兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2014 6月 02
院長ブログ

日別アーカイブ: 2014年6月2日

若齢小型犬の股関節の痛み

Leg Calve-Perthes Disease (LVPD) という病気は、生後4ヶ月令から12ヶ月令の小型犬に突然発症することがある、股関節の病気です。 原因ははっきりしていませんが。成長期に大腿骨頭に供給される血液が不足して、骨頭部が変形したり壊死したりして、猛烈な痛みを伴なうのです。 今回の子は、ワイヤーヘアードフォックステリアの男の子です。生後11ヶ月令で、1週間前から突然左後ろ肢を挙げるようになったということで来院しました。

エックス線検査では、腹背像で左股関節の大腿骨頭の変形が見られます。

画像の向かって右側に縦に長く見える太腿の骨の上の方に、骨盤に向かって突き出て、骨盤の受け皿に嵌まっている構造が、大腿骨頭です。

この大腿骨頭が、向かって右側のが左側のに比べると幅が小さく、根元に一部黒っぽくくすんだ感じになっていますのが、異常像です。

この時点で、犬種、年齢、発症のタイミング、症状、エックス線所見から、レッグ・カーブ・ペルテス病を強く疑いました。

飼い主様には、疑わしい病名を告げながら。教科書通りに非ステロイド性消炎鎮痛剤を処方しました。

1週間後の再来院時には、患肢をある程度使うようになったということですので。もう一度非ステロイド性消炎鎮痛剤をお渡しします。

ところが、再来院から4日後に。それまで順調に回復していたのが、突然に脚を拳上して全く使わなくなってしまったということで、来院されました。

エックス線検査で、大腿骨頭に何か変化が生じていないか?確認します。

左大腿骨頭の先端の丸い軟骨の部分が、はく離骨折を起こしています。

大腿骨頭の虚血性壊死によって、その部分が脆くなっているのでしょう。

こうなると、外科手術で大腿骨頭を切除するしか解決の方法はありません。私の印象ではほとんどのレッグ・カール・ペルテス病は、最終的には大腿骨頭切除術をせざるを得なくなるのです。

はく離骨折を診断した翌日に、手術を行ないました。

麻酔をかけて、術野の毛刈りを行ないます。一応骨を触る手術なので、カミソリで丹念に剃ります。
手術準備が出来て。今から切皮にかかるところです。

中途省略して。手術は終了です。

覚醒して、気管チューブを抜いて。皮下輸液をしているところです。

術後のエックス線写真です。左側、向かって右側の大腿骨頭は消失しております。

術後の注意事項としては。感染防止のための抗生物質をきちんと投与すること。術後10日から2週間で抜糸したら。非ステロイド性消炎鎮痛剤で疼痛を抑えながら、積極的に運動させて。大腿骨と骨盤の間に緩衝材となる繊維性の組織の形成を促進させてやるということです。

術後6ヶ月から1年くらいで正常に近い歩様にまで回復すると思います。

今までに私がこの手術をやった子らは全頭正常歩様になって、不自由なく元気に生活出来るようになっております。

この子も元気に歩けるようになりますように。

ではまた。