兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2013 7月 07
院長ブログ

日別アーカイブ: 2013年7月7日

ミニチュアダックスフントの結直腸多発性炎症性ポリープ

2才の頃より当院で健康管理のお手伝いをさせていただいている、ミニチャダックスフントの避妊済み女の子の話しです。今年で8才になります。

実は、この子は従前から免疫に関して怪しいという印象を強く持っておりました。

4才の頃に頑固な慢性嘔吐を発症しまして。内視鏡を持っている近くの先生に依頼して胃の組織生検を実施し、胃炎を患っており、炎症部位に形質細胞や好酸球が浸潤しているという所見が得られていたのです。

胃炎の方は投薬と処方食で何とかコントロール出来て。その後に発症した膀胱炎も何とか上手く管理出来ているという状態だったのですが。

5月23日に来院した時に、5日前から鮮血を混じる下痢をしているということでした。

これが、しかし、通常の下痢セットの処方では全然反応が見られず。

検便も問題無く。原虫や嫌気性菌の感染をコントロールする薬も奏功せず。

試しに与えたステロイドに対してだけかなり良好な反応だったので、大阪府立大学の内科系の先生に一度診てもらおうと飼い主様と相談していた矢先のことでした。

6月27日朝にいきなり直腸脱が生じてしまったのです。

緊急でお昼に手術を行ないました。当日予定していた猫ちゃんの避妊手術は夜に残業して行ないました。

脱出した直腸には、顆粒状の病変が多数見られます。直腸の腺癌のような超悪性の病気を予想して随分ビビリました。

病変部を切除して、縫合が終了したところです。直腸脱の手術は 一番最初に脱出した直腸が2層重なっているのをきちんと拾った支持縫合を実施して、その縫合を頼りに、内層の腸管が、断端が遊離したままお腹の中に戻ってしまわないように、丁寧な全層並置縫合を実施することが、失敗しないコツと言えばコツだと思います。

手術が終了して、直腸をお腹の中に戻してやった状態です。

手術当日に退院させました。

大学の先生のアドバイスもあり、病理検査の結果が出るまで抗菌剤以外にステロイドホルモンを控えめに使用しました。

術後の経過はすごく良好で、下痢も改善しました。

病理検査の結果は。

多発性炎症性ポリープというものでした。

この病気は、最近ミニチュアダックスフントで問題になっている免疫が関与すると言われる炎症性の疾患です。

治療は、ステロイドホルモンと免疫抑制剤の併用で実施します。丁度タイムリーに、6月30日に岡山で受講した動物臨床医学研究所の卒後教育セミナーでこの病気の解説がありました。

診断はきちんとつきましたので、後は上手く管理出来るかどうか?です。今のところ順調なので、何とかなると予想しております。

免疫の病気に負けずに、幸せに長生きして欲しいと切に願いつつ治療を遂行しております。

 

 

 

 

 

エアデールテリアの皮膚扁平上皮癌

もうすぐ11才になるエアデールテリアの男の子の話しですが。

5月21日に、6ヶ月くらい前から左胸の皮膚の腫瘤が自壊してずっと気になるのか?舐めたり咬んだりしているということで相談されました。

針吸引&細胞診をすることと、自壊部分から出る膿の細菌培養と薬剤感受性試験を実施して、抗菌剤を投与しました。

細胞診の結果では、良性の皮膚腫瘍であろうということでした。

しかし、薬剤感受性試験に基づいて利く薬を投与しているのにも関わらず感染のコントロールが出来ません。膿はずっと出続けています。

どうもおかしいな?と感じておりましたが。飼い主様は膿が出続けて生活の質がかなり損なわれていることが可哀相に感じられたようで。
摘出を希望されました。

この子は以前に肝機能障害を患ったことがありましたので。術前検査として全血球計数、血液生化学検査ひと通り、胸部エックス線検査、心電図検査を実施します。

やはり、予想通りGPTが405U/L GOTが50U/L ALPが1272U/L と肝障害が存在しておりました。

一応、幹細胞保護のお薬を2週間内服させてもう一度血液検査を行なうと。
GPTが166U/L GOTが31U/L ALPが882U/L とかなり改善しました。

2回目の血液検査から6日後に手術を実施しました。

高齢の子とか、体力的に不安のある子については、手術当日朝一番にお預かりして、午前中は静脈カテーテルから輸液を行なうことにより体調を整えるのですが。

エアデール君、暴れて静脈輸液を行なうことは適いませんでした。

午後1時頃より麻酔導入して、術野の毛刈り消毒、術者助手の手洗い等基本通りの手抜き無しの手順で進めて行きます。

腫瘤周辺の毛を刈ったところ。

術野の消毒が済んで覆い布をタオル鉗子で止めたところ。

腫瘤を切除したところ。判り難いとは思いますが、垂直方向のマージンとして、皮筋という筋肉を一枚切除しています。治療に対する反応が怪しいので、一応用心して。悪性腫瘍だったとしても後で慌てないように最大限の用心をしております。

切除された腫瘤。これからホルマリンに漬けて、病理検査に出します。

 傷を縫合し終わったところです。この部分に出来た腫瘤は、比較的手術が容易です。

抜糸は術後13日で実施しました。この時に血液検査を行ないましたが。GPTは前回少し下がったのとそう変わらない数値でした。肝細胞保護剤は継続することにしました。

病理検査の結果ですが。扁平上皮癌という悪性度の強い物でした。用心のために大きくマージンを取って正解でした。
扁平上皮癌は転移する率は低いということですが。今後局所再発については注意して行きたいと思います。