兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2014 1月 10
院長ブログ

日別アーカイブ: 2014年1月10日

久し振りの子宮蓄膿症

今日の症例は、9才8ヶ月令になるミニチュアダックスフントの女の子です。

1週間前からお腹が張った感じになって、食欲が減退しているということです。食欲は全く廃絶しているわけではなくって、1日1回はきちんと食べているし、おやつなど好物は食べるということです。便の状態はやや軟便。嘔吐は無し。

いろいろ症状の聴き取りをしていますと、年末に発情があったということです。発情出血は元々長く続く傾向にあるとのこと。

いろいろ疑う前に、腹部エコーを撮って、まず子宮の状態を見ましょうとご提案して。

腹部エコーでは、膀胱の頭側に尿よりは密度の高い粘調な感じの液体を満たしている袋状の構造が見られました。

画面右側の真っ黒な部分は膀胱です。左側のやや白っぽい円形の構造が問題の異常像であります。

そこからエコーのプローブを頭側に移動して行くと、異常な袋状構造は頭の方に向かって延長しています。

この時点で、ほぼ間違いなく子宮蓄膿症であろうと判断しました。

飼い主様にはその事をお伝えして。詳しく血液検査を行なうと共に、胸部エックス線検査を実施して。麻酔が安全にかかって、かつ醒めることが出来そうかどうか?判断し、午後からお腹を開いてみることをお勧めしました。

飼い主様の同意が得られたので、血液検査とエックス線検査を実施しますと。
血液検査では、白血球数の増加、とりわけ細菌と闘う好中球、慢性炎症の時に上昇する単球の数が増加している他。炎症マーカーであるC反応性蛋白の上昇が著しいというデータが得られました。
胸部エックス線検査には異常はありませんで。一部写っている腹部には太いソーセージ様の陰影が観察されました。

そんなわけで。午前中に静脈カテーテルを留置して静脈輸液を行ない。抗生物質を2剤投与しておいて。

午後から全身麻酔をかけてお腹を開いてみました。

開ければ、当然ですが。大きく腫大した子宮が出て来ました。

取り出した子宮は、こんな感じです。ちょっと気持ち悪いかも知れません。お許し下さい。

で、これを鋭利な刃物で突いてみると、大量の血膿が噴出して来るのです。

この血膿の中には細菌が居りますので。血膿を使って細菌培養と薬剤感受性試験を実施します。

手術が終了すると、無事に覚醒しました。

画像は入院室で麻酔覚醒後の経過を観察しているところです。飼い主様についてもらっていますので、ワンコは比較的落ち着いております。

麻酔からの覚醒も良好ですし。一般状態もそう悪くはないので。今日は夕方に退院出来ると思います。

未避妊の女の子の場合。大きな疾病リスクとして子宮蓄膿症と乳腺腫瘍が存在します。繁殖予定の全く無い子の場合、なるべく早くに卵巣子宮全摘出による避妊手術を実施されるようお勧めいたします。
早くに避妊手術を実施したワンちゃんは、そうしなかったワンちゃんに比べて、健康で1年から1年半くらい長生きするというのは、現代の獣医学的に常識になっております。

ではまた。