兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 院長ブログ

院長ブログ

野生鳥獣救急指定動物病院

実は、兵庫県の制度で、私たちのような民間の動物病院を、兵庫県野生鳥獣救急指定動物病院として活用しようという仕組みがあります。

グリーンピース動物病院も、一応社会貢献の一助になるべく、名乗りを上げて指定されておりまして。時々市民の方が持ち込んで来る野生鳥獣の治療や再放鳥獣を行なっております。

しかし、社会が野生鳥獣を保護管理するのに、これで良いのか?と疑問に思うことも再々です。

一次診療としての救急指定動物病院制度は、それはそれで良いことなのかも知れませんが。

鳥獣が野生復帰を果たすために、全県単位でとりあえずの怪我が治った鳥獣を野生復帰に持って行くまでのリハビリ施設とかが必要なんじゃないか?と常々感じております。

最近持ち込まれた動物は、ツバメの雛、コウモリ、カルガモの雛くらいでしょうか?

ツバメの雛は、1ヶ月以上ミルワームを給餌して育てて、ツバメが居る公園に放鳥しました。

でも、放鳥されたツバメは、自力で食べ物を摂ることが出来るのか?外敵から逃げおおせることが出来るのか?

はなはだ疑問を感じながらの放鳥でした。

野生の鳥の雛については、日本野鳥の会が雛を拾わないように一般の人に周知するためのキャンペーンを行なっておりますが。巣立ち直後の雛を、善意に基づく行為とはいえ、無知によって「拉致」してしまう人が多いようです。

今回のツバメも巣立ち直後で、親鳥が何処かで心配して見守っていたのだと思うのですが。保護した人は、周囲に親鳥も居ないし、駐車場で車に轢かれそうだったからと言って、強引に加古川農林事務所に持ち込んだのを、農林事務所も困ってグリーンピース動物病院に連れて来たということでした。

最近も、「ツバメの雛が飛べなくって、困っているようです。そちらに連れて行って良いでしょうか?」という電話連絡があったので。「そのツバメの雛は、巣立ち直後で、親鳥が近くで心配して見守っていますし。親鳥が食べ物を食べさせていますから、貴方が「拉致」さえしなければ無事に成長して行く可能性が高いと思います。それと、いったん人間の手に落ちた野鳥の雛は、野生に戻しても食べ物を探したり、外敵から身を守ったりという教育を受けることが出来ないので、生き延びて子孫を残すところまで行けるかどうか?怪しいですよ。」とお返事したところです。

コウモリは、正確な種類は判りかねましたが。飼いネコが捕まえて遊んでいたのを、猫の飼い主が保護したものでした。

猫の口には、出血性敗血症菌という怖ろしい細菌が常在していて、その菌によって死んでしまう可能性があると判断し。抗菌剤を数日投与しながら、犬猫用の流動食を強制的に食べさせて。元気が回復したよう?なので再放獣しました。

コウモリの場合、元気か?弱っているか?判定が困難でした。何せ何にも表現してくれません。

最後のカルガモの雛は、交通頻繁な市街地の道路で彷徨っているのを保護されたのですが。近くに川も池も無いような道路で、親からもはぐれて、どうしてカルガモの雛が居たのか?不思議です。

もしかして、誰かが飼ってた?

とにかく飛べるようになるまで育てた上で、放鳥することにしました。食べ物は鶏の飼料を使いますが。ボレー粉も添加してカルシウム不足にならないように注意します。

最初から普通に食事を摂って、水もちゃんと飲んで。元気に育っています。

最近たらいをプール代わりにして水浴を楽しめるようになって来ました。

体重も順調に増えて、保護された時には240グラムだった体重も約2週間で440グラムにまで増体しております。

しかし、この鴨、野生復帰出来るでしょうか?

行く末が案じられます。

野生鳥獣救急指定動物病院とは言え、最近県からの通知で、農業被害の著しい猪や鹿、アライグマ、ヌートリア のような特定外来生物は傷病救護の対象から除外するということらしいです。

人間と自然との関わりは、難しいですよね。

過去に、青大将に食べられそうで可哀相だということで、野兎の子を連れて来られた方が居ましたが。食べ物を取り上げられた青大将は可哀相ではないのでしょうか?

見た目で差別するのもどうか?と思います。

あるいは、昔見たアフリカのドキュメンタリー番組で、溺れそうになっているヌーの子供を助けようとした取材班に、「安易に野生に介在しないように。」と制止をかけた現地のレンジャーの考え方が、一見残酷なように見えても最も健全なのかも知れません。

でも、考えようによっては、それも人間の手のほとんど入っていない大自然の中でこそ言えることで、我が国の市街地や里山のように、人間の活動が環境形成に大きな影響を与えている地域の場合にまであてはまるのかどうか?

考え始めたらきりがなくなります。

2016年10月25日追記です。

兵庫県野生動物救急指定動物病院についてですが。 近くで大勢の獣医師を雇用して頑張っている動物病院が、最近は名乗りを上げて受け入れてくれるようになりましたので。 元々少ないスタッフで頑張っていた当院は辞退させていただきました。

 

 

 

 

イングリッシュ・セターの異物誤嚥による腸閉塞

週末に来院したイングリッシュ・セターのローラちゃん。

1週間前から嘔吐と下痢の症状を呈し始め。発症3日目に他院にて診療したのですが。一時好調になったので更に3日間経過を見ていたところ、やはり調子が悪いという事でその動物病院に行くも、そこの先生が週末にどうしても外せない用事があるということで。

当院に受診されたものであります。

血液検査では白血球数、特に好中球数の増加が著明で。持参したエックス線フィルムからは腸閉塞が強く疑われます。

他院で3日目のエックス線フィルムですが、診療初日と同じように胃に内容物が充満しています。

腹部エコー検査を実施してみると、腸管の拡張著しく、拡張した腸管の中に紐のような構造が見られました。

こうなると、少しでも早くに開腹して中を確認するべきと思いますので、残業して手術という事になりました。手術前の数時間は静脈輸液を行ない、少しでも水和状態の改善をはかります。

麻酔導入してお腹を開けて見ると、胃の中には大量の葉っぱ。胃の幽門付近から腸管にかけて撚れて紐状になったタオルのような繊維性異物が詰まってにっちもさっちも行かない状態になっていました。

画像の羅列だけである程度ご理解いただけたと思いますが。手術は無事に終了。本犬は術後から気分良くなって、術後24時間後から飲水し、36時間後には胃腸病用の処方食をモリモリと食べていました。

手術の2日後には元気で退院して行きました。

今日もまたお役に立てて嬉しかったです。紹介状を書いていただいた先生には今から報告をしなければなりません。

 

 

ミニチュアダックスフントの結直腸多発性炎症性ポリープ

2才の頃より当院で健康管理のお手伝いをさせていただいている、ミニチャダックスフントの避妊済み女の子の話しです。今年で8才になります。

実は、この子は従前から免疫に関して怪しいという印象を強く持っておりました。

4才の頃に頑固な慢性嘔吐を発症しまして。内視鏡を持っている近くの先生に依頼して胃の組織生検を実施し、胃炎を患っており、炎症部位に形質細胞や好酸球が浸潤しているという所見が得られていたのです。

胃炎の方は投薬と処方食で何とかコントロール出来て。その後に発症した膀胱炎も何とか上手く管理出来ているという状態だったのですが。

5月23日に来院した時に、5日前から鮮血を混じる下痢をしているということでした。

これが、しかし、通常の下痢セットの処方では全然反応が見られず。

検便も問題無く。原虫や嫌気性菌の感染をコントロールする薬も奏功せず。

試しに与えたステロイドに対してだけかなり良好な反応だったので、大阪府立大学の内科系の先生に一度診てもらおうと飼い主様と相談していた矢先のことでした。

6月27日朝にいきなり直腸脱が生じてしまったのです。

緊急でお昼に手術を行ないました。当日予定していた猫ちゃんの避妊手術は夜に残業して行ないました。

脱出した直腸には、顆粒状の病変が多数見られます。直腸の腺癌のような超悪性の病気を予想して随分ビビリました。

病変部を切除して、縫合が終了したところです。直腸脱の手術は 一番最初に脱出した直腸が2層重なっているのをきちんと拾った支持縫合を実施して、その縫合を頼りに、内層の腸管が、断端が遊離したままお腹の中に戻ってしまわないように、丁寧な全層並置縫合を実施することが、失敗しないコツと言えばコツだと思います。

手術が終了して、直腸をお腹の中に戻してやった状態です。

手術当日に退院させました。

大学の先生のアドバイスもあり、病理検査の結果が出るまで抗菌剤以外にステロイドホルモンを控えめに使用しました。

術後の経過はすごく良好で、下痢も改善しました。

病理検査の結果は。

多発性炎症性ポリープというものでした。

この病気は、最近ミニチュアダックスフントで問題になっている免疫が関与すると言われる炎症性の疾患です。

治療は、ステロイドホルモンと免疫抑制剤の併用で実施します。丁度タイムリーに、6月30日に岡山で受講した動物臨床医学研究所の卒後教育セミナーでこの病気の解説がありました。

診断はきちんとつきましたので、後は上手く管理出来るかどうか?です。今のところ順調なので、何とかなると予想しております。

免疫の病気に負けずに、幸せに長生きして欲しいと切に願いつつ治療を遂行しております。

 

 

 

 

 

エアデールテリアの皮膚扁平上皮癌

もうすぐ11才になるエアデールテリアの男の子の話しですが。

5月21日に、6ヶ月くらい前から左胸の皮膚の腫瘤が自壊してずっと気になるのか?舐めたり咬んだりしているということで相談されました。

針吸引&細胞診をすることと、自壊部分から出る膿の細菌培養と薬剤感受性試験を実施して、抗菌剤を投与しました。

細胞診の結果では、良性の皮膚腫瘍であろうということでした。

しかし、薬剤感受性試験に基づいて利く薬を投与しているのにも関わらず感染のコントロールが出来ません。膿はずっと出続けています。

どうもおかしいな?と感じておりましたが。飼い主様は膿が出続けて生活の質がかなり損なわれていることが可哀相に感じられたようで。
摘出を希望されました。

この子は以前に肝機能障害を患ったことがありましたので。術前検査として全血球計数、血液生化学検査ひと通り、胸部エックス線検査、心電図検査を実施します。

やはり、予想通りGPTが405U/L GOTが50U/L ALPが1272U/L と肝障害が存在しておりました。

一応、幹細胞保護のお薬を2週間内服させてもう一度血液検査を行なうと。
GPTが166U/L GOTが31U/L ALPが882U/L とかなり改善しました。

2回目の血液検査から6日後に手術を実施しました。

高齢の子とか、体力的に不安のある子については、手術当日朝一番にお預かりして、午前中は静脈カテーテルから輸液を行なうことにより体調を整えるのですが。

エアデール君、暴れて静脈輸液を行なうことは適いませんでした。

午後1時頃より麻酔導入して、術野の毛刈り消毒、術者助手の手洗い等基本通りの手抜き無しの手順で進めて行きます。

腫瘤周辺の毛を刈ったところ。

術野の消毒が済んで覆い布をタオル鉗子で止めたところ。

腫瘤を切除したところ。判り難いとは思いますが、垂直方向のマージンとして、皮筋という筋肉を一枚切除しています。治療に対する反応が怪しいので、一応用心して。悪性腫瘍だったとしても後で慌てないように最大限の用心をしております。

切除された腫瘤。これからホルマリンに漬けて、病理検査に出します。

 傷を縫合し終わったところです。この部分に出来た腫瘤は、比較的手術が容易です。

抜糸は術後13日で実施しました。この時に血液検査を行ないましたが。GPTは前回少し下がったのとそう変わらない数値でした。肝細胞保護剤は継続することにしました。

病理検査の結果ですが。扁平上皮癌という悪性度の強い物でした。用心のために大きくマージンを取って正解でした。
扁平上皮癌は転移する率は低いということですが。今後局所再発については注意して行きたいと思います。

 

 

 

ジャーマンシェパード若犬のイレウス

もうすぐ1才になるジャーマンシェパードの男の子の話しですが。

前日から嘔吐し始めたということでの来院でした。

血液検査と腹部エックス線検査では決め手になるような所見は得られませんでしたので。とりあえず注射を3本打って1日様子を見ましたが。改善しませんでしたので。飼い主様の言う「何でも飲み込んでしまう。」という事を追求すべく、バリウムによる消化管造影を試みました。

口にバイトブロックを装着して、胃チューブを使ってバリウムを250ミリリットルほど注入します。

撮影は、造影直後と、1時間後、2時間後、3時間後という感じで実施します。

3時間後の側面像でここに異物が?と思われる陰影が見られました。

画像右下部分の腸管にわずかなくびれが見えることと、その部分の口側に急にバリウムの濃度が薄くなる部分があります。

午後から予定が入っていた手術を夜に残業して実施することにして。試験的開腹を行ないました。

お腹を開いて、胃から順に消化管を触って調べて行くと、空腸という部分に何かが詰まって動けなくなっているのが見つかりました。

開けてみると、テニスボールの破片が出て来ました。

異物を摘出した腸管の傷を縫合して、閉腹する前にもう一度胃から直腸まで消化管を手で触って精査して別の異常が無いかどうか確認します。

具合の悪い場所は、テニスボールの1ヶ所だけだったようです。

腹膜、腹筋、皮下織、皮膚と順に縫って行って、麻酔導入から約3時間弱で手術は終わりました。

試験的開腹となるとどうしても切開創は大きくなりますが。傷が癒合するのに要する期間は大きくても小さくてもほとんど変わりません。

この子のように胃や腸を切開した動物は、術後は入院させて静脈輸液を続け、24時間後にはまず水を与えてみて、異常が無ければ残渣の少ない処方食を当ててて行きます。

シェパード君も、24時間後には水を飲んで、その後少量の食事を食べ。翌日には普通に処方食をどんどん食べて、お水も飲んで、手術から2日後の夕方には退院しました。

やんちゃで食いしん坊のワンちゃんについては、異物の誤嚥に特に注意する必要がありますね。

それにしても、今年は犬のイレウスの手術が多いです。一月に1件か2件はやっているように感じております。

 

手術の場合、開ければそこを縫ってやらなければなりません。

マンソン裂頭条虫

今日の午後診で3種混合ワクチンを接種に来られた猫ちゃんの話しですが。

私は、犬でも猫でも年に一度のワクチン追加接種の際には、なるべく検便と胸部聴診を欠かさないように心掛けています。

歳を経て心雑音が聴こえるようになって、心臓病の存在が明らかになる犬猫も居れば。消化管内寄生虫の感染が明らかになって、重症になる前に駆虫することにより事なきを得る事例も多いです。

この子の場合は、直接塗抹検便によりマンソン裂頭条虫という寄生虫の卵が発見されました。

検便は直接塗抹という方法と、浮遊法という方法と二通りの方法を同時に行なうことにより、検出可能な寄生虫卵のバリエーションが多くなります。

マンソン列頭条虫の卵は浮遊法では検出されることは普通はありません。この卵を見つけることが出来る方法は、直接塗抹法か、あるいは遠心集虫法と呼ばれるかなり手の込んだ検便のやり方になります。

それで、マンソン裂頭条虫とはどんな寄生虫かというと。自然豊かな土地に住んでいる、世間で「真田虫(サナダムシ)」と呼んでいる寄生虫です。真田という名前の由来は、和服の着付けに使用する真田紐という小道具に姿が似ているためと記憶しております。

マンソン裂頭条虫がどんなやり方で動物に寄生して行くのか?と言えば。まず、動物の腸管に棲んでいる親虫が卵を産んで。その卵が川や池の水の中に流れて行ったら。
そこでミジンコなどのプランクトンに食べられて。
そのプランクトンを魚やオタマジャクシたちが食べて。
その魚や、オタマジャクシが成長したカエルを犬や猫や人間が生で食べると、犬や猫や人間の腸管に親虫が寄生することになるわけです。

特筆すべきは、親虫が産んだ卵を、犬や猫や人間が直接口にしても、その卵はお腹の中で成長することはないということで。必ずプランクトンや魚やオタマジャクシなどの小動物の身体を経由しないと成長出来ないということなのであります。

因みに今日検便でマンソン裂頭条虫が発見されたにゃんこは、普段かなりワイルドな生活を送っていて。カエルやスズメやヘビや何やかやを狩りするのが日課だということでした。

このまま寄生を放置していると、お腹が具合悪くなったり、最悪虫が分泌する毒素にやられて神経症状が出たりすると言いますから、一応駆虫はしようという話しをさせていただいて。

この子の場合注射で駆虫しました。

しかし、猫にとって狩りをするというライフスタイルはなかなか改めることは困難だと思いますので。今後は定期的に検便を駆虫を繰り返す必要があると思います。

でもにゃんこちゃん。楽しい毎日を送っているのですね。ある意味素晴らしいことと思います。

今日も乳腺腫瘍でした

今日の手術の子は、高齢のアメリカンコッカースパニエルの女の子です。

この春先に、左耳に大きな腫瘍が出来てそれが自壊して大変な状態だったのを、大阪のネオベッツVRセンターに紹介させていただいて、そちらで左全耳道切除術を実施して何とか回復したところでした。

今回は左の乳腺に何ケ所も腫瘤が出来ていて、それを何とかして欲しいというお話しでした。

右の乳腺は全然何ともありません。乳腺という組織は左右の連絡がありません。もしあう性腫瘍が発生した場合には片側前後4個から5個ある乳腺の間で血液やリンパ管の流れで腫瘍細胞が移動して行く可能性があります。

乳腺腫瘍については、他の部位の腫瘤のような細胞診による悪性良性の判定はあてにならないので、基本的には外科手術による切除と病理検査が必要です。

今月の片側乳腺全摘出と卵巣子宮全摘出の症例数はこの子を含めて3頭です。

午前中から預かって、静脈カテーテルを留置し、そこから静脈輸液を実施して手術前の体調を整えます。

午後1時から麻酔導入を開始し、手術を始めました。

画像は手術前の毛刈りが済んだところです。向かって右側、犬の左側の乳腺には乳首が過剰に7個あります。腫瘤は乳腺の中程に数個見えると思います。

発情が先月にあって、その後ずっと下り物が続いているというお話しでしたので、子宮卵巣の異常を予想していたのですが。子宮の状態は思ったよりも正常に近かったです。下り物は赤色でサラサラとしか感じでしたので、発情が長引いていたのかも知れません。

お腹を開けると、腹腔内脂肪の中から妙に大きな腫瘤が出て来ました。一応採取して病理に出しておきました。

手術は意外に時間がかかって、午後4時頃に終わりました。

長い長い傷です。縫合は外科用クリップも併用しましたが、かなり時間がかかりました。

本当に何回も書きますが、繁殖予定の無い犬は男の子も女の子も去勢手術避妊手術を思春期前に実施することによりこのような生殖器関連の病気に罹患しなくなります。繁殖をさせるのであればそれはそれで素晴らしいことと思いますので、頑張って欲しいのですが。

繁殖予定の無いワンちゃんの飼い主様についてはご愛犬の生涯全体の得失をよく考慮されて、避妊手術去勢手術も検討していただいきたいと思う次第です。

さて、そして、この度取った腫瘍が良性で、この子が幸せに長生き出来ますように。

 

 

 

育て過ぎ

何を育て過ぎたって?

乳腺腫瘍です。先日初診で来院されたミニチュアダックスフントの未避妊の9才5ヶ月令の女の子ですが。3ヶ月前に乳腺腫瘍が気になって、その後どんどん大きくなって来て。

来院時には、有り得ないくらい大きく育ってしまってました。

外科的対応を希望されたので、すぐに院内の血液検査(全血球計数、血液生化学検査ひと通り)と外注の血液凝固系検査、胸部腹部のエックス線検査、コンピュータ解析装置付き心電図検査としっかり術前検査を実施して、来院2日後に乳腺腫瘍の摘出と卵巣子宮全摘出の手術を行ないました。

麻酔導入後仰向けに保定して、毛刈り消毒の前の状態です。

準備が整って、切皮直前の態勢。

術中の過程は省略して、手術終了直後の状態です。

しかし、疲れました。何とか取り切ったとは思いますが。3ヶ月で急速に大きくなっているという事はまず悪性の乳腺癌の可能性が高いです。

乳腺癌は転移や再発の起きやすい厄介な悪性腫瘍で、切除時点のサイズが大きければ大きいほど転移している可能性が高いですし。今回でも切除に結構な労力を要したのですが。
まだ腫瘍が小さい頃に手術させてもらえれば、転移の可能性も少なく。手術も比較的容易です。

繁殖予定の無い犬の女の子の場合、最初の発情が始まる前に卵巣子宮全摘出を実施すれば、その子の乳腺腫瘍の発生率は、何にもしなかった子に比べると200分の1であるという統計的データが発表されていて既に定説になっているとのことです。

自然のままの犬を飼育するのも一つの楽しみかも知れませんので、避妊去勢を絶対的に強制するつもりは毛頭ありませんが。

避妊手術、去勢手術を受けた犬たちは受けなかった犬たちに比べて病気になる確率が低くなり、長生きするという情報をお伝えして、避妊手術去勢手術を選んでいただく努力は惜しまないようにしているつもりです。

本日手術2日後に来院して、術後の経過を診させていただきましたが、経過としてはまあまあ順調な方だと思います。

鬱陶しい巨大腫瘍が切除出来て良かったと思います。でも、次回があるとするならば、次はここまで育てないように早目に受診していただきたいと切に願う次第であります。

ではまた。

 

 

糸球体腎症の疑い

このところ、フィラリア予防のセット検査やシニア検診で高コレステロール血症が発見されるワンコが数件続いています。

コレステロールや中性脂肪の数値が高い状態を高脂血症と言いますが。
中性脂肪は食事との時間関係で大きく変動します。食後間無しだとかなりの高値に達し、場合によっては採血した血液を遠心分離すると上澄みが乳白色に濁るくらいになる場合もあります。
一方のコレステロール値は中性脂肪ほどには食事によって激しくは変動しないようです。

で、高コレステロール血症の子の場合に、その原因はホルモンのバランスの失調、特に甲状腺機能の低下、また腎臓疾患、肝臓疾患などが挙げられます。

特に高コレステロール血症に尿蛋白が多い状態、それに加えて低アルブミン血症が存在していると、腎臓疾患として糸球体腎症が強く疑われるわけです。

糸球体腎症は犬の進行性腎不全の主原因とされているようですが。今まで診断した経験は少ないです。

今回糸球体腎症を疑っている2頭の犬のうち1頭は11才のイングリッシュコッカースパニエル去勢済み男の子です。この子はシニア検診で尿蛋白が4プラスとかなり濃く検出されて、血液検査を見てみるとアルブミンの低値と総コレステロールの高値が確認されました。

で、尿蛋白クレアチニン比、及び尿中微量アルブミンクレアチニン比を検査センターに外注してみました。

返された結果を見ると、尿蛋白クレアチニン比は基準参考値が0.5以下のところ2.8で、尿中微量アルブミンクレアチニン比は基準参考値0.10以下のところ1642という高値であったのです。

この結果から、この子は腎臓から血液中のアルブミンという蛋白質が継続して漏れ出ているということが言えると思います。

もう1頭の子の場合、この子は9才2ヶ月令のシェトランドシープドッグの女の子ですが、フィラリア予防の際に行なう血液検査にサービスで実施しているセット検査で、尿素窒素とクレアチニンが高く出て、それに低アルブミン血症と高コレステロール血症が併発していたところから、糸球体腎症を疑うに至ったわけです。後日尿検査を行なってみたところ、尿蛋白は3プラスと高値でした。

現在尿蛋白クレアチニン比と尿中微量アルブミンクレアチニン比を外注しているところですが。

尿蛋白クレアチニン比が先に返って来て、3.44という高値です。恐らく尿中微量アルブミンクレアチニン比も高値で返って来るような気がしています。

さて、それからどうするか?ですが。

糸球体腎症の確定診断は、腎生検をしなさいと教科書には書いてございます。

腎生検とは、麻酔下で超音波ガイドでのツルーカット生検もしくは開腹による腎の部分切除を実施し、得られたサンプルを病理検査に出すという事なのです。

しかし、ツルーカット生検も、腎の部分切除も、検査の後の出血が心配なのと、傷んだ腎臓に傷をつけるという点において、かなり心理的抵抗を感じます。

糸球体腎症の治療は、少し前の教科書を見ると、ステロイドホルモンや免疫抑制剤を使うように書いてありますが。2012年発売の国内の一線級の臨床獣医師の治療法紹介の本を開いてみると、ステロイドホルモンや免疫抑制剤は推奨されておらず、抗血小板薬とかコルヒチンというお薬とか、ACE阻害剤という血圧を下げるお薬とかを組み合わせて治療すると解説してあります。
そして、治療はかなり困難だということでした。

さて、そんな難しい症例ですが。腎生検をどうするか?

ここまで間接的な証拠がそろっているのであれば、糸球体腎症とみなして治療を開始して、治療効果は尿蛋白とか血液のアルブミン値や総コレステロール値等の検査結果を指標にして治療を開始するのは、間違いなのか?

場合によっては大学の先生に相談して決定しようか?と思案しております。

 

 

犬の自虐 常同障害?

D君は、12才と6ヶ月令になる雑種犬の男の子です。

2005年頃即ち5才の頃から、お尻や尻尾の毛や皮膚を咬む行動が目立つようになり、普段と違う場所に入れたりすると頻繁に咬む傾向があるということでした。

試しに皮膚病として治療を試みたこともありましたが、全然反応が見られませんでした。

飼い主様には、皮膚病というよりも行動異常に分類される症状の可能性が高いという話しをして来ましたが。

そのうちに、とうとう皮膚が破れるくらい激しく咬むようになったのと、グルグルと激しく回るという異常行動が発現したために、再来院された時。

たまたま猫の症例で肛門嚢の内容が溜まり過ぎてお腹や肢の毛を舐め削ってしまうのを、肛門嚢を絞ることで改善することがあるというのを、大学の獣医内科系の先生に教えてもらったことがありましたので。

肛門嚢を触ってみると異常に膨れていて、それを絞ってやると大量の内容物が出て来ました。本当に有り得ないほどの量でした。
同時に、抗不安薬を2種類ほど組み合わせて処方してみました。

1週間後に経過観察のために来院された時に、飼い主様は治療により劇的に異常行動が消失して落ち着いた状態になったという話してくれました。

その後、肛門嚢は飼い主様が絞り方を覚えて定期的に絞るようになって。しばらく投薬を続けていたのですが。

投薬中は良好であっても、2日か3日休薬するとてきめんに咬むようになるということで、投薬を継続しているような状態です。

最近、フィラリア予防に先立つ血液検査の際に、セットで検診的な詳しい内容の検査を実施してみたところ。
アルカリフォスファターゼの数値が2050IU/Lと著しい上昇が見られて。よく聴けば多尿多飲の症状もありそうだということであります。

クッシング症候群の可能性もあるので、検査と治療をお勧めしているところです。

D君、生きて行くことは本当に大変なことでありますが。何とか心安らかに生活が出来るようになって欲しいと思っております。