兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 院長ブログ

院長ブログ

12/07 保護された猫ちゃんに炎症性腸疾患?と猫毛細線虫による膀胱炎

ノワちゃんは野良猫だったのですが。縁あって優しい方に保護されました。

しかし、健康診断のために連れて来られたのですが。どうも食欲は普通にあるものの、食べると吐くという症状を呈しているらしいです。

腹部の触診をやってみると、変に腸が硬いというか、ぶっとい腸管がカチカチの状態でした。いろいろと検査をやってみて。結果として腹部エコー検査での腸管の筋層の異常な肥厚から炎症性腸疾患の疑いが濃厚であると判断しました。

上の画像が腸管の横断面ですが。左側の矢印が筋層で、右側の矢印が粘膜層を指しています。

この筋層と粘膜層の厚さの比率が、この子では筋層が粘膜層の何倍にも肥厚しているのですが。実際に健康な子だったら、この比率が逆転しているのもでして。筋層はごく薄く、粘膜層がゆったりと厚く映るのであります。

炎症性腸疾患の診断には、本当でしたら腸管を開腹しての全層切除とか内視鏡による粘膜バイオプシーをやるのが正しいやり方です。

ただ、目の前に居る患者さんにそれを提案しても、なかなか受け入れてもらえないのが現実でありまして。

今回も、診断的に治療してその結果が思わしくなければ生検も考慮しようということになりました。

治療は、免疫抑制量のステロイドホルモンの内服とアレルゲン除去食の給餌とで行ないます。
嘔吐止めとかお腹の悪玉菌を駆除する抗菌剤の投与もしばらくの間は行ないます。

結果は、ステロイドホルモンの投与と共に嘔吐は止まって、食欲も旺盛になって来たということでした。

治療開始後1ヶ月の時点で、治療効果を確認するための腹部エコー検査と副作用チェックのための血液検査を実施しました。

腸管の筋層と粘膜層の厚みの比率は随分正常に近くなっていました。ただ、肝臓の酵素の数値がごく軽度ではありますが上昇傾向にありました。

肝細胞庇護剤を投薬に追加して治療を継続します。

気になるのが、この時点で膀胱内にモヤモヤとした粘液が漂うような陰影が見られました。初診のエコー検査でもごくわずかにその傾向は見られてましたが。今回はよりはっきりとして来てました。

尿検査をすべきであるとお伝えして採尿容器をお渡ししました。

本日治療開始後2ヶ月後の検査を実施したところ、腸管の粘膜層と筋層の厚みの比率は完全とは言えないかも知れませんが、大体満足すべき状態と思われました。

これから1ヶ月とか2ヶ月くらいの時間をかけて、ステロイドホルモンの量を徐々に減らして行こうと考えています。

ただ、膀胱のモヤモヤはもっとひどくなっています。

画面中央の黒い構造が尿を溜めた膀胱で、正常だったらその中は真っ黒に見えるはずですが。モヤモヤとした白い構造が浮いているのが判ると思います。

それで、飼い主様は自宅での採尿が非常に難しいと言われますので。エコーで観察しながらの膀胱穿刺を実施しまして。尿を無菌的に採取しました。

で、その尿を検査してみますと。尿蛋白は3+ですし、尿のpHは8とアルカリ性です。どうも膀胱炎に罹っているようですが。残尿感とかの膀胱炎症状は無いようでした。

そして、検査を進めて、顕微鏡で尿沈渣を観察する段になって、びっくりしました。

明らかに何かの寄生虫の卵と思われる構造が観察されたのです。

ついでに、寄生虫そのものと思われる構造も見えました。これが幼虫なのか成虫なのかは不明です。

お恥ずかしいことで不勉強にして この寄生虫の正体はすぐには思い付きませんでした。永らく獣医臨床をやっていて初めて見る相手でした。

こんな時には恥を忍んで知っているであろう人に訊くに限ります。

大阪府立大学の内科の先生に電話をかけた上でメールで画像を送って問い合わせしましたところ。

猫毛細線虫であろうという返答をいただきました。有り難うございました。

猫毛細線虫は、教科書を調べると確かに記載がありました。中間宿主としてミミズを必要とする寄生虫で、尿の虫卵が直接口に入ってもその卵はいきなり発育はしないようです。

つまり、猫の膀胱に棲んでそこで炎症を引き起こしながら卵を産むのですが。生まれた卵は排尿と共に地面に落ちて。そこでミミズに食べられて、ミミズの体内である程度発育した後。そのミミズが猫に食べられることによって猫に感染するという発育環を持っているようなのです。

有り難いことに人間には寄生しないようでした。

治療薬も何とか当院に常備しているお薬で対応出来そうです。

いったんお帰りいただいていた飼い主様には電話で連絡を入れて、お薬を処方する旨お伝えしました。

お薬は内服薬で、毎日1回3日間連続して投薬します。

毛細線虫の発育が急に生じた原因ですが。もしかすると炎症性腸疾患?の治療薬として投与した免疫抑制量のステロイドホルモンによる免疫力の低下が一つの要因になっているのかも知れません。

いずれにしても診断がついて良かったです。

こうして普通の獣医師は関係者のご助力を仰いだりしながら一生懸命に頑張っている次第です。

ノワちゃんが元気になるのはもうすぐだと思います。

ではまた。

 

12/01 後躯麻痺に随伴する尿失禁への対応

もうすぐ16才になる柴犬の男の子の話しですが。

今まで庭に入り込んで来た狐の疥癬虫をもらって重度の皮膚炎になったり、歯の根っ子に細菌感染が生じて顔が腫れたりと、いろいろあったのですが。

この夏前から足腰がひどく弱って来て。秋口から夜間にひどく鳴くようになったり、排便困難になったり、食後の嘔吐が生じたりしたのを、抗不安薬とかを使用したり消化管の運動改善剤を使用したりして対応して来ました。

認知症はあると思われたので、ヒルズのB/Dという認知症対策用処方食は食べさせていただいております。

飼い主様の意向では、年相応に少しでも楽に生活させて、安らかに送ってやりたいということなのですが。

11月29日の来院では。その前日から排尿がほとんど見られなくなってしまったということでした。話しを聴いてみると、完全に出ないと言うよりは、ジミジミと漏れ出て来るような感じのようです。

尿失禁が生じる以前に、後躯が弱ったのか?起立や歩行が出来なくなってしまっているようです。

一般的に尿が出難いという場合には。尿が生成されて排泄される全ての経路において、腎臓の尿産生が行われなくなったのか?尿管から膀胱、尿道の排泄経路のいずれかで尿路結石による閉塞や狭窄や神経系や平滑筋に機能不全が生じていると考えますから。

まず、尿道に詰まりが無いのかどうか?をカテーテルを挿入することによって点検します。

なかなかカテーテルが入りません。局所麻酔薬の入ったゼリーを塗って滑らかにしているのですが。結石でも詰まっているのでしょうか?

いろいろやって、何とか通るようになったのですが。でも、結石とはどこか違うような感じがします。

最初に使用したのよりももっともっと細いカテーテルを使用すると、スムースに入るのですが。最初のカテーテルをもう一度入れようとすると途中で入らなくなってしまいます。

尿道平滑筋が変に収縮しているような感じを受けます。

腹部エックス線検査では、少なくともエックス線で判るような結石は、腎臓から膀胱、尿道の何処にも見当たりません。

 腹部エコー検査でも、結石の徴候は無いです。

膀胱内には大量の尿が貯留していて。細いカテーテルで採取したら470ミリリットル溜まってました。

尿検査でも結石とか感染の徴候は感じられません。

ここ数週間の間に後ろ肢が立たなくなったということですが。もしかして、その後躯麻痺に関連した神経系の問題なのかも知れません。

後躯麻痺を追求すべきなのかも知れませんが。今までの経過とか犬の体力、意識レベルの問題とか考えると、正直微妙な感じです。

結局、後躯麻痺に関連して、膀胱から尿を排出させる機能が働かなくなってしまって、膀胱内に大量に尿が貯留するようになって、オーバーフローという感じで、尿失禁が生じていると判断しました。

治療は、本日カテーテル導尿をやったということありますので、しばらく抗生物質を内服してもらうのと。尿道とか膀胱頸部の緊張を緩めて尿が排泄されやすいように神経に働いてくれるお薬を内服してもらうということで行なうことにしました。

投薬開始して翌日、やはり尿が出ないということで、飼い主様が不安を感じられて来院されましたが。膀胱を圧迫すると容易に排尿がなされるようになっていることをやって見せて。膀胱の圧迫法を少し練習していただいて安心してもらいました。

白君の介護については、ご家族の皆様がそれぞれ役割分担して一生懸命に取り組んでおられてまして。

ある意味彼の存在が家族の絆を深めているように感じている次第であります。

後躯麻痺があるのはあるように感じられますが。ワンちゃんの意識レベルの問題もあり、どこまで追求するべきなのか?私にも判断がつきかねるような微妙な症例であります。

何とか日常介護でそれなりに生活出来ているようですから、このまま安らかに生活出来て、苦痛無く犬生をまっとう出来ればそれで良いのかも知れません。

 

 

 

12/01 猫の耳疥癬

午前診に来院されたスコティッシュフォールドの男の子ですが。4月生まれですから生後7ヶ月ということになります。

お家に来たのは9月ということです。10月から耳が汚いのに気が付いて、飼い主様は気になっていたのが。グリーンピース動物病院のHPを見られて来院することにしたとのことでした。

早速耳の中を観察してみますと、黒い、比較的乾燥した耳垢が大量に存在しております。

綿棒で探って耳垢を掘り出し。採取した耳垢を顕微鏡で観察してみました。この耳垢検査はちょっと耳垢が多いような外耳炎に対しては、なるべくルーティンで実施した方が良いと思います。

すると。居ました。

耳疥癬とか耳ヒゼンダニいうダニの一種です。犬や猫の耳に寄生するとひどい外耳炎を引き起こして、対応せずに放置していると、耳がボロボロになって行きます。

耳疥癬の治療は、即効性のある注射薬でまず殺虫を行なって。同時に耳の炎症を抑えるための耳掃除と点耳薬の使用で対応します。

猫ちゃんと一緒に写っている箱がその注射薬のパッケージです。牛や豚の寄生虫駆除薬を、獣医師の裁量により目的外使用しております。

注射は週に1回のペースで3回実施します。1回目の注射でほとんどの成ダニが死滅するはずですが。その後卵から孵化して来ますので。その幼虫を完全に殺滅させないと、また再発する可能性ありです。

耳掃除と点耳薬の使用により、耳は随分と綺麗になりました。

でも、こんな病気だったら、比較的気が楽ですね。基本的に治る病気ですから。

末期の悪性腫瘍とか、高齢動物の腎不全とか、認知症とか、寝たきりになって褥瘡でボロボロとか。

治る見込みは無いけれども。治らないでもちょっとでも楽に出来ないかと一生懸命に治療しなければならない子ばかり診ている時に、こんな簡単と言えば語弊があるかも知れませんが。治る見込みの子が来ると、どこかホッとしている自分に気が付きます。

11/29 肥満と肝障害と食事療法

今日のテーマは、犬だけでなく人間でもこれを見るとドキッとする人が居るかも知れません。

今年2月に13才になる男の子の柴犬のシンちゃんですが。2012年2月2日に初診で来院した時には、GPT146U/L、ALP>3500U/Lと、比較的軽度かとは思いましたが、肝障害が存在していました。

体重は14.3キロあり、ひどい肥満とは言えないものの、軽い肥満傾向でした。獣医の世界の判断基準では、ボデイコンディションスコア4というところでしょう。

来院の理由も、近医で肝臓が悪いと言われてお薬をもらったが改善しないということでした。

いろいろ検査させていただくことには了解を得て。血液検査、肝エコーをやってみます。

血液検査の結果は、上記の通りで、肝エコーでも胆嚢にスラッジは溜まっていますが、正常範囲です。

原因は判りませんが、とりあえずのお薬としてペニシリン系の嫌気性菌を殺す作用の強い抗生物質と、幹細胞を守る作用のお薬とを2剤処方しました。

飲水量が多いかも?というお話しでしたので。ACTH刺激試験を行なって、副腎の機能的なサイズを評価してみましたが、特に副腎皮質機能亢進症とまでは言えない結果でした。

翌週に、ペニスから出血があるということでしたので。エックス線検査で前立腺の腫大が見られたことから、去勢手術はお勧めしました。

ただ、ペニスからの出血は、マスターベーションに拠る擦り傷であると判断しました。

去勢手術は3月初めに行ないました。繁殖の予定の無い牡犬を、「自然が一番」という考えで不自然な禁欲生活を強いているのが大方の飼い主様の傾向だと思いますが。マスターベーションをするのも性的フラストレーションの現れだということを理解していただいてのことであります。

その後、食事療法として肝臓サポート食を食べてもらいながら、抗生物質と肝庇護剤の投薬を続けますが。GPTは正常値に下がったものの、ALPは500U/L前後を行ったり来たり。総コレステロールも高値が続いていました。

この夏には、軽度ではありましたが、熱中症にもかかったりして、さすがにウェイトコントロールにも取り組まなければなりませんよと、お伝えしまして。

8月末頃より、ロイヤルカナンウォルサムというメーカーの、消化器サポート高繊維というお食事を食べてもらうことにします。

で、気になる肝臓の数値は、肝臓サポート食と消化器サポート高繊維とを半々に混ぜてやっていて体重が14キロ台の頃までは、むしろ高値が続いていたのですが。

シンちゃんが新しい食事に慣れて、消化器サポート高繊維だけを食べるようになり、体重が13キロ台前半になった頃からどんどん正常値に近づいて来まして。

まず総コレステロール値が正常値に下がって来て、その次の月くらいからALPも正常値に近くなって来まして。

11月29日の検査ではほぼすべての生化学検査の項目が正常範囲内に収まったのであります。この時点で体重は12.8キロでして。見た目にもスリムになって健康的な外観であります。

飼い主様はえらくお喜びになっております。

シンちゃんは、年齢こそ13才とかなりの高齢ですが。最近はすごく若返った感じになっていまして。この調子だったらまだまだ数年は元気で生活出来るかも知れません。

美味しい物を腹一杯食べることも幸せの形かも知れませんが。元気でどんどん歩ける健康もまた幸せの一つの形だと思います。

そして、犬は飼い主様が与える物だけを食べて生活するわけですから。飼い主様がワンちゃんの健康に想いを致して、適切な食生活を送らせるということは、ある意味飼い主様の義務ではないか?と思う次第であります。

ではまた。

 

11/16 グリーンピースわんにゃん訪問隊活動

毎月第4金曜日が活動日の訪問活動ですが。今月は祝日と重なりますので、第3金曜日の本日に鶴林園訪問となりました。

いつものように、ブルテリ・新田雑の愛ちゃんと、ベルジアン・マリノワのゴーシュの2頭を連れて、早目に鶴林園の園庭に到着します。

2頭を出して排泄させ遊ばせてみますが。ボールを投げ与えてみると、ゴーシュのボールに対する執着はすごいです。愛ちゃんに先んじて必ずゲットしますし。取ったボールは自分だけで咬み咬みして遊ぼうとしています。

どんな意欲かは判ったので、今後はボール遊びは必ず私と行なうという癖を付けて行かなければなりません。

そうでなければ、物品を与えると何処かに持って行って、自分だけで一人遊びをする癖がついてしまいそうです。

訪問ボランティアさんたちもそろって、時間が来たので2階ホールに上がります。

愛ちゃんは、犬無し参加でもっぱらハンドラーとして活躍して下さるYさんにお願いして。
私はゴーシュと一緒にお年寄りとの交流を試みました。

ゴーシュは、誘導してやれば車椅子にかけたお年寄りの膝の上に前肢を置いて挨拶をしたりしてくれてまして。

概ね良い感じでした。

いつもは緩いオシッコもこの時ばかりはしっかりと失敗無しでクリヤーです。先月もそうでした。

そのうちに、抱っこしたいと言われるご婦人がいたので、ゴーシュをしばらく抱っこしてもらってました。

12キロ近くになっていますから、結構重かったでしょうけれども、すごく楽しそうに抱っこをしていました。

1時間の訪問時間の終わり頃、早目に2頭を連れて園庭に出て排泄させて置きました。

今月も無事に済んでホッとひと安心です。

良い性格の犬に育ちますように。

 

 

 

 

11/16 学会に参加して来ます

毎年11月の第3土日には、動物臨床医学会年次大会という大きな学会が大阪であります。

金曜日の夕方から始まるのですが。私は土日の二日間それぞれ日帰りで行って来ます。

泊まり込みで行きたいところではありますが。入院も抱えていたり、自分の飼い犬飼い猫も居たりしますから、やはり日帰りになってしまいます。

でも、北海道や沖縄の先生方も多人数泊まり込みで参加されていますので、私は近い分相当恵まれていると思います。

ロートルになって治療内容が古くショボくなって、動物や連れて来た飼い主様に迷惑をかけることがないように。最新の獣医療情報を頑張って勉強して参りますので。皆様方にはご不便のこととは思いますが、よろしくお願いいたします。

11/12 モモちゃん、中皮腫ではなかったようです

最初の臨床的問題点が腹水からスタートしたフレンチブルのモモちゃんですが。

大阪のネオベッツVRセンターにていろいろ精密検査を実施しても診断がつかず。

一時は抗生物質と利尿剤を使用したところ、劇的に改善して。

でも、投薬を中止してしばらくしたらまた再発して。同じ内容の投薬では利かなくなってしまって。

腹水の細胞診をこちらで再検査に出したところ、臨床的には中皮腫を疑うべきとの、良くない結果が帰って来たので、どうなるのか?ヒヤヒヤしながらの診療ではありましたが。

抗生物質を変更するとまたまた劇的に改善して。

ある日、腹部エコー検査を行なってみたら、最初に実施したエコー検査では見えなかった、管状の異常な構造が見えたので。

試験開腹したら子宮蓄膿症と判明して。

手術から10日経過したので、抜糸を行ないました。傷の経過は非常によろしいです。

飼い主様の曰くは、元気食欲とも快調になったということであります。

手術の際に腹膜を一部分切り取って、病理検査に出していた結果が帰って来てましたが。炎症性の変化であって、悪性腫瘍ではないということでした。

やれやれであります。

しかし、子宮蓄膿症にもいろいろなパターンがあるのですね。最初に子宮が膨れて来ないで、いきなり腹水という症例は今回が初めてでした。

でも。結果オーライで本当に良かったと思います。

モモちゃんも飼い主様もご苦労様でした。これから元気で長生き出来ますように。

 

11/11 チンチラ猫の真菌性皮膚炎?

11月2日に、久し振りに来院のあった1才になる去勢チンチラ猫のシエル君ですが。

両側足底部という比較的珍しい部位に皮膚炎が出来ていまして、化膿していました。

細菌培養と抗生物質感受性試験は実施したのですが。ちょっと気になりましたので、真菌培養の培地であるダーマキットという培地を使用して、炎症部位の毛を材料にカビの培養も実施してみました。

細菌培養と抗生物質感受性試験は、普通翌日には結果が出ますので、その結果に基づいて細菌を殺すお薬の投薬を9日間ほど実施してみました。

その結果は、それなりに治ってはいるのですが。どうもその治り方が期待したほどでもないという感じです。

検査結果が出るのに少々時間のかかるダーマキットの培地を確認してみると、カビがしっかり生えていて、そのカビの周囲の培地の色が赤く変化しています。

そうなのです。ダーマキットでカビを培養して、カビが生えた上に培地の色が赤変した場合、生えたカビには病原性があると考えて良いのです。

その結果から、カビを殺す内服薬と、カビを殺す作用の強いシャンプーを処方しましたが。さて、どうなりますか?

一応獣医としては良い結果が出ることを期待しております。

 

 

11/08 マルチーズの免疫介在性溶血性貧血

表題の免疫介在性溶血性貧血とは、自分の免疫抗体が自分自身の肉体を攻撃してしまうという、自己免疫性疾患の一種であります。

例えて言えば、自衛隊が自国民を攻撃するようになったという、悲しい病気なのですが。

狂った免疫機能がターゲットにする相手が赤血球の場合、免疫介在性溶血性貧血ということになりますし、皮膚組織の場合天疱瘡という病気になります。免疫機能が間違ってターゲットにしてしまう相手は、その他にも関節軟骨であるとか、甲状腺組織であるとか、腸管であるとか、いろいろ様々です。

そして、免疫介在性溶血性貧血でも、診断が特に難しいのは、先月に大学病院に診断を依頼した病気で、昔赤芽球癆と呼んでましたが、今でもそうなのか?骨髄の中で育って来て、今まさに循環血液中に出て行こうとしている若い赤血球が、自分の免疫で壊されてしまうという病気であります。この場合には、骨髄の生検と病理診断が必須になります。

この度診察した10才8ヶ月令のマルチーズの男の子の場合、来院まで4日か5日間突然食欲がほとんど消失してしまうという症状が出て、来院当日には散歩に連れて行こうとしたら、すぐに立ち上がったものの倒れてしまったという稟告でした。

視診で、どうも舌の色が異常に薄いように感じましたので、飼い主様に検査の必要性をお伝えして。
まず血液検査(全血球計数と血液生化学検査)とエックス線検査を行ないました。

血液検査でまず目を引いたのは、重度の貧血です。赤血球容積が9.3%しかありません。これくらいの数字の場合、動物は酸欠で口を開いた呼吸になることも多いですが。この子の呼吸状態は正常でした。

私たち獣医師が動物の貧血を発見した時にまず考えなければならないのは。

その貧血が、悪性腫瘍とか後天性免疫機能不全などが原因で骨髄で赤血球が造られなくなって生じた「非再生性貧血」なのか?

もしくは骨髄では一生懸命に赤血球を造っているのに、出血とか血管内溶血とかで貧血が進行して行くという「再生性貧血」なのか?

ということなのであります。

そして、その見極めの決め手となるのが、血液中の若い赤血球である「網状赤血球」の絶対数です。

犬でも猫でも、網状赤血球の絶対数と貧血との関連は、ちゃんとデータがありますから。網状赤血球数をカウントすることの出来る血球計数機を持っているか?あるいは特殊染色を行なった血液塗抹標本を顕微鏡で覗いてコツコツとカウンターを使って自分で計数するのかのどちらかを行なわなければなりません。

グリーンピース動物病院の場合、アイデックスラボラトリーズという米国のメーカー製の、レーザーサイトというレーザー光線の反射を用いた全血球計数が出来る血球計数機を使用しておりますので。
貧血を発見すると同時に、網状赤血球の絶対数もプリントアウトされて来ています。

ゴンちゃんの場合、網状赤血球は1μm当たり120,5300という数字で、骨髄は貧血を改善すべく一生懸命に頑張っているということが見て取れます。

即ち、ゴンちゃんの貧血は、「再生性貧血」なのです。

再生性貧血の場合、次に考えるべき問題は。それが出血性なのか?溶血性なのか?ということですが。これも全血球計数のデータの読み取りと血液生化学で黄疸色素が上昇しているのかどうか?で判断が付きます。

この場合、溶血性貧血は間違いないという結果でした。

更に突き詰めるべきことは、溶血性貧血にも、犬の場合「バベシア原虫」の寄生に拠るものか?ヘモバルトネラ寄生に拠るものか?あるいは最初に書いた免疫介在性の溶血性貧血なのか?という問題です。

ここで血液塗抹標本を真面目に評価する必要があります。血液塗抹標本を顕微鏡で覗きもしないで貧血をうんぬんする獣医師が居たとすれば、その獣医師ははっきり言って似非獣医師であり藪であると断言しても良いと思います。

私が見た塗抹の印象としては。
まず、赤血球が大きなのや小さいのやいろいろのサイズがあることと、球状赤血球が多数見られるということです。

上の画像を見れば、赤血球のサイズがいろいろであるということはすぐに判ると思います。
球状赤血球とは、丸い赤血球の中心部の色が薄くなっていない物をそう言います。

バベシア原虫らしき像も存在はしているのですが、正直アーティファクト(人工産物)との区別がはっきりしないので自信はありません。また、ヘモバルトネラの寄生は無いと言って良いと思います。これは自信があります。

上記画像の矢印の先にある色がわずかに薄くなっている部分がバベシアか?という構造なのですが。どうもはっきりと判りません。

なお、ヘモバルトネラの寄生は、正直他の基礎疾患があって、免疫機能が低下している犬でなければ、ほとんど診たことはありません。

脾臓や肝臓の血管系の腫瘍で生じるかけらのような赤血球は存在しませんでした。

塗抹の鏡検では、球状赤血球が多数確認されましたので、獣医の教科書を紐解くと、球状赤血球の存在は免疫介在性溶血性貧血を示唆するとなってはいますが。
バベシアに似たような赤血球内の構造も見られることですし。

ここでバベシアか?溶血性か?というこの問題を解決するには、外注検査による自己免疫抗体の確認(クームス試験)とバベシアの遺伝子診断とが決め手になると思います。

もう一度採血して、全血を検査センターに送ることにしました。

ただ、検査をするのは良いのですが。結果待ちの1日とか2日の間にも病状は進行して行くことでしょうから。何とかしなければなりません。

緊急避難的処方ではありますが。バベシアの特効薬の皮下注射と、免疫介在性溶血性貧血の第1選択薬であるステロイドホルモンの免疫抑制量の皮下注射のどちらも一気に行なうことにします。

輸血はとりあえずしません。口を開けた呼吸とかのひどい酸欠症状は見られないことと、血液型の事前の検査が出来ていないことがその理由です。

血液型の検査は、健康な時に前もって実施して置くのが正しいやり方で。こんなひどい貧血になってから慌ててやっても、少なくとも院内の検査では正確に結果が出ないことが多いです。

そんなことを言っていても、いよいよ危ないとなれば、我が院のドナー犬を務めてくれている謙ちゃんからの採血をやって、ためらい無く輸血を実施する心積りはあります。

という風に、ゴンちゃんの貧血の診断と治療は進んで行きましたが。

その夜には、ゴンちゃんは未明に輸液ラインをひどくキンクさせて、輸液が出来ない状態にしてくれました。しかも、それを直そうと試みると激しく抵抗して、悪くすると彼がショックを起こすか?私が咬まれて大怪我をするか?という感じでありました。

それでも、翌日になると、ゴンちゃんはいきなり朝食を食べてくれます。バベシアの注射か?ステロイドの注射のどちらかが?効いているのは間違いなさそうです。

入院2日目の夕方にはクームス試験の結果が帰って来まして。自己免疫抗体の存在は、確実とは言えないが怪しいと言うレベルの結果でした。
免疫介在性溶血性貧血の約3割はクームス試験陰性というセミナーの話しもありますので。陽性ならば確実で、陰性でも疑いは晴れないというところでしょう。

その間にもどんどん元気になって行って。入院3日目が終了するところで退院ということになりました。バベシアの遺伝子検査も陰性という報告がファクスされて来ましたので。診断としては免疫介在性溶血性貧血で良いと思います。

ゴンちゃんの今後の治療方針としては、ステロイドが効くのであれば、それ単独で。効きが今一つであれば、サイクロスポリンのような強力な免疫抑制剤との組み合わせを使用して。
とにかく血球容積を正常値にまで持って行って。貧血が改善したのであれば、徐々にお薬の量を減らして行って。

目標では3ヶ月後にはお薬からの離脱を図るということが、治療のゴールであります。

当然ステロイドを沢山使用しますから、最初の頃は毎週血液検査を実施して副作用のモニタリング、貧血改善の確認を行わなければなりません。

そんなことで、ゴンちゃんの貧血の治療は始まったばかりですが。ちゃんと道筋はつきましたので、頑張って治して行きたいと思います。

画像は入院3日目にして、退院を待っている猛犬ゴンちゃんの可愛らしい姿であります。

ではまた。

 

 

 

 

10/26 グリーンピースわんにゃん訪問隊活動

午後から、月に一度のわんにゃん訪問隊活動に行って来ました。

連れて行ったのは、生後2ヶ月令になるブルテリ・和犬雑の愛ちゃんと、新着ベルジアンマリノワのゴーシュの2頭です。

当院のお客様で、犬とかは連れて来なくて、ハンドラーを務めて下さるボランティアさんに、怖がりでない愛ちゃんをお願いして。私は比較的怖がりであろうゴーシュをハンドリングしました。

ゴーシュ君、最初の15分くらいは、とにかく怖かったのか?緊張しまくりで、動けない状態が続いていました。

一方の愛ちゃんは、2階ホールに着いて放されるとすぐにお年寄りの皆さんの車椅子のところに走って行って、順々に挨拶して回っていました。

そのうちに、ゴーシュの緊張も解けたように感じましたので、お年寄りのところに連れて行って、抱っこしてもらいます。

二人目のご婦人の時には、何故だか?相手との波長が合ったのか?ゴーシュ君すごくリラックス出来たようです。寝込んでしまうくらいでした。

愛ちゃんも順調にあちこちお年寄りのところを回っていて、この子は天性こんな活動に向いているのではないのか?と思ってしまうくらいでした。

 1時間の触れ合いの時間が過ぎて、ミーティングを済ませて帰りましたが。ミーティングの間子犬2頭は熟睡していました。

それなりに緊張して精神的疲労を感じていたのだと思います。

でも、何とか良い感じで過ごすことが出来ましたので、来月16日にもこの2頭を連れて参加したいと思います。