兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 12/01 後躯麻痺に随伴する尿失禁への対応
院長ブログ

12/01 後躯麻痺に随伴する尿失禁への対応

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もうすぐ16才になる柴犬の男の子の話しですが。

今まで庭に入り込んで来た狐の疥癬虫をもらって重度の皮膚炎になったり、歯の根っ子に細菌感染が生じて顔が腫れたりと、いろいろあったのですが。

この夏前から足腰がひどく弱って来て。秋口から夜間にひどく鳴くようになったり、排便困難になったり、食後の嘔吐が生じたりしたのを、抗不安薬とかを使用したり消化管の運動改善剤を使用したりして対応して来ました。

認知症はあると思われたので、ヒルズのB/Dという認知症対策用処方食は食べさせていただいております。

飼い主様の意向では、年相応に少しでも楽に生活させて、安らかに送ってやりたいということなのですが。

11月29日の来院では。その前日から排尿がほとんど見られなくなってしまったということでした。話しを聴いてみると、完全に出ないと言うよりは、ジミジミと漏れ出て来るような感じのようです。

尿失禁が生じる以前に、後躯が弱ったのか?起立や歩行が出来なくなってしまっているようです。

一般的に尿が出難いという場合には。尿が生成されて排泄される全ての経路において、腎臓の尿産生が行われなくなったのか?尿管から膀胱、尿道の排泄経路のいずれかで尿路結石による閉塞や狭窄や神経系や平滑筋に機能不全が生じていると考えますから。

まず、尿道に詰まりが無いのかどうか?をカテーテルを挿入することによって点検します。

なかなかカテーテルが入りません。局所麻酔薬の入ったゼリーを塗って滑らかにしているのですが。結石でも詰まっているのでしょうか?

いろいろやって、何とか通るようになったのですが。でも、結石とはどこか違うような感じがします。

最初に使用したのよりももっともっと細いカテーテルを使用すると、スムースに入るのですが。最初のカテーテルをもう一度入れようとすると途中で入らなくなってしまいます。

尿道平滑筋が変に収縮しているような感じを受けます。

腹部エックス線検査では、少なくともエックス線で判るような結石は、腎臓から膀胱、尿道の何処にも見当たりません。

 腹部エコー検査でも、結石の徴候は無いです。

膀胱内には大量の尿が貯留していて。細いカテーテルで採取したら470ミリリットル溜まってました。

尿検査でも結石とか感染の徴候は感じられません。

ここ数週間の間に後ろ肢が立たなくなったということですが。もしかして、その後躯麻痺に関連した神経系の問題なのかも知れません。

後躯麻痺を追求すべきなのかも知れませんが。今までの経過とか犬の体力、意識レベルの問題とか考えると、正直微妙な感じです。

結局、後躯麻痺に関連して、膀胱から尿を排出させる機能が働かなくなってしまって、膀胱内に大量に尿が貯留するようになって、オーバーフローという感じで、尿失禁が生じていると判断しました。

治療は、本日カテーテル導尿をやったということありますので、しばらく抗生物質を内服してもらうのと。尿道とか膀胱頸部の緊張を緩めて尿が排泄されやすいように神経に働いてくれるお薬を内服してもらうということで行なうことにしました。

投薬開始して翌日、やはり尿が出ないということで、飼い主様が不安を感じられて来院されましたが。膀胱を圧迫すると容易に排尿がなされるようになっていることをやって見せて。膀胱の圧迫法を少し練習していただいて安心してもらいました。

白君の介護については、ご家族の皆様がそれぞれ役割分担して一生懸命に取り組んでおられてまして。

ある意味彼の存在が家族の絆を深めているように感じている次第であります。

後躯麻痺があるのはあるように感じられますが。ワンちゃんの意識レベルの問題もあり、どこまで追求するべきなのか?私にも判断がつきかねるような微妙な症例であります。

何とか日常介護でそれなりに生活出来ているようですから、このまま安らかに生活出来て、苦痛無く犬生をまっとう出来ればそれで良いのかも知れません。