兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 院長ブログ

院長ブログ

未避妊の女の子の乳腺腫瘍

9才と8ヶ月令になるトイプードルの女の子の話しですが。

先日、左第3乳頭の際に小さな腫瘤があるということで来院されました。

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腫瘤は小さな物で、これ1個だけです。

しかし、未避妊であることとか考慮すると、乳腺腫瘍の可能性が高いと思います。

そもそも、犬の乳腺腫瘍は、統計的に良性と悪性の割り合いが半々で、更に悪性のうち約半数が転移や再発の起こりやすい悪性度の高い物であるとされています。そして、犬の乳腺腫瘍は、初めての発情の前に避妊手術を行なった牝犬に比べて避妊手術を行なっていない牝犬は約200倍の発生率であるということです。
更に、一般の腫瘤に対して実施する針吸引と細胞診という侵襲性の低い診断法は、乳腺腫瘍に限っては当てにならないと、腫瘍学の教科書には記載されております。

故に、乳腺の腫瘤が発見されたら、リンパの流れを考慮してなるべく広い範囲で乳腺を切除し、併せて卵巣子宮全摘出を実施して、切り取った乳腺については病理検査を行なって今後の対応を考えなければりません。

飼い主様にはその旨を説明して、左側乳腺を第3から第5まで3個切除することと、卵巣子宮全摘出をすることについて了解を得ました。

手術前の検査としては、採血して全血球計数、血液生化学検査15項目、血液凝固系検査を行なうと共に。胸部腹部のエックス線検査。コンピュータ解析装置付き心電図検査を行ないました。
いずれの検査でも特段の異常は見当たりませんでした。

4日後に、朝からお預かりして術前の静脈輸液を行ないますが。この子は少し激しいところがありまして。ケージ内でかなり暴れますので、静脈輸液が困難でした。

仕方なく、早い時間に静脈輸液を諦めまして。皮下輸液で水和状態を調節して。飼い主様に迎えに来てもらい。 午前は飼い主様と過ごしていただきました。

午後の1時過ぎに再度連れて来ていただき。 飼い主様にワンちゃんを安心させてもらいながら麻酔導入をします。

鎮静剤、鎮痛剤、抗生物質等の麻酔前の投薬も普通に実施出来て。 麻酔導入は昨年から使われるようになった、呼吸抑制心抑制が生じ難く安心感の強いアルファキサロンというお薬で行ないました。

 

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画像は麻酔導入後術野の毛刈りを済ませた段階のものです。 少し暗いですがワンちゃんの口の前に突き出ているのが気管チューブで、その先に緑色の物体が見えるのが人口鼻といって、麻酔ガスの湿度とか調整する器具です。両腋と右足に付いているクリップは心電図モニターの端子です。

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今から切皮するところです。

具体的に術中の画像は撮影してますが。見られて気分を悪くされる方も居られるかも知れませんので、途中省略します。

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で、これが縫合終了時の画像です。左第3から第5乳腺を切除しました。第5乳腺の最後部は性器の横まで伸びていますので、そこまで丁寧に分離して完全切除を目指しています。

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切除した子宮は、正常の状態ではなくて、内部に薄く白濁した液体が貯留してました。液体は一応細菌培養と薬剤感受性試験に供しましたが、細菌は生えませんでした。

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切除した乳腺です。これをホルマリンに漬けて病理検査に外注しました。

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麻酔覚醒後、朝のように騒ぎましたので、待機していただいていた飼い主様にしばらく抱っこしてもらい、落ち着いてからケージ内で休ませました。

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そうは言っても、麻酔から醒めて間無しはまだ鎮静剤が利いてますので、最初のパニック状態が落ち着けば、静かにまどろんでいます。
夕方6時には安定した状態でかなりはっきりして来ましたので、退院させました。

手術の後の動物は相当不安な気持ちになっているでしょうから、危険な状態でない限りなるべく自宅に帰って慣れた環境で夜を過ごしてもらった方が経過が良いように感じております。

病理検査に出した乳腺は、後日の報告で最初に見ていた腫瘤以外にも腫瘍成分が見つかったようですが。いずれも良性のものであるという結果でした。

今回の腫瘍は良性でしたが。犬の乳腺腫瘍は良性悪性の割合が半々で。悪性のうちの半数が悪性度高いという統計がありますので。 繁殖予定の無い伴侶犬の場合、なるべく早期に、最初の発情前に避妊手術を受けておくことをお勧めする次第であります。

とにかく、今回の件は無事に済んで良かったと思います。

ではまた。

 

 

 

犬の前十字靭帯断裂関節外修復手術

今回の症例は、9才になるヨークシャーテリアの男の子です。

この子は、腹腔内停留精巣を持っていたのを3才の時に摘出。4才半の時に肥満細胞腫を摘出し(しばらく抗がん剤で治療して、現在は再発無く完治と判断しています)。8才の頃に膵炎に罹り。その後膀胱結石を患って摘出手術を受け。その後結石の再発を防ぐ内科的療法を継続しているようなことで、いろいろ大変なことが続いたのですが。

今回は、散歩中に突然右後肢を地面に着かなくなったということで来院されました。

診察台の上で右後肢を拳上して立っているヨーキーちゃんを見て。前十字靭帯がいっているな?と直感します。

直感ばかりでやっていると誤診してしまいますので。きちんとエックス線検査をやって、診断を確定させます。

骨盤から股関節、大腿骨、膝関節、脛骨腓骨、踵の関節、足の甲の骨までひと通り眺めるように撮影しますが。特に異常は見られません。

であるならば。

膝の関節を横から撮影します。

自然な状態での横からの膝が。

すねの骨を前に押すようにストレスをかけて撮影すると。すねの骨が普通では有り得ないくらい前に出て映ります。

この時に、指の骨が映るのは、撮影する人間のX線被爆の観点から本当はNGなのですが。まあ、自分の手ですし。滅多に無い一枚だけですから。大丈夫でしょう。ただし、大学の先生には内緒です。

この最後の画像で前十字靭帯断裂の診断は確定です。

前十字靭帯は、人間だったら有名なスケーターとかスポーツ選手が事故で断裂することが多い組織で。すねの骨が前に出過ぎないように固定して、膝を安定させる役目を果たしています。
これが切れると、膝が不安定になって歩くことが難しくなり。そのままにしていると、半月板という軟骨組織が壊れてしまい。膝の痛みが激しくなります。

そんなわけで。ヨーキーちゃんは手術適応ということになってしまいました。

前十字靭帯断裂の修復手術には、いろいろな方法が報告されていますが。最近の私のマイブームは、関節外法というやり方です。

サージャンという獣医外科の専門誌から引用した関節外法の写真です。こんなイメージで修復するということです。

そんなわけで。損傷して5日後に手術を実施しました。

麻酔導入して。

術野の毛刈り剃毛をきちんとやって。その後に滅菌ドレープで術野を覆い。術者と助手は手洗い消毒、滅菌した術衣手袋の装着をやって。手術に臨みます。

途中省略して。

手術は終了しました。

入院室で回復させて。翌日からの化膿止め内服薬と、非ステロイド性消炎鎮痛内服薬を処方して、その日のうちに退院させます。

術後の経過確認は、翌日、7日後、14日後と行ないます。抜糸は14日後に行ない。その後は非ステロイド性消炎鎮痛剤を内服させながら。ボチボチコントロールされた歩行を実施して回復に努めます。

今のところ、この手術をやった子は、小型犬の場合割と回復が早いです。体重20キロを超えるような子は、術後半年くらいは歩行に違和感が残るようですが。それも半年以降は消失して快調に歩けているようです。

今日の手術も一応無事に終わりました。これも優秀なスタッフさんの協力の賜物です。感謝感謝であります。

ではまた。

こじれていたアレルギー性皮膚炎

お久し振りです。

今日の症例は、もうすぐ生後14才になる日本犬雑の男の子ですが。3才になる頃に皮膚に痒みと発疹脱毛が生じて。

近くの獣医さんで「草木アレルギー」と診断され。抗生物質とステロイド&抗ヒスタミン合剤、肝機能庇護剤の内服。外用剤として、ステロイドホルモンのスプレー、ステロイド&抗菌剤&抗真菌剤合剤軟膏という治療をずうっと継続して来たが。

全然改善せずで。今まで高級車が買えるくらいお金を使って来たということです。

この度グリーンピース動物病院を聴き合わせて転院されて来たそうですが。私にこの子の症状を改善させることが出来ますかどうか?

皮膚症状を見ると。

背部皮膚に脱毛が数ヶ所ありまして。両側鼠蹊部に赤色斑があります。最も辛いのが夜も眠れないほどの痒みということですから。

アレルギーを疑う以前に、まず痒みを生じる皮膚病を除外することから始めようと思います。

同時に、もう10年くらいステロイドホルモンとか内服を続けて来たということなので。採血して全血球計数検査、血液生化学検査を詳しくやります。

まず、皮膚に非常に強い痒みを生じさせる病気の代表格としての疥癬と、毛包虫を除外するために、皮膚掻き取り試験を実施します。鋭匙で掻き取った皮膚の組織をお薬で溶かして顕微鏡で詳しく観察しましたが、疥癬や毛包虫のような皮膚の寄生虫は見当たりませんでした。

血液検査では、総コレステロールとアルカリフォスファターゼが高値でしたが。これは長年のステロイドの内服に依るものと思われます。他に炎症マーカーである犬CRPが0.8mg/dlと、基準参考値をわずかに上回っていますが。これは皮膚炎に起因するものかも知れません。

脱毛が生じている部分の被毛を抜き取って、真菌培養検査の培地に植え付けて。脱毛部を滅菌生理食塩水で濡らした滅菌綿棒で入念に擦って、取った材料をミューラーヒントン寒天培地に塗り付けて。12種類の抗生物質についてどれが利くのかという薬剤感受性試験を院内で行ないます。

院内の薬剤感受性試験は翌日に結果が出ますので、それに基づいた適切な抗生物質を内服させます。また、真菌培養も3日後には皮膚糸状菌(人の水虫菌と同じようなカビ)が生えたという結果でしたので。1週間後から経口抗真菌剤の内服を開始しました。

この2種類のお薬の内服で、治療開始後3週間経過すると、掻いたり舐めたりという痒み症状が約70パーセントは改善したとのことです。

治療開始後3週間の時点で、動物アレルギー検査株式会社による「アレルギー強度試験」を実施しました。
やることは、採血して、冷蔵宅急便で検体を検査センターに送るだけのことですが。その子がアレルギーを生じやすい状態であるかどうかを正確に判断してくれると思ってやっています。

帰って来た返答は、下の画像の通りでした。

CCR4/CD4が高値であるということは。アレルギーの際に出現するリンパ球の数が多いということですから。その子がアレルギーを起こしやすい免疫状態と考えて良いのです。

アレルギー強度検査は検体を送って2日後には返事が来ましたから。結果が返って来た翌日にはこの結果を飼い主様にお伝えして。

いよいよ、血液中のアレルゲン特異的IgE(1型アレルギーの検査)とリンパ球反応検査(Ⅳ型アレルギーの検査)を行ないます。今回も採血して検体を動物アレルギー検査株式会社に冷蔵宅急便で送るだけです。

今回は、結果が返って来るまで1週間以上かかりました。

結果を見てちょっとびっくりしました。

アレルゲン特異的IgEもリンパ球反応検査も、調べた項目総てで陰性だったのです。

これはどういうことかというと。調べた項目以外の何かに反応してアレルギー反応が生じている可能性があるということなのかも知れません。

ただ、こうして検査をしている間にも、薬剤感受性試験と真菌培養検査に基づいた投薬を続けてましたが。わんちゃんはほとんど痒みを表現することなく。

皮膚病は治ったんちゃう?という素晴らしい状態になっております。

飼い主様も高額なアレルギー検査であっても。当面食べ物に関して大体はわんちゃんが好きな物を与えても心配ないという結果に喜びを感じているらしく。また、アトピーや花粉症も大体は否定されるということで、かなり安心されていました。

ただ、アレルギー強度試験では陽性であるのに。具体的なアレルゲン物質が特定出来なかったことについては。将来的に不安は残ります。

思うに、最初に治療した獣医師が、根拠不明な「草木アレルギー」という診断の元、2次的な病変である細菌感染に対して、ステロイドホルモンと共に薬剤耐性が生じやすい系統の抗生物質を漫然と長期間にわたり処方し続けたことなどが、この子の状態を悪化させていたのではないか?という疑いを捨て切れません。

細菌感染と言えば、過去に受講したセミナーでは、ブドウ球菌に対するアレルギーを持つ動物が存在するということを聴いたことがあります。動物アレルギー検査株式会社の検査では細菌及びその毒素については対象外になっていますので。確定は出来ませんが。
その場合には、薬剤感受性試験を繰り返しながら適切な抗生物質を処方しつつ、マラセブシャンプーとかノルバサンシャンプーのような抗菌剤入りシャンプーの使用などで細菌感染をコントロールして行かなければならないでしょう。

現在このわんちゃんは、状態良好につきステロイドホルモンを処方せずに。抗生物質も打ち切って、マラセブシャンプーで週に1回洗浄するだけで経過を見ているようなことであります。

今後については不明な点もありますが。このまま痒みを感じることなく生活出来れば良いと思います。

特に皮膚病の症例では、他院からの転院の子で、疥癬や毛包虫の見落としとか、細菌の2次感染への対応のまずさから不必要に状態が悪化している例が目立つように感じられます。

ある症例なんか、2軒受診した動物病院の2軒共が、その子の皮膚を見るなり、「これはマラセチアだ。」と検査も無しに断定して、数年間延々と同じお薬を処方し続けていたのですが。全然改善しなくて。
私は、症例の皮膚を見ただけでそれをマラセチアと断定出来るほどの知識を持ち合わせていませんので、一からということで皮膚掻き取り試験を行なったところ、毛包虫が検出されて、薬剤感受性試験に基づく適切な抗生物質の投与と共に毛包虫の治療を行なったところ皮膚症状は著しく改善したものであります。

まあ、そうは言っても。私自身の症例も。もしかして私の見落としを他院で指摘されているようなこともあるかも知れません。

持って他山の石として。気を引き締めて日々の診療に当たりたいと思います。

ではまた。

 

 

 

 

犬のアトピー性皮膚炎に対する減感作療法

アトピー性皮膚炎は、アレルギー疾患のひとつと考えて良い皮膚疾患です。

皮膚に痒みなどの症状を起こすアレルギー性皮膚炎は、アトピー性皮膚炎以外にIgEという抗体が関与する食物アレルギー(1型アレルギー)と、リンパ球が直接反応する以前は食物有害反応と呼んでいたⅣ型アレルギーとがあります。

アトピー性皮膚炎の診断は、簡単なようで難しいところがありまして。食物アレルギーも含めて、細菌性皮膚炎、真菌性皮膚炎、寄生虫性皮膚炎(疥癬、毛包虫症、蚤アレルギー)などの他の病気を正確に除外して初めてアトピー性皮膚炎と呼ぶことが出来るのですが。

他院の例ですが。診療の最初にアレルギーもあったと思うのですが。2次的な細菌感染と真菌感染に対する対応が甘くて、細菌が耐性を獲得して全然利かなくなっている抗生物質とステロイドを何年もの間漫然と投与し続けている症例が転院して来る例が結構多くあります。

私の場合。アレルギーかどうか怪しいと思われるわんこが来院した時には。その子に他院での治療歴が無い場合にはなるべく早くに。他院での治療歴があって、しかもステロイドホルモンの内服薬を処方されている子の場合には、ステロイドホルモンを休薬して症状が強く出るようになった時点、あるいは4週間から最長で6週間経過してステロイドの影響が消失したと思えるようになった時点で。動物アレルギー検査株式会社のやっているアレルギー強度試験を実施して。その子の皮膚症状がアレルギーで生じているかどうかの鑑別を行なうことを心掛けています。

動物アレルギー検査株式会社のアレルギー検査には、最初に行なうアレルギー強度試験以外に、アレルゲン特異的IgE検査とリンパ球反応試験がありまして。

アレルゲン特異的IgE検査は1型アレルギーを調べて。リンパ球反応試験は、食物に対するⅣ型アレルギーを調べる試験ですが。リンパ球反応試験は普通に犬の食事に含まれている成分を調べる、「主要食物アレルゲン試験」とドッグフードメーカーがアレルギー対応食として販売しているフードに含まれている成分を調べる「除去食アレルゲン試験」とがあります。

いろいろ調べて行くと、アレルゲン除去食と銘打って販売している食事を食べ続けていたわんこが、その食事に含まれていたジャガイモとか米に対して非常に強い反応を示す症例も何例かありました。

そんなこんなでアレルギー性皮膚炎を治療しながら診断して行く感じで診て行って。

いろいろ除外診断をした結果、その子がアトピー性皮膚炎であると診断がついた際に。選択出来る治療法としては。

従来は、1、副腎皮質ステロイドホルモンのお薬。2、抗ヒスタミン剤。3、シクロスポリンという免疫抑制剤。4インターフェロン(免疫のバランス調整の注射)という方法を、それぞれ単独あるいは組み合わせで使用していたのですが。

昨年から減感作療法という方法が、比較的簡単に使えるようになりました。

減感作療法は、今まででも米国の会社が検査と注射薬を提供してくれる体制はあったのですが。費用が半端でないことと、副作用が心配なこと。それに最初の間の注射の頻度がほぼ毎日であって、飼い主様がついて来れない治療法だったので、私は従来型減感作療法は最初から勘定に入れていませんでした。

昨年から利用出来る新しい減感作療法は、最初に除外診断でアトピー性皮膚炎と診断出来れば。

メーカーが提供する血清IgE抗体検査を実施して、その注射薬が利くのかどうかという確認を行なって。

注射は、週に1回の頻度で6回だけという非常に簡単なものであります。

今まで当院で、この減感作療法を実施したのは、まだ3頭だけですが。その3頭は今まで出し続けていたステロイドホルモンを休薬することが出来ています。また心配される副作用も、注射薬調整の際に生じ難く加工されていることもあってか?今のところこの3頭では全く生じませんでした。

ただ、従来型減感作療法を見聞きして来た者としてどうかな?と思う点は。従来型が最終的には月に1回なりともずうっと注射を続けなければならないのに対して。新しい治療法は6回こっきりで注射を終了してしまいますので。アトピー性皮膚炎の再発が本当に無いのか?ということくらいです。
再発が生じないとすれば、アトピー性皮膚炎が根治出来るということですから、本当に素晴らしい画期的なことだと思います。

今年も夏になって、アトピー性皮膚炎が悪化する季節がやって来ました。1頭でも多くのわんこがこの素晴らしい治療法の恩恵を受けて、痒みの無い幸せな生活を送れるようになれたらよいと思います。

 

子犬の食事量について

もうすぐ生後4ヶ月令になろうかというウェルシュ・コーギの男の子の話しですが。

目やにが多いので診て欲しいということで来院されました。

しかし、診察台上の子を見ると、異常に痩せています。

画像ではそんなに感じられないのかも知れませんが。それは被毛で覆われているせいで。手で身体を触ってみると、背骨は立っているし、肋骨も浮いているし、骨盤も突き出ているのが感じられるのです。

「この子は食が細い(食べる量が少ない)のですか?」と訊くと。

「もっと欲しそうにするんですが。買う時にペットショップの人が『この量を与えて下さい。』と言われた量を守って与えています。」との返事でした。

一瞬。めまいを感じてしまいました。カルテの記載を見ると飼育開始が生後約3ヶ月令の時ですから。その時の食事量を厳密に守っていれば、成長と共に食事の必要量が増えて行くのが生き物の子供の原則ですから。明らかに栄養不足であります。

ペットショップの店員さんの言い方がよほどきつかったのか?言われた量が完璧なマニュアルとして受け取られてしまったのかも知れませんね。

なお、目やにが多いのも、栄養失調の結果かも知れません。

飼い主様にはそのことをお話しして理解していただき。子犬の成長に合わせた食事量の決定法をお伝えしました。

私が用いている子犬の食事量の決め方ですが。基本的に食欲の程度と便の硬さを基準に考えています。

まず、子犬が来た時には。最初はそれまで世話をしていた人に伝えられた量の食事を与えます。
子犬が与えられた食事をあっという間に食べ終えて。その数時間後のお便がしっかりと硬いものであれば。
次から、食事毎にその量を5%から10%ずつ増やして行って。ある量を超えて便の状態が軟便になったら。
そのひとつ前の食事量がその子の消化能力の限界と考えて。その量あるいはそれよりひとつ前の量を与えるようにして。
成長と共に便の状態が微妙に硬く感じられるようになったら。もう一度量を増やしてみるということを繰り返すのです。

この方法は、まず検便や駆虫でお腹に消化器性寄生虫が居ないということが大前提であります。

基本的に、よほど特殊な例でない限り。成長期の子犬に肥満を用心しなければならないということはないと思います。

なお、小型犬の場合。往々にしてペットショップの店員が、「多く食べさせると大きくなり過ぎますから注意して下さい。」と説明することがあるようですが。

ショウドッグならばいざ知らず。一般的な家庭犬の場合は体格がスタンダードの範囲内に収まることよりも。健康で知能が高くお利口な犬に育つことの方がもっと重要だと思います。

基本的に犬の体格(骨格)は、持って生まれた資質。即ち遺伝情報でプログラムされた範囲内までしか大きくなることはありません。沢山食べさせて大きく育ってしまうということは大きくなってしまう遺伝情報の持ち主だったというだけのことだと思いますし。大きく育った小型犬が家庭犬として失格だとも思いません。

人間で「大きく育ったら駄目だ。」言われるのは競馬の騎手とか体重に制限のあるボクサーくらいのものでしょうし。そんな人でも小学生の頃はしっかり食べて健康に育つようにと、ご両親は愛情を込めて食べさせていると思います。

基本的に子犬も人間と同じです。成長に応じてその時その時に最適な食事の質と量を確保して、健康で賢い良い伴侶犬に育ててやって欲しいと思います。

 

 

外猫生活の危険性

今年16才になる日本猫の女の子の話しですが。

この子は8才の頃急に元気食欲低下を訴えて来院し。血液検査で猫免疫不全ウィルス(通称猫エイズウィルス)に感染していることが判明しています。

その後、それなりに元気に自由奔放な外猫生活を謳歌しているのですが。

3日前に飼い主様が以前にも経験している膀胱炎症状を呈しているということで来院され。お薬を処方したところ。

今朝は本猫を連れて来院され。投薬した後こんな物を吐いたと。ジップロックのポリエチレン袋を出されました。

猫回虫が入ってました。

猫回虫は人間にも感染する可能性があることとか。人間でも幼児が感染すると回虫幼虫体内移行症になる可能性もあることなどお話しして。

プロフェンダースポットという滴下式の駆虫薬を猫ちゃんの首筋に垂らしてやりました。

この度の感染は、これで駆虫出来ると思いますが。

この子が活動するエリアは、回虫卵に汚染されているとせねばなりませんから。当然再感染の可能性は高いと考えられます。

同居しているお孫さんの健康のこととか考えると。猫ちゃんが外に遊びに行くことを制限することが最も有効な対策であるとは思いますが。飼い主様は猫ちゃんの自由を制限することは考えられないみたいです。

また、定期的な検便をとも思うのですが。外での排泄が習慣化しているので便の採取は不可能だとのこと。

せめて、滴下剤による定期的な駆虫をされたらどうか?とお伝えしています。プロフェンダースポットのメーカーは年に4回の定期的駆虫を推奨しております。

自由なアウトドア生活は、危険と隣り合わせです。

外出自由な猫ちゃんと外出は皆無で家の中のみでの生活の猫ちゃんとで寿命の統計を取ったところ、家の中だけでの生活の猫ちゃんの方が3年は寿命が長いという結果が出たとの新聞記事を記憶しております。
総理府でも猫の室内飼いをするようにという方針ですし。

猫は避妊去勢を実施して室内で生活させるように子猫の頃から習慣づけてやれば、出れないからといってストレスを感じることもないと思いますので。

「猫は外に出るもの」とお考えの飼い主様においては、今一度考え直していただきたいと切に思うものであります。

ではまた。

犬の子宮蓄膿症

8才と8ヶ月令になるミニチュアシュナウザーの女の子のなっちゃんの話しですが。

飼い主様はなっちゃんの子が欲しかったとのことで、避妊手術をせずにこの齢まで来ましたが。肝心の子供の方は、発情が微弱で判らなかったらしく、交配をするに至らなかったそうです。

ところが。この度の来院の約1週間前から食欲がひどく低下して。2日前から下り物が出るようになったということで、来院されました。

これは多分子宮蓄膿症であろうと思うのですが。あまりにも先入観をもって事を進めて、致命的な誤診に陥っても困りますので。

血液検査、腹部エックス線検査を行ないます。

血液検査では、白血球数の増加。特に好中球数と単球数の増加が著しく。軽い貧血があります。血液生化学検査では血液総蛋白の増加と、犬CRPの高値が目立つ異常でした。

白血球数、特に好中球と単球の増加、及び炎症マーカーである犬CRPの高値は体内に炎症が存在しているということを示唆しております。血液総蛋白の増加は、継続する抗原刺激によって免疫抗体が増加しているということなのかも?知れません。

となると、経過は結構長い?

腹部エックス線検査では。

横から撮った画像では、お腹の中央部分に白く大きなマスが見えています。

画像が小さいので判り難いかも知れませんが。小腸のガスが画面向かって左と上に押しやられています。

子宮が膨れて蛇行している陰影がはっきりと確認出来ているわけではありませんので。腹部エコー検査を行ないました。

画面やや右側にくっきり真っ黒に見える逆台形みたいな像が膀胱でして。その左側に見えているのが膿で充満された子宮かな?という感じです。

それで、その像を辿ってみます。

ぶっとい筒状の構造が前の方に延びて行っております。そして、それは2本存在してました。

以上で子宮蓄膿症の診断確定です。

私の場合、子宮蓄膿症と診断を付けたら、動物の状態が許す限りなるべく早期の手術を行なう方針で臨みます。

この子の場合も、残業してその日のうちに手術を実施しました。

手術までの数時間、静脈カテーテルより乳酸リンゲルの輸液を行ないます。

外来診療の時間が終了したら、すぐに麻酔導入を行ない。術野の毛刈り、消毒、術者、助手の手洗い消毒、術衣と手袋の装着と、手術の準備をどんどん進めて行きます。

で、お腹を開けて見ると。こんな物が出て来ました。

アップすると。

こんな感じです。大きな子宮です。普通に正常な子宮は、この子のサイズの犬だったら、ボールペンくらいの太さで長さはボールペンよりも少し短いくらいでしょうか?

摘出した子宮は、無菌的にちょいと突いて。出て来た膿を使って細菌培養と薬剤感受性試験を行ないます。

膿の色が気持ち悪いです。

術中に血液酸素飽和度が若干低下気味で不安になる時間もありましたが。何とか手術は終了。画像は丁度覚醒して気管チューブを抜く瞬間です。

麻酔から覚醒して入院室で一晩過ごしたなっちゃんです。

この後、翌日には食事を摂るようになりましたので。手術後2日で退院して行きました。

何とか無難に手術を終えて良かったです。

繁殖予定の無い女の子のわんちゃんは、なるべく早期に避妊手術を実施することによって健康で長生きすることが獣医学的に証明されております。未避妊のわんちゃんと一緒に暮らしている飼い主様には、是非そこのところに想いを致していただきたいと思います。

ではまた。

 

 

高齢黒ラブちゃんの腸内紐状異物

今朝来院されたもうすぐ14才になる黒ラブちゃんですが。

昨日からいきなり嘔吐が始まって。何回も吐くし、食欲は全く無いし。ということです。

今まで特段の基礎疾患も無い子ですから。いきなりの発症では消化管内異物か?とも思いますが。あまり先入観を持ち過ぎても誤診に繋がりますから。

症状が厳しいし、一般状態もひどく悪い感じでもありますし。血液検査と腹部エックス線検査、必要に応じて腹部エコー検査を行なう旨飼い主様の了解を得て検査に入りました。

血液検査では、総コレステロールが高いこと。アルカリフォスファターゼが高いこと。犬CRPがひどく高値であること。総白血球数と好中球、単球がかなり高いという結果です。

腹部エックス線検査では、胃の中に妙な陰影が観察されます。

黒い矢印の先が胃底部ですが。紐のような物がありそうです。
腸の方にはガスの貯留は見当たりません。
その他の所見としては、もう一つの横向きの画像で前立腺肥大が観察されました。

念のために腹部エコー検査も実施しましたが。腸管の妙な拡張像があるくらいです。今回の症状とは関係が薄いでしょうが、副腎が大きくなっていることも観察されました。

私としては。絶対とは言い切れませんが。消化管内異物で苦しんでいる可能性があると判断しまして。午後から試験的開腹を試みたいと飼い主様に提案して。了解を得ました。

それから手術までの間、前腕の静脈に留置した静脈カテーテルから乳酸リンゲルの輸液を実施します。

午後1時過ぎから麻酔導入にかかります。

気管挿管をして。各種モニターを装着し。術野の毛を刈り。消毒を実施して。術者、助手は手洗い、消毒、滅菌した術衣手袋の装着と、基本通りの手術の準備を進めて行きます。

画像は、助手が準備を済ませて入室するのを待っているところです。

準備が整ったら、皮膚切開から始まり。みぞおちからペニスの横にかけて大きくお腹を開けて行きます。

胃を外から触ってみると、明らかに大きな異物があります。腸を出してみると。アコーディオンのようにヒダヒダに折り畳まれて窮屈そうです。

画像がちょっと拡大し過ぎですね。この腸管の状態は、紐状異物が入った時に特有の所見です。

胃や腸を優しく触って調べて行くと。腸の異物は胃の異物と繋がっていることが判りました。

腸の異物を胃の方に優しくしごいてみると。胃の方に移動して行きます。腸をひどく傷めないように注意しながら、腸の異物を胃に戻してやることが出来ました。

その後は、胃を切開して異物を取り出します。

えらい物が引っ張り出されてますね。

取り出された異物はこんな物でした。

その後は、胃の切開創を縫い合わせて。もう一度胃や腸を優しく触って異物が残っていないことを確認して。腹膜、腹筋、皮下織、皮膚と、縫合を実施してお終いになります。

麻酔は安定してますので。事前に飼い主様の了解を得ていた通りに前立腺肥大対策として、去勢も併せて実施しました。

縫合が済んで、術創にフィルムを貼ったりしながら、覚醒をさせているところです。この後しばらく時間はかかりましたが。無事に覚醒してくれました。

これから数日入院してもらって。翌日以降に食事を食べるようになれば退院ということになる予定です。

何せ生き物のことですから絶対という言葉は使えませんが。一応回復してくれるものと考えております。

早く元気になってお家に帰って。幸せな生活を送って欲しいものであります。

ではまた。

 

 

小型犬の膝蓋骨内方脱臼グレード3に対する手術療法

今日は本当に久し振りにトイプードルの若犬の膝蓋骨内方脱臼グレード3の手術を行ないました。

午後1時過ぎから麻酔にとりかかって。術野の毛刈り、毛剃り、消毒。術者と助手の手洗い消毒、滅菌術衣手袋の装着ひと通りきちんと行なって。

① 大腿骨の先っぽの、膝のお皿が入る溝を深くする手術と。

② 膝のお皿が内側に引っ張られないようにする内側支帯解放術と。

③ 膝のお皿から下に延びる膝蓋靭帯がすねの骨に付着している場所(脛骨粗面といいます)を少しばかり外側に移動させて、膝のお皿が内側に引っ張られるモーメントが生じないようにする術式と。

以上3つの処置を行ないまして。

手術は無事に終わりました。

エックス線写真が小さくて見難いかも知れません。画像向かって左側がこの子の右脚ですが。まだ手術をしておりませんので矢印の先に脱臼した膝蓋骨が見えています。

向かって右側の左脚は、上の矢印が手術によって本来の位置に収まっている膝蓋骨でして。下の矢印は脛骨粗面移植術を行なった場所です。

左脚が回復した時点で、右脚も同じ手術を行ないたいと思います。

ポムちゃん、予定では順調に治って元気に走れるようになることと予想しております。

最近、ブログの更新をサボっておりました。その後、猫の甲状腺機能亢進症とか、犬のアトピー性皮膚炎に対する減感作療法とかいろいろ書きたい題材はありますので。ボチボチでも書いて行きたいと思います。読者の皆様にはこれからもよろしくお願い致します。

追記
手術の翌日。トイプー君は経過観察のために来院されました。

飼い主様の報告によれば、朝食は元気に食べて、化膿止めの投薬も普通に出来たそうです。
見たところ、一般状態すこぶる良好で。麻酔後の不整脈とか肺水腫の有無を確認するためにルーチンで行なっている胸部聴診でも特に異常は認められず。術創も良い感じです。

こうした手術では、術後2週間を目途に抜糸を行ないますが。足を普通に使うようになるには、少なくとも1ヶ月はかかると思います。
しかし、機能が回復した後は、もう膝のお皿が外れることはありませんので、正常歩行が可能になるはずです。

もう片方のお皿の脱臼については状態をみて、出来れば手術をした方が良いでしょう。

まだ1才未満の若い犬ですから。元気で長生きして幸せな一生を送って欲しいと切に願っております。

 

 

 

2014.11.11 エアデールテリアの子犬が生まれています

犬友さんから連絡があり。エアデールテリアの子犬が生まれたそうです。

母親はドイツ輸入犬。父犬の父親はドイツ輸入犬で私が飼っていた日本チャンピオンにして日本警戒訓練チャンピオングループのタイトル保持犬。父犬の母親は私の繁殖犬で全日本で臭気選別チャンピオンタイトル保持犬です。

従って、この子らにはドイツ輸入犬以外の血液は入っておりません。

母親 : タイパンズ アランゴ (父)オラーフV ヴァレンシュタイン (母)ヤロモニス イーラ

父親 : アルデバラン オブ ザナドゥ (父)ズーコV ハウスシルマ (母)ザナドゥ オブ パドルビー

9月23日出産 オス4 メス2

子犬を望まれる方は、私のメールアドレス wkhtdg@hera.eonet.ne.jp にご連絡を下されば、繁殖者の電話番号をお教えします。具体的な諸条件は繁殖者に直接訊いて下さい。

追記 犬友さんより後から電話があって。子犬たちの父犬がJKCの訓練競技会服従の部で優勝したそうです。