兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2025 12月 09
院長ブログ

日別アーカイブ: 2025年12月9日

定期検診で「何をするのか」

皆さんこんにちは

グリーンピース動物病院の更新担当の中西です

 

定期検診で「何をするのか」

動物病院の定期検診を受けようと思ったとき、「具体的に何をするのか」「どんな検査が必要なのか」「結果はどう見ればいいのか」が分からず、少し不安になる飼い主も多いでしょう。検診という言葉は、どうしても人間の健康診断を連想させ、数値で一喜一憂してしまうこともあります。けれど、動物の定期検診で最も大切なのは「その子の基準を作り、変化を追う」ことです。単発の数値だけで判断するのではなく、生活環境や年齢、体質、過去の履歴と合わせて総合的に捉えることで、検診がより有意義になります。

定期検診の基本は、問診と身体検査です。問診では、食欲、飲水量、排尿回数、排便の状態、運動量、睡眠、咳やくしゃみの有無、嘔吐、下痢、行動の変化などを確認します。ここで重要なのは、飼い主が「いつもと比べてどうか」を伝えることです。例えば、食欲が落ちたと言っても、全く食べないのか、食べる量が2割減ったのか、嗜好が変わったのかで意味が変わります。飲水量も、増えた気がするだけではなく、可能ならおおよその量を把握すると判断に役立ちます。難しければ、「水の減り方が明らかに早くなった」「トイレの砂の固まりが大きい」など、観察できる範囲の情報でも十分です。定期検診は、飼い主の観察と獣医師の診察が組み合わさって初めて精度が上がります。

身体検査では、体重と体型評価がまず重要です。犬猫の健康は、体重管理が大きく関わります。肥満は関節、心臓、呼吸、糖代謝などに負担をかけ、逆に急激な減量は内科的疾患や腫瘍などのサインになることもあります。体重の数字だけでなく、肋骨の触れ方、腰のくびれ、腹部の吊り上がりなどの体型評価が行われます。ここで「少し太った」「少し痩せた」を早期に捉えられると、生活改善だけで戻せる範囲で対処しやすくなります。結果として、治療が必要になるリスクを下げることにもつながります。

視診と触診では、皮膚や被毛、耳、目、口腔内、リンパ節、腹部臓器、関節などがチェックされます。特に口腔内は見落とされやすい領域です。歯周病は犬猫でも非常に多く、進行すると口臭だけでなく、痛み、食欲低下、さらには全身の健康にも影響を及ぼすことがあります。定期検診で歯石や歯肉炎を確認し、適切な歯磨き指導やスケーリングのタイミングを相談することは、長期的な健康維持に大きく役立ちます。また、皮膚の状態はアレルギーや内分泌疾患のヒントになることがあり、耳の状態は外耳炎の早期サインを拾いやすいポイントです。触診でしこりが見つかることもあり、早期の段階で検査や経過観察に入れることは大きなメリットです。

検査としてよく行われるのが血液検査です。血液検査は、肝臓、腎臓、血糖、電解質、貧血、炎症反応など、体の内部状態を幅広く把握できます。ただし、血液検査の数値は、その日の状況やストレス、食事、運動などで変動することがあります。そのため、単発の数値を見て過剰に心配するのではなく、獣医師の解釈を聞きながら「この子にとってどうか」「前回と比べてどうか」を見ることが大切です。例えば基準範囲内でも、毎年少しずつ腎臓関連の値が上がっているなら、早めに食事や水分摂取、生活環境の見直しを検討するきっかけになります。逆に、少し外れていても一過性の可能性がある場合は、再検査や経過観察で判断することもあります。検診は「数値の善悪」ではなく「変化の読み取り」を重視することで、意味が深まります。

尿検査は、腎臓や泌尿器の健康状態を把握するうえで重要です。特に猫は慢性腎臓病や尿路疾患が多く、尿比重や尿蛋白、潜血、結晶の有無などの情報が役立ちます。尿検査は採尿が難しいこともありますが、可能な範囲で取り組む価値があります。便検査は寄生虫や腸内状態の確認に役立ち、特に子犬子猫や多頭飼育の環境では重要性が高まります。フィラリアやノミ・ダニなどの予防薬の計画も、検診時に見直すと合理的です。生活環境が変わったとき、散歩コースが変わったとき、旅行に行くときなど、予防が必要な範囲は変動するためです。

シニア期に入ると、レントゲンや超音波などの画像検査が検討されることもあります。画像検査は、血液検査では見えにくい心臓や肺、腹部臓器の形態変化、腫瘤の有無などを把握する助けになります。もちろん、すべての動物に毎回必要なわけではありません。年齢、既往歴、リスク、体調などを踏まえて、獣医師と相談しながら優先順位を決めることが大切です。定期検診の目的は、過剰に検査を増やすことではなく、その子にとって必要な情報を効率よく得ることにあります。

飼い主が検診をより有意義にするためにできることは、いくつかあります。第一に、普段の変化をメモしておくことです。食欲、飲水、排泄、咳、嘔吐、下痢、活動量、睡眠、行動の変化、体重の変化など、気になったことを短く記録するだけで診察の精度が上がります。第二に、食事内容やおやつ、サプリメント、予防薬の種類を把握しておくことです。第三に、検査結果を保管し、前回との比較ができるようにすることです。動物病院でも履歴は残りますが、飼い主が理解していると、生活改善の動機づけにもなります。

定期検診は、動物病院が一方的に「検査をする場」ではなく、飼い主と獣医師が共同で「健康を維持する計画」を作る場です。検診の結果をもとに、体重管理、運動、食事、口腔ケア、予防プラン、ストレス対策など、生活全体を調整していく。こうして初めて、検診は単なるイベントではなく、健康を守る習慣になります。検査の意味を知り、結果を変化として捉えることで、定期検診はより安心に、より価値あるものになっていきます。