兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 寄生虫&疾病の予防
院長ブログ

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犬の健康管理(子犬の病気予防)

犬の健康管理 子犬の病気予防

犬の健康管理一般を、一部には子犬を繁殖する場合や子犬を入手した場合も含めてまとめてみました。記憶に残りやすいように画像も掲載したいのですが。整理が悪くて思うに任せません。おいおい追記していきます。

 

混合ワクチン

犬の感染症予防ワクチンは、通常は何種類かのワクチンをブレンドした混合ワクチンとして注射で行います。最近はケンネルコフ(犬舎風邪)対策に点鼻ワクチンも存在しますが。まだ一般的ではありません。

混合ワクチンには、3種、5種、7種、8種と様々なバリエーションがありますが。

犬にとって感染すると致死的な結果になる重要な疾病でワクチンが必要な物は。ジステンパー、パルボウィルス感染症、犬伝染性肝炎、にレプトスピラ感染症です。

一般的に使用されているワクチンには、飼い馴らして病気を起こさなくした生きたウィルスを注射する生ワクチンと、病原体をホルマリンで殺してその死体を注射する不活化ワクチンとがあります。

感染症のワクチンは、子犬が初乳で母親からもらっている移行免疫が多く残っていると効力が発揮できないとされていて。移行免疫が消失し始める生後2ヶ月令から接種することが奨励されていましたが。

最近ではワクチンの性能が飛躍的に改善されて、生後28日で接種しても移行免疫を乗り越えて効果を発揮するワクチンが使われるようになっています。

従って、私が推奨している子犬の健康管理プログラムは、生後3週間で検便と虫下し、4週間(28日令)で最初のワクチン(この時はレプトスピラを含まない5種混合ワクチン)と駄目押しの検便と虫下しを実施して。

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2回目のワクチンはそれから3週間経過した生後7週令(49日令)で7種か8種混合ワクチンを接種して。

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子犬を譲渡する際にはそれから1週間経過して8週令で引き渡します。

ワクチンが効力を発揮するためには、子犬の側の免疫機能が正常に働いていることが重要ですが、幼い子犬を母親から離したり、全く新しい環境に移動させたりすると、子犬は強いストレスに曝されるわけで、その際に子犬の副腎から大量の副腎皮質ホルモンが分泌されます。副腎皮質ホルモンは免疫反応を阻害する働きを持っていますので。ワクチンの効果も阻害される可能性があります。

3回目のワクチンは、新しい飼い主の元に行って2週間経過した時(この時点で2回目から3週間経過しています)に実施しますが。この時にお勧めしているのがワクチン抗体価検査です。これは1mlくらい採血して、血漿を分離し、検査センターに送ってジステンパー、パルボ、伝染性肝炎に対する抗体価を測定するというものです。同時にレプトスピラのワクチンは2回目を接種します。

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レプトスピラワクチンを他のワクチンよりも遅くに接種するのは、古い知識ですが、生後2ヶ月令以前にレプトスピラワクチンを接種すると副作用が出やすいという記事を読んだ事があるからです。

ワクチン抗体価検査の結果は、検査センターに依頼して約1週間で返って来ますので。その結果によって外へのお散歩デビューが出来るかどうか判定されます。犬ジステンパー、犬パルボウィルス、犬伝染性肝炎のいずれかの抗体価が十分に上がっていない場合には、5種混合ワクチンを追加接種して、さらに3週間後に再度抗体価検査を実施することをお勧めします。

抗体価が十分に上昇している子犬は、外にお散歩デビュー可能になる他、前回のワクチン接種から1ヶ月経過した時点で狂犬病予防注射と畜犬登録を実施します。

 

狂犬病予防注射

狂犬病とは、ラブドウィルスというウィルスによる全哺乳類が感染する致死的な病気で。日本、ニュージーランド、オーストラリア、北欧の数ヶ国以外のほぼ全世界で蔓延している脳神経を破壊する病気です。発症すると治療法が無くてほぼ全症例死亡します。特にアジアアフリカの発展途上国では人間の被害が深刻な問題になっています。我が国では昭和29年に狂犬病予防法が施行されて、現在は猟犬を含めて全ての飼い犬には狂犬病予防法に基づく畜犬登録と毎年1回の狂犬病予防注射が義務付けられていて、厳しい罰則もあります。

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子犬の混合ワクチンと狂犬病予防ワクチンについては以上ですが。2年目以降の成犬は前回のワクチンから1年経過した時点で混合ワクチンを、春の4月から6月までの間にその年度の狂犬病予防注射を続けて行く必要があります。

 

犬フィラリア予防

犬フィラリア症とは、ディロフィラリア・イミティスという学名の素麺のような寄生虫が、蚊によって媒介されてイヌ科の動物や猫の心臓に寄生することによって生じる循環器疾患です。予防法の無かった昭和の半ばまでは、この病気のために屋外飼育の犬は5才とか6才で苦しそうな咳をしたり腹水が溜まったりして数ヶ月から1年くらいで死ぬことが普通でした。また急性症状が出た時には激しい咳と呼吸困難、赤黒い尿を排泄して1週間から10日くらいでやはり死んでしまいました。

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犬のフィラリアが心臓に寄生しているイメージのオブジェです。

 

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急性フィラリア症になってしまった犬の頸静脈からフィラリア虫を釣り出しているところです。

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フィラリア釣り出し術で取り出したフィラリア成虫のホルマリン漬け標本です。

 

現在は内服薬、注射薬、皮膚に滴下する滴下剤などの様々な予防薬が使用されるようになって、犬フィラリア症はほとんど見られることは無くなりましたが。それでも知識不足の飼い主に飼われた犬には寄生が発見されることがあります。


当院で処方しているフィラリア予防薬です。向かって左からノミマダニ駆除薬とフィラリア予防薬合剤のネクスガードスペクトラ。真ん中が食べさせるタイプのイベルメックチュアブル。右がミルベマイシン錠です。

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犬フィラリア予防で重要な事は、予防薬を与える期間です。1年に1回の注射以外のほとんどのフィラリア予防薬は、1ヶ月前に蚊に刺されて体内に入ったフォラリア虫の幼虫が成虫にならないようにまとめて虫下しをかける感覚で使用されるものでして。蚊の吸血が始まってから1ヶ月後から月に1回与え始めて、最後の蚊の吸血から1ヶ月後まで与え続けることが必要です。

従って、関東から以西の本州では5月末から投薬を始めて、最終が12月末に最後の投薬をする事になります。沖縄辺りでは年中投薬しなければならないでしょうし。

最近は温暖化で投与期間は地方によっていろいろ変化している可能性がありますので。具体的にはそれぞれのかかりつけ獣医師の指示に従ってください。

 

ノミマダニ予防

ノミは気温が高くなる夏場に、野良猫が住んでいる地域であれば、路上で繁殖するようになりますから、犬を散歩させると成虫が飛びついて来て寄生します。いったん寄生されると、犬の皮膚から吸血したノミはすぐに産卵を始めて、生まれた卵は犬が生活している犬舎で犬の皮膚から落ちるフケなどの有機物を食べて成長しますので、犬舎全体がノミの巣になってしまいます。

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製薬会社作成のノミの成長サイクルをイメージしたオブジェです。

ノミに寄生されると、ノミアレルギー皮膚炎になってひどく痒いだけでなく、ノミを介する瓜実条虫というサナダムシの一種が腸管に寄生して栄養を横取りしますので、犬が痩せて来たり下痢をするようになってコンディションが悪くなります。

マダニは山野に生息していて、犬だけでなく人間にも食い付いて来て吸血する害虫で、初夏から秋口までが活動活発ですが。真冬でも少し日当たりが良い藪では寄生して来ます。

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マダニの一種のフタトゲチマダニの模型です。

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生きたマダニはこんな感じです。

マダニの害は、吸血部位が腫れてひどい痒みが数ヶ月続くだけでなく。マダニ媒介性のバベシア症という貧血を起こす寄生虫疾患やウィルス性の重症熱性血小板減少症などの致死性の感染症の原因となります。

最近ではノミやマダニの駆除薬は便利で有効な製品が開発されています。剤形も皮膚に垂らす滴下剤もあれば内服薬もあります。

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マダニ駆除薬です。左が滴下剤のフィプロスポットプラスでフロントラインのジェネリック。真ん中がフィラリア予防薬との合剤のネクスガードスペクトラ。右が食べさせるタイプのブラベクト錠です。

ここ数年前から発売されているノミマダニ駆除内服薬は、安全性有効性高い薬がそろっていますが。

私が知る限りでは、繁殖犬に対する安全性試験までやっている駆除薬は、内服後3ヶ月間有効なブラベクトという製品だけであって。それ以外の駆除薬は内服剤も滴下剤も繁殖に使用する犬には与えないようにという但し書きが添付されています。

 

消化管寄生虫対策

消化管内寄生虫とは、いわゆるお腹の虫のことですが、子犬で頻繁に見つかるのは犬回虫とコクシジウムです。それ以外には犬鉤虫、犬鞭虫、マンソン裂頭条虫、広節裂頭条虫など多くの寄生虫が犬のお腹を狙っているわけです。

 

子犬では母犬から胎盤を通じて出産前に回虫が感染している可能性があります。離乳食を始める時やワクチン接種の時にこまめに検便を実施して虫が見つかれば駆虫する必要があります。

成犬の場合、少なくとも年に1回は、例えばワクチン接種や狂犬病予防注射の機会に動物病院に便を持参して検便を行なう必要があります。検便の方法にも浮遊集虫法、遠心沈殿法、直接塗抹法などのいろいろな方法があって、それぞれに発見可能な寄生虫の種類が違います。

猟犬の場合には、水辺の生き物を食べることによって感染するマンソン裂頭条虫や広節裂頭条虫の寄生が重要です。 裂頭条虫類の虫卵は直接塗抹法か遠心沈殿法でないと見つけることは出来ませんので、少なくとも直接塗抹法と浮遊法の2種類の方法で検便してくれるかどうかを確認して検便してもらった方が良いと思います。

なお、寄生虫にはそれぞれ専用の駆虫剤を使用しないと駆除が出来ません。犬の虫下しとして薬局などで市販している薬は、犬回虫くらいしか駆虫出来ませんので注意して下さい。

 

~犬のマイクロチップ~

マイクロチップとは小さな電子機器で、犬の皮下に専用の注射器で装着します。この機器自体は電波を発信するものではないですが、読み取り機を近づけてスイッチを入れると、読み取り機の問いかけに反応して読み取り機に機器固有の番号が表示されます。

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マイクロチップのサンプルです。サンプルは樹脂に封入されています。

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読み取り機です。

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犬の首の皮下に入っているチップを読み取っているところです。

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番号は読み取り機のウィンドウに表示されます。

マイクロチップ挿入後この番号を日本獣医師会の情報センターに登録しておくことにより、様々な理由で保護された動物がマイクロチップを装着されていた場合にチップの読み取りですぐに飼い主が判明しますので、保護犬が飼い主のもとに戻る可能性が高くなるのです。

日本獣医師会のマイクロチップはISO(国際標準規格)で定められている製品を使用していて、海外との動物のやり取りの際に行われる検疫でも挿入が必須となっています。

マイクロチップの読み取り機は、兵庫県では数年前から獣医師会に入っている全動物病院のほか、各地の動物愛護センターにも備わっています。全国でも各動物病院や動物愛護センターに急速に普及しつつあって、動物愛護の遂行のツールとして非常に有効なものとなっています。

令和元年6月の動物愛護管理法の改正で、犬猫の販売業者は販売する犬猫にマイクロチップの装着が義務化されました(※マイクロチップ装着義務化は令和4年6月1日施行。販売業者以外の所有者は努力義務が課される)ので、現在すでに私の動物病院に新規で受診する子犬子猫にはほとんど全頭マイクロチップが入っているような状態です。また、動物愛護管理法では、チップ装着義務化の施行と同時に、登録されたマイクロチップが狂犬病予防法に基づく鑑札とみなされることになります。

猟犬については、マイクロチップの装着を実施するよう猟友会からの文書で周知されているところですが、マイクロチップを装着しておくことにより、以前に聞いたことのある猟犬の盗難や逸走の場合に、発見された犬の飼い主がマイクロチップの読み取りで判明しますので、猟犬盗難の抑止にもつながるものとなると思います。

第一種動物取扱業に登録している繁殖者から購入した猟犬の子犬には当然にマイクロチップが装着されるようになると思いますが、既に何年も飼育されている成犬であっても未装着の場合、猟犬は大切な狩猟のパートナーですから、マイクロチップを装着して守ってやるべきだと思います。

マイクロチップ装着の費用は、私の動物病院では税込5,500円です。この価格は個々の動物病院で異なる可能性はあります。それ以外に日本獣医師会情報センターへの登録費用が1,050円ほどかかり、情報登録費用は郵便局かコンビニで支払うことになります。

 

 

野生的生活は厳しいです

すごく小柄な子猫ですが。3日前から当院のクライアント様のお宅に現れるようになったということで。
人慣れしているようなので、気になって保護したとのことで来院されました。

先住猫に感染するような病気を持っていないかどうか?調べて欲しいということなので、潜伏期問題について説明の上、猫白血病ウイルス抗原、猫エイズウィルス抗体、猫コロナウィルス抗体の血液検査を実施して。いずれのウィルスも現時点では陰性ということでして。
その他耳ダニの有無などもチェックして。

消化管内寄生虫については新しい糞便を持参するようにとお伝えしました。

2日後に糞便を持って来られたので、検便をやりますと。

最初に目についたのは、マンソン裂頭条虫の卵です。
ラグビーボールが変形したような、特有の形で見分けがつきます。

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その次に見えて来たのが、壺型吸虫卵でした。

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そして、顕微鏡をスクロールして行くと。おびただしい虫卵が見えて来ます。虫卵の数は圧倒的に壺型吸虫が多く、マンソン裂頭条虫は比較的少なく感じます。

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ここで注意しなければならないのは。この2つの寄生虫卵は、虫卵の比重が回虫卵等よりもはるかに大きいので、通常動物病院で好んで行われる浮遊法という検便のやり方では検出出来ません。必ず直接塗抹法か遠心沈殿法という比重の大きな虫卵を検出出来る方法で調べないと見つからないのです。

因みに、マンソン裂頭条虫の成虫は、interzooさんの小動物寄生虫鑑別マニュアルという教科書では。
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こんな形でして。多数の節から構成されています。拡大すると。

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こんな節です。

壺型吸虫は、同じ教科書では。

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こんな形ですが。サイズが2㎜と小さいものですから、私は実物を見たことがありません。糞便を丁寧に洗ってメッシュで͡濾して、拡大鏡で見ないと見つけることが出来ない虫だと思います。

この2種類の寄生虫を駆除するには、幸い非常に良く利く注射薬がありまして。それを使うと1回か2回で駆除出来ます。同じ成分の内服薬もありますが。今までの経験では注射薬の方が効果が確実です。

この猫ちゃんも注射を実施しました。

注射の直後から、腸内で虫が苦しんで暴れたのか?嘔吐したりして、若干苦しみましたが。

翌日の便にはしっかりとマンソン裂頭条虫本体が出てました。

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拡大するとこんな感じです。

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1週間後の検便では、あれだけ沢山あった虫卵が全く見えなくなっていました。

マンソン裂頭条虫も壺型吸虫も、自然豊かな環境の水生生物を介してでないと猫や犬、人間には寄生しません。

つまり、魚やカエルなどの水の生き物を生で食べることによって寄生が成り立つという虫なのです。

この猫ちゃんは保護されるまでの数ヶ月間、加古川の河畔でカエルや昆虫や小魚などの水辺の生き物を狩りして命を繋いでいたのだと思います。

野生的生活は厳しいものですね。今後は愛情深い飼い主様の元で室内の生活になるわけですから、こんな寄生虫に感染することもなく幸せに生きて行けることと思います。

ではまた。

犬の急性フィラリア症の手術

先週土曜日に、柴犬が急性フィラリア症を発症したのだが。近医では内服薬を処方されただけなので、グリーンピース動物病院で手術して欲しいと、午後に電話がありまして。

聴けば、一般道高速道乗り継いで1時間は離れた町からだそうですが。

果たして本当に急性フィラリア症なのか?と半信半疑ではありましたが。午後診に来院していただいて。

問診で経過を聴いて。身体検査、血液検査、心エコー図検査、等々やったところ。

本当に急性フィラリア症でした。

フィラリア症は、春から秋までにフィラリアの幼虫を持っている蚊に刺されることにより、犬科の動物や猫の心臓にフィラリア虫という素麺のような線虫が寄生することによって発症する循環器疾患ですが。
犬フィラリア症には、肺動脈に虫が寄生している慢性フィラリア症と、肺動脈に居た虫が右心房から大静脈洞付近に移動することにより発症する急性フィラリア症があります。

急性フィラリア症は、フィラリア感染が証明されていること。急な発症でショック状態に陥っていて、苦しそうな呼吸、食欲は減少から廃絶になり、胸部聴診すると特有のガリガリゴロゴロという心雑音が聴取されて、血色素尿症になっていることくらいで診断されます。
発症が多く生じる季節は気温が急激に上昇する春先が多いです。

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この柴犬ちゃんは、フィラリア成虫抗体の検出キットで、反応窓に2本バンドが現れていますので。寄生は証明されました。

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尿検査をしてみると、遠心分離後の上澄みが血色素尿特有の色をしてまして。ここには出していませんが尿検査試験紙でヘモグロビンの反応が生じてました。

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エコー検査を実施してみると。右心房にフィラリア虫体が団子状になって詰まっています。上の画像の向かって左中ほどからやや下の点々ブツブツという感じの部分がそれです。

静止画では随分判り難いですので。YouTubeにアップした動画をご覧いただくことにしましょう。

静止画の説明でお伝えした向かって左側中ほどから下の部分に団子状になったフィラリア虫が心臓の動きに合わせて動いているのが判るかと思います。

というわけで。診断が付いた頃に外来診療が終わりましたので。そのまま残業して頚静脈フィラリア吊り出し手術を実施しました。

飼い主様には、一般的にはこの手術は死亡率3割の非常に危険な手術ではあるが。実施しないとほぼ100%死亡するので、犬を助けようと思えば選択の余地は無いということを説明して同意を得ました。

術前の血液検査では、血小板数の減少がありますので。DIC(播種性血管内凝固)が始まりつつある可能性大であると判断して。低分子ヘパリンの投与も開始します。

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麻酔導入して、気管にチューブを入れる時が、この手術の最初の試練なのですが。妙に徐脈になって心停止来るか?という雰囲気になって、相当ヒヤヒヤしました。

何とかそこを乗り切って、麻酔が安定したので、首の毛を刈ります。フィラリア吊り出し手術は頚静脈からアリゲーター鉗子という器械を心臓まで入れてフィラリア虫を摘まみ出すのです。

麻酔導入、術野の毛刈り消毒、術者の手洗い消毒、術衣帽子マスク手袋の装着は迅速に行って、ちょっとでも時間短縮を図らなければなりません。

それで、手術を開始して。アリゲーター鉗子を頚静脈から挿入して、途中引っ掛かる場所があるのですが。犬の首と身体の角度を微妙に動かして、真っ直ぐな鉗子が無理なく入って行く角度をみつけます。

いったん鉗子が心臓内に入れば。その角度を保持するようにして。鉗子の顎を開いて、手探りで虫を捕まえます。

吊り出した虫を拡大するとこんな感じです。

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これで4匹か5匹は獲れているでしょうか?

この操作を何回も繰り返して。最後には鉗子を心臓に3回も4回も入れて探っても虫が摘まめない状態になったところで。看護師さんに聴診器を犬の胸に当ててもらって、心音を聴取して。心雑音が消失していれば完了なのですが。

この子の場合心雑音は消失しなくて、音調がガリガリゴロゴロという感じからシャーシャーという透明感のあるものに変化していました。

心雑音が消失していないと、取り残しが心配になりますが。そうこうしている間にまた徐脈になって、心電図も上手く取れなくなって行きます。

これはヤバいか?と心配になりまして。心臓マッサージを試みたりして。

ちょっと回復したところで、頚静脈、皮下織、皮膚の順に縫合を行ない。麻酔からの覚醒を図ります。

あれ以上粘っても、既に虫は鉗子で探れる位置には居なくなっているわけですから。リスクが増えるだけです。

時間はかかりましたが。何とか回復しまして。麻酔からも覚醒することが出来ました。

ほんのちょっとだけエコーの探子を胸に当てて、心臓の中の様子を観察します。

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静止画でも判りますが。最初に見られた団子状のフィラリア虫が消失しています。

動かしてみると良くお判りになると思います。

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手術後は、静脈輸液を継続しながら入院ケージにて治療を継続します。

その晩は、コーヒー色の尿を何回か排泄し、コールタール状の下痢便も少量排泄し。意識も相当低下してましたが。何とか夜を乗り切りました。

翌日は朝から水を欲しがりますので、少量与えてみるのですが、水を飲めばすぐに吐いてしまい。
夕方には元気もかなり回復して来て、飼い主様が面会に来られた時には起立出来るまでになりまして。しかし、水を与えるとやはり吐いてしまいます。

術後2日目に血液検査を行なってみると。来院時に異常に高かった尿素窒素とクレアチニン、無機リンはかなり低下しましたが。肝酵素が上昇して来ているのと。リパーゼの上昇が見られます。
もしかすると、循環不全の影響で膵臓が傷んで膵炎を継発しているのではないかと、心配になります。

それやこれやに対応しながら治療をやっていると。術後3日目の朝には何とか流動食を水で薄く溶いたものは摂取出来るようになりまして。その量も夕方には増えて来て。濃度を濃くしても何とか行けそうです。

この時点で試験的に退院させました。

中1日置いて再来院してもらいましたが。すっかり元気になってまして。心雑音は完全に消失してましたし。固形物も食べるようになってました。

この子の場合、手術前に一般状態が相当悪くなってましたし。内臓機能も恐ろしく傷んでましたので。回復がかなり困難でしたが。
発症後速やかに診断が付いて手術を早期に行なえば、こんなに苦戦することはなかったと思います。

それでも何とか助けることが出来てホッとしました。

しかしです。私はこの子を最初に診察した獣医師にかなりイラっと来るものがあります。

急性フィラリア症は、そんなに診断が難しい病気ではないと思うので。手術を行なうことが出来ない獣医師でも診断は容易に付けれるはずであります。
そして、診察後に何で急性フィラリア症であることを飼い主様に告げなかったのか?内服薬の処方だけで済ませてしまったのか?

自分が手術を出来ないことは別に恥でも何でもありません。私だって出来る手術よりも出来ない手術の方が圧倒的に多いです。

そして、自分には出来ない手術症例に出逢った時には、出来る獣医師に速やかに紹介すれば良いだけの話しではないですか。

最初に診察した獣医師が、この子の状態を急性フィラリア症であると判っていて手術の必要性を飼い主に説明することなく投薬だけで済ませたのであるならば。
その獣医師は、獣医師である前に人間としてどうなんだと訊きたいところであります。

そんなことを考えながら、昨日いつもお世話になっている整骨院で治療を受けた時に。この話しが出まして。その時に院長先生が、自分の犬がフィラリア症と診断された時に今の話しとそっくりの症状だったけれども。診察した市内の若い獣医師は急性フィラリア症であるということや手術をしないと死んでしまうことなどは言わずに10日間の薬だけをくれただけで。
愛犬が苦しみながら日々弱って行って、とうとう死んでしまって。ものすごく悲しい気持ちになってしまったのだと言われてました。

本当に辛い話しです。

そんな話しを聴くと。私はこれからも自分の仕事に誠実に、仕事の対象の動物たちに愛情を持って、飼い主様には正直に、誠意ある獣医療を頑張って行きたいと心から思う次第であります。

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ではまた。

犬と猫のワクチン接種の見直しについて(WASAVAワクチネーションプログラムとワクチン抗体価検査)

ワクチンという疾病予防法は、怖い伝染病を予防するのに非常に有効です。それはどんな物かというと。病気を引き起こす細菌やウィルスなどの死んだ物(不活化ワクチン)、あるいは人間が飼い慣らして病気を引き起こさなくなったウィルスの生きた物(生ワクチン)を注射あるいはスプレーもしくは内服薬の形で生体に接種するという物です。

ワクチンは動物の感染症対策には非常に有用な手段ですが。同時に副作用の危険性を伴なうということも忘れてはいけません。

ワクチン副作用による健康被害の例としては。

1、ワクチン接種によりアナフィラキシーショックのようなアレルギー反応が生じる。
2、免疫抑制剤の投与によって生体の防御力が著しく低下している子などは、本来病原性が消失しているはずの生ワクチン接種で発病してしまう。
3、昨年だか数年前だかに発表されたという論文によると、猫ワクチン接種を頑張って毎年実施している飼い猫ちゃんの方が、ワクチン接種で頑張ってない飼い猫ちゃんよりも慢性腎臓病発病の発症が早くなってしまう。
4、狂犬病予防注射により痙攣や麻痺のような神経障害が生じる。

ということがあるらしいです。

1,2,4については従来から認知していましたが。3、は先日のセミナーで聴くまでは知りませんでした。そして正直意外でした。しかし、そのメカニズムについて知るとなるほどと納得出来るものがあります。

猫の3種混合ワクチンは、ほとんどのワクチンメーカーがその培養基材として猫から採取した腎芽細胞を使用しているそうです。
そうであれば、ワクチン製造過程において頑張って精製してもどうしても腎臓由来の成分が製品中に残存してしまうでしょう。
そのワクチンを接種された動物には、ワクチン本来の病気を防ぐ抗体も上昇しますが。不純物として残ってしまった腎臓由来の成分に対する抗体も作られてしまう可能性があります。
そうして、期せずして作られてしまった腎臓に対する抗体は、多分自分自身の腎臓も攻撃するようになると思われます。

ワクチンという物は、そんなわけで思わぬ副作用を生じてしまう可能性を秘めているわけです。必要最小限の接種に止めておくこともまた大切だと思います。

知っている人は知っているかと思いますが。WASAVA(世界動物病院協会)という団体がありまして。その中で犬猫のワクチン接種ついてこうした方が望ましいという推奨プログラムが制定されています。

グリーンピース動物病院でも、このWASAVAワクチネーションプログラムに準じたやり方で、当院に来院されるワンちゃんネコちゃんに必要なワクチン接種を行なって行こうと、遅ればせながら決定しました。

基本的な考え方としては、ワンちゃんネコちゃんには必要なワクチンを必要な回数接種して、決して接種し過ぎないようにすることでして。それ以上でもそれ以下でもありません。

 

それで、当院が今後犬と猫に接種するワクチンのプログラムを具体的に述べます。

まず、犬ですが。

ワクチンの中で最も大切なものをコアワクチンと言いますが。WASAVAは犬のコアワクチンを、ジステンパー、パルボ、伝染性肝炎の3種類としています。我が国で大切なワクチンは、このコアワクチンと、ノンコアワクチンの中でのレプトスピラが挙げられると思います。

レプトスピラ感染症は、レプトスピラ属の細菌が病原体です。犬だけでなく人間にも感染する人獣共通感染症であること、ネズミなどのげっ歯類の尿を介して感染すること、高温多湿の環境を好み、冷涼乾燥の環境では感染しにくい、などの特徴があります。
その特徴から日本を始めとする東アジアのモンスーン気候の国では重要な感染症と思われます。
当院ではここ数年はレプトスピラ対策として、京都の微生物学研究所(京都微研)のレプトスピラ5種ワクチンを使用していました。この5種ワクチンで日本で発生するレプトスピラの90%に対応出来るとされてました。
ただ、今年に入って京都微研の事情によりレプトスピラ5種ワクチンは入手不可能になってしまいまして。現在利用可能なレプトスピラワクチンは、レプトスピラ・カニコーラとレプトスピラ・イクテロヘモラギー(コペンハーゲニー)に対応した2種ワクチンのみであります。2種でも接種しないよりははるかにましです。

具体的にワクチン接種を希望される犬が来院したならば。子犬の場合は生後1ヶ月令くらいならばまず5種混合ワクチンを接種します。その後3週間おきに7種混合ワクチンを2回接種します。3回目の時に、あるいは3回接種後3週間の時点で血液中の抗体検査を実施して、少なくとも抗体が上昇し難いジステンパーとパルボに対する抗体価を測定した方が良いです。

子犬のワクチンが3回終了して抗体価がしっかり上昇したならば。2年目に再度7種混合ワクチンを接種して。

それ以降は3年に1回のペースで7種混合ワクチンを。間の年にはレプトスピラワクチンを接種することになります。

このやり方で、コアワクチンは3年に1回、レプトスピラワクチンは毎年接種されるわけです。

ワクチン希望の成犬の場合。それまでの接種歴がはっきりしていない場合には、7種混合ワクチンを1回接種して3週間後に抗体検査を実施して、免疫が付いていることが確認されたら翌年からは7種を3年に1回と間にレプトワクチンを毎年接種して行きます。

 

猫のコアワクチンは、猫伝染性鼻気管炎、猫カリシウィルス感染症、猫汎白血球減少症の3つの病気に対するワクチンです。これは当院で従来から使用している猫3種生ワクチンです。

子猫だったら上記の3種を1ヶ月くらいおいて2回接種して。1年後にもう1回接種したら後は3年に1回接種して行くことになります。

成猫の場合は3種を1回接種して、出来れば抗体検査を実施して、その後は3年に1回継続接種することになります。

猫のワクチンの場合、基本的には3種生ワクチン以外は接種しません。猫エイズや猫白血病ウィルスワクチンは接種の根拠が無いと、WASAVAは言い切ってますし。いろいろなメーカーが発売しているアジュバントを使用している不活化ワクチンは過去の経験で接種部位に繊維肉腫を発症した辛い経験がありますので、自分としては絶対に使用することはありません。

この接種のやり方は、今月から早速始めております。

なお、トリミングサロン、ドッグラン、犬猫同伴可能宿泊施設等がワクチン接種証明書の提示を求めて来る場合がありますが。その場合は、動物から採血してワクチン抗体検査を外注検査で実施して。ワクチン抗体検査証明書を発行しますので、それを提示することでワクチン接種証明書に換えることが可能と思います。必要ならばその施設に私が説明するようにいたします。

 

2018年4月 追記です。

その後、生後2年目以降のワクチン追加接種時期の到来した動物に。犬にも猫にもワクチン抗体価検査を何例か実施したところ。
4頭に1頭くらいの割合いで、コアワクチン関連のウィルスに対する抗体が不足しているという事実が判明しました。

そういうわけで。2018年3月からは、犬でも猫でも2年目以降にワクチン追加接種の時期が来た動物に対しては。ワクチン抗体価検査をルーチンで実施して、接種の可否や接種内容の検討を行なうことにしています。

要らないワクチンは打たないが。必要なワクチンはきちんと打つ。そして、その根拠にはワクチン抗体価検査結果というエビデンスを活用するというやり方が、ワンちゃんネコちゃんと飼い主様の安心と安全に必要不可欠であると思います。

ではまた。

 

 

子宮蓄膿症と胃内異物の合併症例

もうすぐ9才7ヶ月令になるシェトランドシープドッグの女の子の話しですが。

昨日から気分悪そうにしていて、食事も摂らないという稟告で来院されました。

連れて来られた方がその家のお嬢さんで、症状とか詳しく把握していないみたいですから。最初どの分野の問題なのか?私も正直迷いました。

身体検査を行なってみると。体温39.5℃、脈拍毎分124回、呼吸毎分56回。両眼の瞬膜突出、膿性眼脂あり。両眼共対光反射は正常。

ちょっと気分悪そうな感じです。

仕方がないので、血液検査と腹部エックス線検査を行なうことにしました。

血液検査で目立ったのは、白血球のうち細菌と闘う好中球が増加していることと、炎症マーカーのCRPが7.0mg/dlオーバーと振り切っていることくらいです。

腹部エックス線検査ではお腹の中にとぐろを巻くように太いソーセージのような構造が白っぽく見えます。

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画像の向かって右側の2本の矢印の先に見えるのがその構造です。

同時に、この画像ではもうひとつはっきり見えないかも知れませんが。胃の中に異物が見えています。

とぐろを巻いている太い構造は、多分ですが、子宮に膿が溜まったものだと思います。

胃の中の異物は何なのか?不明ですが。このまま放置して置くと腸閉塞の原因になるかも知れません。

ワンコを連れて来たお嬢様に状態を説明して。腹部エコー検査を追加で実施しました。

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赤い矢印の先に見えるのが、膿を充満している子宮です。子宮蓄膿症と胃内異物合併症例という診断が確定です。

そのまま左手に静脈カテーテルを留置して、乳酸リンゲルの点滴を開始しまして。午後から麻酔をかけて手術を行いました。

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最初に子宮を取り出しました。正常だったらもっともっと細く短い子宮がボコボコに膨れていまして。突いてみると膿が噴出して来ました。

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出て来た膿で細菌培養と感受性試験を行ないます。

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次に胃を開けてみると、プラスチックの吸盤みたいな構造が出て来ました。

胃を2重に縫い合わせ。お腹を閉じて手術は終了です。

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麻酔を切ってしばらくすると覚醒しましたので、気管チューブを抜いて、回復室に入ってもらいます。

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多分ですが。明日の夕方には食欲も回復しますので、最短では明日の夕方に退院ということになると思います。

今回の症例のような例は、今まで何回もアップして来ていますので。目新しさも無いかも知れませんが。

繁殖予定の無い犬猫の、早期の避妊去勢手術は、その動物のいろいろな病気を予防し、性的なフラストレーションを防ぐことが証明されていて。動物愛護の観点からも強く推奨されているのが、現代獣医学の常識になっています。

この記事を読まれた飼い主様で、単に現在病気でないというだけの理由でご愛犬の避妊去勢手術をためらっている方が居られましたら。是非とも主治医に相談するようになさって下さい。

ではまた。

子犬の耳疥癬立て続けに来院

先日からブルドッグの女の子とトイプードルの男の子と、立て続けに2頭の子犬から耳疥癬が検出されて、現在治療中です。

ブルドッグの女の子は直接ブリーダーさんから購入されたようですし。トイプードルの男の子はペットショップでの購入だったようですから。それぞれ別々の感染ということになります。

見つかった耳疥癬虫は、耳垢を顕微鏡で観察すると、こんな感じで見えます。

最近は、ブリーダーやペットショップで購入した子犬子猫で、さすがに回虫や鉤虫のような線虫と呼ばれる寄生虫に感染した個体は見ることがほとんど無くなりましたが。
耳疥癬の感染は時々見つかります。

耳疥癬は、通称ミミダニというダニの一種(疥癬虫)に感染することにより、耳の中に特有の黒い耳垢が多量に増えて、猛烈な痒みを生じる。いわゆる寄生虫性外耳炎という病気です。

耳疥癬の治療は、疥癬虫を殺すお薬を皮下注射で1週間間隔で3回投与することと。耳の炎症を抑えるお薬を点耳することで、比較的簡単に行なうことが出来ます。

子犬たちは早くに診断がついたので、外耳炎が慢性化して難治性になることはないと思いますが。

犬猫を販売される業者さんについては販売する子犬子猫の健康管理について万全を期していただきたいと切に願うものであります。

フィラリア予防失敗例 予防薬は決められた量を決められた回数と間隔で

先日来院された日本犬雑の女の子のことですが。

フィラリア予防開始の案内ハガキを送りましたので。フィラリアの感染の有無の検査を希望されました。
予防薬は、投与間隔が2ヶ月までは空いてはいないけれども。1ヶ月丁度にはやれていないので。残っていって。
結局ワンシーズン分残っているので。今回は処方を希望されませんでした。

それで、血液を少量採取して感染検出キットで検査してみたところ。

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画像上のパネルは、検査結果の解釈を図示した飼い主様説明用のものでして。本犬の検査キットは下の小さな日付を記載したものです。

キットの中央付近に2本縦に線が見えますが。Cの位置のはっきりした線は、この検査が正常に行われていることを示す線でして。Tの位置に見えているぼんやりとした線が、フィラリア感染していることを証明するエビデンスであります。

この子は、残念ながら昨年にフィラリアに感染していて。

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心臓の右心室から肺動脈にかけて、上の画像のボトルの中に見えるようなフィラリアの成虫が寄生しているのです。

幸い、まだ無症状ではありますが。今までと同じような中途半端な予防法を続けていると、徐々に寄生数が増えて行って慢性フィラリア症を発症して苦しむようになるでしょうし。何らかの原因で肺動脈や右心室に居たフィラリア虫が右心房や大静脈洞という部分に移動すると、急性フィラリア症を発症して1週間から2週間くらいでひどく苦しみながら死んでしまうこともあります。

飼い主様には、その旨説明を致しまして。今後はフィラリア予防については私の指示の通りにしていただくようお願いしました。

なお、いったん感染したフィラリアについては、それを駆除するのは。砒素剤を使用したり。ある種の抗生物質を併用すれば出来ますが。砒素剤は非常に危険を伴いますし。抗生物質の併用も現在犬がフィラリア症で苦しんでいるのでなければ、費用対効果の点でどうなんだろう?という感もありますし。。

この子の場合、今現在はフィラリア寄生による症状は全くありませんから。心臓の中の成虫については、そおっとしておいて。新しい虫が増えないように予防を徹底することで対応するようにします。

なお。心臓にフィラリアが寄生している状態で、漫然と予防薬を投与しますと、ショックを起こしたりして危険ですから。ショックを予防するお薬と組み合わせて与えることになります。

フィラリア予防薬については、当地方では5月末から12月末まで月に1回予防薬を投与するということは大体の皆さんには周知出来ていると思いますが。きちんと実施していないとこの子のように辛い結果に終わってしまう可能性がありますので。薬は指示の通りにきちんと与えていただきたいと思います。

 

庭に繋いでいるだけでもマダニが寄生

 

グリーンピース動物病院の周辺は、市街地から郊外に移行するような街並みで。住宅地と田んぼや畑が混在するようなところも所々見られます。最近は、大阪や神戸のベッドタウンという感じで新しい住宅も増えて来まして。

一見して、こんなところに野生の哺乳類なんか居るわけないだろうという感じですが。

どっこい、自然豊かな加古川河川敷と、川向こうの神吉町や平荘町という田園地帯が意外と近くにありますので。
グリーンピース動物病院の近くに、深夜2時とか3時には舗装道路上を野生の狐が歩いていたりしています。

そんな自然環境のためか?先日近所の人が飼育している日本犬の子が狂犬病予防注射で来院した時に、その子の身体に多数のマダニが寄生しているのを動物看護師さんが発見しました。

飼い主様にその子の普段居る場所について訊いてみたところ。普段は庭に鎖で繋いでいて。朝夕の散歩は草が茂ったところには行かないということです。

庭の状態を訊いてみると。草は生えているということでした。

恐らくですが。庭の草にマダニが大量に棲み付いているのではないか?と思います。

そして、そのマダニは。付近を徘徊している狐やイタチなどの野生の哺乳類が落として行ったものではないか?と考えられます。

 

 

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見つけたマダニを捕まえてビンの中に入れました。大きなのが上の方に2匹と底の方に1匹見えますが。これくらいになると、動物の身体から落ちて近くの植物に取り付いて産卵するまで成長していると思います。

ワンちゃんに寄生しているマダニの数が半端でないので。即効性を期待してブラベクト錠を処方させてもらいました。そして、飼い主様には庭の草を刈り取った方が良いと思うとお伝えしました。

これで、この犬は向こう3ヶ月間はマダニに悩まされることはないでしょう。

山に入ることの全くない犬であっても、マダニに寄生されることがあるという事実は。私にとっては結構新鮮な驚きでした。

今後は普通に庭に居るだけの子でもマダニに注意して予防をお勧めしたいと思います。

ではまた。

ブラベクト錠(内服型ノミマダニ駆除剤)の安全性を勉強しました。

2015年末に、「内服するノミダニ駆除薬について(院長私見)」という記事を書きましたが。その後いろいろ勉強はして来てまして。

安全性についてもそれなりに使える印象は強くなって来てましたが。知識の整理という点ではまだ完璧に納得出来ていませんでした。

最近、ブラベクト錠という内服型ノミマダニ駆除薬について、メーカーの方にグリーンピース動物病院まで来ていただき、詳しくお薬の説明、特に安全性についての説明を受けることが出来ました。

メーカーさんからは、営業の方と学術の方のお二人が来られました。

説明の内容は。

薬効が3ヶ月持続出来るのはどうしてなのか?

犬における薬効成分の動態、分布、代謝、排泄機序。

ノミとマダニに対する実際の効果(効果発現時間、効果の持続期間)

安全性(急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性、繁殖安全性、染色体異常、成長期の子犬に対する安全性、皮膚や眼に対する刺激性等)

2014年から諸外国で、その後我が国で販売された使用実績に基づく、有害事象発現情報の実際。

等多岐にわたりましたが。

その中で、私は特に安全性についてのお話しに集中して聴くことが出来ました。

聴いた結果として。ブラベクト錠は現時点におけるノミマダニ駆除薬の中では滴下型、内服型を含めて、トップレベルの安全性を有しているということが納得出来ました。

細かい数値は膨大多岐にわたりますので。ここには掲載しませんが。急性及び慢性毒性ではライバル製品のネクスガードに比べて2倍の安全性が確認されてますし。
実際の犬の生体合計40頭を用いて行なった繁殖試験も実施して生まれて来る子犬に対する安全性を確認しているのはこのブラベクト錠だけということですし。

販売後の有害事象についても、薬との関連性が確かなものは非常に少ないようですし。
国内販売後の有害事象についても、重大な結果の症例はほとんどが重大な基礎疾患を持っていて。例えば成犬の犬毛包虫症(アカラス)の治療のためにブラベクトを使用した子について生じているということですから。ある意味仕方がなかった症例とも思えますし。その件数も率的には非常に少ないですから。

ブラベクト錠は、効果の面からも安全性の面からも、今後私の動物病院で安心してクライアントの皆様にお勧め出来る内服型ノミマダニ駆除薬であります。

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内服するノミマダニ駆除薬について(院長私見につきそのつもりでお読み下さい)

2017年4月にこの記事に出ているブラベクト錠の安全性について新たに記事をアップしています。記事のアドレスは https://www.greenpeas-ahp.co.jp/?p=1974 です。

この数年前より、ノミやマダニの駆除のトレンドは、内服薬による防除ということだと思いますが。

まず、出たのがコンフォティスという、月に1回の内服で、ノミとマダニの寄生が防げるというお薬でした。成分はスピノザドという名称です。

コンフォティスは、その後ミルベマイシンオキシムというフィラリア予防と腸内寄生虫駆除が出来る成分と合剤になって。

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画像のような多機能の予防薬となって、2015年より使われるようになっております。

その次に、出たのが。日本全薬工業より、2014年発売し始めた、ネクスガードという内服型のノミマダニ駆除薬です。
これも、1回の内服で1ヶ月間の防除が可能であるということと。全薬さんが強調していたのは、ご褒美に使えるほどワンちゃんの嗜好性が高い(美味しい)ということでした。

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確かに、スピノザド製品は美味しくないのか。コンフォティスもパノラミスも、食べてくれない子がいたり。食べた後吐いてしまう子がいたりします。
ネクスガードは嗜好性が高く与えやすいというのが大きな売りみたいです。

画像のネクスガードスペクトラは、やはりミルベマイシンオキシムとの合剤にして。ノミマダニ防除、犬フィラリア症予防、腸内寄生虫駆除が出来るという多機能製品として販売している物です。

2015年秋より。今度は1回の内服で3ヶ月間ノミマダニ防除が出来るというブラベクトという製品が発売されるようになりました。

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この製品も、2016年からは、フィラリア予防、腸内寄生虫駆除の機能を付加して多機能予防薬として発売される予定です。

確かに、便利な時代になったことであります。

ただ。飼い主様のご要望に応じてそれらの薬剤を処方する立場の獣医師として。これらの製品をどういう風に見ているのかと申せば。

正直、本当に安全な製品なのか?という素朴な疑問を感じています。

多機能合剤に仕上げるために添加している、フィラリア予防や腸内寄生虫駆除の機能を持つミルベマイシンオキシムは。もう長い間獣医臨床の分野で使われて来て。安全性有効性にいささかの疑念もありません。
しかも、このお薬は内服して約1日でほとんどの成分が体外に排出されてしまう。ごく短時間体内で作用を発揮するだけの薬剤です。

しかし、ノミマダニ防除の成分の方は、どうか?というと。1ヶ月有効の薬剤は少なくとも1ヶ月間。3ケ月有効の薬剤は3ヶ月間。ノミやマダニを殺せる強力な有効成分が、血液の中で効力を発揮するに十分な濃度を保って体内を循環し続けているということなのであります。

比較的薬剤に弱いノミはともかく。マダニという寄生虫は、非常にしぶとく生命力の強い節足動物です。

そんな強力な虫を殺せる強い薬が、与え方によっては年がら年中、それも犬の一生を通じて、犬の血液中に循環し続けるというのを、消費者たる飼い主様はどう考えるのでしょうか?

私が獣医師をやっていく上で心掛けていることは。少なくとも自分の犬猫にしてあげたいことを、来院する犬猫たちにしてあげようということであります。

人間、自分がされて嬉しいことは他人にしてあげる。そして、自分がされて嫌なことは他人にもしない。とういうスタンスが、生きていく上で大切なことだと考えているからです。

今まで便利だからとか、治るからという理由で、いろいろな予防薬とか治療薬がこの業界に出回って来ましたが。

中には、当初の予想とは違って、副作用発現の頻度が割りと高い製品もありました。年に1回の注射で犬フィラリア症を予防出来るという、フィラリア予防注射などがその例です。

人間のお薬では、サリドマイドというお薬が上肢の形成不全の新生児の原因となったり。比較的安全とみられている漢方薬でも小柴胡湯というお薬が、間質性肺炎の原因となったりと。

薬の歴史は、医学獣医学の発達という正の側面もありますが。副作用という負の側面もあるということを忘れてはならないと思います。

グリーンピース動物病院にお薬の説明に来られるメーカーの方のお話では。どの製品も厳しい安全基準に基づいた安全性試験を合格した良い製品だということですが。

コンフォティス、パノラミス、ネクスガードなどは、繁殖に使用する犬には使用しないようにと能書きに明記してありますし。
ブラベクト錠は、海外では繁殖に使用する犬への制限は無いように聴いてますが。国内で購入する製品に添付している能書には、慎重投与と書いてあります。

外部寄生虫に対する防除薬としては、代表的なものに、フロントラインとかマイフリーガードのような背中の皮膚に滴下するタイプのものが別にありますが。これらは、基本的に体内に入って血液中に薬剤が高濃度に循環するということは無くて。体表にとどまっているという薬剤動態を示すものです。

有効成分が長期間体内で血液中を循環する外部寄生虫駆除薬として、今まで私が例外的に使用している製品には、レボリューションというお薬がありますが。これは、海外での使用開始から勘定すれば、既に⒛年くらいの副作用をほとんど聴かない形での使用実績がありますので。安全性については問題無くなっていると判断してのことであります。

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そんなわけで。今のところ、私はパノラミスやネクスガード、ブラベクトのような製品は。一応仕入れてあって、強く希望される飼い主様とか、マダニ寄生の激しい症例で、副作用の恐れよりもマダニによるバベシアやダニ熱などの感染の危険性が著しく高いと考えられる症例には処方することもありますが。

私の方から積極的にそれらのお薬を飼い主様にお勧めすることは当分無いと思います。

獣医療の世界でも、新薬が発売されて数年後には、副作用情報が出て来ますから。その情報に注視しておいて。もしかすると、何十万頭何百万頭の使用経験により、副作用の無い、あるいは著しく少ない良いお薬であると証明された暁には、お勧めするようになるかも知れません。

それまでは、ノミやマダニの防除は、しばらくの間フロントラインとかマイフリーガードのような滴下剤を使用していくつもりであります。

ではまた。