兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 消化器内科
院長ブログ

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マンソン裂頭条虫

今日の午後診で3種混合ワクチンを接種に来られた猫ちゃんの話しですが。

私は、犬でも猫でも年に一度のワクチン追加接種の際には、なるべく検便と胸部聴診を欠かさないように心掛けています。

歳を経て心雑音が聴こえるようになって、心臓病の存在が明らかになる犬猫も居れば。消化管内寄生虫の感染が明らかになって、重症になる前に駆虫することにより事なきを得る事例も多いです。

この子の場合は、直接塗抹検便によりマンソン裂頭条虫という寄生虫の卵が発見されました。

検便は直接塗抹という方法と、浮遊法という方法と二通りの方法を同時に行なうことにより、検出可能な寄生虫卵のバリエーションが多くなります。

マンソン列頭条虫の卵は浮遊法では検出されることは普通はありません。この卵を見つけることが出来る方法は、直接塗抹法か、あるいは遠心集虫法と呼ばれるかなり手の込んだ検便のやり方になります。

それで、マンソン裂頭条虫とはどんな寄生虫かというと。自然豊かな土地に住んでいる、世間で「真田虫(サナダムシ)」と呼んでいる寄生虫です。真田という名前の由来は、和服の着付けに使用する真田紐という小道具に姿が似ているためと記憶しております。

マンソン裂頭条虫がどんなやり方で動物に寄生して行くのか?と言えば。まず、動物の腸管に棲んでいる親虫が卵を産んで。その卵が川や池の水の中に流れて行ったら。
そこでミジンコなどのプランクトンに食べられて。
そのプランクトンを魚やオタマジャクシたちが食べて。
その魚や、オタマジャクシが成長したカエルを犬や猫や人間が生で食べると、犬や猫や人間の腸管に親虫が寄生することになるわけです。

特筆すべきは、親虫が産んだ卵を、犬や猫や人間が直接口にしても、その卵はお腹の中で成長することはないということで。必ずプランクトンや魚やオタマジャクシなどの小動物の身体を経由しないと成長出来ないということなのであります。

因みに今日検便でマンソン裂頭条虫が発見されたにゃんこは、普段かなりワイルドな生活を送っていて。カエルやスズメやヘビや何やかやを狩りするのが日課だということでした。

このまま寄生を放置していると、お腹が具合悪くなったり、最悪虫が分泌する毒素にやられて神経症状が出たりすると言いますから、一応駆虫はしようという話しをさせていただいて。

この子の場合注射で駆虫しました。

しかし、猫にとって狩りをするというライフスタイルはなかなか改めることは困難だと思いますので。今後は定期的に検便を駆虫を繰り返す必要があると思います。

でもにゃんこちゃん。楽しい毎日を送っているのですね。ある意味素晴らしいことと思います。

免疫低下の原因は?

1週間前に来院して来たシーズ犬のランちゃんは、9才と7ヶ月令避妊済み女の子なのですが。5才の頃よりアカラスと俗に言われる犬毛包虫症に罹ってまして。他院で治療しているのですが、すっきりしないということで、当院に来られたそうです。

アカラス以外にも、緑内障、乾燥性角結膜炎、それに僧房弁閉鎖不全症も存在しているようです。

で、診察室で今までの経過を聴き取りしている際に、来院4日前にトリミングに行ってから、翌日に41.1℃の発熱が生じて、かかりつけの動物病院で胸部エックス線検査の所見から気管支炎だとの診断で、解熱剤を注射してもらったが、食欲が無いというお話しでした。

検温してみますと、体温は40℃丁度で発熱しています。

診察申込み書の記載では皮膚病の治療希望ということでしたが、発熱と食欲廃絶ということであれば、まず何よりもそれに対応して、皮膚病は食欲が回復してから取り組むべきとお話しをしまして。

採血をして全血球計数とリパーゼ、犬CRPを含む徹底的な生化学検査を行なうと共に、胸部エックス線検査を実施してみました。

その結果ですが。胸部エックス線検査では気管支炎の所見は見つけられませんでした。血液生化学検査では総コレステロール、アルカリフォスファターゼ、リパーゼ、犬CRPに高値が見られました。

膵炎の疑いがあり、アルカリフォスファターゼの高値は副腎皮質機能亢進症か?膵炎による2次的なものか?どちらかと思われます。飼い主様には膵炎の確定診断のために「犬膵特異的リパーゼ」の外注検査を東京のアイデックスラボラトリーズに依頼するのと、静脈カテーテルを前腕に留置して輸液を行ないながらの入院になることを了承していただきました。

入院初日には、座っているランちゃんの頭がフーッと左に流れるように落ちて行って、ハッと戻るような常同行動と言って良いのか?と思われるような動作がずうっと見られて、意識レベルとかにも何処か問題がありそうな感じを受けました。

体温は入院二日目から38.4とか38.3℃くらいまで低下して。皮膚炎も大幅な改善が見られます。頭部のおかしな動きも2日目には消失して意識レベルも正常になりました。

犬膵特異的リパーゼの検査結果は634μg/Lと正常値200634μg/L以下に比べて上昇が見られましたので、膵炎の存在は確定ということになりました。

しかし、3日目くらいにはランちゃんの表情からかなり体調がよろしくなって来ていると判断しまして。
膵炎対応低脂肪処方食を食べてもらおうと、目の前に提示してみるのですが、顔をそむけるような反応です。

4日目、5日目も全然食事を食べようとはしません。元々自宅でも食が細く、少しでも気に入らないと頑として受け付けないということですので。

5日目にして一旦帰宅してもらいました。

すると、翌日の報告では少しではありますが食べたということです。

膵炎は何とかクリヤーというところでしょうか?

ランちゃんのこれからですが、元々大きな問題である5才で発症した全身性毛包虫症は、免疫を低下させる何らかの基礎疾患が存在していることが多いですから。副腎皮質の機能評価とか免疫機能に関わる疾病を探って行かなければならないと思います。

当面、毛包虫症は細菌の二次感染をコントロールしながら週に1回の注射で治療して行こうと考えています。

入院中中1日のペースで実施した血液検査では、犬CRPはずっと6以上の高値を継続していましたから、内臓の疾患がそんなにひどいと思われない現状では、皮膚疾患が相当悪いのだと思わざるを得ません。何とか治してやりたいと考えています。

緑内障は、これも、大きな問題ではありますが。現在は高眼圧で苦しんでいる様子はありません。眼球が大きくなって目蓋が完全に閉じなくなってしまっていることと、涙が出なくなってしまっている乾性角結膜炎(重度のドライアイ)によって慢性的に眼がひどい炎症を起こしていることに関しては人工の涙を供給する眼軟膏を米国から輸入して持っておりますので、それを使用して。

巨大になってしまっている方の眼球に関しては、そのうちに生活の質を向上させるために摘出も考えた方が良いかも知れません。

僧房弁閉鎖不全症は、今のところそんなに重症でもなさそうなので、ACE阻害剤というお薬を継続して行けば当面大丈夫かと思います。

ランちゃん、いろいろ大変ですが。急性の膵炎をクリヤーしたこれからが本番だと気を引き締めて頑張りたいと思います。

 

膵炎と発作に関連あり?

今日の症例は、痙攣を起こすという稟告で受診された6才のトイプードルの男の子です。

数年前に他所から譲り受けて、何かと吐くことが多い印象だったそうなのですが。
3月初めにいきなり激しい痙攣が生じて。一応すぐに回復してケロリとしていたので様子を見ていたら、14日の夕方から震えが出始めて、よだれが沢山出て、後ろ向きに歩くような奇妙な行動が出たりしたので、近医にて受診されたそうです。

そこの先生は、一応血液検査をしてから痙攣を抑える注射を打ってくれたそうですが。これから先が不安なので当院の患者様の紹介でこちらに受診されたという事でした。

動物に痙攣発作が生じるような場合、癲癇とか水頭症のような脳の疾患を疑う前にやらなければならないことは。
低血糖性発作、心臓性発作、低カルシウム性発作、尿毒症性発作、などの代謝性というか内臓性というかの発作を除外しなければなりません。

この子の場合、先の先生のところで血液検査をしたとか聴きますが。データが手許に無いということなので、当院でも採血させてもらいました。

心臓に関しては、聴診でかすかに全収縮期性雑音が聴取されましたが、発作を起こすほどの弁膜症ではないと判断しました。

簡単な脳神経の検査では、光に対する瞳孔の反射は正常で、威嚇反射も正常ですから、この度はそれ以上は診ませんでした。

血液検査の結果では、全血球計数は総て正常値。GPTが高値(609U/L)リパーゼが1000U/Lオーバーというのが正常範囲外の数値でした。

肝機能と膵機能に異常が生じている可能性がありますので。
肝機能に関してはウルソの錠剤と、サミイの含まれたサプリを処方して。
膵機能に関しては、もう一度採血を行ない、血清を分離して東京のアイデックスラボラトリーズに犬膵特異的リパーゼの検査を外注しました。

2日後に帰って来た検査結果では、犬膵特異的リパーゼも1000mg/dlオーバーというかなりの高値であります。

犬膵特異的リパーゼと犬の膵炎に特異性の高い検査項目で、これが基準値以上に上昇していると膵炎と言い切って良いと、セミナーでは聴いております。。

この子の発作も、最初に生じたのは詳しく聴くと痙攣で間違いないと思いますが、2回目の発作は震えとか後ずさりですから、あるいは膵炎関連の腹痛で生じた症状だったのかも知れません。

肝機能障害とか腎機能障害は、膵炎で普通に生じますからGPTの高値は膵炎関連のものの可能性が高いでしょう。

なお、膵炎が慢性か急性かということは、臨床症状と経過から判断しなければなりません。今回の膵炎は元々慢性膵炎を持っていたのが急性化した可能性があります。
慢性膵炎は、時々急性化しながらジミジミと燃えて行って、進行して行くと膵臓から出なければならない消化酵素が不足するようになったり、膵臓のランゲルハンス島から分泌されるインスリンというホルモンが不足するようになって糖尿病になったりする可能性があります。

慢性膵炎は、主に低脂肪食を食べさせることによって管理して、時々の急性化には輸液や抗生物質などで対応して行くことになります。

今回の膵炎には、先に処方した肝臓関係の薬に加えて、抗生物質を処方するのと、低脂肪処方食を処方することで対応することにしました。

膵炎が痙攣を生じさせるというのは聴いたことは無いですが。抗痙攣剤は処方することは控えて、まず膵炎に対応してから痙攣発作が別に生じるかどうかを見極めて行こうと考えています。

膵炎に関連しては、急性慢性他疾患との係わりとか、それこそいろいろなパターンの症例が増えて来ています。
最近は自己免疫疾患との関連を疑わせるような子も治療中なのですが。その子についてはまだ帰趨が判明していませんので、後日にまとめてみたいと考えています。

ではまた。

 

 

 

03/09 ジャーマンシェパードの下痢症 その2

3月2日にアップしたジャーマンシェパードのモモちゃんの下痢症のその後ですが。

アイデックスラボラトリーズに外注した犬トリプシン様免疫反応物質(c-TLI)の検査結果は、20.1ng/mlという正常範囲のものでした。

検査結果が正常範囲だから膵外分泌不全は除外されるのか?

試験的に投薬した結果ではどうだったか?と言えば。

悪臭ある未消化下痢便は見事に良便になって、体重も1週間で600グラムほど増えて、非常に良い状態になりました。という報告であります。

なお、便の性状ですが。投薬以前の便は、そんなに軟らかくない状態であっても、トイレで処分する際に便器に付着すると何回流してもいつまでもしつこく汚れが残るようなものだったのが。
投薬後の便は便器に触れても付着することもなくサラリとした感じですということであります。

なお、今回の投薬では、消化酵素のパンクレアチン以外に細菌を殺す抗菌剤と下痢を止めるお薬2剤の合剤、薬剤耐性ビフィズス菌を別に出していますから。

どの薬が効いて良い状態になっているのか?を検証するために、今日の投薬ではパンクレアチンだけを処方することにしました。

もし、これで下痢が再発するようであれば、膵外分泌不全ではない別の要因で下痢症になっているという事だと思いますので、いろいろと別の検査をしたりして追求しなければならないかも知れません。

下痢が再発しないのであれば、膵酵素が不足していると考えざるを得ないでしょう。

検査結果との不一致については、
1、膵酵素は十分量出ているが、何らかの原因で利用出来ていない。
2、膵酵素はある程度は出ているが、量が不十分である。

辺りが原因なのかも知れません。

モモちゃんの状態は一応改善しておりますので、今しばらく処方を工夫して追求してみたいと思います。

飼い主様を見上げるモモちゃんは、本当に幸せそうであります。

 

03/02 ジャーマンシェパードの下痢症

本日午前診を受診された10才になったばかりのジャーマンシェパードドッグのモモちゃんの話しですが。

約1ヶ月前から良便と下痢を数日毎に繰り返すようなことで、お腹はひどく空腹で食糞するくらいひもじいのに、いくら食べても進行性に削痩して行くということです。

下痢には時々鮮血が混じったり、粘液が混じったりするのですが。糞の臭いはかなりの悪臭であるということで。持参された便は消化不良性の下痢という印象でした。

モモちゃんは、もともとすごく神経質な子で、近所の子が塀にボールをぶつける音とか、見知らぬ人が家に入って来るとか、心理的にプレッシャーを感じるとてきめんに下痢をする傾向があったということです。

私としては、稟告で症状を聴き、モモちゃんの表情とか体形とかを見て、膵酵素が不足している下痢症ではないか?という印象を受けました。

しかし、先入観とか直感だけで仕事を進めていると、いつか大失敗しそうになると思いますので。糞便検査、腹部エックス線検査、院内での血液検査(全血球計数と血液生化学検査)を実施することにします。

糞便検査の結果は寄生虫は発見出来ずで、腹部エックス線検査では消化管内にはガスのみで食事が入っていないことが判っただけで。
全血球計数は異常値は無し。血液生化学検査ではほとんどが正常値であるも、総コレステロール値のみが正常値よりも低いという結果でした。

これまでの検査結果と症状、糞便の性状から、膵臓からの消化酵素の分泌不足の有無を確かめるために、東京のアイデックスラボラトリーズの行なう、犬トリプシン様免疫反応物質(c-TLI)という検査を外注で行なうことを提案させていただき、飼い主様の承諾を得て検体の血清を採取しました。

検査結果が出るまでの間、1週間分のお薬として、当院で下痢セットと称している、ペニシリン系の抗生物質と、下痢止め2剤の合剤、耐性ビフィズス菌の3つのお薬の組み合わせと、パンクレアチンという消化酵素製剤を処方します。

c-TLIの検査結果は、来週後半までには報告があると思います。さて、どんな展開になるのでしょうか?

あるいは、単に神経が過敏なジャーマンシェパードドッグに良く見られる精神的な下痢だったりするかも知れませんが、私としては膵酵素分泌不足の予想を立てております。

 

01/19 猫と異物誤嚥 危ないところでした

ずっと以前に当院にかかっていたという猫ちゃんが久し振りに来院です。

4日前から咳とえずきとが激しくなっていて、当初は鼻水も出ていたそうです。

食欲は、食べてはいるけれども幾分減少傾向。

お尻で体温を測ってみましたが、38.7℃と平熱です。胸部聴診でも、心音呼吸音共に特に異常な音は聴こえません。

猫風邪にかかっているかも知れませんねとお伝えして、インターフェロンの注射をお勧めして、同意を得ましたので注射を実施して。

帰宅後に内服させるようにお薬を調剤したのですが。どうして内服させるのか?判らないということでしたので。
最初の投薬は院内で私が説明しながら実施してみせることにして。

猫の口を大きく上向きに開けて、えっ?と思いました。

咽喉の奥に黒い細い異物があるのに気が付いたのです。

もう一度、口を開けてみて、やはり異物だということを確認して。その旨を飼い主様にお伝えして。

外科用の鉗子を準備して、異物を除去すべく試みたのですが。さすがに抵抗されて叶わず。

深い鎮静、あるいは軽い麻酔が必要であることをお伝えして、同意をえまして。

拮抗薬があるので比較的覚醒させやすいタイプの鎮静剤を筋肉注射で投薬して。約7分後に意識朦朧として抵抗出来ないことを確認しつつ。口を開けて鉗子を使用して異物を取り出しました。

異物は、糸付きの縫い針で、先端が折れてました。

異物さえ取り出せばもう大丈夫だと判断しまして。拮抗剤の注射により猫ちゃんは無事に覚醒します。

今回の症例は、先入観による診療が如何に危ういかという良い例だったと思います。

初診で異物に気が付かなかったら、いずれは検査により発見されたとは思いますが。発見まで時間が長引くとそれだけ猫ちゃんは苦しむわけですし。飼い主様も心配だったと思います。

ホッとしたというのが正直なところでした。

どんな些細な症状の子でも、大したことはなかろうと嵩をくくったり軽くみたりしないで、真摯に診療に取り組んでいかなければなりませんね。

12/07 保護された猫ちゃんに炎症性腸疾患?と猫毛細線虫による膀胱炎

ノワちゃんは野良猫だったのですが。縁あって優しい方に保護されました。

しかし、健康診断のために連れて来られたのですが。どうも食欲は普通にあるものの、食べると吐くという症状を呈しているらしいです。

腹部の触診をやってみると、変に腸が硬いというか、ぶっとい腸管がカチカチの状態でした。いろいろと検査をやってみて。結果として腹部エコー検査での腸管の筋層の異常な肥厚から炎症性腸疾患の疑いが濃厚であると判断しました。

上の画像が腸管の横断面ですが。左側の矢印が筋層で、右側の矢印が粘膜層を指しています。

この筋層と粘膜層の厚さの比率が、この子では筋層が粘膜層の何倍にも肥厚しているのですが。実際に健康な子だったら、この比率が逆転しているのもでして。筋層はごく薄く、粘膜層がゆったりと厚く映るのであります。

炎症性腸疾患の診断には、本当でしたら腸管を開腹しての全層切除とか内視鏡による粘膜バイオプシーをやるのが正しいやり方です。

ただ、目の前に居る患者さんにそれを提案しても、なかなか受け入れてもらえないのが現実でありまして。

今回も、診断的に治療してその結果が思わしくなければ生検も考慮しようということになりました。

治療は、免疫抑制量のステロイドホルモンの内服とアレルゲン除去食の給餌とで行ないます。
嘔吐止めとかお腹の悪玉菌を駆除する抗菌剤の投与もしばらくの間は行ないます。

結果は、ステロイドホルモンの投与と共に嘔吐は止まって、食欲も旺盛になって来たということでした。

治療開始後1ヶ月の時点で、治療効果を確認するための腹部エコー検査と副作用チェックのための血液検査を実施しました。

腸管の筋層と粘膜層の厚みの比率は随分正常に近くなっていました。ただ、肝臓の酵素の数値がごく軽度ではありますが上昇傾向にありました。

肝細胞庇護剤を投薬に追加して治療を継続します。

気になるのが、この時点で膀胱内にモヤモヤとした粘液が漂うような陰影が見られました。初診のエコー検査でもごくわずかにその傾向は見られてましたが。今回はよりはっきりとして来てました。

尿検査をすべきであるとお伝えして採尿容器をお渡ししました。

本日治療開始後2ヶ月後の検査を実施したところ、腸管の粘膜層と筋層の厚みの比率は完全とは言えないかも知れませんが、大体満足すべき状態と思われました。

これから1ヶ月とか2ヶ月くらいの時間をかけて、ステロイドホルモンの量を徐々に減らして行こうと考えています。

ただ、膀胱のモヤモヤはもっとひどくなっています。

画面中央の黒い構造が尿を溜めた膀胱で、正常だったらその中は真っ黒に見えるはずですが。モヤモヤとした白い構造が浮いているのが判ると思います。

それで、飼い主様は自宅での採尿が非常に難しいと言われますので。エコーで観察しながらの膀胱穿刺を実施しまして。尿を無菌的に採取しました。

で、その尿を検査してみますと。尿蛋白は3+ですし、尿のpHは8とアルカリ性です。どうも膀胱炎に罹っているようですが。残尿感とかの膀胱炎症状は無いようでした。

そして、検査を進めて、顕微鏡で尿沈渣を観察する段になって、びっくりしました。

明らかに何かの寄生虫の卵と思われる構造が観察されたのです。

ついでに、寄生虫そのものと思われる構造も見えました。これが幼虫なのか成虫なのかは不明です。

お恥ずかしいことで不勉強にして この寄生虫の正体はすぐには思い付きませんでした。永らく獣医臨床をやっていて初めて見る相手でした。

こんな時には恥を忍んで知っているであろう人に訊くに限ります。

大阪府立大学の内科の先生に電話をかけた上でメールで画像を送って問い合わせしましたところ。

猫毛細線虫であろうという返答をいただきました。有り難うございました。

猫毛細線虫は、教科書を調べると確かに記載がありました。中間宿主としてミミズを必要とする寄生虫で、尿の虫卵が直接口に入ってもその卵はいきなり発育はしないようです。

つまり、猫の膀胱に棲んでそこで炎症を引き起こしながら卵を産むのですが。生まれた卵は排尿と共に地面に落ちて。そこでミミズに食べられて、ミミズの体内である程度発育した後。そのミミズが猫に食べられることによって猫に感染するという発育環を持っているようなのです。

有り難いことに人間には寄生しないようでした。

治療薬も何とか当院に常備しているお薬で対応出来そうです。

いったんお帰りいただいていた飼い主様には電話で連絡を入れて、お薬を処方する旨お伝えしました。

お薬は内服薬で、毎日1回3日間連続して投薬します。

毛細線虫の発育が急に生じた原因ですが。もしかすると炎症性腸疾患?の治療薬として投与した免疫抑制量のステロイドホルモンによる免疫力の低下が一つの要因になっているのかも知れません。

いずれにしても診断がついて良かったです。

こうして普通の獣医師は関係者のご助力を仰いだりしながら一生懸命に頑張っている次第です。

ノワちゃんが元気になるのはもうすぐだと思います。

ではまた。

 

11/29 肥満と肝障害と食事療法

今日のテーマは、犬だけでなく人間でもこれを見るとドキッとする人が居るかも知れません。

今年2月に13才になる男の子の柴犬のシンちゃんですが。2012年2月2日に初診で来院した時には、GPT146U/L、ALP>3500U/Lと、比較的軽度かとは思いましたが、肝障害が存在していました。

体重は14.3キロあり、ひどい肥満とは言えないものの、軽い肥満傾向でした。獣医の世界の判断基準では、ボデイコンディションスコア4というところでしょう。

来院の理由も、近医で肝臓が悪いと言われてお薬をもらったが改善しないということでした。

いろいろ検査させていただくことには了解を得て。血液検査、肝エコーをやってみます。

血液検査の結果は、上記の通りで、肝エコーでも胆嚢にスラッジは溜まっていますが、正常範囲です。

原因は判りませんが、とりあえずのお薬としてペニシリン系の嫌気性菌を殺す作用の強い抗生物質と、幹細胞を守る作用のお薬とを2剤処方しました。

飲水量が多いかも?というお話しでしたので。ACTH刺激試験を行なって、副腎の機能的なサイズを評価してみましたが、特に副腎皮質機能亢進症とまでは言えない結果でした。

翌週に、ペニスから出血があるということでしたので。エックス線検査で前立腺の腫大が見られたことから、去勢手術はお勧めしました。

ただ、ペニスからの出血は、マスターベーションに拠る擦り傷であると判断しました。

去勢手術は3月初めに行ないました。繁殖の予定の無い牡犬を、「自然が一番」という考えで不自然な禁欲生活を強いているのが大方の飼い主様の傾向だと思いますが。マスターベーションをするのも性的フラストレーションの現れだということを理解していただいてのことであります。

その後、食事療法として肝臓サポート食を食べてもらいながら、抗生物質と肝庇護剤の投薬を続けますが。GPTは正常値に下がったものの、ALPは500U/L前後を行ったり来たり。総コレステロールも高値が続いていました。

この夏には、軽度ではありましたが、熱中症にもかかったりして、さすがにウェイトコントロールにも取り組まなければなりませんよと、お伝えしまして。

8月末頃より、ロイヤルカナンウォルサムというメーカーの、消化器サポート高繊維というお食事を食べてもらうことにします。

で、気になる肝臓の数値は、肝臓サポート食と消化器サポート高繊維とを半々に混ぜてやっていて体重が14キロ台の頃までは、むしろ高値が続いていたのですが。

シンちゃんが新しい食事に慣れて、消化器サポート高繊維だけを食べるようになり、体重が13キロ台前半になった頃からどんどん正常値に近づいて来まして。

まず総コレステロール値が正常値に下がって来て、その次の月くらいからALPも正常値に近くなって来まして。

11月29日の検査ではほぼすべての生化学検査の項目が正常範囲内に収まったのであります。この時点で体重は12.8キロでして。見た目にもスリムになって健康的な外観であります。

飼い主様はえらくお喜びになっております。

シンちゃんは、年齢こそ13才とかなりの高齢ですが。最近はすごく若返った感じになっていまして。この調子だったらまだまだ数年は元気で生活出来るかも知れません。

美味しい物を腹一杯食べることも幸せの形かも知れませんが。元気でどんどん歩ける健康もまた幸せの一つの形だと思います。

そして、犬は飼い主様が与える物だけを食べて生活するわけですから。飼い主様がワンちゃんの健康に想いを致して、適切な食生活を送らせるということは、ある意味飼い主様の義務ではないか?と思う次第であります。

ではまた。

 

10/18 膵炎の子と筋間気腫の子のその後

日曜日から膵炎で入院しているミニシュナのマロンちゃん。治療をしているとどんどん良くなって来ています。

今日から普通に食事も摂るようになりまして。

血液検査の結果も、ほとんどですが、問題無い状態まで改善して来ました。検査データの一部を掲載してみます。

明日の朝には静脈輸液を終わりにして、夕方には退院という予定で頑張っています。

とりあえず、助かったようで嬉しいです。

後は、再発させないように、食事管理に注意していただきたいと思います。

右脇腹の筋肉の間に気体が溜まって痛みのあったチワワのモモちゃんは、今日で投薬開始から1週間経過しました。

飼い主様は、モモちゃんを抱っこする時にすごく気を使って、脇腹に力がかからないように心掛けているということで、現在は痛がる様子は見られないとのことでした。

一応エックス線検査を行ないました。

まず全体像です。

気体が溜まっていた部分の拡大です。

念のために、1週間前に気体が溜まっていた部分の画像も掲載してみます。

 今日の写真では気体の貯留は消失している、あるいは消失しつつあるという感じでした。

もう1週間内服を続けてから、終了にしてみたいと思います。

しかし、秋が深まって来るに従って、閑になって来ましたね。経営の方面がちょっと心配です。

ではまた。

10/15 ミニチュアシュナウザーの膵炎

昨日来院されたミニチュアシュナウザーの8才の女の子ですが。

「朝からいきなり激しい嘔吐で、吐いた後ひどく震えている。それに腹部の左側が変に膨れて張っているような印象がある。」という稟告でした。

診察台の上での様子は、怖れて震えているのか?どうかは不明ですが。何となく不穏な感じを受けます。

こんな時に、詳しく血液検査とか腹部エックス線検査とかを勧めて、「あの動物病院は料金が高い。」と、そんな評判が拡がっても嫌ですが。
簡単に注射を2本か3本打って、内服薬を処方して、料金をお安く上げて、結果、重大な疾患を見落としたことになっても、それはそれで困ります。

そんなわけで。飼い主様には私の考えも正直にお伝えして、それでもちゃんと検査した方が良いような印象を受けていると説明して。

検査をさせていただくことが出来ました。

触診でも腹部エックス線検査でも、左側のお腹が膨れている感じは受けませんでしたが。
血液検査では、肝障害と黄疸にナトリウム、カリウム、クロールの低値、リパーゼの激しい上昇という結果が得られました。

電解質の低値は、あるいは激しい嘔吐による喪失かも知れません。

肝障害は、GPTやGOTの上昇が軽度ですから、あるいは膵炎に継発した2次的なものの可能性を感じます。

飼い主様には、その結果をお伝えして。膵炎の可能性が高いと説明し。東京のアイデックスラボラトリーズに膵炎の確定診断のための外注検査を依頼すると同時に、確定診断が付くまでは、膵炎という前提で入院加療する方が良いのではないか?と提案させていただきました。

飼い主様の了承を得ましたので。左前肢の橈側皮静脈という血管にカテーテルを留置して、輸液は生理食塩液にカリウムを添加したものを使用して、抗生物質2剤と痛み止め、嘔吐止めを使用して治療を開始しました。

夜間に状態を観察してみると、左腕を強く曲げるので、輸液の入りが悪くなったりしています。
少し不自由かも知れませんが。点滴用肢脚固定器という器具を装着して、肢が強く曲がってしまわないようにさせてもらいました。

明けて本日ですが。一応嘔吐は止まっているようです。
黄疸も改善傾向にあるようです。

飼い主様の面会の際に、容態を説明させていただきました。

夕方になって、アイデックスラボラトリーズからファックスで結果報告がなされました。

私の予想通り、膵炎間違いなしです。犬膵特異的リパーゼの数値が、正常値が200μg/mlのところ、1000オーバーという結果です。

丁度飼い主様のご主人が面会に来られたところでしたので、結果のコピーをお渡ししました。

その後、午後診終了前に治療効果確認のための血液検査を行なったところ、リパーゼの数値が300台にまで低下してます。肝臓の数値も軒並み改善して来てますし。黄疸も随分ましです。

何とか助かるかも知れません。

でも、油断せずにきちんと治って退院出来るよう頑張って治療します。