兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の サナダムシ感染(アウトドア生活の危険) 
院長ブログ

サナダムシ感染(アウトドア生活の危険) 

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5才6ケ月令のパピヨンの女の子の話しですが。

この秋、1ヶ月ほど行方不明になってまして。見失った場所からかなり離れた田園地帯で保護した人が連絡をくれて、無事に飼い主様の許に帰って来たそうです。

それで、帰って来てから気になるのが。食欲が今ひとつ湧かないようで食が細いということと。息づかいが荒いように感じること。そして、来院の少し前に下痢便を排出したということで。来院されました。

下痢便は持参されてなかったので、当日に検便は出来ませんでした。

荒い息づかいに関しては。診察台上ではそんなに気にはなりませんでしたが。体温、呼吸数、心拍数を測定して、明らかな異常はない事を確認します。

食欲不振については、院内のスクリーニング血液検査を行ないました。

低蛋白血症、軽い貧血と、犬CRPの高値とが異常値として検出されました。

痩せてはいるが、それは野生に近い過酷な状況下で生活していたためかも知れないと考えて。一般的な腸炎のお薬を処方すると共に、便が採取されたら勘弁を実施したいので持参するようにとお願いしました。

2日後に持参された便は。腸炎のお薬が利いたようで下痢便ではありませんでしたが。
検便を行ないますと。直接塗抹法でサナダ虫の一種のマンソン裂頭条虫の虫卵が検出されました。浮遊法では虫卵は検出されませんでした。

マンソン裂頭条虫の虫卵は、やや歪んだ感じのラグビーボール様の形態をしているのが特徴です。

犬猫の臨床で問題になるサナダ虫には、マンソン裂頭条虫の他、広節裂頭条虫(日本海裂頭条虫)と瓜実条虫とがあります。

瓜実条虫は蚤を介して感染する比較的身近な虫で、駆虫は専用のお薬を使用すれば比較的容易です。

広節裂頭条虫とマンソン裂頭条虫は、水中や水辺の多くの動物を介して感染する寄生虫で、犬猫の他人間にも感染します。この2つの寄生虫は、もうひとつ壺型吸虫という寄生虫と共に同じ専用の駆虫薬を使用するのですが。これがかなりしぶとくて駆虫し難いのです。

駆虫薬には、内服薬と注射薬がありますが。過去に内服薬では落ちなかった経験が数例あり。注射薬は比較的効果が確実に発現しているように感じられます。

飼い主様に虫の卵をお見せして、以上の事を説明しましたところ、注射での治療を希望されましたので、注射を実施しました。

このお薬、注射にしても、内服にしても、症例によっては虫が溶けてしまって、虫体を確認出来ないことがあるらしいのですが。

今回のパピヨンちゃんの場合は、注射の翌日に大きなサナダ虫の虫体が糞中に排泄されたのを飼い主様が確認されたそうです。

画像は他のわんこから排出されたサナダ虫の画像です。このパピヨンちゃんのサナダ虫は飼い主様が処分してしまったそうです。

サナダ虫の名前の由来は、着物の着付けに使用する「真田紐」に虫の模様が似ていることから来たものだと聴いておりますが。真田紐ってこんな感じの紐なんですね。

パピヨンちゃん、虫が駆除出来て良かったです。そう言えば、今後の迷子対策にマイクロチップをお勧めした方が良いかも知れません。

ではまた。