兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2014 2月
院長ブログ

月別アーカイブ: 2014年2月

グリーンピースわんにゃん訪問隊活動

毎月第4金曜日が、犬猫連れ老人ホーム訪問ボランティアの日になっておりますが。
先月と先々月の2ヶ月は、当日にどうしてもやらなければならない手術が入ったりして行けてませんでした。

今日は、久し振りに参加しました。

今日は、私がお産をお手伝いさせてもらったコーギの赤ちゃんが1胎参加されていて。皆さんすごく盛り上がっておりました。

子犬は無条件に可愛いです。

1時間の訪問時間はあっと言う間に過ぎてしまいます。

今日は新しい参加希望者さんが来てられまして。お飼いになっているワンちゃんが適正ありという結果になれば、来月から参加出来るかと思います。
新しい訪問ボランティア希望者さんは有り難いです。

しかし、年月はいつの間にか過ぎて行くもので。この訪問活動も16年が経ったらしいです。園の理事長さんが記録を確認されたそうです。
熱心な訪問ボランティアさんたちと、園のサポートが相まって、このような長期の活動が出来たということなのでしょう。

そして、何よりも園の利用者さん、即ちお年寄りの方の嬉しそうな笑顔が、私たちの励みになって来たのであります。

次は、目指せ20年!!ですね。

 

ではまた。

 

 

油断大敵

今日は午後にジャーマンシェパードドッグの女の子の避妊手術がありました。

手術自体は普通に終わりましたが。

覚醒時に意識の戻り方が急過ぎて、気管チューブを抜こうとすると、わんこがチューブを咬み切ってしまいました。

ところが、さあ大変です。気管チューブの咬み切られた先の方がそこらに見当たりません。

となると、わんこの体内にあると考えるしかないでしょう。

頚部胸部腹部のエックス線検査を行ないました。

胸部気管が妙に真っ直ぐで、直線的になった場所には白っぽく強調された気管チューブの陰影が見られます。

これは内視鏡が無いとどうにもならないですから。市内の内視鏡を持っている動物病院に飼い主様と一緒に行くことにしました。

予め電話連絡をしておいて、午後5時頃グリーンピース動物病院の外来診療を済ませてから、内視鏡のある動物病院に行きます。

受け付けで、電話をしてある旨お伝えして。自動車の中で待っていると、盛んにゲーゲーとえづいていましたが。

何と、わんこは自力で気管チューブの断端を喀出してしまいました。

画像の赤い矢印の先にあるのが、喀出された気管チューブの断端です。

帰ってから、気管チューブの元と先とを並べてみました。左が気管の中に残ってしまった先っぽの方ですが。長さが約18センチメートルあります。さぞかし気持ち悪かったことでありましょう。

このような事故は、私の病院ではこの22年の間で初めてでしたが。行った先の動物病院の院長先生の話しによると、彼が経験したので気管チューブ断端遺残摘出が 3例あるそうですし。内視鏡学会とかに行くとこのような事例は結構多く報告されているということでした。

麻酔をかけるということは、いろいろなリスクを伴いますが。このような気管チューブの切断と断端の遺残も要注意だと、身を持って勉強することになってしまいました。

明日から、2度とこのようなことが生じないように、麻酔覚醒のスピードの調節とか、注意してやります。

今日は結果オーライで本当に有り難いことでありました。

 

犬の前十字靭帯断裂整復(関節外固定法)

今回のわんこは来月で3才半になる紀州犬雑の男の子です。
約3週間前に山に行っていて、膝を痛めたようです。

歩き方を見て、前十字靭帯という膝の靭帯が断裂していると直感しました。

鎮静をかけて、下腿の骨を前に押すようにストレスをかけてエックス線撮影を行なうと。

正常のエックス線画像を見ていないと、「何のこっちゃろ?」という感じですが。下腿の骨が大腿の骨よりも随分前にずれております。
前十字靭帯は、下腿の骨が前にずれないように繋ぎ止めてくれている靭帯でして。人間ではスポーツ選手が切ることが多い組織です。
そう言えば、あのフィギュアのエース高橋大輔選手もこの靭帯の断裂をこうむって、手術で復活してましたね。

前十字靭帯断裂は、当院ではそんなに頻度の高い疾患ではないです。前回の子は6年か7年前に柴犬で断裂した子が居て、その子は大腿筋膜を靭帯の代わりに関節に通すという「関節内法」で治療しました。

4年前くらいに整形外科のセミナーを受講した際に、講師先生が、「今現在関節の中に異物を通すような手術は時代遅れです。」と言い切ってましたが。それはどうかな?と思いながら聴いていました。

人間の前十字靭帯断裂整復術では、筋膜のような自分自身の組織で修復することが普通みたいですし。

まあ、でも、その講師先生の話しも少しは耳に残っておりますので。今回の紀州犬雑の子の場合。ナイロン糸を使用して「関節外法」をやってみることにしました。

手術は、普通に麻酔導入して。術野は特に念入りに毛刈りだけでなく、毛を丁寧に剃って、術野を覆うのはヨード剤を含ませたプラスチックドレープを使用しました。

骨関節の手術の時には特に術後感染の防止に気を使います。

手術は2段階に分けて実施します。第1段階は膝の関節を開けて、靭帯の損傷や半月板の損傷を確認して。傷んだ半月板は切り取ります。

この子の場合、慢性的にストレスがかかって断裂した症例ではないので半月板は問題無しです。

切れた十字靭帯の端がちょっと見えます。

半月板の損傷のチェックが済めば、関節包を縫い合わせて関節を閉じます。

第2段階は、外側腓腹筋種子骨という大腿の裏側外側にある小さな骨の裏を回すようにナイロン糸を通します。ナイロン糸の太さは、70ポンドテストの物を選択しました。糸を種子骨の裏に回すのは湾曲した縫合針を使って行ないます。

画像で見ると何のことか判り難いかも知れませんね。

次いで、糸を前に持って行って。今度は脛骨稜という膝の下のすねの骨が突き出た部分に穴を開け。

脛骨稜の穴と外側腓腹筋種子骨とを支点にしてナイロンで関節を締め上げて固定を完了します。

後は大腿筋膜を少し寄せてきつめに縫い合わせ。皮下縫合、皮膚縫合で手術は完了です。

こんな風に書くと大層ですが。実際にはそんなに難しい手技ではありません。

術後は2週間程度は安静を保つこと。12週程度は歩行のみで駆け足は禁止。という感じでしょうか?

一般に3ヶ月後までに正常歩行に戻り。5ヶ月後にはかなり強い運動も可能になるということです。

この方法の成功率は、教科書に依れば85%から90%ということらしいです。

お友達の獣医さんの話しでは、関節外法は緩むことがあるらしく、その人は筋膜を使った関節内法で良い成績を上げているいうことでした。

私の今回の症例はどうでしょうか? 上手く行って欲しいものであります。

今回の手術で後日緩みが生じるようであれば、関節内法で再手術をするつもりではあります。

ではまた。