兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2013 3月 19
院長ブログ

日別アーカイブ: 2013年3月19日

5才のペキニーズの子宮蓄膿症

昨日来院された5才のペキニーズの女の子ですが。ここ1週間ほど食欲が低下して好物しか食べなくなっていたのが、来院当日の朝から下痢が始まったということでした。

このペキちゃんは、とにかく神経質な子で、飼い主様の娘さんが最近出産されて、お孫さんと一緒に里帰りする度にひどく嫉妬するのか?食欲不振に陥るのだということです。

しかし、一応検便に加えて血液検査と腹部エックス線検査を行なうことにしました。

検便では浮遊集虫法、直接塗抹法共に寄生虫は見つかりません。血液検査では総蛋白が高値ということ以外にはそんなに問題は無かったのですが。

腹部エックス線検査のフィルムを見ると。お腹の中に見えてはならない異常な陰影が見られます。

画像の矢印の位置辺りがそうなのですが。何か大きな塊状の物があるのです。

ペキちゃんは未避妊ですから、このような陰影を見れば、まず疑うのは子宮蓄膿症ということになります。

すぐに腹部エコー検査を実施したところ、陰影の正体はチューブ状になっていて内部に液体を貯めている構造であるということが判明しました。いよいよ子宮蓄膿症の疑いが強くなります。

当日午後には獣医師会の総会がありますので、ペキちゃんの状態から翌日の手術でも大丈夫だろうと判断して、乳酸リンゲル液の皮下輸液と抗生物質の皮下注射を実施して帰っていただきました。

午後に、獣医師会から帰ってみると、ペキちゃんの飼い主様から電話が入っていて、午後から2回吐いたのだが大丈夫だろうか?という事であります。

飼い主様も相当不安そうですし。その日のうちに残業して手術をしてしまうことにしました。

午後診の前に来院していただいて、前腕の静脈にカテーテルを留置し、乳酸リンゲル液をゆっくりと輸液しつつ午後診終了を待ちます。

午後7時から麻酔導入を開始し、お腹を開けてみました。

ペキニーズなどの短吻犬種の場合、軟口蓋の長さが異常に長くなっていて、それが咽喉に垂れ下がっていることが多く。ペキちゃんもそのために気管チューブの挿入に少し手間取りました。

開腹してみると、すぐにひどく腫大した子宮が現れます。

超音波メスを使用して速やかに摘出を行ないました。

私が手で保持しているのが腫大した子宮ですが。体重5キロ程度の小柄なペキニーズくらいだったら、細身のボールペンくらいの太さが正常です。それがバナナくらいの太さになっているのですから、大変なことになっております。

摘出した子宮をメスで突いてみると、濃厚な血膿が溢れ出て来ます。すぐに細菌培養と薬剤感受性試験を実施しました。

麻酔からの覚醒は順調で。夜間の状態も概ね良好で、私自身も一応生き物ですからずうっと見ているわけではなく、時々の容態観察のために細切れにしても睡眠は取りましたが、そう不安を感じることなく夜を過ごすことが出来ました。

夜が明けて、ペキちゃんは気分はかなり良さそうです。術中にモルヒネを使用したり、術後に3日間効果が持続するフェンタニルパッチという麻薬の貼付剤を使用しておりますので、疼痛はほとんど感じていないと思います。

しかし、手術前の状態がかなりの食欲不振があったりと、それなりに状態が悪かったのと、ひどく怖がりで神経質な子であるためか、手術翌日の午後に差し掛かってもまだ食事を食べようとはしません。

術後は数日間静脈輸液を実施して、普通に食べるようになれば退院という事になりますが。早く回復してもらいたいところであります。

でも、子宮蓄膿症。乳腺腫瘍と共に早期の卵巣子宮全摘出によって防ぐことが出来る病気です。牝犬を飼われている方は、繁殖予定が無いようであれば、早目に避妊手術を実施された方が良いと思います。

 

03/19 猫の重度歯周病の治療としての全顎抜歯

Pちゃんは最近保護された女の子の猫ちゃんです。

保護された当初、ひどく下痢が続いていて、食欲はそれなりにあるものの食べても太らないという感じで、痩せて毛並みも粗く、猫ハジラミなんかも寄生してたりと、とにかくコンディションの悪い事でしたが。

当院に健康診断のために来院されて、血液検査とかしてみたところ。
猫免疫不全ウィルス(エイズウィルス)や猫白血病ウィルス、猫コロナウィルスなどの免疫不全を生じるウィルスのキャリヤーでもありませんし。
腎機能、肝機能、電解質の異常なども特に認められません。

なお、歯周病はかなりのものです。年齢は不詳ですが。一応10才という事にしておきました。

初診時の対応としては、猫ハジラミの駆除薬としてフロントラインを頸部皮膚に滴下し。翌日か翌々日を目途に滴下剤としての消化管内寄生虫駆除剤と抗菌剤を処方しました。

翌日に持参された便を浮遊集虫法と直接塗抹法の二つの方法で検便しましたが、寄生虫の虫卵は見つかりませんでした。ただ、その4日後に回虫が1匹だけ排出されました。

虫卵が見つからないのに虫が排出された場合、虫の種類によっては1匹だけ寄生、あるいは雄だけ?雌だけの寄生によって虫が卵を産卵出来なかった可能性があります。

検便で虫卵が発見出来なかったので、一般的な下痢止めの処方をしたところ、それからはどんどん状態が良くなって、下痢は止まり、栄養も吸収されるようになったのか?体重も増加して行きました。

飼い主様は歯周病の処置を望まれましたので、初診から1週間後に麻酔下で歯周病の処置を行なうこととしました。

麻酔をかけて口の中を精査してみると、歯が残せるような状態ではありません。

画像の矢印のところの歯なんか典型的な状態ですが。歯肉が後退して歯根が大きく露出して、多くの歯に動揺が見られます。

全顎抜歯の適用と致しました。

ボロボロになった歯周病では、全顎抜歯は意外に簡単に済んでしまいます。

ただ、歯を抜いた跡は歯槽骨を指でなぞってみて、尖った部分があるようならば、ラウンドバーという丸いドリルの先を用いて滑らかになるように削ってやって、歯肉を寄せてモノフィラメントの合成吸収糸で縫合してやらなければなりません。

画像は歯を全部除去した状態ですが、下顎に縫合糸の結び目が見えることと思います。

抜いた歯は以下のようなじょうたいでした。

手術の翌日に経過観察で来院された時には、上顎の歯周病なんかは炎症がかなり治まって来ているのが診て取れました。

これからのことですが。術後1週間くらいでワクチン接種を始めることと、もう少しして初夏になる頃からフィラリア予防を始めれば良いでしょう。

Pちゃん、これからは優しい飼い主様の許で幸せに生きて行けることと思います。

今までが相当不幸だったみたいですから。その分幸せになると確信しております。