兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の ボーダーコリーの炎症性腸疾患(IBD)
院長ブログ

ボーダーコリーの炎症性腸疾患(IBD)

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ボーダーコリーの、もうすぐ1才4ヶ月令になる女の子の話しですが。少し遠い街に住んでいる子でして。飼い主様がグリーンピース動物病院のHPとか私のブログをお読みになってこちらに受診されたということです。

この女の子ですが。2月の半ばに、野鳥の糞を食べてから急に下痢が始まったとのことです。

それで、近くの主治医の先生のところで、それこそいろいろやってみたのですが。新しい治療を試みると、少しの間反応した後、すぐに下痢が再発してしまうということでした。

最近やった治療としては5月の14日からパンクレアチンという消化酵素を食事に添加するというものでしたが。これも最初の1週間はそれなりに効果があったようだが。すぐに下痢が再発して。パンクレアチンの量を7グラムから15、20、30グラムへとどんどん増やしていっても、改善しないということです。

今までやった検査の資料を見せてもらいましたが。それこそ、内視鏡を使った十二指腸粘膜の病理検査から、私が昔利用していたことのある広範なIgEの検査までやってました。

しかし、いくつか気になることがあります。
それは、パンクレアチンを投与しているし、利きが悪くなったのにしつこく増量している割りには。消化酵素が不足している症例のエビデンスとなるはずの犬トリプシン様免疫反応物質(c-TLI)という検査を行なっていないということ。
実施していた血清のIgE検査は、やってみれば全く症状の出ていない子でも全部で90以上の項目のうち20や30くらいは普通に陽性反応が出て、検査結果と臨床症状との間の関連性が不明確なものであること。
院内の血液検査は実施しているものの、下痢症状が存在している時には必須であると私が感じている数項目が測定されていないこと。

などであります。

そこで、アレルギーの疑いに対しては、動物アレルギー検査株式会社の「アレルギー強度試験」を実施することにしました。

また、初日には食事を摂った状態でしたので。翌日空腹状態にして再来院してもらい。c-TLIを測定すると共に、検便にて寄生虫の検査を実施します。

検便では特にこれといった寄生虫は見つかりません。また翌日に帰って来たc-TLIの数値は正常範囲内でしたし。アレルギー強度試験では一応陽性でしたが。そんなに激しいものではありません。

c-TLIの検査結果が帰って来て翌日に、腹部エコー検査と、院内の血液検査を実施しました。

腹部エコー検査では特段の異常は見つかりません。腸管の粘膜の構造とか全然正常な感じです。
院内の血液検査でも膵炎関連の数値や炎症マーカーである犬CRPも全くの正常値です。

それで。今までの動物病院で実施して来た検査の結果も含めて考えると、炎症性腸疾患(IBD)の可能性が非常に高いと考えました。

因みに、世界小動物獣医師会(WASAVA)によるIBDの臨床診断基準では。
1、慢性消化器症状が3週間以上続いていること。
2、病理組織学的検査で消化管粘膜の炎症性変化が明らかである。
3、消化管に炎症を引き起こす疾患が認められない。
4、対症療法、食事療法、抗菌薬などに完全には反応しない。
5、抗炎症薬、免疫抑制療法によって症状が改善する。

というもので。IBDと診断するにはこれらの総て、あるいはほとんど総てを満たす必要があります。

この子に対しては1から4までは、軽いアレルギー以外は既に満たしていると思われますので。残るは5のみということになります。

そこで、IBDの第1選択薬であるプレドニゾロンというステロイドホルモンを、初期用量とされる量を1週間処方し。それまで食べていた中途半端な加水分解タンパク食を、徹底した完璧に近い加水分解タンパク食に変更してもらいました。

ステロイドホルモンを処方して1週間経った今日。来院されて言われるには。「この数ヶ月来有り得ないくらい正常な便が出るようになった。」ということでした。

この子は、今後の経過はどうなるのか?まだ完璧ではないにせよ。今のところIBDと言って良いのではないか?という感じです。

今後3ヶ月間は今の治療を継続して。状態が良ければ1ヶ月くらいかけてステロイドからの離脱を図る予定で行きますが。
ステロイドからの離脱が無理ということになったら。生涯にわたる免疫抑制療法が必要になる可能性がありますので。

その時は、ステロイド以外の長期投与が可能な免疫抑制剤を処方することになるかも知れません。

いずれにしても、遠くから訪ねて来られて、何とか恰好が付きそうですので少しホッとしています。

若く美しいボーダーコリーちゃんと飼い主様には、これから元気で幸せな生活をいつまでも続けて欲しいものであります。