兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 院長ブログ

院長ブログ

犬と猫のワクチン接種の見直しについて(WASAVAワクチネーションプログラムに準じて行います)

ワクチンという疾病予防法は、怖い伝染病を予防するのに非常に有効です。それはどんな物かというと。病気を引き起こす細菌やウィルスなどの死んだ物(不活化ワクチン)、あるいは人間が飼い慣らして病気を引き起こさなくなったウィルスの生きた物(生ワクチン)を注射あるいはスプレーもしくは内服薬の形で生体に接種するという物です。

ワクチンは動物の感染症対策には非常に有用な手段ですが。同時に副作用の危険性を伴なうということも忘れてはいけません。

ワクチン副作用による健康被害の例としては。

1、ワクチン接種によりアナフィラキシーショックのようなアレルギー反応が生じる。
2、免疫抑制剤の投与によって生体の防御力が著しく低下している子などは、本来病原性が消失しているはずの生ワクチン接種で発病してしまう。
3、昨年だか数年前だかに発表されたという論文によると、猫ワクチン接種を頑張って毎年実施している飼い猫ちゃんの方が、ワクチン接種で頑張ってない飼い猫ちゃんよりも慢性腎臓病発病の発症が早くなってしまう。
4、狂犬病予防注射により痙攣や麻痺のような神経障害が生じる。

ということがあるらしいです。

1,2,4については従来から認知していましたが。3、は先日のセミナーで聴くまでは知りませんでした。そして正直意外でした。しかし、そのメカニズムについて知るとなるほどと納得出来るものがあります。

猫の3種混合ワクチンは、ほとんどのワクチンメーカーがその培養基材として猫から採取した腎芽細胞を使用しているそうです。
そうであれば、ワクチン製造過程において頑張って精製してもどうしても腎臓由来の成分が製品中に残存してしまうでしょう。
そのワクチンを接種された動物には、ワクチン本来の病気を防ぐ抗体も上昇しますが。不純物として残ってしまった腎臓由来の成分に対する抗体も作られてしまう可能性があります。
そうして、期せずして作られてしまった腎臓に対する抗体は、多分自分自身の腎臓も攻撃するようになると思われます。

ワクチンという物は、そんなわけで思わぬ副作用を生じてしまう可能性を秘めているわけです。必要最小限の接種に止めておくこともまた大切だと思います。

知っている人は知っているかと思いますが。WASAVA(世界動物病院協会)という団体がありまして。その中で犬猫のワクチン接種ついてこうした方が望ましいという推奨プログラムが制定されています。

グリーンピース動物病院でも、このWASAVAワクチネーションプログラムに準じたやり方で、当院に来院されるワンちゃんネコちゃんに必要なワクチン接種を行なって行こうと、遅ればせながら決定しました。

基本的な考え方としては、ワンちゃんネコちゃんには必要なワクチンを必要な回数接種して、決して接種し過ぎないようにすることでして。それ以上でもそれ以下でもありません。

 

それで、当院が今後犬と猫に接種するワクチンのプログラムを具体的に述べます。

まず、犬ですが。

ワクチンの中で最も大切なものをコアワクチンと言いますが。WASAVAは犬のコアワクチンを、ジステンパー、パルボ、伝染性肝炎の3種類としています。我が国で大切なワクチンは、このコアワクチンと、ノンコアワクチンの中でのレプトスピラが挙げられると思います。

レプトスピラ感染症は、レプトスピラ属の細菌が病原体です。犬だけでなく人間にも感染する人獣共通感染症であること、ネズミなどのげっ歯類の尿を介して感染すること、高温多湿の環境を好み、冷涼乾燥の環境では感染しにくい、などの特徴があります。
その特徴から日本を始めとする東アジアのモンスーン気候の国では重要な感染症と思われます。
当院ではここ数年はレプトスピラ対策として、京都の微生物学研究所(京都微研)のレプトスピラ5種ワクチンを使用していました。この5種ワクチンで日本で発生するレプトスピラの90%に対応出来るとされてました。
ただ、今年に入って京都微研の事情によりレプトスピラ5種ワクチンは入手不可能になってしまいまして。現在利用可能なレプトスピラワクチンは、レプトスピラ・カニコーラとレプトスピラ・イクテロヘモラギー(コペンハーゲニー)に対応した2種ワクチンのみであります。2種でも接種しないよりははるかにましです。

具体的にワクチン接種を希望される犬が来院したならば。子犬の場合は生後1ヶ月令くらいならばまず5種混合ワクチンを接種します。その後3週間おきに7種混合ワクチンを2回接種します。3回目の時に、あるいは3回接種後3週間の時点で血液中の抗体検査を実施して、少なくとも抗体が上昇し難いジステンパーとパルボに対する抗体価を測定した方が良いです。

子犬のワクチンが3回終了して抗体価がしっかり上昇したならば。2年目に再度7種混合ワクチンを接種して。

それ以降は3年に1回のペースで7種混合ワクチンを。間の年にはレプトスピラワクチンを接種することになります。

このやり方で、コアワクチンは3年に1回、レプトスピラワクチンは毎年接種されるわけです。

ワクチン希望の成犬の場合。それまでの接種歴がはっきりしていない場合には、7種混合ワクチンを1回接種して3週間後に抗体検査を実施して、免疫が付いていることが確認されたら翌年からは7種を3年に1回と間にレプトワクチンを毎年接種して行きます。

 

猫のコアワクチンは、猫伝染性鼻気管炎、猫カリシウィルス感染症、猫汎白血球減少症の3つの病気に対するワクチンです。これは当院で従来から使用している猫3種生ワクチンです。

子猫だったら上記の3種を1ヶ月くらいおいて2回接種して。1年後にもう1回接種したら後は3年に1回接種して行くことになります。

成猫の場合は3種を1回接種して、出来れば抗体検査を実施して、その後は3年に1回継続接種することになります。

猫のワクチンの場合、基本的には3種生ワクチン以外は接種しません。猫エイズや猫白血病ウィルスワクチンは接種の根拠が無いと、WASAVAは言い切ってますし。いろいろなメーカーが発売しているアジュバントを使用している不活化ワクチンは過去の経験で接種部位に繊維肉腫を発症した辛い経験がありますので、自分としては絶対に使用することはありません。

この接種のやり方は、今月から早速始めております。

なお、トリミングサロン、ドッグラン、犬猫同伴可能宿泊施設等がワクチン接種証明書の提示を求めて来る場合がありますが。その場合は、動物から採血してワクチン抗体検査を外注検査で実施して。ワクチン抗体検査証明書を発行しますので、それを提示することでワクチン接種証明書に換えることが可能と思います。必要ならばその施設に私が説明するようにいたします。

ではまた。

 

 

子宮蓄膿症と胃内異物の合併症例

もうすぐ9才7ヶ月令になるシェトランドシープドッグの女の子の話しですが。

昨日から気分悪そうにしていて、食事も摂らないという稟告で来院されました。

連れて来られた方がその家のお嬢さんで、症状とか詳しく把握していないみたいですから。最初どの分野の問題なのか?私も正直迷いました。

身体検査を行なってみると。体温39.5℃、脈拍毎分124回、呼吸毎分56回。両眼の瞬膜突出、膿性眼脂あり。両眼共対光反射は正常。

ちょっと気分悪そうな感じです。

仕方がないので、血液検査と腹部エックス線検査を行なうことにしました。

血液検査で目立ったのは、白血球のうち細菌と闘う好中球が増加していることと、炎症マーカーのCRPが7.0mg/dlオーバーと振り切っていることくらいです。

腹部エックス線検査ではお腹の中にとぐろを巻くように太いソーセージのような構造が白っぽく見えます。

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画像の向かって右側の2本の矢印の先に見えるのがその構造です。

同時に、この画像ではもうひとつはっきり見えないかも知れませんが。胃の中に異物が見えています。

とぐろを巻いている太い構造は、多分ですが、子宮に膿が溜まったものだと思います。

胃の中の異物は何なのか?不明ですが。このまま放置して置くと腸閉塞の原因になるかも知れません。

ワンコを連れて来たお嬢様に状態を説明して。腹部エコー検査を追加で実施しました。

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赤い矢印の先に見えるのが、膿を充満している子宮です。子宮蓄膿症と胃内異物合併症例という診断が確定です。

そのまま左手に静脈カテーテルを留置して、乳酸リンゲルの点滴を開始しまして。午後から麻酔をかけて手術を行いました。

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最初に子宮を取り出しました。正常だったらもっともっと細く短い子宮がボコボコに膨れていまして。突いてみると膿が噴出して来ました。

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出て来た膿で細菌培養と感受性試験を行ないます。

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次に胃を開けてみると、プラスチックの吸盤みたいな構造が出て来ました。

胃を2重に縫い合わせ。お腹を閉じて手術は終了です。

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麻酔を切ってしばらくすると覚醒しましたので、気管チューブを抜いて、回復室に入ってもらいます。

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多分ですが。明日の夕方には食欲も回復しますので、最短では明日の夕方に退院ということになると思います。

今回の症例のような例は、今まで何回もアップして来ていますので。目新しさも無いかも知れませんが。

繁殖予定の無い犬猫の、早期の避妊去勢手術は、その動物のいろいろな病気を予防し、性的なフラストレーションを防ぐことが証明されていて。動物愛護の観点からも強く推奨されているのが、現代獣医学の常識になっています。

この記事を読まれた飼い主様で、単に現在病気でないというだけの理由でご愛犬の避妊去勢手術をためらっている方が居られましたら。是非とも主治医に相談するようになさって下さい。

ではまた。

子犬の耳疥癬立て続けに来院

先日からブルドッグの女の子とトイプードルの男の子と、立て続けに2頭の子犬から耳疥癬が検出されて、現在治療中です。

ブルドッグの女の子は直接ブリーダーさんから購入されたようですし。トイプードルの男の子はペットショップでの購入だったようですから。それぞれ別々の感染ということになります。

見つかった耳疥癬虫は、耳垢を顕微鏡で観察すると、こんな感じで見えます。

最近は、ブリーダーやペットショップで購入した子犬子猫で、さすがに回虫や鉤虫のような線虫と呼ばれる寄生虫に感染した個体は見ることがほとんど無くなりましたが。
耳疥癬の感染は時々見つかります。

耳疥癬は、通称ミミダニというダニの一種(疥癬虫)に感染することにより、耳の中に特有の黒い耳垢が多量に増えて、猛烈な痒みを生じる。いわゆる寄生虫性外耳炎という病気です。

耳疥癬の治療は、疥癬虫を殺すお薬を皮下注射で1週間間隔で3回投与することと。耳の炎症を抑えるお薬を点耳することで、比較的簡単に行なうことが出来ます。

子犬たちは早くに診断がついたので、外耳炎が慢性化して難治性になることはないと思いますが。

犬猫を販売される業者さんについては販売する子犬子猫の健康管理について万全を期していただきたいと切に願うものであります。

猫の子宮蓄膿症にはアリジンは利かなかった?

先日からアリジンで治療していた猫の子宮蓄膿症ですが。

初回のアリジン皮下注射から1週間が経過しまして。再来院しました。

食欲はそれなりに回復しているものの。目視出来る性器からの排膿は無しとのことです。

エコー検査を実施してみたところ。先週と変わりない膿らしき液体を含んだ子宮と思われる陰影が確認出来ました。

アリジンが食欲回復に一役買っているのかどうか?は不明ですが。同時に使用している抗生物質が子宮内の細菌を殺してくれて、その結果状態が改善している可能性は高いです。

しかし、このまま内科的に治療を続けても、いずれ抗生物質は利かなくなって破たんが来るのは目に見えてますから。
状態が少しでも改善している今が、外科手術を決行するチャンスと思いまして。

飼い主様に、「今日残業してでも手術を行なって治療しましょう。」と提案しました。

飼い主様は、どちらかというと手術は怖いというお考えの持ち主のようで。少しためらっている感じでしたが。

このままでは、いずれ状態が悪化して、播種性血管内凝固(DIC)や多臓器不全に陥って亡くなってしまうということを説明すると。何とか同意してくれました。

手術同意を取り付けてすぐに静脈カテーテルを留置し。乳酸リンゲルの点滴を開始します。
午後7時に午後診外来が終了した後。麻酔導入して。各種モニターの装着、気管挿管の実施と進めて行って。

開腹手術を開始しました。

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お腹を開けますと。出て来ました。正常よりも何倍にも腫大した子宮です。多量の液体を含んでいます。

関連する血管を合成吸収糸で結紮して、卵巣と子宮をセットで取り出しました。特に子宮頚管の部分については、子宮体部の取り残しが無いように神経を使いました。また、腎臓から膀胱に尿を送る尿管という管を結紮で巻き込まないように留意しました。

手術は無事に終了し。覚醒も速やかで。午後9時には無事に手術終了です。

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取り出した子宮をメスで突いてみると。膿が大量に出て来ます。細菌培養と薬剤感受性試験を実施しました。

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一夜明けて。細菌培養と薬剤感受性試験では細菌は生えませんでした。

で、猫ちゃん本体はどうか?というと。すごく元気です。朝食に猫缶を与えてみると。意欲的に食べてくれました。

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疑いの眼でこちらを見ているのは。治療の意義を理解していないので仕方がないことと思います。

手術翌日の夕方には退院となりました。

術創を舐めて破壊しないように、メリヤスのシャツを着せています。

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今回は、何とか元気な猫ちゃんに戻すことが出来ました。しかし、獣医のテキストにあれだけしっかりと「アリジンは猫の子宮蓄膿症にも犬同様利いて、副作用もありません。」と記載されていたのに。実際に使用してみると思ったほど利いてくれなかったのは、正直心外でした。
もしかすると、それなりに利いてはいたのかも?知れませんが。少なくとも子宮からの排膿は無かったです。

次回同様の症例が来た時に、どうするか?ちょっと迷うところであります。

 

猫の子宮蓄膿症にアリジンを使用(注意!!後日談があります)

3日前のことですが。午後診に猫ちゃんが来院されまして。2日前から食欲が無いという稟告です。

聴けば、昨年末辺りから、近医にて腎臓が悪いと診断されて、お薬の内服と皮下輸液を随分やったのだが。いろいろあって最近は腎臓病用の食事だけで管理して来たのが悪かったのだろうか?と気にされています。

何で最初に診断した近医に行かなかったのか?と訊くと。「あの先生は私には合わないようでして。」と言われますので。それ以上は訊きませんでした。

既に腎機能不全という診断が下されていたということであれば。私のところでもまず血液検査、そして必ず尿検査を実施したいところです。

セミナーを受講すると、講師先生が必ず言われるのが「尿検査を実施せずして腎臓を評価してはいけない。」ということです。

先に「腎臓が悪い」と診断された獣医師さんは、尿検査はされなかったそうです。私も性格的に採尿が不可能な子の場合やむなく尿検査を省略すること無しとは言いませんので他人のことは言えませんが。なるべく尿検査はやりたいところです。

飼い主様にお断りして採血し。採尿はエコーで膀胱を観察しながら細い針と注射器を使用した膀胱穿刺で行ないました。大人しい子でスムーズに尿が採取出来ました。

猫ちゃんから採尿する時に、手で下腹部をマッサージしたり圧迫したりして膀胱から尿を絞り出す、いわゆる圧迫採尿は、絶対にやってはいけない行為であります。なぜならば膀胱の内容が尿管を逆流して腎臓に戻って行くことが多く。その結果腎盂腎炎を発病することがしばしばあるからであります。
エコーで膀胱を確認しながら細い針で採尿する方法は、腎臓病の専門医さんが推奨している方法で、よほどひどく暴れる猫ちゃんでなければ、侵襲が少なく無菌的に尿が採取できる優れた方法であります。

エコー検査をしてみると。あっと驚く画像が撮れてしまいました。

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画面右上の黒い部分が膀胱なのですが。その左側に接してコントラストがやや白っぽく映る構造が見えると思います。

それをエコーの探子でたどって行くと。

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屈曲した中空の構造で、内容は尿よりも濃い液状の物体。おそらくは膿のような物であると推察されます。

となると。未避妊の女の子ですから、子宮蓄膿症という致死的な病気が最も可能性が高いと思われます。

腎臓も調べて見ましたが。

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左の腎臓も。

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右の腎臓もエコーの画像上では問題無しです。

血液検査の結果を見ると。まず目を引くのが白血球数特に好中球という細菌と闘う細胞の著しい増加でした。尿素窒素(BUN)が若干高値であるだけです。クレアチニンという項目は少し高めですが。参考値内に収まっています。

尿検査では、比重が1.014と薄目ではありますが。何とか尿は濃縮されているようです。尿比重で最悪の結果が1.008から1.012の間です。

尿比重が低い目というのは、しかし、子宮蓄膿症に罹患すると、大体において多尿多飲の症状がでますから。

まず子宮蓄膿症を治療してそれから腎臓の機能を評価すべきと考えます。

子宮蓄膿症の治療法で最もポピュラーなものは、やはり早期の開腹手術となります。子宮に膿が溜まって毒性を発揮していますので。その膿を子宮毎取り出してやれば、DIC(播種性血管内凝固)を併発しているのでなければ、急速に開腹に向かうものであります。

しかし、残業してでも手術をと飼い主様にお伝えすると。突然のことでびっくりされて、混乱してしまっています。

これは困ったことです。私の伝え方が悪かったのかも知れません。

次善の策をと、黄体ホルモンレセプター阻害剤のアグレプリストン(商品名アリジン)の皮下注射を軸にした治療法を提案することにしました。

アリジンは、元々は犬のお薬で。人工妊娠中絶や子宮蓄膿症の特効薬的な存在で、副作用もほとんど無いという優れたお薬なのですが。

私の持っている教科書には、猫にも犬と同じように使用可能で、副作用も無く有効であると記載されております。

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そういうわけで。飼い主様にその旨お伝えして同意を得ることが出来ましたので。

アリジンの皮下注射。抗生物質の皮下注射。ラクトリンゲルの皮下注射によって治療を開始しました。

アリジンは、24時間置いて2回注射するのですが。2回目の注射の際にはまだ性器からの膿の排出はありませんで。

どうなるのか?少し心配でしたが。3日目に診療した際には、膿の排出はまだ見られないが、食欲が回復しつつあるということでしたので。一応抗生物質の内服だけで経過を追うことにしました。

動物による個体差もあるかも知れませんが。次回来院の際にはエコー検査を実施して子宮の状態を確認する予定です。

また、犬の場合でも同様ですが。アリジンで治療した場合。次の発情の後黄体期に入ると子宮蓄膿症の再発が心配ですので。
いったん回復して麻酔のリスクが低くなった時点で避妊手術を実施するよう飼い主様にはお伝えしてあります。

子宮蓄膿症が治った時点で。もう一度尿検査と血液検査を実施して腎機能の正確な評価を行なわなければなりません。

猫ちゃんと飼い主様には、これからもまだまだ幸せな生活を送って欲しいと、切に願う次第であります。

ではまた。

なお、この件については。アリジンの実際の利きについて後日談がありますので。そちらもご参照下さい。

 

 

マイクロチップで飼い主発見!!

先日のことですが。

隣り町で迷い犬を保護して警察に届けたのだけれども。警察でこれ以上預かれないから連れて帰ってくれと言われて引き取って来たという方が。
シャンプーをするのに、その後ノミマダニ駆除の滴下剤を購入したいということで来院されました。

話しを聴くと、警察ではマイクロチップの読み取りはしなかったということです。

それでは念のためにと。当院に備え付けてあるマイクロチップ読み取り機のスイッチをオンにして。その子の首の付け根辺りに近付けてみました。

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ピッという独特の音がして。読み取り機の画面に番号が表示されました。

一発逆転とはこのことです。

すぐにマイクロチップの情報を管理している日本獣医師会の情報センターに問い合わせて。飼い主が判明。

飼い主に返すことが出来ました。

警察にこの読み取り機が備わっていれば、保護した人がここまで苦労することは無かったのですが。

現在兵庫県では県内の獣医師会に所属している小動物診療施設の総てと、県内数ヶ所の動物愛護センターの総てに、このマイクロチップ読み取り機が備えられております。

グリーンピース動物病院では、この10年間の間に、保護されて連れて来られた動物にマイクロチップが入っていて、それを読み取ることが出来たために飼い主の許に無事返すことが出来た事例は2件あります。

2件という数字が多いのか少ないのかという議論はさておき。マイクロチップという小さな電子機器は、動物の個体識別の手段としては素晴らしく優れた方法だと考えております。

私の場合。子犬子猫が来院した時には、ワクチンやフィラリア予防、ノミマダニの駆除、避妊去勢の説明と共に、マイクロチップの有用性を説明してそれを入れるようお勧めするのをルーティーンにしております。

最近は、一部のペットショップでは販売の時点でマイクロチップを入れているところもありますが。良いことだと思います。

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上の画像の中に赤と黒の小さな物体がマイクロチップです。これを動物に入れたイメージは。下の画像のような感じです。

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画像の中の赤い矢印の先に白いコントラストで映っているのがマイクロチップです。注射器のような挿入器で皮下に入れてやるのですが。全く無害でありますし。首輪や迷子札と違って体内にあるわけですから。落ちて紛失することも皆無です。

マイクロチップを自分の動物に未だ入れてない飼い主様には、この記事をお読みになったのを機会に、その挿入を検討されてみることをお勧めします。料金は挿入するのに本体込みで税別6,000円。情報登録料が1,000円だったと思います。

 

フィラリア予防失敗例 予防薬は決められた量を決められた回数と間隔で

先日来院された日本犬雑の女の子のことですが。

フィラリア予防開始の案内ハガキを送りましたので。フィラリアの感染の有無の検査を希望されました。
予防薬は、投与間隔が2ヶ月までは空いてはいないけれども。1ヶ月丁度にはやれていないので。残っていって。
結局ワンシーズン分残っているので。今回は処方を希望されませんでした。

それで、血液を少量採取して感染検出キットで検査してみたところ。

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画像上のパネルは、検査結果の解釈を図示した飼い主様説明用のものでして。本犬の検査キットは下の小さな日付を記載したものです。

キットの中央付近に2本縦に線が見えますが。Cの位置のはっきりした線は、この検査が正常に行われていることを示す線でして。Tの位置に見えているぼんやりとした線が、フィラリア感染していることを証明するエビデンスであります。

この子は、残念ながら昨年にフィラリアに感染していて。

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心臓の右心室から肺動脈にかけて、上の画像のボトルの中に見えるようなフィラリアの成虫が寄生しているのです。

幸い、まだ無症状ではありますが。今までと同じような中途半端な予防法を続けていると、徐々に寄生数が増えて行って慢性フィラリア症を発症して苦しむようになるでしょうし。何らかの原因で肺動脈や右心室に居たフィラリア虫が右心房や大静脈洞という部分に移動すると、急性フィラリア症を発症して1週間から2週間くらいでひどく苦しみながら死んでしまうこともあります。

飼い主様には、その旨説明を致しまして。今後はフィラリア予防については私の指示の通りにしていただくようお願いしました。

なお、いったん感染したフィラリアについては、それを駆除するのは。砒素剤を使用したり。ある種の抗生物質を併用すれば出来ますが。砒素剤は非常に危険を伴いますし。抗生物質の併用も現在犬がフィラリア症で苦しんでいるのでなければ、費用対効果の点でどうなんだろう?という感もありますし。。

この子の場合、今現在はフィラリア寄生による症状は全くありませんから。心臓の中の成虫については、そおっとしておいて。新しい虫が増えないように予防を徹底することで対応するようにします。

なお。心臓にフィラリアが寄生している状態で、漫然と予防薬を投与しますと、ショックを起こしたりして危険ですから。ショックを予防するお薬と組み合わせて与えることになります。

フィラリア予防薬については、当地方では5月末から12月末まで月に1回予防薬を投与するということは大体の皆さんには周知出来ていると思いますが。きちんと実施していないとこの子のように辛い結果に終わってしまう可能性がありますので。薬は指示の通りにきちんと与えていただきたいと思います。

 

庭に繋いでいるだけでもマダニが寄生

 

グリーンピース動物病院の周辺は、市街地から郊外に移行するような街並みで。住宅地と田んぼや畑が混在するようなところも所々見られます。最近は、大阪や神戸のベッドタウンという感じで新しい住宅も増えて来まして。

一見して、こんなところに野生の哺乳類なんか居るわけないだろうという感じですが。

どっこい、自然豊かな加古川河川敷と、川向こうの神吉町や平荘町という田園地帯が意外と近くにありますので。
グリーンピース動物病院の近くに、深夜2時とか3時には舗装道路上を野生の狐が歩いていたりしています。

そんな自然環境のためか?先日近所の人が飼育している日本犬の子が狂犬病予防注射で来院した時に、その子の身体に多数のマダニが寄生しているのを動物看護師さんが発見しました。

飼い主様にその子の普段居る場所について訊いてみたところ。普段は庭に鎖で繋いでいて。朝夕の散歩は草が茂ったところには行かないということです。

庭の状態を訊いてみると。草は生えているということでした。

恐らくですが。庭の草にマダニが大量に棲み付いているのではないか?と思います。

そして、そのマダニは。付近を徘徊している狐やイタチなどの野生の哺乳類が落として行ったものではないか?と考えられます。

 

 

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見つけたマダニを捕まえてビンの中に入れました。大きなのが上の方に2匹と底の方に1匹見えますが。これくらいになると、動物の身体から落ちて近くの植物に取り付いて産卵するまで成長していると思います。

ワンちゃんに寄生しているマダニの数が半端でないので。即効性を期待してブラベクト錠を処方させてもらいました。そして、飼い主様には庭の草を刈り取った方が良いと思うとお伝えしました。

これで、この犬は向こう3ヶ月間はマダニに悩まされることはないでしょう。

山に入ることの全くない犬であっても、マダニに寄生されることがあるという事実は。私にとっては結構新鮮な驚きでした。

今後は普通に庭に居るだけの子でもマダニに注意して予防をお勧めしたいと思います。

ではまた。

ブラベクト錠(内服型ノミマダニ駆除剤)の安全性を勉強しました。

2015年末に、「内服するノミダニ駆除薬について(院長私見)」という記事を書きましたが。その後いろいろ勉強はして来てまして。

安全性についてもそれなりに使える印象は強くなって来てましたが。知識の整理という点ではまだ完璧に納得出来ていませんでした。

最近、ブラベクト錠という内服型ノミマダニ駆除薬について、メーカーの方にグリーンピース動物病院まで来ていただき、詳しくお薬の説明、特に安全性についての説明を受けることが出来ました。

メーカーさんからは、営業の方と学術の方のお二人が来られました。

説明の内容は。

薬効が3ヶ月持続出来るのはどうしてなのか?

犬における薬効成分の動態、分布、代謝、排泄機序。

ノミとマダニに対する実際の効果(効果発現時間、効果の持続期間)

安全性(急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性、繁殖安全性、染色体異常、成長期の子犬に対する安全性、皮膚や眼に対する刺激性等)

2014年から諸外国で、その後我が国で販売された使用実績に基づく、有害事象発現情報の実際。

等多岐にわたりましたが。

その中で、私は特に安全性についてのお話しに集中して聴くことが出来ました。

聴いた結果として。ブラベクト錠は現時点におけるノミマダニ駆除薬の中では滴下型、内服型を含めて、トップレベルの安全性を有しているということが納得出来ました。

細かい数値は膨大多岐にわたりますので。ここには掲載しませんが。急性及び慢性毒性ではライバル製品のネクスガードに比べて2倍の安全性が確認されてますし。
実際の犬の生体合計40頭を用いて行なった繁殖試験も実施して生まれて来る子犬に対する安全性を確認しているのはこのブラベクト錠だけということですし。

販売後の有害事象についても、薬との関連性が確かなものは非常に少ないようですし。
国内販売後の有害事象についても、重大な結果の症例はほとんどが重大な基礎疾患を持っていて。例えば成犬の犬毛包虫症(アカラス)の治療のためにブラベクトを使用した子について生じているということですから。ある意味仕方がなかった症例とも思えますし。その件数も率的には非常に少ないですから。

ブラベクト錠は、効果の面からも安全性の面からも、今後私の動物病院で安心してクライアントの皆様にお勧め出来る内服型ノミマダニ駆除薬であります。

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犬の蛋白喪失性腸症

犬のお腹が膨れて来て、腹水が溜まっているという状態で受診して来た時に。 血液検査を行なってみると、 血液中の蛋白質の一種であるアルブミンの量がひどく少なくなっている場合があります。

血清アルブミンは、 比較的分子サイズの小さな蛋白質でして。 肝臓で造られています。 アルブミンにはいろいろな働きがありますが。 そのうちの一つに、 血液の膠質浸透圧の維持と言って。 血管内に水分を保持する役割があります。

従って、血清アルブミン濃度が低下すると、 血管から水分が周囲組織に漏れて出てしまい。 漏れ出た水分が腹水や胸水という形になって目に見えるようになるわけです。

それで、血液中のアルブミンがどういう理由で減るのか?という話しなのですが。

単純に羅列してみますと。

蛋白喪失性腸症。 蛋白漏出性腎症。 肝臓機能不全。 火傷などの広範な皮膚障害。 出血。 腹膜炎。 膵外分泌不全。 アジソン病などいろいろであります。

前置きはこれくらいにして。 今回の症例の子は。 もうすぐ10才になるヨークシャーテリアの避妊済み女の子です。

この子は、 丁度1年前に歯の根に細菌感染が生じて眼の下に膿が溜まり。 眼の下の皮膚が破れて膿が流れ出て来るようになったので。 麻酔下で処置をする際に、 術前検査をしましたが。 その時にはアルブミンは2.5g/dlと異常はありませんでした。

その後、この秋に乳腺にしこりが出来まして。 乳腺腫瘍であろうということで外科的処置をする際に、 やはり術前検査を行ないましたが。 その際にアルブミンが1.7g/dlと明らかな低アルブミン血症になっていたのです。

一応一般状態は良好だし、肝機能にも問題は無かったので。 蛋白漏出性腎症を除外する目的で、尿中のアルブミン検査を行ないましたが。 アルブミンが尿に漏れているということもなくて。

アルブミン濃度が低い状態で大きな傷を作ると癒合不全に陥る可能性がありますので。 乳腺腫瘍はいつものように広範囲にマージンを付けて切除することは避けて、ピンポイント切除で病理検査を実施しました。

乳腺腫瘍は良性の物であり、 ほっとしました。

乳腺腫瘍摘出から2ヶ月経った先日。 ここ数日嘔吐が続いていることと、昨日から軟便になっているということで来院されまして。
飼い主様が、最近お腹が張っている感じなのが気になると言われますので。

血液検査と腹部エックス線検査を行なってみたところ。

血液中の総蛋白が2.9g/dlアルブミンが1.0g/dlと明らかにひどく低下しています。

腹部エックス線検査では、お腹の中に腹水が貯留しているという結果でした。

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お腹がポッコリと膨らんで、 お腹の中はスリガラス状にぼやけて見えます。 直腸にコントラストが強く見える粒子状の物体が見えますが。 これは同居の猫の使う猫砂を食べているのであろうということです。

2ヶ月前の検査では、尿中にアルブミンが出ていなかったので。 蛋白漏出性腎症は一応除外して考えることにして。

腹部エコー検査で肝臓や腸管を観察することにしました。

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肝臓は問題なく。

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胆嚢も問題なく。

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お腹の中には液体が充満していて。

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液体の中で大網膜や腸間膜の脂肪がヒラヒラ揺らめいていて。

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リニアのプローブで探って見ると。 腸管は特に異常はありません。 小腸粘膜の高エコー線状パターンが見られたら診断は腸リンパ管拡張症で決まりなのですが。 もう一つはっきりしません。

因みに小腸粘膜高エコー線上パターンとは。 下の画像のように見えます。

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著作権の問題がありますので、出典を明らかにしておきますが。 この画像は、インターズーさんの「犬と猫の治療ガイド2015」の306ページから引用させてもらいました。

確定診断をしようと思えば、 麻酔下で消化管内視鏡検査あるいは腸の全層生検と病理検査をするべきだとは思いますが。

私はここで、試験的に治療してみることにしました。

処方の内容は、 副腎皮質ステロイドホルモン。 利尿剤。 抗生物質。 下痢止め。 整腸剤。 嘔吐止めというものです。 なお、内服以外には、腸管の慢性病変ではシアノコバラミンというビタミンの一種が不足して状態が悪化しますので。 シアノコバラミンの皮下注射も行いました。
食事は非常に重要ということですから。 低脂肪食を処方しました。

それで4日間治療してみると。

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下痢嘔吐は治まり。 腹囲は減少しまして。 お腹の中の液体も減少あるいは消失してました。

血液検査はさらに1週間投薬してから行なう予定ですが。 おそらく血漿アルブミン濃度は増加していることと確信しています。

今後は定期的に血液検査を実施しながら、 ステロイドホルモンの内服と、シアノコバラミンの皮下注射を続けて行く予定です。

この病気の多くは生涯にわたる治療が必要になることが多いようですから。 ステロイドホルモンを副作用が生じない最小限の用量で上手くコントロール出来るよう頑張ってみたいと思います。

ではまた。