兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 寄生虫&疾病の予防
院長ブログ

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フィラリア予防の落とし穴

狂犬病予防注射とフィラリア予防のために初めて来院された4才8ヶ月令フレンチブルドッグの女の子の話しですが。

狂犬病予防注射を接種しながら、話しを聴いていくと。今年は既に1回は昨年の残りの滴下剤のフィラリア予防薬を使用したということでした。昨年の最後の予防薬は10月の末に使用して終わったとのことでした。

フィラリア予防の際には、面倒に感じることもありますが、毎年予防薬投与前に血液検査で前年の予防状況を確認する必要がある旨説明して。

血液検査に同意が得られましたので採血しました。

結果を見てびっくりです。

犬フィラリア成虫に対する抗体が陽性と出ました。

右側に見える検査キットの窓の反応が、左側の説明用小パネルの陽性と同じ反応になっているのが判ると思います。

フィラリア予防薬は、滴下剤とか内服用錠剤とか食べるタイプとか、年に1回の予防注射形式とか、いろいろあるのですが。基本的に能書の通りに使用していれば効果は確かなお薬ばかりだと思います。

ただし、獣医師の個人責任で、馬や牛や豚などの産業動物に使用される同様の成分のお薬を、希釈して処方する先生がおられますが。私の経験では、そんな先生のところから転院された子に、予防の失敗例が多く見られています。

獣医師は、原価が安い薬に欲に駆られて飛び付くのではなく、予防薬くらいはきちんと認可が下りた正規のお薬を使用して、飼い主様の安心安全の要望にお応えする必要があると思います。

今回のフレブルの女の子の場合、多分ですが、正規のお薬を使用していたと思いますが。使用方法に何処か能書と異なる点が存在していたのかも知れません。

犬フィラリアに感染した犬に、予防薬をいきなり投与すると、ショックを起こしたり急性フィラリア症を発症する可能性がありますから。

この子にはショックを防ぐためのステロイドホルモンを同時に処方します。

当院でのフィラリア予防を2年から3年実施して行きますと、通常は3年から5年と言われているフィラリアの寿命が短くなるようで。大抵は3年目でフィラリア成虫抗体検査が陰性に転じています。

何事も基本が大切なんだなあと、強く実感された出来事でした。

 

 

 

急性犬フィラリア症について

フィラリア予防シーズンに入って時間的にも精神的にも余裕が無いのもあるのですが。どうもこのところブログ更新が滞っています。

今日は気を取り直して、そのフィラリア予防について実際の症例をひとつ。

平成8年11月生まれの雑種犬の避妊済み女の子の話しです。今年11月で15才になるわけですから、ちゃんと元気に齢を取ったと言って良い状態ですね。

でも、この子は、2年前に大静脈洞症候群といういわゆる急性フィラリア症を発症して当院で頸静脈からのフィラリア吊り出し術を実施した病歴があるのです。

そもそも、この子は急性フィラリア症発症の5ヶ月前に頸の皮膚に大きな腫瘤が出来たということで来院され。当院で切除手術と病理検査を実施したのです。

腫瘤の治療が一段落した段階で、フィラリア予防やワクチンについてやっていないということだったので、「高齢になっても病気予防はちゃんとやった方が良いですよ。」とお伝えしたそのすが。
飼い主様は一応聴き置いてお帰りになられました。

ところが、それから3ヶ月後の11月に再来院されて。一昨日夕方から急に食欲が低下し、昨日には夜間に嘔吐した。元気も消失し呼吸が荒く、散歩の時にも全く引っ張らなくなって、ボーっと立っているという稟告でした。

この時に聴診してみると、ガリガリという急性フィラリア症特有の心雑音が聴取されまして。

急性フィラリア症の疑いがあるので、いろいろ検査を行なって確定診断を付け、フィラリアの吊り出し手術を実施しないと死亡する確率が高いということを説明させていただきました。

飼い主様は一旦帰って家族と相談するということでお帰りになられましたが。後刻再来院されて検査と手術を希望されました。

この時の検査は、フィラリア抗体検査に全血球計数、血液生化学検査ひと通りを含めた血液検査に、胸部エックス線検査、心エコー図検査を実施して。

フィラリア抗体検査は陽性、血液検査では好中球増多症と心不全による腎血液環流量減少が原因と思われる高窒素血症、胸部エックス線検査では肺野が汚く肺動脈の拡張が見られ、心エコー図検査では右心房にフィラリアの虫体らしき陰影が見られました。

以上の所見から急性フィラリア症であると診断し、手術を実施しました。

しかし、この手術ではフィラリアは1匹だけは吊り出せたものの、その次が続きません。
1匹吊り出して終わりか?と思い。聴診もしてみますが、心雑音が明らかに消失した感じも判然とはしません。

結局それから6回程鰐口鉗子で右心室まで探ってみて手術はお終いにしました。

術後は化膿止めだけでなく右心不全を治療するお薬もしばらく続けることにしました。

その後、心雑音はしばらく続いたものの、ワンコは元気を回復して、手術の1ヶ月半後には心雑音も消失。2ヶ月後には心臓のお薬もお終いにしました。

翌年すなわち手術から4ヶ月後のフィラリア抗体検査では陰性という結果でしたから。この子に寄生していたフィラリアは手術で取れた1匹だけだったのだと思います。

たった1匹だけでも寄生部位によっては命に関わるんだなあと、感慨を新たにしたことでした。

それからはワンコはずっと元気だそうです。今年もフィラリアの検査と予防薬の処方、そして狂犬病予防注射に来院して来ましたが。全然問題無い感じでした。

チャチャちゃん、いつまでも元気で頑張って下さいね。

 

 

 

12/07 保護された猫ちゃんに炎症性腸疾患?と猫毛細線虫による膀胱炎

ノワちゃんは野良猫だったのですが。縁あって優しい方に保護されました。

しかし、健康診断のために連れて来られたのですが。どうも食欲は普通にあるものの、食べると吐くという症状を呈しているらしいです。

腹部の触診をやってみると、変に腸が硬いというか、ぶっとい腸管がカチカチの状態でした。いろいろと検査をやってみて。結果として腹部エコー検査での腸管の筋層の異常な肥厚から炎症性腸疾患の疑いが濃厚であると判断しました。

上の画像が腸管の横断面ですが。左側の矢印が筋層で、右側の矢印が粘膜層を指しています。

この筋層と粘膜層の厚さの比率が、この子では筋層が粘膜層の何倍にも肥厚しているのですが。実際に健康な子だったら、この比率が逆転しているのもでして。筋層はごく薄く、粘膜層がゆったりと厚く映るのであります。

炎症性腸疾患の診断には、本当でしたら腸管を開腹しての全層切除とか内視鏡による粘膜バイオプシーをやるのが正しいやり方です。

ただ、目の前に居る患者さんにそれを提案しても、なかなか受け入れてもらえないのが現実でありまして。

今回も、診断的に治療してその結果が思わしくなければ生検も考慮しようということになりました。

治療は、免疫抑制量のステロイドホルモンの内服とアレルゲン除去食の給餌とで行ないます。
嘔吐止めとかお腹の悪玉菌を駆除する抗菌剤の投与もしばらくの間は行ないます。

結果は、ステロイドホルモンの投与と共に嘔吐は止まって、食欲も旺盛になって来たということでした。

治療開始後1ヶ月の時点で、治療効果を確認するための腹部エコー検査と副作用チェックのための血液検査を実施しました。

腸管の筋層と粘膜層の厚みの比率は随分正常に近くなっていました。ただ、肝臓の酵素の数値がごく軽度ではありますが上昇傾向にありました。

肝細胞庇護剤を投薬に追加して治療を継続します。

気になるのが、この時点で膀胱内にモヤモヤとした粘液が漂うような陰影が見られました。初診のエコー検査でもごくわずかにその傾向は見られてましたが。今回はよりはっきりとして来てました。

尿検査をすべきであるとお伝えして採尿容器をお渡ししました。

本日治療開始後2ヶ月後の検査を実施したところ、腸管の粘膜層と筋層の厚みの比率は完全とは言えないかも知れませんが、大体満足すべき状態と思われました。

これから1ヶ月とか2ヶ月くらいの時間をかけて、ステロイドホルモンの量を徐々に減らして行こうと考えています。

ただ、膀胱のモヤモヤはもっとひどくなっています。

画面中央の黒い構造が尿を溜めた膀胱で、正常だったらその中は真っ黒に見えるはずですが。モヤモヤとした白い構造が浮いているのが判ると思います。

それで、飼い主様は自宅での採尿が非常に難しいと言われますので。エコーで観察しながらの膀胱穿刺を実施しまして。尿を無菌的に採取しました。

で、その尿を検査してみますと。尿蛋白は3+ですし、尿のpHは8とアルカリ性です。どうも膀胱炎に罹っているようですが。残尿感とかの膀胱炎症状は無いようでした。

そして、検査を進めて、顕微鏡で尿沈渣を観察する段になって、びっくりしました。

明らかに何かの寄生虫の卵と思われる構造が観察されたのです。

ついでに、寄生虫そのものと思われる構造も見えました。これが幼虫なのか成虫なのかは不明です。

お恥ずかしいことで不勉強にして この寄生虫の正体はすぐには思い付きませんでした。永らく獣医臨床をやっていて初めて見る相手でした。

こんな時には恥を忍んで知っているであろう人に訊くに限ります。

大阪府立大学の内科の先生に電話をかけた上でメールで画像を送って問い合わせしましたところ。

猫毛細線虫であろうという返答をいただきました。有り難うございました。

猫毛細線虫は、教科書を調べると確かに記載がありました。中間宿主としてミミズを必要とする寄生虫で、尿の虫卵が直接口に入ってもその卵はいきなり発育はしないようです。

つまり、猫の膀胱に棲んでそこで炎症を引き起こしながら卵を産むのですが。生まれた卵は排尿と共に地面に落ちて。そこでミミズに食べられて、ミミズの体内である程度発育した後。そのミミズが猫に食べられることによって猫に感染するという発育環を持っているようなのです。

有り難いことに人間には寄生しないようでした。

治療薬も何とか当院に常備しているお薬で対応出来そうです。

いったんお帰りいただいていた飼い主様には電話で連絡を入れて、お薬を処方する旨お伝えしました。

お薬は内服薬で、毎日1回3日間連続して投薬します。

毛細線虫の発育が急に生じた原因ですが。もしかすると炎症性腸疾患?の治療薬として投与した免疫抑制量のステロイドホルモンによる免疫力の低下が一つの要因になっているのかも知れません。

いずれにしても診断がついて良かったです。

こうして普通の獣医師は関係者のご助力を仰いだりしながら一生懸命に頑張っている次第です。

ノワちゃんが元気になるのはもうすぐだと思います。

ではまた。

 

12/01 猫の耳疥癬

午前診に来院されたスコティッシュフォールドの男の子ですが。4月生まれですから生後7ヶ月ということになります。

お家に来たのは9月ということです。10月から耳が汚いのに気が付いて、飼い主様は気になっていたのが。グリーンピース動物病院のHPを見られて来院することにしたとのことでした。

早速耳の中を観察してみますと、黒い、比較的乾燥した耳垢が大量に存在しております。

綿棒で探って耳垢を掘り出し。採取した耳垢を顕微鏡で観察してみました。この耳垢検査はちょっと耳垢が多いような外耳炎に対しては、なるべくルーティンで実施した方が良いと思います。

すると。居ました。

耳疥癬とか耳ヒゼンダニいうダニの一種です。犬や猫の耳に寄生するとひどい外耳炎を引き起こして、対応せずに放置していると、耳がボロボロになって行きます。

耳疥癬の治療は、即効性のある注射薬でまず殺虫を行なって。同時に耳の炎症を抑えるための耳掃除と点耳薬の使用で対応します。

猫ちゃんと一緒に写っている箱がその注射薬のパッケージです。牛や豚の寄生虫駆除薬を、獣医師の裁量により目的外使用しております。

注射は週に1回のペースで3回実施します。1回目の注射でほとんどの成ダニが死滅するはずですが。その後卵から孵化して来ますので。その幼虫を完全に殺滅させないと、また再発する可能性ありです。

耳掃除と点耳薬の使用により、耳は随分と綺麗になりました。

でも、こんな病気だったら、比較的気が楽ですね。基本的に治る病気ですから。

末期の悪性腫瘍とか、高齢動物の腎不全とか、認知症とか、寝たきりになって褥瘡でボロボロとか。

治る見込みは無いけれども。治らないでもちょっとでも楽に出来ないかと一生懸命に治療しなければならない子ばかり診ている時に、こんな簡単と言えば語弊があるかも知れませんが。治る見込みの子が来ると、どこかホッとしている自分に気が付きます。

08/27 犬フィラリアの予防注射(1年利きます。)

犬の心臓糸状虫症(犬フィラリア症)は、今なお重大な疾患でして。

予防獣医学に無知、あるいは犬にとことんお金を使わない主義の飼い主様に飼育されている犬には高率に寄生する大変な寄生虫です。

しかし、その犬フィラリア症も、最近は、内服薬、滴下剤、注射、等々、いろいろな予防法が開発されまして。犬の飼い主様がその気になりさえすれば、ほぼ完璧に予防することが可能な病気でもあります。

表題の犬フィラリア予防注射という予防法ですが、今までオーストラリアで何年も使い続けられて来ていて、その有効性安全性は十分に確認されて来ている予防法です。

実は、同じような製品で、有効期間6ヶ月というフィラリア予防注射が、何年か前に国内で認可が下りて使用可能になったことがありました。この製剤は米国で使われ続けていたお薬でした。

私も、予防の有効期間が6ヶ月と、変に短くて、予防期間8ヶ月が標準の当地方には使い難いなあと思いながら、6ヶ月のお薬の動向に注目していたのですが。

何と、その予防注射は、発売と共に何例も重大な副作用が発生して、重篤な結果の子も結構出て来たらしく、私は怖ろしくなって、同じ時期にオーストラリア製の12ヶ月有効の今回と同じ注射薬を個人輸入して持っていたのですが。自分所有の犬数頭に使って以降は、使用する気にもなれませんでした。

今回輸入して、農林水産省に認可の申請をした製薬会社の担当者さんに、この12ヶ月有効のフィラリア予防注射の副作用発生状況を尋ねたところ。

普通に使用している混合ワクチンの副作用発生件数と比べて、若干発生件数が少ないくらいであることと。

副作用の程度は、ほとんどが注射部位の痛みくらいで、重篤なアレルギー反応はほとんど見られないということです。

とは言え、新しいお薬を導入するについては、それなりに不安も感じますので。

とりあえず、最もサイズの小さな包装を購入しまして。自己所有の犬たちに注射を行なってみました。

お薬の箱を開けると、瓶(バイアル)が2本入ってまして。片方は薬を封入しているマイクロカプセルが顆粒状になって入っており。もう片方にはマイクロカプセルを懸濁させる粘性のある溶解剤が入っております。

マイクロカプセルの入ったバイアルを底から覗いて見るとこんな感じです。

で、溶解剤を注射器で吸って、マイクロカプセルのバイアルに注入して、溶解します。

溶解剤で溶かし終えると、こんな感じになります。

で、それを犬の体重1キログラム当たり0.05ミリリットル注射器で吸って。犬の頸部皮膚に皮下注射するわけです。

皮下注射の光景は、こんな感じです。

ついでですので。もう1頭皮下注射のシーンを掲載します。

注射を実施した感じは。普通に混合ワクチンとか狂犬病予防ワクチンの接種と時と変わりなく。犬が異常に痛がるとかということもありませんでしたし、注射部位が腫れたり、顔がむくんだり、元気が無くなったりというような、アレルギー症状も生じていません。

皮下注射されたマイクロカプセルは、皮下に止まって、そこで少しずつ少しずつ壊れて行きますから。お薬が緩徐にカプセル外に放出して行くことにより12ヶ月間体内でのお薬の濃度を一定にキープしてくれるわけです。

日常診療の際にこの予防注射を実施した子には、当院の様式でフィラリア予防注射接種証明書を発行する予定にしております。

この予防注射の出現により、犬のフィラリア予防は大きく変化するかも知れません。何せ、12ヶ月間有効なのですから、体重が大きく変動しない成犬であれば、冬であれ秋であれ、来院のあった時に注射1本で簡単にフィラリア予防が可能になるのです。

これから料金設定をした上で、実際に臨床の現場で使用して行くことになると思いますが。料金は、それなりの仕入れ価格ですから、頑張って今までの内服薬とそう変わらないように、出来れば少し安めの価格に設定して行きたいと考えています。

使用開始の時期ですが。お薬はもう在庫しているのですが。一旦溶解剤でマイクロカプセルを溶解すると、2ヶ月以内で使い切らないといけないと、指示書に記載がありますので。いつ来るか判らない予防の子のために事前に溶解して置くことは、シーズンオフに突入するこれからは、ちょっと冒険かも知れません。

 

 

 

 

08/02 ミニチュアブルテリア若犬の毛包虫症

今年1月29日生まれで、6月終わり頃に去勢手術を行なったミニチュアブルテリアの男の子の話しですが。

7月26日に首の皮膚が痒くなったということで来院されました。

全身の皮膚を診てみると、首の後ろと左側面、左手の甲、右前腕後ろ側、右の内股に脱毛とその部分の発赤が見られました。

これだけの所見では、細菌感染とか真菌感染、寄生虫疾患やアレルギーなどの鑑別は正直難しいです。

とりあえずになりますが、可能性の大きな順番から、細菌感染や、犬種的にマラセチア感染あたりを疑って、セファレキシンという抗生物質の内服とマラセブシャンプーによる薬浴を1週間実施することにしました。

1週間後の8月2日、再来院したのを診ると、脱毛部の赤味は、部分的には改善されていましたが、改善していない場所もありますし。皮膚の痒みは相変わらずだということでした。

この時点で、アレルギーも疑ったのですが。それ以前に除外しておくべき疾患として、皮膚に住む毛包虫とか疥癬虫のようなダニの感染があります。

脱毛部の皮膚の表面を鋭匙で掻き取って、それを10%KOHとDMSOという薬剤で溶かして顕微鏡で観察するという、「皮膚掻き取り試験」を実施しました。

画像に見られる細長い虫が毛包虫(アカラス)というダニの一種です。

毛包虫は、普通に健康な犬の皮膚にごく少量寄生しているのが普通なのですが、このように脱毛や痒みを引き起こすほど増殖するのは、動物の免疫機能が不十分な場合に見られると言います。

若い犬が一過性に毛包虫症にかかるのは、時々見られることで、特にブルテリアとかのシングルコートの皮膚がデリケートな子に頻繁に見られるように感じますが。柴犬やボーダーコリーのような犬種でも見たことはあります。

若年性の毛包虫症は、大概は治療を施せば一過性のものに終わることがほとんどですが。
要注意なのは成犬になって、それも6才とか7才以降の中高齢になって発症する毛包虫症です。

中高齢の犬の毛包虫症を発見した場合には、必ず副腎皮質機能亢進症とか悪性腫瘍とかの犬の免疫機能が低下している原因を調べる必要があります。

毛包虫症の治療法ですが、ドラメクチンという抗生物質の一種を毎週1回、計8回皮下注射する方法とか、アミトラズという薬品での薬浴とかの方法があります。

ミニチュアブルテリアの飼い主様は、今回はアミトラズ薬浴を希望されました。薬浴はご本人が実施するのを前提にしておりますので、薬浴のやり方を説明してアミトラズの原液を1回分だけ処方しました。

アミトラズ薬浴は、最初の数回は週に1回。治療効果がはっきりと現れれば隔週に1回のペースで実施して。

最後に2回か3回皮膚の掻き取り試験で陰性が続いたらお終いにするようにしております。

ブルテリ君、一過性の疾患で済みますように。

 

 

07/30 老いた犬猫のハエウジ症

犬も年老いて来ると、何かと機能が衰えて、自分の身を守ることが出来なくなるものです。

その結果の典型的な例が、見出しの老犬や老猫のハエウジ症です。

これは、老衰とか重度の疾患で動けなくなった犬猫に、キンバエとかクロバエが卵を産み付けることにより、ハエの幼虫が炎症などのために浸出液で濡れている皮膚や、褥瘡や傷の周囲及び傷の内部、鼻、眼、口、肛門周辺からそれらの天然孔内に湧くように発生する現象です。

生きながらにハエのウジに喰われるという感じでしょうか?

ハエウジ症の対策は、まず動物を清潔でハエの飛んで来ない室内に移動させ、毛刈りや洗浄によってハエウジを除去し、傷については壊死組織を除去して消毒剤で殺菌した上に、細菌培養と抗生物質感受性試験に基づいて適切な薬剤で感染のコントロールを行ないます。

今回紹介するチチちゃんは、飼い主様が異変に気付いてすぐに連れて来られたのですが、もう既にハエウジが湧き始めているところでした。

左胸の横側の皮膚に穴が開いていたのと、前胸の皮膚が化膿性の皮膚炎になっていて、そこにハエウジが湧いていたのです。

全身の毛を刈り、ウジを全て除去して、傷からの分泌液を培養した結果から、エンロフロキサシンとセファレキシンの2剤を組み合わせて、治療を行ないました。

本日で、入院7日目になりますが、皮膚の炎症も大方治まり、開いていた穴も治りつつあります。

チチちゃんの全身状態も適切な温度管理と投薬、食事によって見違えるように改善しております。

飼い主様は、室内でチチちゃんを管理出来るようにリビングとかいろいろ配置換えをしているそうです。

私も協力したいと思い、自宅犬舎で使用していない高さ90cmのサークルをお貸しすることにしました。

退院は明日か明後日になりそうです。