兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2012 8月 03
院長ブログ

日別アーカイブ: 2012年8月3日

08/03 紀州犬による咬傷事故

もう一月近く前の事ですが、7月の初めにグリーンピース動物病院の患者様である紀州犬が子供を咬んで大怪我をさせたということです。

事故は、飼い主様が丈夫な首輪とリードを付けた犬を連れて、お友達と立ち話しをしていたところ、そのすぐ近くを被害者の子供が自転車で通り過ぎようとしたのが、犬にとっては攻撃されたと錯覚したのでしょう。子供に咬み付いたということでした。

被害者の子供は県立のこども病院に入院していて、皮膚移植もしなければならないような状態だということです。

被害者の親御さんは、それはもうお怒りのことらしく、飼い主様とのお話し合いも大変らしいです。

当該犬は、7月19日に当院に来院されて、狂犬病検診証明書の発行を希望されました。

狂犬病検診証明書は、間に2週間の期間を挟んで2回の検診を実施し、2回共狂犬病の症状が見られない場合に発行可能だということを説明させてもらい、その日は1回目の検診証明書を発行しました。

紀州犬は、飼い主様のご希望により当院に検査入院という扱いになりました。

当初は、被害者の方からの希望で2回目の検診が終了し次第安楽死処分になる予定でした。

昨日がその2回目の検診日だったのですが。飼い主様のお話しでは、安楽死処分はとりあえず避けることが出来て、本犬は去勢手術実施の上、飼い主様の知人で犬の取り扱いに慣れた方が飼育することで折り合いがついたということでした。

そんなことで、昨日は2回目の検診も完了して、狂犬病検診証明書も完成した物を発行させていただきました。

しかし、この紀州犬、預かってみると結構大変です。

体格が体重25キロとかなり大きい上に、性格が基本的に、かなり怖がりの上に攻撃性が強い個体で、なおかつ取り扱う人間の強い弱いでひどく態度を変えるところのある、女性動物看護師にとっては非常に扱い難い犬です。

最初の頃は、ケージからドッグランへの出し入れにも素直に従っていたようですが、徐々に看護師さんたちを舐めるような態度が現れ始めて、今朝は看護師さんたちがとうとう身の危険を訴えるほどになって来ました。

そんなわけで、本日午後に当該犬の去勢手術を実施し、その後の犬の態度によっては術後のケア全般を、大型犬の取り扱いに慣れた私目が実施しようかと考えております。

穏やかな良い子になって欲しいところですが、去勢手術でどうなりますことやらです。

なお、獣医療とは直接関係は無い事かも知れませんが。犬を飼育されている方々には必ず入っていただきたいのが、個人賠償責任保険という損害保険です。

このような損害保険はいろいろな保険会社が商品を販売しているようですが。私が10数年前にしつこく各社に訊き回った結果によれば、東京海上火災という会社の個人賠償責任保険が、加入者の飼い犬が例えノーリードの状態で事故を起こした場合でも全額賠償してもらえるという返答をもらっています。
その他の保険会社では、飼い主の過失の程度によって賠償額が減額されたりするような返答でした。

東京海上の個人賠償責任保険は、数年前から単体での販売を止めていて、加入者本人の傷害保険と抱き合わせの販売で、1年間の保険料が2,400円の掛け捨てだったと記憶しております。
また、自動車保険との抱き合わせもあったと思います。

一応私も東京海上の損害賠償責任保険には加入しています。

今回の紀州犬の飼い主様は、不幸なことに保険の加入はされていなかったということで、被害者の治療費、慰謝料その他の必要経費一切合財が総て個人にかかって来るということでした。
誠に大変な事態であります。

紀州犬の去勢と術後管理は、一応8月9日までの予定でありますが、無事に終了して良い子に生まれ変わって欲しいと思います。

08/02 ミニチュアブルテリア若犬の毛包虫症

今年1月29日生まれで、6月終わり頃に去勢手術を行なったミニチュアブルテリアの男の子の話しですが。

7月26日に首の皮膚が痒くなったということで来院されました。

全身の皮膚を診てみると、首の後ろと左側面、左手の甲、右前腕後ろ側、右の内股に脱毛とその部分の発赤が見られました。

これだけの所見では、細菌感染とか真菌感染、寄生虫疾患やアレルギーなどの鑑別は正直難しいです。

とりあえずになりますが、可能性の大きな順番から、細菌感染や、犬種的にマラセチア感染あたりを疑って、セファレキシンという抗生物質の内服とマラセブシャンプーによる薬浴を1週間実施することにしました。

1週間後の8月2日、再来院したのを診ると、脱毛部の赤味は、部分的には改善されていましたが、改善していない場所もありますし。皮膚の痒みは相変わらずだということでした。

この時点で、アレルギーも疑ったのですが。それ以前に除外しておくべき疾患として、皮膚に住む毛包虫とか疥癬虫のようなダニの感染があります。

脱毛部の皮膚の表面を鋭匙で掻き取って、それを10%KOHとDMSOという薬剤で溶かして顕微鏡で観察するという、「皮膚掻き取り試験」を実施しました。

画像に見られる細長い虫が毛包虫(アカラス)というダニの一種です。

毛包虫は、普通に健康な犬の皮膚にごく少量寄生しているのが普通なのですが、このように脱毛や痒みを引き起こすほど増殖するのは、動物の免疫機能が不十分な場合に見られると言います。

若い犬が一過性に毛包虫症にかかるのは、時々見られることで、特にブルテリアとかのシングルコートの皮膚がデリケートな子に頻繁に見られるように感じますが。柴犬やボーダーコリーのような犬種でも見たことはあります。

若年性の毛包虫症は、大概は治療を施せば一過性のものに終わることがほとんどですが。
要注意なのは成犬になって、それも6才とか7才以降の中高齢になって発症する毛包虫症です。

中高齢の犬の毛包虫症を発見した場合には、必ず副腎皮質機能亢進症とか悪性腫瘍とかの犬の免疫機能が低下している原因を調べる必要があります。

毛包虫症の治療法ですが、ドラメクチンという抗生物質の一種を毎週1回、計8回皮下注射する方法とか、アミトラズという薬品での薬浴とかの方法があります。

ミニチュアブルテリアの飼い主様は、今回はアミトラズ薬浴を希望されました。薬浴はご本人が実施するのを前提にしておりますので、薬浴のやり方を説明してアミトラズの原液を1回分だけ処方しました。

アミトラズ薬浴は、最初の数回は週に1回。治療効果がはっきりと現れれば隔週に1回のペースで実施して。

最後に2回か3回皮膚の掻き取り試験で陰性が続いたらお終いにするようにしております。

ブルテリ君、一過性の疾患で済みますように。