兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 院長ブログ

院長ブログ

10/06 放鳥、去勢、毛刈り

今日の午前診は、かなり閑でした。
世間では3連休で、今日がその初日ですから、わんにゃんの飼い主様たちはいろいろと多忙なことと思います。

昨日保護されて、給餌しながら様子を見ていたキビタキ雌?はすごく元気になりまして。朝一番給餌しようと、若手の動物看護師さんがケージのドアを開けると飛び出してしまい、怪我無く回収するのに少し手間取りました。

看護師さんには、決して油断しないようにと強く注意した次第です。動物相手に看護をしようと思えば、何をするにしても起こり得る危険性を予測しながら、常に適切に対処出来るよう備えを怠ってはならないと思います。

回収したキビタキ雌はミルワームの喰い付きも良好でして、ブドウ糖の飲みっぷりも大丈夫でしたから、囚われの身の上が続いて却って変なことにならないうちにと思いまして。

午前診が済んですぐに、近くの大きな公園に連れて行って放鳥しました。

自動車のバックドアを開けて、ケージを出して、ケージのドアを開けてやると元気に飛んで行ってしまいました。

無事に生き延びて、来年には繁殖も出来たら良いと思います。

午後の1時から3時までの2時間の間に、今日は若い柴犬の去勢手術と、チンチラ猫の皮膚病に関連した毛玉取りの処置とを行ないました。

柴犬の方は、その飼い主様にとっては2頭目の柴犬だそうですが、先代の子はすごく聞き分けが良くって賢い犬だったそうです。

今日の2代目君は、先代ほど聞き分けが良くないらしく、結構難しいみたいでした。特に食事中には近くに人間が居るとひどく唸って威嚇しながら食べるようなことらしいです。

そんな場合には、まず空の食器を犬の前に置いて、食事は人間の手で一握りずつ小刻みに食器に入れて食べさせるようにして、人間の手イコール食事を与えてくれる存在という意識を植え付けるようにとアドバイスさせていただきました。

今回の去勢手術で性格が付き合いやすいものになることを祈念しております。

チンチラ猫の去勢の方は、昨日背中に皮膚炎を生じてひどく掻いているという稟告で来院されたものでして。

皮膚炎と同時に全身を覆う毛玉がすごい子でした。

昨日から内服薬と注射で皮膚炎は治療してやって、蚤に関してはこの春にお渡ししてあるレボリューションという滴下剤をしっかり使うようお伝えして。

今日は去勢手術の後、鎮静剤の注射を行なって抵抗出来ないようにしてから丸刈りにして差し上げました。

出来上がりはなかなか良い感じでした。

ただ、これからのこともありますので。飼い主様にはエリザベスカラーを買い取っていただいて。
猫の爪切りから保定、日常の毛玉取りというか、コーミングについて一応のお話しはさせていただきました。

来年もこんなことをしないでも済むように祈っております。

午後診はボチボチの来院で、でもこのブログを書く時間もしっかりありましたので、やはり閑だったですね。

そう言えば、大阪府立大学に紹介させていただいた、原疾患がアジソン氏病で、ひどい貧血になってしまったマルチーズが、来院して来てました。

府立大学の内科の若くてしっかりとした先生の診立てでは、アジソン氏病に加えて、免疫介在性の非再生性 貧血、ネフローゼ症候群、腸のリンパ管拡張症と4つも病気を抱えている状態だということでしたので、何とか大学と連絡を取りながら上手く治して行きたいと考えていますが。さて、どんな反応を示してくれますかどうか?

一応今日も診療時間が終了したようです。今日はこれで失礼いたします。

 

 

10/05 多分キビタキ雌

午前診開始後少しして小鳥が持ち込まれました。

動物病院から県道を2キロほど南に下ったところにあるペットショップの入り口すぐの地面に落ちて横たわっていたそうです。

小さな紙箱に入れられている小鳥は、一応意識はちゃんとしてますし。骨折とかも無さそうです。
しかし、仔細に見ていると、左の眼球の中に出血が見つかりました。

応急処置として、20%グルコースを点眼瓶から飲ませます。

一見ウグイスにも見えましたが、眉のところの色の薄い斑が見当たりません。体重はわずかに15グラム。嘴の先から尾羽の先端までの長さは12センチか13センチくらいです。

鳥の図鑑をいろいろ見ていて、かろうじて該当しそうな種類は、キビタキの雌ということになりました。

小鳥用のケージに移します。

人間が近づくと逃げようとしてひどく暴れます。野生の小鳥は、治療も難しいところがありますが。どちらかというと囚われの身になったストレスで急死することが非常に多いですから、今後の経過が心配です。

種類としては昆虫を主に食べるのですが、木の実も食べるみたいです。

ミルワームという、ペットショップで販売している昆虫食の動物用の生き餌を強制給餌して、水分補給の意味合いも込めて20%グルコースも点眼瓶から強制的に飲ませました。

1日に5回とか6回とか、虫を食べさせてグルコースを飲ませて、水はケージの中の水入れに入れて置いて。

特に外傷も無いですから、感染予防も考えなくて良いと思いますし、意識もしっかりしていますのでステロイドとかの投薬も不要だと思います。

1日か2日給餌して元気であれば早目に放鳥する方が結果としては良いのではないかと考えているところであります。

 

 

09/28 グリーンピースわんにゃん訪問隊活動

第4金曜日の午後は、普通グリーンピースわんにゃん訪問隊の活動日です。

今日も、老人ホーム鶴林園に行って来ました。

今日のお供は、ブルテリ・新田犬雑の愛ちゃんです。生後38日くらいになっています。

愛ちゃんは、生後11日目から私が哺乳して育てているのですが。物怖じしない大人しい良い子だと思います。

訪問前に園の庭で排泄をさせる時に、他の犬に一発かまされてすごくビビッてましたが。

実際に園の2階ホールに上がって訪問を始めると、お年寄りに抱っこされて大人しくしてました。

そのうちに眠くなったのか、寝てしまう始末です。

今日の訪問は、お年寄りたちの円陣を幾分小さめに配列して、訪問ボランティアや動物たちとお年寄りたちとの距離感を短く感じるようにしてみたそうです。

全体的な雰囲気はすごく良かったと思います。


でも、今日はこの活動が始まってからずうっとほとんど休まずに参加して下さったシェリーちゃんご一家が、先日シェリーちゃんがとうとう16才と10日くらいで亡くなってしまったということで 、ご挨拶に見えられてました。

最後のミーティングでご主人がスピーチをされた時には、しみじみとした気持ちになりました。

この活動も、14年くらいになりましたか?いつまでも頑張って続けて行きたいものであります。

09/27 ビーグル雑の耳血腫

今日は、県西部の街で、グリーンピース動物病院から自動車で1時間強の遠いところから、ビーグル雑をお連れの方が来院されました。

このビーグル雑は、クロちゃんと言いまして。地域で増え過ぎた猪や鹿を退治するという農林業に大切な仕事をやっている名犬です。

このクロちゃんは、昨日から左耳の耳介が異様に膨らんで痛そうにするとのことです。

数年前にも反対側の右耳が、やはり耳血腫になって、それはもう少し近くの動物病院で手術によって治ったということです。

左耳は、画像のようにプックリと膨れています。

比較の対象になるように、過去に手術をして現在は正常になっている右耳の耳介も掲載してみます。

この耳血腫の原因ですが。ほとんどの場合外耳炎を慢性的に患っていて、すごく痒いので頭を激しく振ることにより、耳介軟骨が折れて出血するというのが原因なのです。

従って、その根本原因である外耳炎を治療しなければ、耳血腫そのものをいくら治療しても犬の苦しみは無くなりません。

耳血腫も早目に手術療法をするのも一つの解決方法ではありますが。最近のトレンドとして、猫インターフェロンの注入とステロイドホルモンの内服の併用で切らずに治すというやり方が取られるようになっております。

ただ、インターフェロン療法も反応が著しく悪かったり、遅かったりする場合には、手術に移行する方が良い場合もあると思います。

また、インターフェロン療法であっても手術療法であっても、外耳炎の原因である細菌とかマラセチア菌とかをコントロールしなければならないわけであります。

飼い主様には、以上のことなどをひと通りお伝えして、手術療法?インターフェロン療法?のどちらを選択されるのかをお尋ねしたところ、当面インターフェロン療法を選ばれました。

クロちゃんについては、まず耳道を滅菌綿棒で探って、細菌培養と薬剤感受性試験の材料を採取し、インターフェロンを生理食塩液で溶解して、1バイアル10万メガユニットを膨れた耳介の血腫内に注入しました。

一応、メーカーの説明書きには、初回の注入時には血液はむしろ抜かない方が良いとのことであります。

ステロイドの内服薬は1週間分、抗菌剤は培養と感受性試験の結果が出るまでの繋ぎの期間分処方してお渡ししました。

インターフェロン注入は、5日から7日毎に実施する予定です。普通だったら1回から4回の注入で治癒するということです。

クロちゃん、速やかに治りますように。

09/25 久々の投稿です。 こじれた外耳炎です。

9月8日にやる気の無いゴーヤの日記を書いてから以降、ブログの更新をサボっておりましたので、私の健康状態を気遣ってのメールとか入るようになってしまいました。
ご心配をおかけしたかとは思いますが、私自身は元気しております。

今日の症例ですが。
昨日初診で来院された12才のチワワの女の子です。高速で約30分くらいの少し遠方の街から来られました。

1年と少し前から、右耳が外耳炎になって、自宅からは少し離れた隣の町の、獣医さんが10人も働いているような大きな動物病院に通っていたのだが、治療しているにも関わらず、悪化して行って。外耳道にポリープが多発して何回か切除したのですが、もうボロボロになってしまっていて。
先日自宅の近所の動物病院に受診してみたら、「外耳炎がこじれてどうしようもないので、全耳道切除術が必要です。うちでは出来ませんので、どこか出来るところを探して行って下さい。」と言われて困っているとのことであります。
その上に、悪い右耳と同じ方の右眼も最近ひどく膿のような眼脂が出て来るようになって、白目が赤く充血して来たので、私の動物病院にかかってみようと思われたそうです。

右耳の状態は、確かにドブのような状態です。検耳鏡で覗いて見ますが、奥の方は膿のような分泌物が充満して何にも見えません。

「全耳道切除ということになると、さすがに私の動物病院でも手に負いかねますので、大阪のネオベッツVRセンターを紹介することになると思いますよ。」とお話しをしながら。
でも、一度も細菌培養と薬剤感受性試験とかの検査も実施したことも無いということですし。

とりあえずのそんな検査を行なって、その結果に基づいた投薬と処置をやってみて、少し落ち着いたところで、大きな手術が必要かどうか?判断させていただくことにしました。

昨日は細菌培養と薬剤感受性試験の材料を採取して、帰っていただいて。
今日の午前診に、検査結果が出たのを見に来ていただきました。

薬剤感受性試験の結果では、それなりに利く薬も見つかっています。
しかし、何でこじれたのか?基礎疾患は無いのか?少々疑問も感じます。

いろいろと話しを聴いているうちに、やけに水を飲んで、尿の量も異常なくらい多いという話しが出て来ました。

確かに、体形は随分太目です。

副腎皮質機能亢進症の話しとかして、基礎疾患を調べることが、急がば回れで、耳や眼の感染症を治すことに繋がるということを理解していただいて。

院内のスクリーニング検査を実施させていただきました。

血液検査の間に、眼の状態を診察して、角膜に傷が無いことを確認し、耳道洗浄と薬剤の点耳も行ないます。

約30分後に得られた血液検査の結果では、総コレステロールとアルカリフォスファターゼがそれぞれ382mg/dlと927U/Lという高値が認められました。その他の数値では、血小板数が64万7千と高値です。
血小板数は慢性感染の存在によるものだろうと思います。総コレステロールとアルカリフォスファターゼの数値は、如何にも副腎皮質機能亢進症を疑わせるものです。

しかし、飼い主様も、今日のこの結果で、これからどうなって行くのだろうか?と心配になって来ているみたいですので。
一応副腎皮質機能亢進症には二つの原因があって、その鑑別までしようと思えば今から2回ほど血液検査を行なわなければならないこと。治療はその原因によっては手術であったり、終生続く投薬であったりすることなど、いろいろ説明してさしあげて。資料もお渡しして。

次回来院する時までに、飼い主様としてどこまで突き詰めるおつもりなのか?を聴かせていただくことにして、今日のところは帰っていただきました。

今日の投薬は、薬剤感受性試験に基づいた外耳炎を治療するための内服薬と点耳薬、耳の洗浄液、結膜炎の治療のための点眼剤2種類であります。

次回来院の際には耳も眼もそれなりに改善していることと思いますが。出来れば副腎の詳しい検査をさせていただいて、チワワちゃんの今後の状態が上手く管理出来るようになったら良いと思います。

09/08 庭のゴーヤ

たまには仕事ネタではない記事でもひとつ。

毎年庭でゴーヤを作っているのですが。今年も5月に4本植えまして。

最近は、ゴーヤのカーテンもしっかり茂って。

数日毎に美味しい実を収穫出来るようになりました。


ゴーヤの苗は、近くのホームセンターで「アバシゴーヤ」という名称で販売しているのを購入します。

植え付ける土は、地植えは2ヶ所に分けて、それに100リットルのポリエチレンのポットが4個あるの2個ずつに分けて、その4通りを順番に使用することにより、それぞれの土では4年に1回植え付けられるという形にして、連作障害を防いでいます。

ゴーヤは、特に肥料を多く要求して来る作物です。毎週末に化成肥料を少しずつ追肥してやっています。

毎年9月になると、ゴーヤにも飽きて、食卓のゴーヤを見るとげんなりするのですが。

今年は、私の飼い主太得子さんが、ゴーヤの佃煮というレシピを学んで来られまして。

これだけのゴーヤでも佃煮にするとそんなに嵩を感じませんので、飽きが来なくて済んでいるようなことであります。

それと、今年のゴーヤは、苦味そのものも少ないように感じます。育苗会社も毎年毎年品種改良に努めているのでしょうね。

ではまた。

 

09/03 自分の病院受診

先々週の水曜日に、神戸市内のクリニックで脳動脈瘤が出来ているから手術を受けた方が良いと言われまして。

本日紹介状とMRI画像の書き込まれたCDを持って、神戸市はポートアイランドという巨大埋立地に立地する神戸市立医療センター中央市民病院という大きな病院に受診しました。
グリーンピース動物病院は午前診は臨時休診です。皆様ご免なさい。

この病院には、神戸市で働いていた頃、何の病気でだったかは失念しましたが、昭和58年にかかった経験があります。あの頃は若かったなあ。

受け付けで票を機械から取って待つのですが。なかなか順番が来ませんでした。
何とか済ませると、首からぶら下げる機械を渡されて、脳神経外科の受診予定が12時になるから、約30分前にはこの機械に連絡するので、脳神経外科の診察室前に行くようにと言われました。

午前8時50分頃に受け付けに並んで、この時点で10時前です。時間があるので何処かに見物に行きたいのですが。さすがに本土に戻っては時間がかかり過ぎでしょう。かと言って、埋め立て地の事情には不慣れですから、通路にある空いたソファーに腰かけて持参した動物行動学の本を読むことにsました

しかし、首からぶら下げていた機械がピロピロと鳴って、もうすぐですよと言ってくれたのが午後1時40分頃。

実際に名前を呼ばれて、神の手と言われる高名な先生の診察を受けたのが2時40分頃でした。

先生は、しかし、持参した画像を見ながら。「これくらいだったら、まだ小さいし、様子を見ていても良いんじゃないかなあ?」なんて言ってます。

しかし、紹介状に書いてある家族歴に、兄、父、祖父と総て脳出血で倒れているという記載を見て。考え直してくれたみたいです。

「まだ小さいとは思いますが。家族歴が高率に脳出血を発症しているということですから。MRIよりはるかに精細な画像が取れる血管造影をして、手術の適否を判断しましょう。」

と言われました。

訊けば、血管造影は2泊3日かかる検査だそうです。

それから、入院前の血液検査、心電図検査、胸部エックス線検査を行なって、入院申込書で必要書類を記載して、料金支払いまで終わったのが午後4時10分過ぎ。

大急ぎで加古川に帰って、午後診に来られている患者様の診察を始めることが出来たのは、午後5時半をとうに回った頃でした。

待っておられた皆様、どうも済みませんでした。そして、留守を守ってくれた動物看護師さんたち、有り難うございました。

今日は、実は、私の島根県は隠岐の島の実家に預けていた佐賀県の地犬のマルが子宮蓄膿症疑いで急遽こちらに姪によって連れて来られていたのを、動物看護師さんたちに残業を命じて、緊急で手術を行なったので、普通の倍疲れました。

血管造影の検査の予定は、現在のところ全く判りません。何でも神戸市中央市民病院は、いきなり電話で「明日入院」と来るらしいです。

入院受け付けで、せめて数日前には連絡をくれるよう交渉しまして、何とか4日から5日まえには電話連絡をいただくようになりましたので、次回患者様にご迷惑をおかけするのではありますが。
混乱が生じないように手配する時間は何とか確保出来たとは思います。

しかし、それにしても、神の手先生、実は亀の手ではないことを祈念しつつ待つ日々を過ごすことであります。

09/01 猛犬の外耳炎

和犬のサンド君は、7才になったばかりの男の子なのですが。この犬種に有り勝ちな性格、即ち異常に臆病でなおかつ攻撃性が強いために、先日から患った外耳炎の治療をなかなか許してくれません。

飼い主様でも、嫌なところを触ろうとすると、咬み付いて来ますので、危なくて処置のしようがありません。

仕方が無いので、飼い主様と相談の上、深い鎮静をかけて、耳の中から細菌培養の材料を取るのと、徹底的な耳掃除を敢行することに致しました。

本日午後に、胃の中を空にした状態で来院してもらいます。

何せ、飼い主様もきちんと保持出来ない子です。
当院で「仲良し君」と呼び習わしている保定棒で動きを止めておいて、鎮静剤を2種類組み合わせた注射を筋肉内に打たせてもらいました。

注射の後、10分もしないうちに横たわって、なすがままという状態になります。

まず耳の中を覗いて見ます。

左耳は、出口付近にまで膿が出て来てました。矢印の先に膿が見えています。

右耳には、膿こそありませんでしたが、パサパサとした黄粉が一旦固まってまたバラケたような耳垢が沢山付着していて、耳の皮膚はガサガサです。

滅菌生理食塩液で湿らせた滅菌綿棒を膿のある左耳に挿入して、培養の材料を取ります。

綿棒に付着した汚れは、培養の基材に塗り付けて、恒温室で培養すると共に、抗生物質感受性試験も同時に行ないます。
明日の夕方には感受性試験の結果が出ていると思います。

次いで、耳掃除を徹底的に行ないます。

まず耳の中に専用の洗浄液をたっぷりと注いで、ティッシュを当てがって入念にマッサージします。

更に、綿棒を使用して、外耳道の中の耳垢を丹念に除去します。


耳の中が綺麗になったら、抗菌剤、抗真菌剤、ステロイドホルモンの合剤の軟膏を注入して、耳道をマッサージして、お薬を耳の中に塗り拡げてやります。

片方が終わったら、もう片方も同じように耳掃除と点耳を実施して。

全部終了したら、鎮静剤の拮抗薬を筋肉注射して醒ましてやります。


小型犬で寒い季節だったら、入院室で保温しながら醒ますのですが、10キロ台半ばの中型犬で、まだまだ外気温は暑いですから、待ち合い室で飼い主様に見てもらいます。

拮抗剤を注射して10分も経つと、起き上って来ます。
十分に覚醒したのを確認してから帰宅していただきます。


明日の午後診に、飼い主様だけ来院していただいて、培養と感受性試験の結果に基づいたお薬を処方することになると思います。

しかし、サンド君、今回はそれで切り抜けても、再発予防のための日々の耳のホームケアが出来ないと、また再発する可能性があります。

7才の今更ではありますが。飼い主様にはサンド君の身体を何処でも自由に扱えるようになって欲しいです。
でも、難しいし、無理かな?

私としては、与えられた条件の中で何とか疾病を治療して行くしかありません。
猛犬の外耳炎の治療のやり方を、今日は書いてみました。

ではまた。

 

 

08/27 犬フィラリアの予防注射(1年利きます。)

犬の心臓糸状虫症(犬フィラリア症)は、今なお重大な疾患でして。

予防獣医学に無知、あるいは犬にとことんお金を使わない主義の飼い主様に飼育されている犬には高率に寄生する大変な寄生虫です。

しかし、その犬フィラリア症も、最近は、内服薬、滴下剤、注射、等々、いろいろな予防法が開発されまして。犬の飼い主様がその気になりさえすれば、ほぼ完璧に予防することが可能な病気でもあります。

表題の犬フィラリア予防注射という予防法ですが、今までオーストラリアで何年も使い続けられて来ていて、その有効性安全性は十分に確認されて来ている予防法です。

実は、同じような製品で、有効期間6ヶ月というフィラリア予防注射が、何年か前に国内で認可が下りて使用可能になったことがありました。この製剤は米国で使われ続けていたお薬でした。

私も、予防の有効期間が6ヶ月と、変に短くて、予防期間8ヶ月が標準の当地方には使い難いなあと思いながら、6ヶ月のお薬の動向に注目していたのですが。

何と、その予防注射は、発売と共に何例も重大な副作用が発生して、重篤な結果の子も結構出て来たらしく、私は怖ろしくなって、同じ時期にオーストラリア製の12ヶ月有効の今回と同じ注射薬を個人輸入して持っていたのですが。自分所有の犬数頭に使って以降は、使用する気にもなれませんでした。

今回輸入して、農林水産省に認可の申請をした製薬会社の担当者さんに、この12ヶ月有効のフィラリア予防注射の副作用発生状況を尋ねたところ。

普通に使用している混合ワクチンの副作用発生件数と比べて、若干発生件数が少ないくらいであることと。

副作用の程度は、ほとんどが注射部位の痛みくらいで、重篤なアレルギー反応はほとんど見られないということです。

とは言え、新しいお薬を導入するについては、それなりに不安も感じますので。

とりあえず、最もサイズの小さな包装を購入しまして。自己所有の犬たちに注射を行なってみました。

お薬の箱を開けると、瓶(バイアル)が2本入ってまして。片方は薬を封入しているマイクロカプセルが顆粒状になって入っており。もう片方にはマイクロカプセルを懸濁させる粘性のある溶解剤が入っております。

マイクロカプセルの入ったバイアルを底から覗いて見るとこんな感じです。

で、溶解剤を注射器で吸って、マイクロカプセルのバイアルに注入して、溶解します。

溶解剤で溶かし終えると、こんな感じになります。

で、それを犬の体重1キログラム当たり0.05ミリリットル注射器で吸って。犬の頸部皮膚に皮下注射するわけです。

皮下注射の光景は、こんな感じです。

ついでですので。もう1頭皮下注射のシーンを掲載します。

注射を実施した感じは。普通に混合ワクチンとか狂犬病予防ワクチンの接種と時と変わりなく。犬が異常に痛がるとかということもありませんでしたし、注射部位が腫れたり、顔がむくんだり、元気が無くなったりというような、アレルギー症状も生じていません。

皮下注射されたマイクロカプセルは、皮下に止まって、そこで少しずつ少しずつ壊れて行きますから。お薬が緩徐にカプセル外に放出して行くことにより12ヶ月間体内でのお薬の濃度を一定にキープしてくれるわけです。

日常診療の際にこの予防注射を実施した子には、当院の様式でフィラリア予防注射接種証明書を発行する予定にしております。

この予防注射の出現により、犬のフィラリア予防は大きく変化するかも知れません。何せ、12ヶ月間有効なのですから、体重が大きく変動しない成犬であれば、冬であれ秋であれ、来院のあった時に注射1本で簡単にフィラリア予防が可能になるのです。

これから料金設定をした上で、実際に臨床の現場で使用して行くことになると思いますが。料金は、それなりの仕入れ価格ですから、頑張って今までの内服薬とそう変わらないように、出来れば少し安めの価格に設定して行きたいと考えています。

使用開始の時期ですが。お薬はもう在庫しているのですが。一旦溶解剤でマイクロカプセルを溶解すると、2ヶ月以内で使い切らないといけないと、指示書に記載がありますので。いつ来るか判らない予防の子のために事前に溶解して置くことは、シーズンオフに突入するこれからは、ちょっと冒険かも知れません。

 

 

 

 

08/25 セキセイインコの疥癬

どうもここ数日ブログ向きの症例が無いのですが。

今日は犬でも猫でもない鳥の病気をひとつ。

午前診に来院のあった、セキセイインコです。

大きめのケージで2羽飼育されているのですが。青い子の方が上下の嘴がひどく変形しています。嘴の根元の蝋膜という部分とか、口角の皮膚にモロモロの組織が造成しています。

画像は、処置後の物ですから、はっきり判らないかも知れませんが。

 嘴を整形する前に画像を撮影すべきでしたね。

このような嘴の変形とか蝋膜や口角皮膚の過形成は、鳥疥癬に特徴的な病変です。

飼い主様にその旨説明して、疥癬虫を殺す内服薬を調合し、それから鳥を捕まえて、嘴の整形と調合した内服薬の経口投与を行ないました。

一緒に暮らしているもう1羽のセキセイインコも、ごく軽度ではありましたが、嘴の変形が始まりかけていました。

こちらも内服薬を経口投与します。

お薬の投与については、飼い主様に自宅で出来るかどうか?お訊きしましたが。どうも自信が無さそうでしたから。
今後は、7日に1回のペースで来院していただいて、お薬を投与することにしました。

その子によってもいろいろでしょうが。何週間かお薬を続けていると綺麗に治って来ると思います。

疥癬もひどくなると足の指が落ちたりしますが。今回はそこまでひどくなくて良かったです。

鳥疥癬、久し振りに診察しました。