兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 院長ブログ

院長ブログ

犬の前十字靭帯断裂整復(関節外固定法)

今回のわんこは来月で3才半になる紀州犬雑の男の子です。
約3週間前に山に行っていて、膝を痛めたようです。

歩き方を見て、前十字靭帯という膝の靭帯が断裂していると直感しました。

鎮静をかけて、下腿の骨を前に押すようにストレスをかけてエックス線撮影を行なうと。

正常のエックス線画像を見ていないと、「何のこっちゃろ?」という感じですが。下腿の骨が大腿の骨よりも随分前にずれております。
前十字靭帯は、下腿の骨が前にずれないように繋ぎ止めてくれている靭帯でして。人間ではスポーツ選手が切ることが多い組織です。
そう言えば、あのフィギュアのエース高橋大輔選手もこの靭帯の断裂をこうむって、手術で復活してましたね。

前十字靭帯断裂は、当院ではそんなに頻度の高い疾患ではないです。前回の子は6年か7年前に柴犬で断裂した子が居て、その子は大腿筋膜を靭帯の代わりに関節に通すという「関節内法」で治療しました。

4年前くらいに整形外科のセミナーを受講した際に、講師先生が、「今現在関節の中に異物を通すような手術は時代遅れです。」と言い切ってましたが。それはどうかな?と思いながら聴いていました。

人間の前十字靭帯断裂整復術では、筋膜のような自分自身の組織で修復することが普通みたいですし。

まあ、でも、その講師先生の話しも少しは耳に残っておりますので。今回の紀州犬雑の子の場合。ナイロン糸を使用して「関節外法」をやってみることにしました。

手術は、普通に麻酔導入して。術野は特に念入りに毛刈りだけでなく、毛を丁寧に剃って、術野を覆うのはヨード剤を含ませたプラスチックドレープを使用しました。

骨関節の手術の時には特に術後感染の防止に気を使います。

手術は2段階に分けて実施します。第1段階は膝の関節を開けて、靭帯の損傷や半月板の損傷を確認して。傷んだ半月板は切り取ります。

この子の場合、慢性的にストレスがかかって断裂した症例ではないので半月板は問題無しです。

切れた十字靭帯の端がちょっと見えます。

半月板の損傷のチェックが済めば、関節包を縫い合わせて関節を閉じます。

第2段階は、外側腓腹筋種子骨という大腿の裏側外側にある小さな骨の裏を回すようにナイロン糸を通します。ナイロン糸の太さは、70ポンドテストの物を選択しました。糸を種子骨の裏に回すのは湾曲した縫合針を使って行ないます。

画像で見ると何のことか判り難いかも知れませんね。

次いで、糸を前に持って行って。今度は脛骨稜という膝の下のすねの骨が突き出た部分に穴を開け。

脛骨稜の穴と外側腓腹筋種子骨とを支点にしてナイロンで関節を締め上げて固定を完了します。

後は大腿筋膜を少し寄せてきつめに縫い合わせ。皮下縫合、皮膚縫合で手術は完了です。

こんな風に書くと大層ですが。実際にはそんなに難しい手技ではありません。

術後は2週間程度は安静を保つこと。12週程度は歩行のみで駆け足は禁止。という感じでしょうか?

一般に3ヶ月後までに正常歩行に戻り。5ヶ月後にはかなり強い運動も可能になるということです。

この方法の成功率は、教科書に依れば85%から90%ということらしいです。

お友達の獣医さんの話しでは、関節外法は緩むことがあるらしく、その人は筋膜を使った関節内法で良い成績を上げているいうことでした。

私の今回の症例はどうでしょうか? 上手く行って欲しいものであります。

今回の手術で後日緩みが生じるようであれば、関節内法で再手術をするつもりではあります。

ではまた。

 

続けて子宮蓄膿症

先日子宮蓄膿症が久し振りに来院したとの記事を書きましたが。

今日も犬の子宮蓄膿症の来院がありました。

今日の子は、今日が10才の誕生日だというミニチュアシュナウザーです。

1月3日から発情が始まったらしいですが。出血量が多いように感じられて。
1月18日から食欲が低下し。昨日19日にはフラつきだしたということで。いろいろネットで検索して当院にヒットして来院を決断されたということでした。

今回も子宮蓄膿症がまず疑われますので。腹部エコー検査を最初にやりまして。

子宮蓄膿症に特徴的な画像を得ることが出来ました。

飼い主様も随分予習をして来られたようで。なるべく早期の手術を希望されますので。
手術前提の血液検査、胸部腹部のエックス線検査を実施します。

ヘマトクリット値14%というかなりの貧血が判明しました。C反応性蛋白の高値とか白血球数、好中球数の高値は当然に存在してました。

ヘマトクリット14%は、麻酔のリスクファクターになりますので。当院に毎日私のお供で出勤しているベルジアン・マリノワのゴーシュから採血して輸血を実施することにしました。

ゴーシュの血液型は、DEA1.1(+)でして。この子も検査してみると(+)と判明しました。

昼前から輸血を200ミリリットルほど行ったところ、舌の色も随分改善して、かなり良い感じになりました。

ここで、麻酔導入を開始し。気管挿管、各種モニターの装着、静脈輸液を行ないながら、術野の毛剃り、消毒。術者&助手の手洗い滅菌手術衣の装着など準備を整えて。

速攻で子宮と卵巣の摘出を行ないました。

手術は速やかに終了し。麻酔からの覚醒も順調でした。

摘出した子宮は、通常よりもはるかに腫大してまして。

切開してみると膿が大量に出て来ます。

出て来た膿については細菌培養と薬剤感受性試験を行ない。明日以降はその結果に基づいた抗生物質を投薬することになります。

この子は、早ければ明日には退院出来ることと思います。

今日は頑張って元気な血液を提供してくれたゴーシュに感謝しています。今夜は御馳走を食べさせてやろうと思います。

ではまた。

 

久し振りの子宮蓄膿症

今日の症例は、9才8ヶ月令になるミニチュアダックスフントの女の子です。

1週間前からお腹が張った感じになって、食欲が減退しているということです。食欲は全く廃絶しているわけではなくって、1日1回はきちんと食べているし、おやつなど好物は食べるということです。便の状態はやや軟便。嘔吐は無し。

いろいろ症状の聴き取りをしていますと、年末に発情があったということです。発情出血は元々長く続く傾向にあるとのこと。

いろいろ疑う前に、腹部エコーを撮って、まず子宮の状態を見ましょうとご提案して。

腹部エコーでは、膀胱の頭側に尿よりは密度の高い粘調な感じの液体を満たしている袋状の構造が見られました。

画面右側の真っ黒な部分は膀胱です。左側のやや白っぽい円形の構造が問題の異常像であります。

そこからエコーのプローブを頭側に移動して行くと、異常な袋状構造は頭の方に向かって延長しています。

この時点で、ほぼ間違いなく子宮蓄膿症であろうと判断しました。

飼い主様にはその事をお伝えして。詳しく血液検査を行なうと共に、胸部エックス線検査を実施して。麻酔が安全にかかって、かつ醒めることが出来そうかどうか?判断し、午後からお腹を開いてみることをお勧めしました。

飼い主様の同意が得られたので、血液検査とエックス線検査を実施しますと。
血液検査では、白血球数の増加、とりわけ細菌と闘う好中球、慢性炎症の時に上昇する単球の数が増加している他。炎症マーカーであるC反応性蛋白の上昇が著しいというデータが得られました。
胸部エックス線検査には異常はありませんで。一部写っている腹部には太いソーセージ様の陰影が観察されました。

そんなわけで。午前中に静脈カテーテルを留置して静脈輸液を行ない。抗生物質を2剤投与しておいて。

午後から全身麻酔をかけてお腹を開いてみました。

開ければ、当然ですが。大きく腫大した子宮が出て来ました。

取り出した子宮は、こんな感じです。ちょっと気持ち悪いかも知れません。お許し下さい。

で、これを鋭利な刃物で突いてみると、大量の血膿が噴出して来るのです。

この血膿の中には細菌が居りますので。血膿を使って細菌培養と薬剤感受性試験を実施します。

手術が終了すると、無事に覚醒しました。

画像は入院室で麻酔覚醒後の経過を観察しているところです。飼い主様についてもらっていますので、ワンコは比較的落ち着いております。

麻酔からの覚醒も良好ですし。一般状態もそう悪くはないので。今日は夕方に退院出来ると思います。

未避妊の女の子の場合。大きな疾病リスクとして子宮蓄膿症と乳腺腫瘍が存在します。繁殖予定の全く無い子の場合、なるべく早くに卵巣子宮全摘出による避妊手術を実施されるようお勧めいたします。
早くに避妊手術を実施したワンちゃんは、そうしなかったワンちゃんに比べて、健康で1年から1年半くらい長生きするというのは、現代の獣医学的に常識になっております。

ではまた。

 

牡犬の会陰ヘルニアと鼠径ヘルニア併発例

今回の症例は、未去勢牡犬に多く発生する会陰ヘルニアに鼠径ヘルニアが併発したという、ちょっと珍しい例でした。

ワンちゃんは、10才ちょっとの雑種の男の子です。

5月にフィラリア予防と狂犬病予防注射で来院した時には全く異常を感じませんでしたし。飼い主様もこの夏までは異常無しだったということです。

会陰ヘルニアとは、肛門の横の辺りの筋肉が萎縮したりして、その筋肉の隙間から腸とか膀胱とかお腹の脂肪とかが脱出して来る、いわゆる脱腸という病気です。

ほとんどの子が排便困難の状態になり、苦しそうです。膀胱が脱出するとおしっこの出が悪くなったりします。

鼠径ヘルニアは、股の付け根内側から腸管や腹腔内脂肪などが出て来るもので、これも出て来た腸管が絞り上げられたような状態になると、腸が腐って腹膜炎になったりして危険な場合があります。

どちらも手術適応という事になりますが。私の経験ではこの二つのヘルニアが併発するのは初めてです。

飼い主様も病気の状態を説明して手術適応だということが理解されると、手術に同意して下さいましたので。

全血球計数、血液生化学検査、血液凝固系検査、胸部エックス線検査、心電図検査などの術前検査をひと通り済ませてから手術に臨みました。

毛刈りのために仰向けにした状態の画像です。上の矢印は鼠径ヘルニアの部分を示しています。
下の矢印は、会陰ヘルニアで膨れた部分です。

会陰ヘルニアの手術の前の画像です。術野の毛刈りをして、肛門を巾着縫合というやり方で閉じた時点の画像です。
肛門の右側から脱出した腹腔内脂肪と漿液が肛門の下側に溜まって異常に膨れています。

術中のしんどいところは省略して、会陰ヘルニア整復終了時点の画像です。

これから体位を仰向けに変更して、去勢手術と鼠径ヘルニア整復にかかります。

鼠径ヘルニア整復と去勢手術が終了した時点の画像です。会陰ヘルニアの手術に当たっては、去勢手術を同時に実施した方が、しなかった場合よりも有意に再発率が低くなるという統計が確立されています。

術後の経過は順調で、手術の翌日から排便困難も改善して、傷の治りも順調で。
年末年始にかかりましたので、術後約2週間、年明けの1月4日に無事に抜糸することが出来ました。

無事に治療が完了出来て良かったです。

牡犬の場合にも、繁殖予定が無い場合には去勢手術を早めに行なうことによりこのような性ホルモン関連の病気が減って、健康で長生きするという事は獣医学的に確立された事実であります。

繁殖予定の無い牡犬を飼育されている方は、去勢手術を考慮されることをお勧めします。

ではまた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通称「下痢セット」

グリーンピース動物病院では、下痢を主症状とする一般的な腸炎の治療薬として、①嫌気性菌(腸管内悪玉菌)を殺すペニシリン系の抗生物質と②腸粘膜を引き締めて便の形を作り、悪玉菌の形成する腸管内毒素を吸着したりする止瀉剤、それに③善玉菌(使用した抗生物質では死なないように加工してあります)を補給する整腸剤の3剤を組み合わせて使用することが多いですが。

この組み合わせを、「下痢セット」と称しております。

最近の下痢セットの使用例ですが。当院では初診に当たる2才10ヶ月令になるキャバリア・キングチャールス・スパニエルの男の子が、2日前から下痢が始まって。現在は1時間に1回か2回水様便を排出し続けているという稟告で、先日来院して来ました。

診察を待つ間も、待合室で水様便を垂れ流すような有り様でしたが。診察をした限りでは、脱水もそうひどくはなさそうですし。検便も浮遊法直接塗抹法共に陰性。発症前に食事を変更したり、変わった物を与えたという事実も無いそうですし。
食欲もそれなりにあるということです。

気になったのは、お家の人が全員順番に感染性胃腸炎に罹患して。この犬が最後に下痢を発症したということです。
はて?人間のノロウィルスは犬に感染することがあったのでしょうか?

犬に下痢や嘔吐などの消化器症状を発症させる原因は、それこそ無数に存在しますけれども。
最初から難しいことばかり考えていても話しがややこしくなるばかりですから。

一般状態がそう悪くなければ、「下痢セット」を処方して、お薬に対する反応を見るということをすることもあります。

この子の場合も、下痢セットを処方して。少なくとも1食は食事を与えないで、投薬のみとして、翌日に再来院して投薬に対する聴かせてもらうということでお帰ししました。

翌日の来院では。最初の投薬のすぐ後から下痢はすぐに止まり。2回目の投薬でもその状態が維持されていて。

すごく調子がよろしいというお話しでした。

続きの処方を行なうについては。犬猫の腸粘膜絨毛の細胞は、そのすべてが入れ替わるのに通常で4日必要だということですから。
お薬が効いてから6日ないし7日は投薬を継続する必要があると考えております。

今回の症例の場合。年末年始の休診日のこともあり。不測の事態に備えて、少し長めに8日分の処方をさせていただき。年始は1月4日に来院して最終チェックを行なう段取りに致しました。

「下痢セット」嵌まれば抜群の働きをしてくれる頼りになる処方であります。

今日は、難しい話しを避けて、ちょっと簡単系の話しをさせていただきました。

年末年始は、12月29日から1月3日まで休診とさせていただき。年始の診察は、1月4日となります。
ただし、1月5日は臨時休診をいただいておりますので、グリーンピース動物病院に年明けに受診の方はよくよく注意して下さいませ。

 

猫の腸閉塞の病理検査結果

11月に腸閉塞の手術をして、腸管に出来ていた腫瘤を摘出した猫ちゃんの件ですが。

取り出した腫瘤を病理検査に外注していたのが、結果が帰って来ました。

「盲腸腺癌」という良くない結果でした。

既にリンパ節転移も生じていて、転移巣が大きくなって来るのがどれくらい先なのか?は正直読めておりません。

縫合糸反応性肉芽腫ではなかったです。

化学療法、一般的に言う抗がん剤療法も考えないではないですが。今までのいろいろの治療で両手の静脈が状態が悪いのと、基本的に野良猫ちゃんで抜糸まで入院で治療しましたけれども、なかなかに治療に抵抗しますし。

これからは経過を見て行って、出たとこ勝負で対応するということになりました。

今回の手術自体は上手く行ってくれて、今日退院した現在は食欲元気さ完全に回復しております。

最後の病理の結果が辛いところですが。少しでも長く良い状態が続いてくれますよう祈っております。

 

 

猫の腸閉塞

今日は糞臭のある嘔吐を繰り返す猫ちゃんの開腹手術でした。

この子は、実は2年半前も同じような症状で手術を行なっておりまして。その時には小腸の一部がキュッと縮んだように閉塞してまして。摘出した部分を病理検査に外注した結果は「びらんを伴なう炎症」というものでした。

今回も2年半前と同じように糞臭ある嘔吐を繰り返すということでしたので、飼い主様も納得の上試験開腹をするということで昨夜お預かりしました。

今日午前中に腹部エコー検査を行なってみると、腹腔内に小腸と連続した腫瘤があるのを見ることが出来ました。
見た感じお腹の中の異常はその腫瘤くらいしかありません。

午後から全身麻酔をかけて、お腹を開けて見ると、やはり小腸に腫瘤があって、それがカチカチになって如何にもそこが閉塞の原因という感じでした。

腫瘤を切除して腸管を繋ぎ合わせて閉腹すれば手術は完了です。

麻酔からの覚醒はスムーズでした。

摘出した腫瘤は今回も病理検査に外注しますが。

腫瘍であれば悪性だと思います。

しかし、もしかして前回の手術の部位に縫合糸反応性肉芽種が出来たのではないか?とも思えるような腫瘤でした。

縫合糸反応性肉芽腫であれば、私としては自分の手術で遭遇するのは初めてとなります。

病理検査の結果は約2週間までに出ると思います。その結果を見て、この子のこれからの治療について考えなければなりませんが。
飼い主様曰くは、野良猫であるので自宅での投薬は困難であるとのことです。

自宅での投薬が不可能ですから、必然的に今回の手術も前回の手術も、手術後抜糸するまで預からなければなりません。

抜糸後の対応がちょっとばかり心配であります。

 

 

 

犬の食物アレルギー性皮膚炎

今日の症例は、2年半前に他院から転院して来られたダックスフントの男の子です。現在12才と2ヶ月令です。

生後1年半くらいから、皮膚の痒みと脱毛に悩まされていて、他院でステロイド内服による治療を行なっているのだが、著効はなく何とかならないか?ということで、当院に転院されたという事でした。

当院では、まず原病をはっきりさせたいということで。細菌や真菌の2次感染を、皮膚の細菌培養と薬剤感受性試験を実施して、その結果に基づく抗菌剤の投薬をおこなったり、殺菌剤入りシャンプーで洗浄したりして、それなりの改善を認め。

麻酔下での皮膚生検と採取した材料の病理検査を実施して「萎縮性皮膚炎」という結果を得たりしたのですが。なかなか上手く行きません。

食事性アレルギーについても、その当時免疫グロブリンによらない、リンパ球に直接反応する食物有害反応(Ⅳ型アレルギー)に対応しているという加水分解タンパクを使った処方食を試していましたが、良い結果は出ませんでした。その時に使用した処方食は、唯一の弱点が澱粉質の材料としてポテトを使用しているということでした。

ただ、飼い主様は加水分解タンパク使用の処方食を与えていながら、よくよく訊いてみると、その他の食事を与えていたりしてました。

これは食事療法を試みる上で致命的な事であります。

しかし、飼い主様もその食事療法の重要性とか意味とかが実感されていなかったようですし。私の伝え方ももうひとつだったのかも知れません。

その後、一時膵炎に罹患したりして、いろいろ大変だったのですが。

基本的には皮膚の細菌培養と感受性試験を繰り返しながら、抗菌剤を使用して2次感染による悪化を防ぎつつ、ステロイドホルモンの内服を中心とした治療を続けていました。

今年になって、飼い主様が当院から遠く離れた京都府に近い田園地帯に引っ越されまして。なかなか気楽に来院することが難しくなったということもあって。

最近当院でも実施することにした、動物アレルギー検査株式会社のアレルギーの血液検査を実施したらどうですか?とお伺いを立てたところ。

やってみようという同意を得ることが出来ました。

私は以前にはアレルギーの血液検査を実施することもありましたが。送られて来る結果は解釈が難しくて却って何が何やら判らなくなってしまうようなものがほとんどでした。

また、Ⅳ型アレルギーの検査をやってくれるところは今でも動物アレルギー検査株式会社以外には存在しないと思いますし。

免疫グロブリンの検査データも免疫物質の量をしっかり量ってくれているようなので。その結果が本当に臨床に使えるもののように感じております。

動物アレルギー検査株式会社のアレルギー血液検査を実施する場合。私はまずアレルギー強度試験という項目を行ないます。
これは、血液中のリンパ球の反応により、その子がアレルギーを生じやすい状態になっているのかどうか?と調べるものです。

ダックス君の結果は以下の通りでした。

普通、アレルギーを疑って検査を始める場合。この強度試験が基準値以下の場合には、その犬の皮膚炎がアレルギー以外の原因で生じている可能性が大だと判断して、それ以上の検査を行なわずに、アレルギー以外の痒みを生じさせる皮膚炎を追求して行くことになりわけです。

上記の結果は、参考基準値以上ですから。ダックス君の皮膚炎はアレルギー性のものである可能性が非常に高いと言えると思います。

そこで、そのアレルギーがアトピーという1型アレルギーによるものか?リンパ球が直接関与するⅣ型アレルギーによるものか?アレルギーの原因物質は何か?という検査に進むことにします。

順番に見て行くと。

免疫グロブリンが関与するアレルギーは否定されております。

 ところが、リンパ球が反応するアレルギーに関しては。まず一般的な食材では。

小麦が完全に陽性であって。牛乳が怪しいという結果でした。

最後に、普通新規蛋白を売りにしている除去食で頻繁に使われている食材を調べてみると。

ジャガイモが陽性となっていて。タラが要注意です。

これで、最初に実施した加水分解タンパク食が上手く行かなかった原因がはっきりしました。あの食事はジャガイモを使用していたのであります。

この結果を飼い主様にお示しして。今後は当院がお勧めする新しい加水分解タンパクを使用した食事とお水のみで生活させるようにとお話ししました。

本日の来院では、完璧な加水分解タンパク食を使用し始めて約1ヶ月になるのですが。随分皮膚症状が改善しておりました。

画像ではまだ脱毛している場所がありますけれども。元々はこんなものではなかったですから。

後1ヶ月も続けていれば、相当良くなって行くのだろうと予想されます。

飼い主様も、血液検査で得られたエビデンスに基づく処方ですから。今回は指示に正確に従って下さっているみたいです。

ダックス君。生後1才半から今まで10年以上も痒みと闘って来たと思うと、本当に良く頑張ったことと思います。この度のアレルギーの血液検査を思い切って実施して本当に良かったと思います。

ダックス君も飼い主様も何時までも元気で幸せに過ごせますように。

 

 

猫のつぼ型吸虫

約2週間前に保護された、生後推定で3ヶ月令になる黒猫ちゃんですが。

先週と今日、虫が出たということで連れて来られました。

どんな虫が出たか?と訊くと輪ゴムのような感じの虫だということですから。回虫ではないか?と思うのですが。実物を持って来られていないので、確証に乏しいところもあります。

保護した翌日に市販の虫下しを与えたということです。ホームセンターなどで販売されている虫下しは、事実上回虫くらいしか落とす効果を持っていませんので。猫ちゃんが排出虫はそのことからも回虫の可能性が高いと思います。

猫ちゃんはひどく痩せていて、腹部を触診してみると、異常なくらい腸管が太く硬くなっています。

便は持参していないということですから、念のために小さなスプーンを肛門から直腸内に挿入して、便を少量掻き取り、直接塗抹法で検便を行なってみました。

すると、出て来たものは、つぼ型吸虫という、自然豊かな環境で猫ちゃんに寄生する寄生虫の卵でした。

仔細に見て行くと、結構沢山の虫卵が見えたりしています。

 つぼ型吸虫は、ウィキペディアで検索すると書きかけの記事がヒットします。アドレスは以下の通りです。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A3%BA%E5%BD%A2%E5%90%B8%E8%99%AB%E7%97%87

この虫を駆除するには、瓜実状虫の駆除薬と同じお薬を、瓜実状虫を落とす時の6倍投与する必要があります。お薬には内服薬と注射薬がありますが。投与量が多いので私は注射薬を使用するようにしています。

ただ、なかなかしぶとい寄生虫でして。1回で駆虫出来ない例も見られます。その時には落ちるまで何回も駆虫をかけなければなりません。

1回で駆虫出来て元気になりますように。

 

 

犬用11種混合ワクチンが出ました

もう1ヶ月前になりますが。京都市の微生物化学研究所(京都微研)から犬用の11種混合ワクチンが発売されました。

 

グリーンピース動物病院は、早速問屋さんから購入しまして。まず自分の犬たちに接種してみて。それから従来9種混合ワクチンを接種していた患者さんが来院された時に、新しいワクチンの話しをするようにして、希望される方には9種と同価格で11種混合を接種し、その経過とか見てました。

今のところ10数例と少ないですけれども、異常な接種反応は観察されていません。医薬品ですから国の承認を取って発売する前に厳しい安全審査があって、それをクリヤーして来ていますから、安全は当然のことであります。

さて、この11種ワクチンの特徴はと言えば。

従来の9種混合ワクチンと比べると、レプトスピラという細菌性の伝染病の血清型が2種追加されているということです。

追加された血清型は、レプトスピラ・オータムナリスとレプトスピラ・オーストラリスという型でありまして。
従来9種に混合されていた、レプトスピラ・イクテロヘモラジー、レプトスピラ・カニコーラ、レプトスピラ・ヘブドマティスの3種類の血清型と共に我が国で発生しているレプトスピラの多くを占める型であります。

レプトスピラ病は、ネズミ等のげっ歯類がベクター(病原体を保毒して媒介源になること)となって、その尿に汚染された溜まり水や湿った泥が、犬の眼や鼻、口、傷口に付着することにより病原体に感染し。肝臓や腎臓に炎症を起こします。重症例では死に至ることが普通でして。怖ろしいことに人間にも感染する人獣共通感染症でもあります。

レプトスピラ菌の大きな特徴は、高温多湿を好み、低温乾燥に弱いということです。つまり、気候冷涼なヨーロッパとか米国中北部ではそんなに重要な感染症ではないということです。

一方、我が国の場合。特に初夏から秋にかけては降雨量も多く気温も高く、まさにレプトスピラ菌の好む高温多湿状態であり。アウトドアでの行動機会の多い犬たちにとっては非常に危険な病気なのであります。

しかし、先に書いたように、米国や欧州ではそんなに重要な感染症ではないということから、これらの国から輸入される犬用ワクチンに入っているレプトスピラワクチンには、血清型としてレプトスピラ・クテロヘモラジーとレプトスピラ・カニコーラの二つの型しか入っていないのが普通でして。犬の輸入ワクチンは必ずしも我が国の伝染病発生の実情に対応したものではないのです。

先般、さる米国のメーカーの、レプトスピラが4種?くらい混合されていますというワクチンが新たに輸入販売されたようですが。レプトスピラの流行する血清型には地域によって特異性があるのでしょう。聴いたことの無い血清型が混合されていて、我が国の状況には全く対応不可であると判断させていただいたような次第であります。

今回の11種ワクチンの発売により、我が国の犬たちのレプトスピラ感染が激減することと期待しているところであります。

グリーンピース動物病院では、子犬の予防接種については3回目に、成犬では年に1回の追加接種の際に、従来の9種混合ワクチンから徐々にこの11種混合ワクチンに切り替えて行く予定であります。

なお、料金については仕入れ価格は9種よりも高いのではありますが、企業努力により11種については従来の9種と同価格で接種するように致します。