏡検査については、喉頭の局所麻酔が雑い感じがしました。お陰で、胃内視鏡検査の間は何回もえづいてひどい思いをしました。

胃内視鏡検査は今まで数回経験がありますが、あんなひどい目に遭ったのは初めてでした。

しかし、この歳になると、親戚、犬友さん、仕事の関係者などいろいろな人があちこちに癌が出来たと、ある人は早目に発見されて無事に過ぎ、ある人は発見が遅れて命を落とし、ある人はかなり進行はしていたが、現代医療の技術に助けられて、でもかなり苦しんだ上、助かったと。いろいろな経過を取っているみたいです。

人生ここまで来れば、残りはおまけみたいなものでしょうが。仕事でも趣味でも何でも、少しでも長く楽しめるように、健康管理はきちんとやりたいと考えております。

さて、大腸内視鏡検査は、術者の技術レベルによって受ける側の苦痛の度合いに大きく差があること。ポリープや癌などの異常を発見しても検査即治療という対応が出来る出来ないとやはり大きく差があることが予想されますので。
いろいろ聴き合わせをしたりして、JR神戸駅北側にある青山内科クリニックで受けることに決定しました。

実際に電話で連絡を取ってみると、かなり人気のある病院らしくて、予約は1ヶ月以上先になるようでした。

最初に外来受診を1回受けて。検査の前の問診とか行ない、検査用の下剤などの資材をもらって。

検査の前日から繊維性の食物を摂らない食事制限を始めて。

検査当日は朝から絶食し、ポカリスウェットやアクウェリアスと同じ味の下剤を200ミリリットルずつ2時間くらいかけて合計1.8リットル飲んで、腸を綺麗に掃除して。

午後の4時過ぎからクリニックに行って、5時前から検査を開始して。

深目の沈静を希望したので、検査中はほとんど意識を失っていて、痛いも痒いも全く判らず。

約1時間後に検査は終了し、治療や生検が必要な病変は見つからなかったという結果を伝えていただき。

安心して帰宅することが出来ました。

大腸内視鏡を受診すると、年齢にも拠るようですが、100人中癌が発見されるのは2名か3名で、約70名に前癌性のポリープが見られるということであります。

今回は無事に終わりましたが。3年毎の定期検査を受けた方がよろしいということでした。

これで当面の健康についての心配はひと通りクリヤーです。 これからもワンちゃんネコちゃんと飼い主様の安心と幸せに貢献出来るよう一生懸命獣医診療をやって行きたいと思います。

 

01/25 グリーンピースわんにゃん訪問隊活動

毎月第4金曜日は、仕事を抜けて自分の犬を連れ、加古川市内の老人ホーム鶴林園の訪問ボランティアに参加しています。

今日のお供はベルジアン・マリノワのゴーシュだけです。ブルテリ・新田雑愛ちゃんは昨日手が足りなくてお約束の訪問前日シャンプーが出来なかったのです。

午後1時45分に老人ホームの園庭に着いて犬たちの排泄を済ませ、2時から3時まで2階のホールでお年寄りの方々との触れ合いの時間を過ごして、3時から約25分間1階食堂でスタッフミーティングを行なって散会となります。

ユリウス@素人ハンターの出猟日記

今日のゴーシュはすごくお利口でした。
車椅子のお年寄りに嬉しそうにペロペロしたり撫でてもらったり。私との咬み付きパッド引っ張りっこを皆さんにご披露したり。

最後のミーティングの時間も私の傍でお座りして静かに過ごしていました。 最近は、緊張とか嬉し過ぎたりの時のオシッコの失敗も随分減っています。

ユリウス@素人ハンターの出猟日記

自分のケージ内での失敗も、こちらがかなり気を使ってこまめに排泄の時間を作ってやるようにしたせいもあって、ほとんど大丈夫になっています。

日常の犬舎から自動車への移動とかは、当初は紐付きでも紐無しでも勝手気ままにダッシュしたりという不測の行動をやり勝ちだったのですが。最近は私の動きを見ながら随分気を使って随行するようになって来ています。

今のところは型に嵌めるような服従訓練はほとんど何もやっていません。せいぜい芸の範囲の「お座り」と「お手」くらいです。後、咬み付きパッド使用時の「持って」と「放せ」は今日何とか出来るようになって来ました。

このままあまり難しいことを教えずに、犬にいろいろ考えてもらいながら育てて行っても良いかも知れません。 少なくとも、言葉での制止とか、賞賛が、しっかり判るようになって来ていますし。かなり私に気を使いながら行動する雰囲気も出始めています。

このまま犬と会話しながらユルめに育てて行くだけでも十分私にとっての名犬に育ってしまいそうに感じています。

ユリウス@素人ハンターの出猟日記

01/25 超肥満猫の避妊手術

トラちゃんは、そろそろ8才になる女の子の猫ちゃんですが。
骨格はそんなに大きくはないのにも関わらず、肉付きが異常に良くなってしまって。

現在はどう見たって肥満という感じになってしまっています。

昨年9月にワクチン接種のために来院した際、肛門から性器にかけての部分(会陰部)が異常に汚れていたところから。
一般論で言えば、避妊手術をした方が病気になる可能性も少ないことなどをお話しして、出来ればしてあげた方が良いと思いますとお話ししました。

その際に、腹部エコー検査を希望されたのでお腹の中をエコーで覗いて見たところ。
どう見ても卵胞嚢腫ではないか?と思われる陰影が観察されました。

画像の矢印の先の黒い部分が卵胞嚢腫と思われる陰影です。

会陰部の汚れは、あるいは性器からの分泌物によるものだったのかも知れませんが。その時には断言することは出来ませんでした。

この子の飼い主様は現役の看護師さんですので、獣医学的なお話しも能く理解していただいて下さったようです。

年明けに再来院して下さいまして。元気なうちに卵巣子宮摘出術を受けさせてやりたいということでしたので、術前検査として、全血球計数、血液生化学検査ひと通り、血液凝固系検査、胸部エックス線検査、コンピュータ解析装置付き心電図検査などを実施しました。

術前検査では完璧とは言えませんが、それなりに手術は可能であろうという結果が得られました。

手術は1月13日に実施しました。

麻酔とかは普通に導入覚醒が出来たのですが。やはり肥満猫ちゃんですから、お腹の中は脂肪の大海のようになっていて、子宮や卵巣の確認と分離がかなり困難でした。

お腹の中には、予想通りに卵巣に左右共、卵胞嚢腫と思われる大きな水泡が存在していました。

子宮を取り出す際に、膀胱と腎臓を繋いでいる尿管などの重要な器官を不用意に傷付けないように、通常の手術よりもすごく気を使いました。

そして、卵巣と子宮を摘出した後、閉腹する際には念のためにポリプロピレン単繊維の医療用縫合糸を使って、万が一の癒合不全に備えました。普通の猫ちゃんの手術に比べると、お腹を開けた傷の長さが倍はあります。

閉腹完了し手術が終了して、いよいよ今から覚醒させようという段階の画像です。

気管チューブ抜管後、入院室で回復を観察します。

普通に当日退院して行きましたが。

翌日 以降、しばらく飲水、排尿が見られないので皮下輸液を実施したり、いろいろ不安要素もあって気を揉んだ局面もありましたが。翌日から食欲はボチボチ見られていましたから、必ず回復すると信じておりました。

22日の火曜日に飼い主様から電話がありました。猫ちゃんは元気になっているとの報告でした。
飼い主様の勤務の都合もあり、抜糸に来院する予定が数日遅くなるということでしたが、抜糸があ少々遅くなっても大勢には影響無いとお伝えしました。

しかし、人間の手術でもそうだとは聴きますが、肥満の動物の外科手術は、私のような普通の獣医師としてはハラハラドキドキします。

無事に回復して良かったです。

 

 

 

 

 

01/24 ミニチュアピンシャーの子宮蓄膿症 白血球減少に注意

6才3ヶ月令になるミニチュアピンシャーの女の子のミニーちゃん。

22日に来院する前日から、急に嘔吐と食欲減少が生じ、同居のワンちゃんのおやつで与えていた骨を誤って飲み込んだのではないかと様子を見ていたそうなのですが。
来院当日水を飲ませたらひどく吐いたということでした。

診察台上のミニーちゃんは、何か?気分悪そうな表情で、腹部の緊張が強いように感じられます。

飼い主様に、ひと通りの血液検査と腹部エックス線検査は必要であろうとお伝えしまして。同意を得ましたので、採血とエックス線撮影を実施しました。

血液検査で気になる数値と言えば、肝機能の異常と、白血球数、特に好中球数の減少です。

腹部エックス線検査では、腹腔内に明らかに異常な陰影が見られました。

 イメージとしてはお腹の中にとぐろを巻くように存在する太いチューブ状の物体という感じでしょうか。

子宮蓄膿症の疑いがあること。好中球数の減少があるということはかなり甚急性の経過を取っているであろうこと。肝機能以上は、子宮とは関連があるのか?別物の問題なのか?は今のところは不明であることなどをお伝えして。

一応腹部エコー検査でお腹の中の物体が筒状で液体を溜めているということを確認した上で。

動物看護師に緊急手術を行なう旨伝えて、午後診終了後残業して手術を行ないました。

麻酔をかけて気管挿管をし、ガス麻酔に移行します。各種モニターを装着し、術野の毛刈り消毒。術者は手術帽、マスの装着。手荒い消毒、術衣と手術用ゴム手袋の装着。

などなど大急ぎで行なって。

いざ開腹してみると、やはり大きく膨れ上がっている子宮が出て来ました。

手術は型通りきちんと終了して。覚醒も速やかでした。

術後は入院室に入ってもらい、24時間持続点滴を続けます。

手術翌日は、気分は随分回復していたようですが。まだ食欲は湧かず。

術後2日経過した時点で急に食欲が湧いて来て、普通に食べ始めましたので、静脈留置カテーテルも抜去して退院としました。

犬の子宮蓄膿症、今回も無事に治療することが出来ました。

しかし、過去には術中に心停止が来た子や、術後に回復出来ずにそのまま亡くなった子もいるわけですから。

慢心に陥ることなく謙虚に頑張って行こうと思います。

 

01/19 猫と異物誤嚥 危ないところでした

ずっと以前に当院にかかっていたという猫ちゃんが久し振りに来院です。

4日前から咳とえずきとが激しくなっていて、当初は鼻水も出ていたそうです。

食欲は、食べてはいるけれども幾分減少傾向。

お尻で体温を測ってみましたが、38.7℃と平熱です。胸部聴診でも、心音呼吸音共に特に異常な音は聴こえません。

猫風邪にかかっているかも知れませんねとお伝えして、インターフェロンの注射をお勧めして、同意を得ましたので注射を実施して。

帰宅後に内服させるようにお薬を調剤したのですが。どうして内服させるのか?判らないということでしたので。
最初の投薬は院内で私が説明しながら実施してみせることにして。

猫の口を大きく上向きに開けて、えっ?と思いました。

咽喉の奥に黒い細い異物があるのに気が付いたのです。

もう一度、口を開けてみて、やはり異物だということを確認して。その旨を飼い主様にお伝えして。

外科用の鉗子を準備して、異物を除去すべく試みたのですが。さすがに抵抗されて叶わず。

深い鎮静、あるいは軽い麻酔が必要であることをお伝えして、同意をえまして。

拮抗薬があるので比較的覚醒させやすいタイプの鎮静剤を筋肉注射で投薬して。約7分後に意識朦朧として抵抗出来ないことを確認しつつ。口を開けて鉗子を使用して異物を取り出しました。

異物は、糸付きの縫い針で、先端が折れてました。

異物さえ取り出せばもう大丈夫だと判断しまして。拮抗剤の注射により猫ちゃんは無事に覚醒します。

今回の症例は、先入観による診療が如何に危ういかという良い例だったと思います。

初診で異物に気が付かなかったら、いずれは検査により発見されたとは思いますが。発見まで時間が長引くとそれだけ猫ちゃんは苦しむわけですし。飼い主様も心配だったと思います。

ホッとしたというのが正直なところでした。

どんな些細な症状の子でも、大したことはなかろうと嵩をくくったり軽くみたりしないで、真摯に診療に取り組んでいかなければなりませんね。

01/13 皮膚の痒み

2才を過ぎたばかりのイエローのラブラドール女の子の話しですが。

昨年から微妙に身体の痒みを訴えるようになりまして。手足の先とか耳の付け根とかを掻いたり咬んだりしていました。

痒みの診療は、皮膚の寄生虫(疥癬、ニキビダニ、蚤)、細菌感染症、真菌感染症などの痒みを引き起こす「治る」病気を順に除外して行って。

「治る」原因が除外されたら、ステロイドホルモンを投与してみて。

ステロイドホルモンで痒みが劇的に消失するようであれば、初期のアトピー性皮膚炎の可能性がかなり高くなるし、痒みがある程度ましにはなっても消失はしないということであれば、食事性アレルギーの可能性が高くなるわけです。

食事性アレルギーの場合、免疫グロブリンの作用による真正の食物アレルギーと、リンパ球の反応による食物有害反応とに分かれるらしいのですが。
飼い主様とワンちゃんにとっては、何かを食べると皮膚が痒くなるということでは一緒であります。

このラブちゃんの場合、皮膚に住む細菌を駆除する抗生物質も細菌培養と薬剤感受性試験を行ないながらいろいろ試しましたが、抗生物質で痒みが改善することはありませんでした。

真菌培養の検査では、ダーマキットという皮膚糸状菌の検出によって培地が赤変する培地で、それなりに赤くなるという結果が得られまして。

3本並んだダーマキット培地の真ん中がラブちゃんの検体で。左が真菌性皮膚炎と治療によっても確定した子ので、右が多分違うだろうという結果です。

皮膚の細菌や真菌を殺菌するシャンプー剤と抗真菌剤の内服も試みましたが。やはり効いてくれません。

皮膚の寄生虫は、2回は皮膚掻き取り試験を実施しました。これは皮膚をメスの刃とか、鋭匙で削り取って、薬品でその皮膚のサンプルを溶かして、顕微鏡で観察するという検査ですが。

ラブちゃんの掻き取りの検体からは寄生虫は検出されませんでした。

掻き取り試験の場合、完全な除外診断にはなり難いという特性はありますが、2回の掻き取りで陰性ですから、一応その結果は考慮しました。

残るはアレルギーか?という段階になって、ここで試したのが、理研ベンチャー企業によってここ数年前から行なわれているアレルギーの血液検査です。

動物アレルギー検査株式会社の提供する血液検査には、環境中の抗原とか食事中の蛋白に対する血液中の免疫抗体の有無を見る「アレルゲン特異的IgE検査」と、食事内容がリンパ球に及ぼす影響を見る「リンパ球反応検査」それに、体内でがアレルギー反応を生じているのかどうか?という事実を判定する「アレルギー強度試験」の3種類の検査項目があります。

飼い主様と相談の上、まずアレルギー反応が体内で生じているのか?生じているのであればどれくらいの強さなのか?ということを判定するために、「アレルギー強度試験」を実施してみようということになりました。

結果は、参考基準値という、昔は正常値と称していた数値の範囲内に収まりました。

ただ、年齢が2才以下と以上とで、参考基準値が2倍近く違うのがどうなんだろう?という疑問が残ります。ほんの4ヶ月以前にこの検査を実施して同じ数値が出れば、アレルギーですよという話しになるわけですから。

しかし、グレーゾ-ンはそれとして、とりあえずアレルギーを疑わないことにしようと判断して。

痒みを生じる要素を再度見直すことにしました。

その一つが、犬の皮膚にトンネルを造って棲んでいる犬疥癬虫を駆除する注射の実施です。
私は犬疥癬を駆除するに当たっては、注射剤を使用し、週に1回合計3回の注射を実施しています。
この注射は非常に強力でして。疥癬が居れば必ずと言って良いほど駆除が出来ます。

ただし、注射で死んだ疥癬の虫体が生きている時よりもはるかに強力なアレルゲンとして皮膚に作用するということで、診断が中っていて注射が効いていても、一時的に痒みが倍増することがあると言います。

飼い主様にはその旨をお伝えしながら、注射を実施したところ。 3回目の注射を打つ頃になると、それまで大変だった痒みが劇的に改善して来ました。

現在は足先の僅かな痒み以外はほとんど問題無いということであります。

彼女の結果は「疥癬」ということになりましたが。疥癬が何処で感染したのか?判りません。
ただ、疥癬の原因のダニは犬だけでなく狐や狸も感染していて、犬の感染源になることもありますので。あるいはそんな野生動物由来の疥癬だったのかも知れません。

何はともあれ、ラブちゃんの苦痛が軽減されて良かったと思います。

01/11 柴犬の腸管内異物によるイレウス

今朝方やっと神戸市中央市民病院から退院して来たのですが。

そう言えば、昨年同じ病院に初診で行った日にも同じようなことがあったような記憶があります。

やっと帰り着いて、午後診を頑張ってやってましたら。緊急手術の症例がやって来ました。

この度の子は、柴犬の女の子です。昨日のお昼頃から急に異常に水を飲んでは吐くようになったということで、生憎私が人間の病院に入院していたものですから、本日の午後診に来院したようなことであります。ご迷惑をおかけして申し訳なかったです。

膵炎か?イレウスか?それとももっと簡単な胃腸炎か?と思いながら。でも、こんな場合には、ある程度辺りを付けるのはともかく、過剰に先入観を持って診察すると間違いを犯すこともありますので。

ひと通りの血液検査と、腹部エックス線検査を実施致しました。

血液検査では、白血球の内細菌と闘う好中球が増加してしますのと、犬CRPの上昇が見られていますから、体内に炎症が生じていることは間違いなさそうです。
同時に、リパーゼが1000近くにまで上昇しています。膵炎かも知れません。

しかし、腹部エックス線検査のフィルムを見ると。明らかに腸管内異物の像が観察されます。

矢印の部分に金属製の何か?が見えますし。その周辺にある程度の幅と長さの塊があるのです。

この時点で、腸管内の異物と確信しました。そうであるならば、下手に持って回ったような消化管造影検査などやらずに、さっさと試験的開腹を実施した方が、費用と患者様の体力の浪費に繋がらないので良いと考えます。

飼い主様にその旨説明させていただいて、手術に同意してもらいました。

看護師さんたちには残業をお願いします。

で、さっさと開腹手術をしてみたところ。

腸管に異物が詰まってにっちもさっちも行かなくなっている部分を発見します。

腸管を切開してみると。


プラスチックの固まった物が出て来ました。飼い主様曰く、ソーセージの皮なのだそうです。

幸いなことに、腸管は対処が速やかだったためでしょう。ほとんど傷んでおりませんで。切開と縫合という処置で速やかに修復出来ました。

手術は無事に終わり、術創にプラスチックフィルムを貼り付けて、覚醒を待ちます。


気管チューブ抜管後は、入院室で静脈輸液を続けながら容態を観察します。


一応、予定では明日の夕方から水を摂取させ。水を飲んで異常なければ、流動食を与える段取りになります。

入院は2日か3日で退院出来ると踏んでおりますが。速やかな回復を期待しているところであります。

久し振りのイレウスの手術でありました。