兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 院長ブログ

院長ブログ

猫の子宮蓄膿症

今回の症例は、特に症状があって来院したわけではない子でした。

一緒に暮らし始めてすでに数年経過した子なのですが。 発情のことと、病気予防のことが気になっていて。 避妊手術を希望されて連れて来られたのです。

術前検査はそんなにお歳でもなく運動能力に異常もないとのことでしたから。 全血球計数と血液生化学検査、血液凝固系検査だけやりましたが。 特段の異常はありませんでした。

手術当日、麻酔導入して、仰向けに保定し、お腹の毛刈りを始めたところ。 お腹の中に何やら硬い大きな物体が触れまして。

妊娠か?と疑って。 飼い主様にお電話をかけつつ、エコーで確認してみましたら。 それは胎児ではなかったです。

お腹を開けて、中身を確認すると。 硬い大きな物体は大きく膨らんだ子宮でした。

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普段の手術よりも子宮頚管の結紮と切断に随分気を使って。 私が「コピオ」と称している、取り残した子宮に膿が溜まった状態をつくらないようにしました。

子宮卵巣の除去後は普通に閉腹して。 手術は完了です。

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取り出した子宮を無菌的に突いて穴を開けてみると。 中から赤っぽい色調の膿が出て来ました。

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出て来た膿を材料に、細菌培養と薬剤感受性試験を実施しましたが。 翌日確認してみると、細菌は生えて来ませんでした。
普通の培地で普通に培養して細菌が生えないということは。 酸素がある環境では生えない菌が居るのか?普通のお肉のスープで溶かした寒天では生えない、栄養要求度の難しい細菌が居るのか?あるいは無菌的な化膿だったのか?のいずれかなんだと思います。

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猫ちゃんの覚醒は普通に順調でしたので。 当日夕方に退院して行きました。

子宮蓄膿症。 無症状の状態で手術が出来て良かったです。

ではまた。

子宮蓄膿症

今回の症例は、3才になるポメラニアンです。

子宮蓄膿症は、未避妊の女の子のワンちゃん猫ちゃんがかかる病気ですが。 この子は、飼い主様が子供を残したいという希望がありましたので。 避妊手術をやってなかったのです。

ただ、 飼い主様の意図に反して、妙に病気がちの体質でして。

ここ1~2年は頑固な便秘と食欲不振で、緩下剤と消化管運動促進剤を投与する治療を続けてました。

ところが、最近食欲不振の度合いがひどくなった上に元気が無くなったということですので。

心新たに、身体検査を行なってみると。 性器が妙に大きくなっていて、なおかつ下り物が見られます。

血液検査では、白血球数、特に細菌と戦う好中球の増加とC反応性蛋白の数値が高い方に振り切ってしまっています。

お腹のエックス線検査では、矢印の先に異常なソーセージ様の陰影が見られますし。

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腹部エコー検査では、そのソーセージ様の陰影は、内部に液体を貯留した管状の構造であるということが判明しました。

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これだけの証拠が揃えば。 この子の病気は「子宮蓄膿症」と言い切って良いと思いますが。

かなり怖いと思ったデータとしては。 血液を固める機能を持っている血小板の数が、1ミリ立方メートル当たり5万個台に減少しているということでした。 血小板数は、採血の時に針先が血管から外れたり、採血にひどく手間取ったりすると少なくカウントされることがありますが。 今回の採血は普通にスムーズに出来てましたから。 この数値は信頼性があると思います。

子宮蓄膿症のような基礎疾患があって、血小板数が少なくなっているような場合。 DICという血液凝固系の暴走とも言うべき致命的な状態になっている可能性が高いと思います。

DIC[で回復しない場合を考えて。 DIC[治療の奥の手ともいうべき新鮮血漿輸血とかも考慮して。 血液型を簡易キットで判定しようと試みましたが。 自己凝集反応が出現していまい。 血液型判定は出来ませんでした。

犬猫の血液型判定は、健康な時に前もって実施しておくべきものであると改めて思い知りました。

子宮蓄膿症は、状態が悪いからとか言って手術を延期したりすると、逆にますます状態が悪くなって、 結果的に死に至る症例を過去に見て来た経験から、発見したらとにかく手術して悪い臓器を取り出してしまうというのが私の考えです。

この子も、即日手術を実行しましたが。 手術の前から、DIC対策のお薬を静脈輸液に添加して持続点滴で投与しました。

 

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手術は、 過去のブログにも何回となく掲載したように、麻酔導入したら気管チューブを挿管し。 静脈カテーテルからの乳酸リンゲルの輸液。 各種モニターの装着と。 決して手抜きをせずに丁寧に準備します。

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お腹を開けると。 液体が充満した子宮が出て来ました。 超音波メスで血管をシールしながら摘出します。

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摘出した子宮ですが。 健康な子宮に比べて、長さはともかくひどく太くなっています。

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メスで突くと、イチゴミルクのような?膿が出て来ました。 この膿を材料にして細菌培養と薬剤感受性試験を行ないます。

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麻酔からは普通に覚醒しました。 一晩入院させて、DIC対策のお薬を添加した乳酸リンゲルの点滴を続けます。 翌日に食べれば回復に向かっていると判断して退院させます。

幸いなことに、翌朝食欲が回復して、与えた食事を食べてくれました。

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筒状のメリヤスを使ったシャツを着せてやって、退院させました。

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術後約9日で再来院した時には、すっかり元気になったということなので。 抜糸して今回の子宮蓄膿症騒ぎは一件落着ということになりました。

普通に回復してくれて、本当に良かったです。

今回の子は、一応繁殖予定があったので。 早期の避妊手術をしなかったために、こんな事態になってしまいましたが。
やはり、繁殖の可能性が無くなった時点でなるべく早期に避妊手術をお勧めするべきだったと思います。

ではまた。

犬猫の歯周病治療 劇的ビフォー&アフター (画像は順次追加してます)

特にリフォームの記事ではありませんが。
最近高齢犬猫で大きな問題になっているのが、口の中の衛生です。

いろいろ能書きを書くのも大切ですが。 一目瞭然のビフォー&アフター画像を掲載してみるのも判り易くて良いかも知れません。

では。 ご覧下さい。

ビフォー

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猫の重度の口内炎で歯周病を伴っています。 猫白血病ウィルスに感染していて、免疫力が低下しているところに、歯周病が発生し、口内炎でひどいことになっています。 ステロイドの投与で痛みはある程度コントロールされていましたが。 ものすごい口臭で飼い主様が悲鳴を上げてました。

アフター

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犬歯以外のすべての切歯(前歯)と臼歯を抜歯しました。 下顎の抜歯痕は合成吸収糸で縫合しました。
術後は抗生物質、ステロイドの内服。 猫インターフェロンの希釈液の口腔内散布で管理します。
抜歯の翌日から口臭は消失して、食欲もあり。 生活の質は飛躍的に向上しています。

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抜いた歯はこんな状態です。 臼歯は根っこが2本とか3本ありますので。 歯冠を切断して、ひとつの根っこ毎に抜かないと折れたりして残根が出来る怖れがあります。

ビフォー

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左右共上顎の1番目から3番目までの臼歯は抜けてしまっています。 上も下も臼歯は歯石で覆われてしまっています。

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左目の下の皮膚に穴が開いて、膿が出ているのは、裂肉歯膿瘍とも言いまして。 その側の裂肉歯(上顎第4前臼歯)の歯根が化膿しているために、出口を失った膿がその部位の皮膚から出ているという状態です。 これは原因となっている歯を抜いてしまわなければ治りません。

アフター

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両側共動揺がひどかったり、膿瘍の原因になっているような歯を抜歯して。残った歯については徹底的に歯肉縁下の汚れまで丁寧に除去しました。

ビフォー

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とにかく酷い歯周病です。 犬歯も臼歯も歯石の付着が半端ではありません。 この子も左側が裂肉歯膿瘍になってましたが。 手術までの投薬により一時的に、膿の分泌は止まってました。

アフター

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裂肉歯膿瘍の原因となっていた左上顎第4前臼歯を抜いて。 他の歯は、意外に健全でしたので、徹底的に歯肉縁下の歯石を除去しました。

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ビフォー

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この子も裂肉歯膿瘍で受診して来たものです。 目の下に器具で穴を示してますが。 そこから膿が出て止まりませんでした。 手術前の投薬でも止まらなかったので。 手術の際に細菌培養と薬剤感受性試験を実施しました。

アフター

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右上顎の歯はかなり抜きました。 歯の傷み方に左右で差がありました。 咬み方に左右差があったのでしょうか?

ビフォー

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アフター

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比較的軽度の歯周病の子でした。 まだこれくらいで受診されれば歯を失わずに済む可能性大です。 処置の後の日々のブラッシングなどのデンタルケアで管理が容易な症例です。

ビフォー

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アフター

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だんだん言うことが無くなって来ました。 結果が総てです。

ビフォー

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アフター

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この子は上下顎の前歯とか、下顎の臼歯を沢山抜いたので、抜歯痕を合成吸収糸で縫合しなければなりませんでした。

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抜いた歯の状態はひどいものです。

ビフォー

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アフター

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抜歯した歯は、歯根の根っこの方まで黒くなって、随分傷んでいます。

ビフォー

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この子は、口の中はまあまあましな方ですが。左眼の下がぷっくりと膨れて来まして。 細い針で細胞を採取して検査してみると、 化膿性病変であると判明したものです。 この部分に化膿性病変が出来た時には、 その多くが上顎第4前臼歯の歯根先端が化膿しておりますので。 根本治療としては当該歯の抜歯が必要になります。

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アフター

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膿瘍の原因になっていた歯です。 根っ子が3本ある三根歯なので、 それぞれの根毎にストレス無く抜けるように3分割してあります。

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上顎左側の第4前臼歯は抜歯しました。 術後の抗生物質の投薬で目の下の膨らみは治って行くことと予想されます。

ビフォー

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アフター

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まあ、ひどいものです。 特に左右上顎犬歯は、 根っ子の部分に超音波スケーラーを当てると、 鼻の穴からスケーラーからの冷却水が吹き出て来るような状態でした。 すなわち歯の根っ子の炎症が鼻の穴に貫通してしまっているわけです。
アフターの写真で見て取れるように、 犬歯の抜歯痕は合成吸収糸で縫合しています。
以上、歯周病処置のビフォー&アフターということで、画像紹介の形で書いてみました。

しかし、心すべきは、歯周病処置が治療のゴールではないということです。 せっかく処置をしても、放っておいてはまた同じように傷んで来ますから。 処置後にはブラッシングを基本とした日々のデンタルケアを主従で頑張ってもらわないといけません。

そして、何よりも大切なことは、ここまでなる前に早めに処置をする。 また、歯石が少しでも付着する前に、予防的に日々のブラッシングを怠りなく、愛犬愛猫の歯を綺麗に保つということだと思います。

見るだけで気分の悪くなる画像が続きましたが。 御高覧有り難うございました。

ではまた。

 

 

内服するノミマダニ駆除薬について(院長私見につきそのつもりでお読み下さい)

2017年4月にこの記事に出ているブラベクト錠の安全性について新たに記事をアップしています。記事のアドレスは http://www.greenpeas-ahp.co.jp/?p=1974 です。

この数年前より、ノミやマダニの駆除のトレンドは、内服薬による防除ということだと思いますが。

まず、出たのがコンフォティスという、月に1回の内服で、ノミとマダニの寄生が防げるというお薬でした。成分はスピノザドという名称です。

コンフォティスは、その後ミルベマイシンオキシムというフィラリア予防と腸内寄生虫駆除が出来る成分と合剤になって。

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画像のような多機能の予防薬となって、2015年より使われるようになっております。

その次に、出たのが。日本全薬工業より、2014年発売し始めた、ネクスガードという内服型のノミマダニ駆除薬です。
これも、1回の内服で1ヶ月間の防除が可能であるということと。全薬さんが強調していたのは、ご褒美に使えるほどワンちゃんの嗜好性が高い(美味しい)ということでした。

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確かに、スピノザド製品は美味しくないのか。コンフォティスもパノラミスも、食べてくれない子がいたり。食べた後吐いてしまう子がいたりします。
ネクスガードは嗜好性が高く与えやすいというのが大きな売りみたいです。

画像のネクスガードスペクトラは、やはりミルベマイシンオキシムとの合剤にして。ノミマダニ防除、犬フィラリア症予防、腸内寄生虫駆除が出来るという多機能製品として販売している物です。

2015年秋より。今度は1回の内服で3ヶ月間ノミマダニ防除が出来るというブラベクトという製品が発売されるようになりました。

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この製品も、2016年からは、フィラリア予防、腸内寄生虫駆除の機能を付加して多機能予防薬として発売される予定です。

確かに、便利な時代になったことであります。

ただ。飼い主様のご要望に応じてそれらの薬剤を処方する立場の獣医師として。これらの製品をどういう風に見ているのかと申せば。

正直、本当に安全な製品なのか?という素朴な疑問を感じています。

多機能合剤に仕上げるために添加している、フィラリア予防や腸内寄生虫駆除の機能を持つミルベマイシンオキシムは。もう長い間獣医臨床の分野で使われて来て。安全性有効性にいささかの疑念もありません。
しかも、このお薬は内服して約1日でほとんどの成分が体外に排出されてしまう。ごく短時間体内で作用を発揮するだけの薬剤です。

しかし、ノミマダニ防除の成分の方は、どうか?というと。1ヶ月有効の薬剤は少なくとも1ヶ月間。3ケ月有効の薬剤は3ヶ月間。ノミやマダニを殺せる強力な有効成分が、血液の中で効力を発揮するに十分な濃度を保って体内を循環し続けているということなのであります。

比較的薬剤に弱いノミはともかく。マダニという寄生虫は、非常にしぶとく生命力の強い節足動物です。

そんな強力な虫を殺せる強い薬が、与え方によっては年がら年中、それも犬の一生を通じて、犬の血液中に循環し続けるというのを、消費者たる飼い主様はどう考えるのでしょうか?

私が獣医師をやっていく上で心掛けていることは。少なくとも自分の犬猫にしてあげたいことを、来院する犬猫たちにしてあげようということであります。

人間、自分がされて嬉しいことは他人にしてあげる。そして、自分がされて嫌なことは他人にもしない。とういうスタンスが、生きていく上で大切なことだと考えているからです。

今まで便利だからとか、治るからという理由で、いろいろな予防薬とか治療薬がこの業界に出回って来ましたが。

中には、当初の予想とは違って、副作用発現の頻度が割りと高い製品もありました。年に1回の注射で犬フィラリア症を予防出来るという、フィラリア予防注射などがその例です。

人間のお薬では、サリドマイドというお薬が上肢の形成不全の新生児の原因となったり。比較的安全とみられている漢方薬でも小柴胡湯というお薬が、間質性肺炎の原因となったりと。

薬の歴史は、医学獣医学の発達という正の側面もありますが。副作用という負の側面もあるということを忘れてはならないと思います。

グリーンピース動物病院にお薬の説明に来られるメーカーの方のお話では。どの製品も厳しい安全基準に基づいた安全性試験を合格した良い製品だということですが。

コンフォティス、パノラミス、ネクスガードなどは、繁殖に使用する犬には使用しないようにと能書きに明記してありますし。
ブラベクト錠は、海外では繁殖に使用する犬への制限は無いように聴いてますが。国内で購入する製品に添付している能書には、慎重投与と書いてあります。

外部寄生虫に対する防除薬としては、代表的なものに、フロントラインとかマイフリーガードのような背中の皮膚に滴下するタイプのものが別にありますが。これらは、基本的に体内に入って血液中に薬剤が高濃度に循環するということは無くて。体表にとどまっているという薬剤動態を示すものです。

有効成分が長期間体内で血液中を循環する外部寄生虫駆除薬として、今まで私が例外的に使用している製品には、レボリューションというお薬がありますが。これは、海外での使用開始から勘定すれば、既に⒛年くらいの副作用をほとんど聴かない形での使用実績がありますので。安全性については問題無くなっていると判断してのことであります。

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そんなわけで。今のところ、私はパノラミスやネクスガード、ブラベクトのような製品は。一応仕入れてあって、強く希望される飼い主様とか、マダニ寄生の激しい症例で、副作用の恐れよりもマダニによるバベシアやダニ熱などの感染の危険性が著しく高いと考えられる症例には処方することもありますが。

私の方から積極的にそれらのお薬を飼い主様にお勧めすることは当分無いと思います。

獣医療の世界でも、新薬が発売されて数年後には、副作用情報が出て来ますから。その情報に注視しておいて。もしかすると、何十万頭何百万頭の使用経験により、副作用の無い、あるいは著しく少ない良いお薬であると証明された暁には、お勧めするようになるかも知れません。

それまでは、ノミやマダニの防除は、しばらくの間フロントラインとかマイフリーガードのような滴下剤を使用していくつもりであります。

ではまた。

犬の気管虚脱

犬、特に小型犬の気管虚脱は、比較的診ることの多い疾患です。

今回の子は10才になるヨークシャーテリアの女の子ですが。 昨日から来客に吠えたりした後ひどく咳き込むという稟告で来院しました。

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胸部聴診では心雑音は無く。 呼吸音も特に異常は感じられません。 一応胸部エックス線検査を行ないました。

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すると、肺に空気を送る管状の構造である気管が赤い矢印の付近でつぶれているのが判りました。

この状態を気管虚脱といいまして。 呼吸するたびに空気が狭いところを通過しなければなりませんので。 まあ、例えて言えばストローで息を吸ったり吐いたりするような気分で苦しいのだと思います。

気管がつぶれる原因は、気管輪という軟骨のリングの弾力性が失われて腰が抜けたようになってしまうということですが。 やはり遺伝が関与するのではないか?と私は疑っています。

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この画像は別のわんちゃんのものですが。 気管虚脱がひどくて呼吸がひどく苦しくなったので、外科の専門の先生に気管を拡げるステンレスメッシュのステントを挿入してもらったものであります。

しかし、 このように外科的対応をしなければならない気管虚脱はむしろ少ない方でして。 ほとんどの気管虚脱は気管支拡張剤というお薬を内服することにより普段の生活に支障がない程度には呼吸が楽になることが多いです。 その場合、投薬は一生続くと考えなければなりません。

今回のヨークシャーテリアの子も、気管支拡張剤を処方して様子を見ることにしました。

投薬で症状が改善して元気になることを期待しているところであります。

ではまた。

未避妊の女の子の乳腺腫瘍

9才と8ヶ月令になるトイプードルの女の子の話しですが。

先日、左第3乳頭の際に小さな腫瘤があるということで来院されました。

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腫瘤は小さな物で、これ1個だけです。

しかし、未避妊であることとか考慮すると、乳腺腫瘍の可能性が高いと思います。

そもそも、犬の乳腺腫瘍は、統計的に良性と悪性の割り合いが半々で、更に悪性のうち約半数が転移や再発の起こりやすい悪性度の高い物であるとされています。そして、犬の乳腺腫瘍は、初めての発情の前に避妊手術を行なった牝犬に比べて避妊手術を行なっていない牝犬は約200倍の発生率であるということです。
更に、一般の腫瘤に対して実施する針吸引と細胞診という侵襲性の低い診断法は、乳腺腫瘍に限っては当てにならないと、腫瘍学の教科書には記載されております。

故に、乳腺の腫瘤が発見されたら、リンパの流れを考慮してなるべく広い範囲で乳腺を切除し、併せて卵巣子宮全摘出を実施して、切り取った乳腺については病理検査を行なって今後の対応を考えなければりません。

飼い主様にはその旨を説明して、左側乳腺を第3から第5まで3個切除することと、卵巣子宮全摘出をすることについて了解を得ました。

手術前の検査としては、採血して全血球計数、血液生化学検査15項目、血液凝固系検査を行なうと共に。胸部腹部のエックス線検査。コンピュータ解析装置付き心電図検査を行ないました。
いずれの検査でも特段の異常は見当たりませんでした。

4日後に、朝からお預かりして術前の静脈輸液を行ないますが。この子は少し激しいところがありまして。ケージ内でかなり暴れますので、静脈輸液が困難でした。

仕方なく、早い時間に静脈輸液を諦めまして。皮下輸液で水和状態を調節して。飼い主様に迎えに来てもらい。 午前は飼い主様と過ごしていただきました。

午後の1時過ぎに再度連れて来ていただき。 飼い主様にワンちゃんを安心させてもらいながら麻酔導入をします。

鎮静剤、鎮痛剤、抗生物質等の麻酔前の投薬も普通に実施出来て。 麻酔導入は昨年から使われるようになった、呼吸抑制心抑制が生じ難く安心感の強いアルファキサロンというお薬で行ないました。

 

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画像は麻酔導入後術野の毛刈りを済ませた段階のものです。 少し暗いですがワンちゃんの口の前に突き出ているのが気管チューブで、その先に緑色の物体が見えるのが人口鼻といって、麻酔ガスの湿度とか調整する器具です。両腋と右足に付いているクリップは心電図モニターの端子です。

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今から切皮するところです。

具体的に術中の画像は撮影してますが。見られて気分を悪くされる方も居られるかも知れませんので、途中省略します。

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で、これが縫合終了時の画像です。左第3から第5乳腺を切除しました。第5乳腺の最後部は性器の横まで伸びていますので、そこまで丁寧に分離して完全切除を目指しています。

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切除した子宮は、正常の状態ではなくて、内部に薄く白濁した液体が貯留してました。液体は一応細菌培養と薬剤感受性試験に供しましたが、細菌は生えませんでした。

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切除した乳腺です。これをホルマリンに漬けて病理検査に外注しました。

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麻酔覚醒後、朝のように騒ぎましたので、待機していただいていた飼い主様にしばらく抱っこしてもらい、落ち着いてからケージ内で休ませました。

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そうは言っても、麻酔から醒めて間無しはまだ鎮静剤が利いてますので、最初のパニック状態が落ち着けば、静かにまどろんでいます。
夕方6時には安定した状態でかなりはっきりして来ましたので、退院させました。

手術の後の動物は相当不安な気持ちになっているでしょうから、危険な状態でない限りなるべく自宅に帰って慣れた環境で夜を過ごしてもらった方が経過が良いように感じております。

病理検査に出した乳腺は、後日の報告で最初に見ていた腫瘤以外にも腫瘍成分が見つかったようですが。いずれも良性のものであるという結果でした。

今回の腫瘍は良性でしたが。犬の乳腺腫瘍は良性悪性の割合が半々で。悪性のうちの半数が悪性度高いという統計がありますので。 繁殖予定の無い伴侶犬の場合、なるべく早期に、最初の発情前に避妊手術を受けておくことをお勧めする次第であります。

とにかく、今回の件は無事に済んで良かったと思います。

ではまた。

 

 

 

犬の前十字靭帯断裂関節外修復手術

今回の症例は、9才になるヨークシャーテリアの男の子です。

この子は、腹腔内停留精巣を持っていたのを3才の時に摘出。4才半の時に肥満細胞腫を摘出し(しばらく抗がん剤で治療して、現在は再発無く完治と判断しています)。8才の頃に膵炎に罹り。その後膀胱結石を患って摘出手術を受け。その後結石の再発を防ぐ内科的療法を継続しているようなことで、いろいろ大変なことが続いたのですが。

今回は、散歩中に突然右後肢を地面に着かなくなったということで来院されました。

診察台の上で右後肢を拳上して立っているヨーキーちゃんを見て。前十字靭帯がいっているな?と直感します。

直感ばかりでやっていると誤診してしまいますので。きちんとエックス線検査をやって、診断を確定させます。

骨盤から股関節、大腿骨、膝関節、脛骨腓骨、踵の関節、足の甲の骨までひと通り眺めるように撮影しますが。特に異常は見られません。

であるならば。

膝の関節を横から撮影します。

自然な状態での横からの膝が。

すねの骨を前に押すようにストレスをかけて撮影すると。すねの骨が普通では有り得ないくらい前に出て映ります。

この時に、指の骨が映るのは、撮影する人間のX線被爆の観点から本当はNGなのですが。まあ、自分の手ですし。滅多に無い一枚だけですから。大丈夫でしょう。ただし、大学の先生には内緒です。

この最後の画像で前十字靭帯断裂の診断は確定です。

前十字靭帯は、人間だったら有名なスケーターとかスポーツ選手が事故で断裂することが多い組織で。すねの骨が前に出過ぎないように固定して、膝を安定させる役目を果たしています。
これが切れると、膝が不安定になって歩くことが難しくなり。そのままにしていると、半月板という軟骨組織が壊れてしまい。膝の痛みが激しくなります。

そんなわけで。ヨーキーちゃんは手術適応ということになってしまいました。

前十字靭帯断裂の修復手術には、いろいろな方法が報告されていますが。最近の私のマイブームは、関節外法というやり方です。

サージャンという獣医外科の専門誌から引用した関節外法の写真です。こんなイメージで修復するということです。

そんなわけで。損傷して5日後に手術を実施しました。

麻酔導入して。

術野の毛刈り剃毛をきちんとやって。その後に滅菌ドレープで術野を覆い。術者と助手は手洗い消毒、滅菌した術衣手袋の装着をやって。手術に臨みます。

途中省略して。

手術は終了しました。

入院室で回復させて。翌日からの化膿止め内服薬と、非ステロイド性消炎鎮痛内服薬を処方して、その日のうちに退院させます。

術後の経過確認は、翌日、7日後、14日後と行ないます。抜糸は14日後に行ない。その後は非ステロイド性消炎鎮痛剤を内服させながら。ボチボチコントロールされた歩行を実施して回復に努めます。

今のところ、この手術をやった子は、小型犬の場合割と回復が早いです。体重20キロを超えるような子は、術後半年くらいは歩行に違和感が残るようですが。それも半年以降は消失して快調に歩けているようです。

今日の手術も一応無事に終わりました。これも優秀なスタッフさんの協力の賜物です。感謝感謝であります。

ではまた。

こじれていたアレルギー性皮膚炎

お久し振りです。

今日の症例は、もうすぐ生後14才になる日本犬雑の男の子ですが。3才になる頃に皮膚に痒みと発疹脱毛が生じて。

近くの獣医さんで「草木アレルギー」と診断され。抗生物質とステロイド&抗ヒスタミン合剤、肝機能庇護剤の内服。外用剤として、ステロイドホルモンのスプレー、ステロイド&抗菌剤&抗真菌剤合剤軟膏という治療をずうっと継続して来たが。

全然改善せずで。今まで高級車が買えるくらいお金を使って来たということです。

この度グリーンピース動物病院を聴き合わせて転院されて来たそうですが。私にこの子の症状を改善させることが出来ますかどうか?

皮膚症状を見ると。

背部皮膚に脱毛が数ヶ所ありまして。両側鼠蹊部に赤色斑があります。最も辛いのが夜も眠れないほどの痒みということですから。

アレルギーを疑う以前に、まず痒みを生じる皮膚病を除外することから始めようと思います。

同時に、もう10年くらいステロイドホルモンとか内服を続けて来たということなので。採血して全血球計数検査、血液生化学検査を詳しくやります。

まず、皮膚に非常に強い痒みを生じさせる病気の代表格としての疥癬と、毛包虫を除外するために、皮膚掻き取り試験を実施します。鋭匙で掻き取った皮膚の組織をお薬で溶かして顕微鏡で詳しく観察しましたが、疥癬や毛包虫のような皮膚の寄生虫は見当たりませんでした。

血液検査では、総コレステロールとアルカリフォスファターゼが高値でしたが。これは長年のステロイドの内服に依るものと思われます。他に炎症マーカーである犬CRPが0.8mg/dlと、基準参考値をわずかに上回っていますが。これは皮膚炎に起因するものかも知れません。

脱毛が生じている部分の被毛を抜き取って、真菌培養検査の培地に植え付けて。脱毛部を滅菌生理食塩水で濡らした滅菌綿棒で入念に擦って、取った材料をミューラーヒントン寒天培地に塗り付けて。12種類の抗生物質についてどれが利くのかという薬剤感受性試験を院内で行ないます。

院内の薬剤感受性試験は翌日に結果が出ますので、それに基づいた適切な抗生物質を内服させます。また、真菌培養も3日後には皮膚糸状菌(人の水虫菌と同じようなカビ)が生えたという結果でしたので。1週間後から経口抗真菌剤の内服を開始しました。

この2種類のお薬の内服で、治療開始後3週間経過すると、掻いたり舐めたりという痒み症状が約70パーセントは改善したとのことです。

治療開始後3週間の時点で、動物アレルギー検査株式会社による「アレルギー強度試験」を実施しました。
やることは、採血して、冷蔵宅急便で検体を検査センターに送るだけのことですが。その子がアレルギーを生じやすい状態であるかどうかを正確に判断してくれると思ってやっています。

帰って来た返答は、下の画像の通りでした。

CCR4/CD4が高値であるということは。アレルギーの際に出現するリンパ球の数が多いということですから。その子がアレルギーを起こしやすい免疫状態と考えて良いのです。

アレルギー強度検査は検体を送って2日後には返事が来ましたから。結果が返って来た翌日にはこの結果を飼い主様にお伝えして。

いよいよ、血液中のアレルゲン特異的IgE(1型アレルギーの検査)とリンパ球反応検査(Ⅳ型アレルギーの検査)を行ないます。今回も採血して検体を動物アレルギー検査株式会社に冷蔵宅急便で送るだけです。

今回は、結果が返って来るまで1週間以上かかりました。

結果を見てちょっとびっくりしました。

アレルゲン特異的IgEもリンパ球反応検査も、調べた項目総てで陰性だったのです。

これはどういうことかというと。調べた項目以外の何かに反応してアレルギー反応が生じている可能性があるということなのかも知れません。

ただ、こうして検査をしている間にも、薬剤感受性試験と真菌培養検査に基づいた投薬を続けてましたが。わんちゃんはほとんど痒みを表現することなく。

皮膚病は治ったんちゃう?という素晴らしい状態になっております。

飼い主様も高額なアレルギー検査であっても。当面食べ物に関して大体はわんちゃんが好きな物を与えても心配ないという結果に喜びを感じているらしく。また、アトピーや花粉症も大体は否定されるということで、かなり安心されていました。

ただ、アレルギー強度試験では陽性であるのに。具体的なアレルゲン物質が特定出来なかったことについては。将来的に不安は残ります。

思うに、最初に治療した獣医師が、根拠不明な「草木アレルギー」という診断の元、2次的な病変である細菌感染に対して、ステロイドホルモンと共に薬剤耐性が生じやすい系統の抗生物質を漫然と長期間にわたり処方し続けたことなどが、この子の状態を悪化させていたのではないか?という疑いを捨て切れません。

細菌感染と言えば、過去に受講したセミナーでは、ブドウ球菌に対するアレルギーを持つ動物が存在するということを聴いたことがあります。動物アレルギー検査株式会社の検査では細菌及びその毒素については対象外になっていますので。確定は出来ませんが。
その場合には、薬剤感受性試験を繰り返しながら適切な抗生物質を処方しつつ、マラセブシャンプーとかノルバサンシャンプーのような抗菌剤入りシャンプーの使用などで細菌感染をコントロールして行かなければならないでしょう。

現在このわんちゃんは、状態良好につきステロイドホルモンを処方せずに。抗生物質も打ち切って、マラセブシャンプーで週に1回洗浄するだけで経過を見ているようなことであります。

今後については不明な点もありますが。このまま痒みを感じることなく生活出来れば良いと思います。

特に皮膚病の症例では、他院からの転院の子で、疥癬や毛包虫の見落としとか、細菌の2次感染への対応のまずさから不必要に状態が悪化している例が目立つように感じられます。

ある症例なんか、2軒受診した動物病院の2軒共が、その子の皮膚を見るなり、「これはマラセチアだ。」と検査も無しに断定して、数年間延々と同じお薬を処方し続けていたのですが。全然改善しなくて。
私は、症例の皮膚を見ただけでそれをマラセチアと断定出来るほどの知識を持ち合わせていませんので、一からということで皮膚掻き取り試験を行なったところ、毛包虫が検出されて、薬剤感受性試験に基づく適切な抗生物質の投与と共に毛包虫の治療を行なったところ皮膚症状は著しく改善したものであります。

まあ、そうは言っても。私自身の症例も。もしかして私の見落としを他院で指摘されているようなこともあるかも知れません。

持って他山の石として。気を引き締めて日々の診療に当たりたいと思います。

ではまた。

 

 

 

 

犬のアトピー性皮膚炎に対する減感作療法

アトピー性皮膚炎は、アレルギー疾患のひとつと考えて良い皮膚疾患です。

皮膚に痒みなどの症状を起こすアレルギー性皮膚炎は、アトピー性皮膚炎以外にIgEという抗体が関与する食物アレルギー(1型アレルギー)と、リンパ球が直接反応する以前は食物有害反応と呼んでいたⅣ型アレルギーとがあります。

アトピー性皮膚炎の診断は、簡単なようで難しいところがありまして。食物アレルギーも含めて、細菌性皮膚炎、真菌性皮膚炎、寄生虫性皮膚炎(疥癬、毛包虫症、蚤アレルギー)などの他の病気を正確に除外して初めてアトピー性皮膚炎と呼ぶことが出来るのですが。

他院の例ですが。診療の最初にアレルギーもあったと思うのですが。2次的な細菌感染と真菌感染に対する対応が甘くて、細菌が耐性を獲得して全然利かなくなっている抗生物質とステロイドを何年もの間漫然と投与し続けている症例が転院して来る例が結構多くあります。

私の場合。アレルギーかどうか怪しいと思われるわんこが来院した時には。その子に他院での治療歴が無い場合にはなるべく早くに。他院での治療歴があって、しかもステロイドホルモンの内服薬を処方されている子の場合には、ステロイドホルモンを休薬して症状が強く出るようになった時点、あるいは4週間から最長で6週間経過してステロイドの影響が消失したと思えるようになった時点で。動物アレルギー検査株式会社のやっているアレルギー強度試験を実施して。その子の皮膚症状がアレルギーで生じているかどうかの鑑別を行なうことを心掛けています。

動物アレルギー検査株式会社のアレルギー検査には、最初に行なうアレルギー強度試験以外に、アレルゲン特異的IgE検査とリンパ球反応試験がありまして。

アレルゲン特異的IgE検査は1型アレルギーを調べて。リンパ球反応試験は、食物に対するⅣ型アレルギーを調べる試験ですが。リンパ球反応試験は普通に犬の食事に含まれている成分を調べる、「主要食物アレルゲン試験」とドッグフードメーカーがアレルギー対応食として販売しているフードに含まれている成分を調べる「除去食アレルゲン試験」とがあります。

いろいろ調べて行くと、アレルゲン除去食と銘打って販売している食事を食べ続けていたわんこが、その食事に含まれていたジャガイモとか米に対して非常に強い反応を示す症例も何例かありました。

そんなこんなでアレルギー性皮膚炎を治療しながら診断して行く感じで診て行って。

いろいろ除外診断をした結果、その子がアトピー性皮膚炎であると診断がついた際に。選択出来る治療法としては。

従来は、1、副腎皮質ステロイドホルモンのお薬。2、抗ヒスタミン剤。3、シクロスポリンという免疫抑制剤。4インターフェロン(免疫のバランス調整の注射)という方法を、それぞれ単独あるいは組み合わせで使用していたのですが。

昨年から減感作療法という方法が、比較的簡単に使えるようになりました。

減感作療法は、今まででも米国の会社が検査と注射薬を提供してくれる体制はあったのですが。費用が半端でないことと、副作用が心配なこと。それに最初の間の注射の頻度がほぼ毎日であって、飼い主様がついて来れない治療法だったので、私は従来型減感作療法は最初から勘定に入れていませんでした。

昨年から利用出来る新しい減感作療法は、最初に除外診断でアトピー性皮膚炎と診断出来れば。

メーカーが提供する血清IgE抗体検査を実施して、その注射薬が利くのかどうかという確認を行なって。

注射は、週に1回の頻度で6回だけという非常に簡単なものであります。

今まで当院で、この減感作療法を実施したのは、まだ3頭だけですが。その3頭は今まで出し続けていたステロイドホルモンを休薬することが出来ています。また心配される副作用も、注射薬調整の際に生じ難く加工されていることもあってか?今のところこの3頭では全く生じませんでした。

ただ、従来型減感作療法を見聞きして来た者としてどうかな?と思う点は。従来型が最終的には月に1回なりともずうっと注射を続けなければならないのに対して。新しい治療法は6回こっきりで注射を終了してしまいますので。アトピー性皮膚炎の再発が本当に無いのか?ということくらいです。
再発が生じないとすれば、アトピー性皮膚炎が根治出来るということですから、本当に素晴らしい画期的なことだと思います。

今年も夏になって、アトピー性皮膚炎が悪化する季節がやって来ました。1頭でも多くのわんこがこの素晴らしい治療法の恩恵を受けて、痒みの無い幸せな生活を送れるようになれたらよいと思います。

 

子犬の食事量について

もうすぐ生後4ヶ月令になろうかというウェルシュ・コーギの男の子の話しですが。

目やにが多いので診て欲しいということで来院されました。

しかし、診察台上の子を見ると、異常に痩せています。

画像ではそんなに感じられないのかも知れませんが。それは被毛で覆われているせいで。手で身体を触ってみると、背骨は立っているし、肋骨も浮いているし、骨盤も突き出ているのが感じられるのです。

「この子は食が細い(食べる量が少ない)のですか?」と訊くと。

「もっと欲しそうにするんですが。買う時にペットショップの人が『この量を与えて下さい。』と言われた量を守って与えています。」との返事でした。

一瞬。めまいを感じてしまいました。カルテの記載を見ると飼育開始が生後約3ヶ月令の時ですから。その時の食事量を厳密に守っていれば、成長と共に食事の必要量が増えて行くのが生き物の子供の原則ですから。明らかに栄養不足であります。

ペットショップの店員さんの言い方がよほどきつかったのか?言われた量が完璧なマニュアルとして受け取られてしまったのかも知れませんね。

なお、目やにが多いのも、栄養失調の結果かも知れません。

飼い主様にはそのことをお話しして理解していただき。子犬の成長に合わせた食事量の決定法をお伝えしました。

私が用いている子犬の食事量の決め方ですが。基本的に食欲の程度と便の硬さを基準に考えています。

まず、子犬が来た時には。最初はそれまで世話をしていた人に伝えられた量の食事を与えます。
子犬が与えられた食事をあっという間に食べ終えて。その数時間後のお便がしっかりと硬いものであれば。
次から、食事毎にその量を5%から10%ずつ増やして行って。ある量を超えて便の状態が軟便になったら。
そのひとつ前の食事量がその子の消化能力の限界と考えて。その量あるいはそれよりひとつ前の量を与えるようにして。
成長と共に便の状態が微妙に硬く感じられるようになったら。もう一度量を増やしてみるということを繰り返すのです。

この方法は、まず検便や駆虫でお腹に消化器性寄生虫が居ないということが大前提であります。

基本的に、よほど特殊な例でない限り。成長期の子犬に肥満を用心しなければならないということはないと思います。

なお、小型犬の場合。往々にしてペットショップの店員が、「多く食べさせると大きくなり過ぎますから注意して下さい。」と説明することがあるようですが。

ショウドッグならばいざ知らず。一般的な家庭犬の場合は体格がスタンダードの範囲内に収まることよりも。健康で知能が高くお利口な犬に育つことの方がもっと重要だと思います。

基本的に犬の体格(骨格)は、持って生まれた資質。即ち遺伝情報でプログラムされた範囲内までしか大きくなることはありません。沢山食べさせて大きく育ってしまうということは大きくなってしまう遺伝情報の持ち主だったというだけのことだと思いますし。大きく育った小型犬が家庭犬として失格だとも思いません。

人間で「大きく育ったら駄目だ。」言われるのは競馬の騎手とか体重に制限のあるボクサーくらいのものでしょうし。そんな人でも小学生の頃はしっかり食べて健康に育つようにと、ご両親は愛情を込めて食べさせていると思います。

基本的に子犬も人間と同じです。成長に応じてその時その時に最適な食事の質と量を確保して、健康で賢い良い伴侶犬に育ててやって欲しいと思います。