兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2014 10月 09
院長ブログ

日別アーカイブ: 2014年10月9日

ペルシャ猫の多発性嚢胞腎

8才になるペルシャ猫の男の子の話しです。 実はこの子、表題の病気の以前に、今年の8月に食道裂孔ヘルニアを発見しまして。母校の大阪府立大学で手術をしてもらったというヒストリーがあります。 大阪府立大学での診察の時に、エコー検査で膀胱内にキラキラした陰影が見られるから後日対処するようにと連絡をもらってましたので。 食道裂孔ヘルニアが一段落ついた昨日に、私なりに判断させていただくと断って、当院で腹部エコー検査を行ないました。 膀胱内のキラキラ陰影は確かに存在してまして。それなりに対応した方が良いのかな?という感じだったのですが。 同じ尿路系を評価するのだったら、やはり腎臓も診ておきたいと思い。プローブを腎臓領域に当ててみました。 「?????」腎臓に普通は見られない嚢胞(袋状の構造)があります。それも複数。 もう片方の腎臓も見てみました。 こちらも複数ありましたが。そのうちの一つはかなり大きいです。 腎嚢胞は、時たま小さい物を単体で見たことはありますが。こんなに多発する物を見るのは初めてです。

教科書でカンニングをしてみると。ペルシャ猫の多発性嚢胞腎は、ペルシャ猫以外にも発生は見られるが。一般的にペルシャ猫に多発していて。
遺伝性の病気であり。遺伝子診断も出来るようになっているとのことですが。

当院とお付き合いのある数軒のラボの資料には、記載は無かったです。
もし今度不安を訴える飼い主様が現れた場合。出入りのラボに訊いてみるか、母校の大阪府立大学の内科の先生もしくは教科書の執筆者のお勤めしている大学に問い合わせをしてみようかと思います。

腎嚢胞自体は、ときたま犬や猫の腎エコー検査をやっていると見つけることがありますが。多くは数も増えて行くこともなく将来的な問題もそんなに無いものであります。

しかし、多発性嚢胞腎の場合。年齢と共に嚢胞の数が多くなって行き。サイズも大きくなって。嚢胞が正常な腎組織を圧迫して、結果的には慢性腎不全に陥ることになるそうです。

嚢胞の増殖を防ぐことは今のところ不可能で。対症療法しかなく。経過は長期にわたりますので。治療法としては一般的な慢性腎不全の治療である食事療法や腎臓の糸球体という濾過器官を長持ちさせるお薬を内服させることしかありません。

遺伝病の場合。繁殖の段階で両親猫の遺伝子診断を実施して、不幸な子猫を作らないことが最も大切なことと思います。意識の高いペルシャ猫のブリーダーさんはもうとっくに実施されているかも知れませんが。まだ知らなかったという方は、愛猫の繁殖を考える前に獣医師に相談すべきと考えます。

今回の子の場合。とりあえず多発性嚢胞腎を発見したという段階であって。これから長い治療が始まるわけです。

気長に頑張ります。