兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 院長ブログ

院長ブログ

小型犬の膝蓋骨内方脱臼グレード3に対する手術療法

今日は本当に久し振りにトイプードルの若犬の膝蓋骨内方脱臼グレード3の手術を行ないました。

午後1時過ぎから麻酔にとりかかって。術野の毛刈り、毛剃り、消毒。術者と助手の手洗い消毒、滅菌術衣手袋の装着ひと通りきちんと行なって。

① 大腿骨の先っぽの、膝のお皿が入る溝を深くする手術と。

② 膝のお皿が内側に引っ張られないようにする内側支帯解放術と。

③ 膝のお皿から下に延びる膝蓋靭帯がすねの骨に付着している場所(脛骨粗面といいます)を少しばかり外側に移動させて、膝のお皿が内側に引っ張られるモーメントが生じないようにする術式と。

以上3つの処置を行ないまして。

手術は無事に終わりました。

エックス線写真が小さくて見難いかも知れません。画像向かって左側がこの子の右脚ですが。まだ手術をしておりませんので矢印の先に脱臼した膝蓋骨が見えています。

向かって右側の左脚は、上の矢印が手術によって本来の位置に収まっている膝蓋骨でして。下の矢印は脛骨粗面移植術を行なった場所です。

左脚が回復した時点で、右脚も同じ手術を行ないたいと思います。

ポムちゃん、予定では順調に治って元気に走れるようになることと予想しております。

最近、ブログの更新をサボっておりました。その後、猫の甲状腺機能亢進症とか、犬のアトピー性皮膚炎に対する減感作療法とかいろいろ書きたい題材はありますので。ボチボチでも書いて行きたいと思います。読者の皆様にはこれからもよろしくお願い致します。

追記
手術の翌日。トイプー君は経過観察のために来院されました。

飼い主様の報告によれば、朝食は元気に食べて、化膿止めの投薬も普通に出来たそうです。
見たところ、一般状態すこぶる良好で。麻酔後の不整脈とか肺水腫の有無を確認するためにルーチンで行なっている胸部聴診でも特に異常は認められず。術創も良い感じです。

こうした手術では、術後2週間を目途に抜糸を行ないますが。足を普通に使うようになるには、少なくとも1ヶ月はかかると思います。
しかし、機能が回復した後は、もう膝のお皿が外れることはありませんので、正常歩行が可能になるはずです。

もう片方のお皿の脱臼については状態をみて、出来れば手術をした方が良いでしょう。

まだ1才未満の若い犬ですから。元気で長生きして幸せな一生を送って欲しいと切に願っております。

 

 

 

2014.11.11 エアデールテリアの子犬が生まれています

犬友さんから連絡があり。エアデールテリアの子犬が生まれたそうです。

母親はドイツ輸入犬。父犬の父親はドイツ輸入犬で私が飼っていた日本チャンピオンにして日本警戒訓練チャンピオングループのタイトル保持犬。父犬の母親は私の繁殖犬で全日本で臭気選別チャンピオンタイトル保持犬です。

従って、この子らにはドイツ輸入犬以外の血液は入っておりません。

母親 : タイパンズ アランゴ (父)オラーフV ヴァレンシュタイン (母)ヤロモニス イーラ

父親 : アルデバラン オブ ザナドゥ (父)ズーコV ハウスシルマ (母)ザナドゥ オブ パドルビー

9月23日出産 オス4 メス2

子犬を望まれる方は、私のメールアドレス wkhtdg@hera.eonet.ne.jp にご連絡を下されば、繁殖者の電話番号をお教えします。具体的な諸条件は繁殖者に直接訊いて下さい。

追記 犬友さんより後から電話があって。子犬たちの父犬がJKCの訓練競技会服従の部で優勝したそうです。

慢性外耳炎の悪化

遠く兵庫県の東部から私のHPを見られて来院されたウェルシュテリアとその飼い主様のお話しですが。

このウェルシュテリアは、今年10才になる男の子で未去勢です。

昨年末、およそ10ヶ月前に黒い目ヤニと黒い耳垢が出て、食欲もひどく低下するような状態になったそうですが。近医にて治療し治っていたそうです。

それが、また再発したそうで、こちらに受診する11日前にやはり近医にて治療するも、2週間利くという抗生物質の注射も効を奏さず。食欲も無くなり、飲水もしないような状態になって。入院したそうです。その時には体温も40℃にまで上昇し。左耳の付け根が異常に腫れたのを切開し排膿したそうです。

しかし、切開排膿の後も全身状態は改善しなかったそうで。

そちらの獣医さんは、全耳道切除をしなければならないと説明してくれたそうですが。使用する抗生物質は、せっかく薬剤感受性試験を実施しているのにもかかわらず。明らかに利いていない薬剤を、「生体内と検査の環境とは違うから。」ということで使おうとしていたということです。

さすがに飼い主様は、おかしいのではないか?と疑問を感じられたらしく。私の動物病院を受診することにしたとのことです。

画像は、私が受診当初のを撮影し忘れてまして。飼い主様に送っていただいたものですが。受診初日の左耳とその周辺はひどく壊れていて、その付近を通っている顔面神経も侵されているらしく。眼の動きも明らかにおかしいものでした。

耳は、左右共垂直耳道はひどく石灰化しているようで。耳道は塞がっており、外から触るとカチカチに硬化しています。

切開排膿した大きな穴から滅菌綿棒をそっと挿入して材料を採取し。院内での細菌培養と薬剤感受性試験を実施しました。

翌日出た結果は、12種類調べた薬剤の内、ファロペネムとミノサイクリン、ドキシサイクリンの3種類のみがしっかりと効果ありで。フラジオマイシンがまあまあ利くというものでした。

そこで、今までの経験から、内服しても消化器症状などの障害の出難いファロペネムを内服しながら、フラジオマイシンの点耳をしてもらうことにしました。

同時に、この年齢になって急に感染に弱くなったのであれば。何らかの基礎疾患を有している可能性があると疑って。院内のスクリーニング血液検査を実施しました。

血液検査では、高コレステロール血症とアルカリフォスファターゼの軽い上昇が判明しました。

とりあえず、高コレステロール血症に対して、甲状腺の機能の検査を実施しましたが。甲状腺関係のホルモン濃度は正常でした。

残るは副腎機能の検査ですが。当初聴いていた少し大目の飲水量が、治療をしているうちにそんなにもおおくは無いという感じになりましたので。副腎機能の検査は経過をみて実施することにしました。

耳の経過ですが。感受性試験に基づいた投薬を実施したところ、来院1週間目には穴は塞がりつつあって。食欲元気さも回復して来て。

更に2週間投薬を続けたところ。排膿していた穴は完全に塞がって、元気食欲も正常に復したということです。

しかし、耳道を触診してみると、ひどく硬い状態はそのままですし。耳の穴も塞がったままです。

このままの状態で満足していると、またぞろ同じ感染が燃え上がって大変な状態になる可能性大ですから。全耳道切除をお勧めしました。

全耳道切除は、正直自分でやるには気の重い手術ですから。大阪府立大学獣医臨床センターの外科系の教授に連絡してお願いすることにしました。

飼い主様は手術に前向きですので。この11月11日に府立大学に行って、おそらく東部のCT検査くらいは実施して。後日に日を決めて全耳道切除ということになると予想しております。

全耳道切除を行なっても、鼓膜から奥の中耳内耳に問題無ければ、聴力もかなり残りますから、生活に不便は無いでしょうし。耳道を取っても耳たぶは触りませんから外見上の違和感はありません。

ミッチー君、もう一度元気になって飼い主様と幸せに過ごせるようになってもらいたいと切に願っております。

 

サナダムシ感染(アウトドア生活の危険) 

5才6ケ月令のパピヨンの女の子の話しですが。

この秋、1ヶ月ほど行方不明になってまして。見失った場所からかなり離れた田園地帯で保護した人が連絡をくれて、無事に飼い主様の許に帰って来たそうです。

それで、帰って来てから気になるのが。食欲が今ひとつ湧かないようで食が細いということと。息づかいが荒いように感じること。そして、来院の少し前に下痢便を排出したということで。来院されました。

下痢便は持参されてなかったので、当日に検便は出来ませんでした。

荒い息づかいに関しては。診察台上ではそんなに気にはなりませんでしたが。体温、呼吸数、心拍数を測定して、明らかな異常はない事を確認します。

食欲不振については、院内のスクリーニング血液検査を行ないました。

低蛋白血症、軽い貧血と、犬CRPの高値とが異常値として検出されました。

痩せてはいるが、それは野生に近い過酷な状況下で生活していたためかも知れないと考えて。一般的な腸炎のお薬を処方すると共に、便が採取されたら勘弁を実施したいので持参するようにとお願いしました。

2日後に持参された便は。腸炎のお薬が利いたようで下痢便ではありませんでしたが。
検便を行ないますと。直接塗抹法でサナダ虫の一種のマンソン裂頭条虫の虫卵が検出されました。浮遊法では虫卵は検出されませんでした。

マンソン裂頭条虫の虫卵は、やや歪んだ感じのラグビーボール様の形態をしているのが特徴です。

犬猫の臨床で問題になるサナダ虫には、マンソン裂頭条虫の他、広節裂頭条虫(日本海裂頭条虫)と瓜実条虫とがあります。

瓜実条虫は蚤を介して感染する比較的身近な虫で、駆虫は専用のお薬を使用すれば比較的容易です。

広節裂頭条虫とマンソン裂頭条虫は、水中や水辺の多くの動物を介して感染する寄生虫で、犬猫の他人間にも感染します。この2つの寄生虫は、もうひとつ壺型吸虫という寄生虫と共に同じ専用の駆虫薬を使用するのですが。これがかなりしぶとくて駆虫し難いのです。

駆虫薬には、内服薬と注射薬がありますが。過去に内服薬では落ちなかった経験が数例あり。注射薬は比較的効果が確実に発現しているように感じられます。

飼い主様に虫の卵をお見せして、以上の事を説明しましたところ、注射での治療を希望されましたので、注射を実施しました。

このお薬、注射にしても、内服にしても、症例によっては虫が溶けてしまって、虫体を確認出来ないことがあるらしいのですが。

今回のパピヨンちゃんの場合は、注射の翌日に大きなサナダ虫の虫体が糞中に排泄されたのを飼い主様が確認されたそうです。

画像は他のわんこから排出されたサナダ虫の画像です。このパピヨンちゃんのサナダ虫は飼い主様が処分してしまったそうです。

サナダ虫の名前の由来は、着物の着付けに使用する「真田紐」に虫の模様が似ていることから来たものだと聴いておりますが。真田紐ってこんな感じの紐なんですね。

パピヨンちゃん、虫が駆除出来て良かったです。そう言えば、今後の迷子対策にマイクロチップをお勧めした方が良いかも知れません。

ではまた。

ペルシャ猫の多発性嚢胞腎

8才になるペルシャ猫の男の子の話しです。 実はこの子、表題の病気の以前に、今年の8月に食道裂孔ヘルニアを発見しまして。母校の大阪府立大学で手術をしてもらったというヒストリーがあります。 大阪府立大学での診察の時に、エコー検査で膀胱内にキラキラした陰影が見られるから後日対処するようにと連絡をもらってましたので。 食道裂孔ヘルニアが一段落ついた昨日に、私なりに判断させていただくと断って、当院で腹部エコー検査を行ないました。 膀胱内のキラキラ陰影は確かに存在してまして。それなりに対応した方が良いのかな?という感じだったのですが。 同じ尿路系を評価するのだったら、やはり腎臓も診ておきたいと思い。プローブを腎臓領域に当ててみました。 「?????」腎臓に普通は見られない嚢胞(袋状の構造)があります。それも複数。 もう片方の腎臓も見てみました。 こちらも複数ありましたが。そのうちの一つはかなり大きいです。 腎嚢胞は、時たま小さい物を単体で見たことはありますが。こんなに多発する物を見るのは初めてです。

教科書でカンニングをしてみると。ペルシャ猫の多発性嚢胞腎は、ペルシャ猫以外にも発生は見られるが。一般的にペルシャ猫に多発していて。
遺伝性の病気であり。遺伝子診断も出来るようになっているとのことですが。

当院とお付き合いのある数軒のラボの資料には、記載は無かったです。
もし今度不安を訴える飼い主様が現れた場合。出入りのラボに訊いてみるか、母校の大阪府立大学の内科の先生もしくは教科書の執筆者のお勤めしている大学に問い合わせをしてみようかと思います。

腎嚢胞自体は、ときたま犬や猫の腎エコー検査をやっていると見つけることがありますが。多くは数も増えて行くこともなく将来的な問題もそんなに無いものであります。

しかし、多発性嚢胞腎の場合。年齢と共に嚢胞の数が多くなって行き。サイズも大きくなって。嚢胞が正常な腎組織を圧迫して、結果的には慢性腎不全に陥ることになるそうです。

嚢胞の増殖を防ぐことは今のところ不可能で。対症療法しかなく。経過は長期にわたりますので。治療法としては一般的な慢性腎不全の治療である食事療法や腎臓の糸球体という濾過器官を長持ちさせるお薬を内服させることしかありません。

遺伝病の場合。繁殖の段階で両親猫の遺伝子診断を実施して、不幸な子猫を作らないことが最も大切なことと思います。意識の高いペルシャ猫のブリーダーさんはもうとっくに実施されているかも知れませんが。まだ知らなかったという方は、愛猫の繁殖を考える前に獣医師に相談すべきと考えます。

今回の子の場合。とりあえず多発性嚢胞腎を発見したという段階であって。これから長い治療が始まるわけです。

気長に頑張ります。

 

 

蝮による咬傷

一昨日の夜ビーグル雑の女の子の飼い主様から電話がありまして。

「草むらに顔を突っ込んで臭いを嗅いでいたら、みるみる顔が腫れて来た。」ということです。

蝮による咬傷の疑いがあるのですぐに来院するようお伝えしました。

来院して来たワンちゃんの鼻面はかなり腫れ上がっています。

2本の矢印の先がほのかに赤く染まっているのは、そこがマムシの牙が入った場所だということだと思います。

マムシによる咬傷はそれなりに件数を診ていますが。犬の場合死ぬことは滅多に無いようです。

ただ、傷が治癒した後肝機能に異常を来した症例は診ています。

実は、お守りとしてマムシの馬抗毒素血清は常備してはいます。

ただ、この抗毒素血清を注射してもしなくても、そんなに経過が変わるという感触が無かったことと。注射により却ってアナフィラキシーショックを生じる可能性があったりして。

最近はほとんど使用することはありません。

この子の場合でも。来院時そんなに全身症状が悪くないこともあって。抗生物質とステロイドホルモンの注射を行なった上で。

内服は2次感染防止のための抗生物質と、抗炎症効果を期待したステロイドホルモン、強肝作用と解毒作用を期待して甘草エキス製剤の3剤を処方し。経過が心配ならば連絡をくれるようお伝えしてお帰ししました。

私的には、この場合に最も効果を期待する薬はステロイドホルモンで。次に甘草エキス製剤です。抗生物質はあくまで二次感染防止の意味合いで使用しています。

中1日置いて再来院したのを診ますと。食欲元気さはそれなりにしっかりしています。


鼻面の腫れは少しましになっていますが。下顎から首にかけて炎症性の分泌物が溜まっているのでしょう、ブヨブヨに浮腫が出来てました。

続きのお薬を処方して。1週間後に念のために血液検査を実施する旨お伝えしました。

犬のマムシによる咬傷は、一応こんな感じで、最近はほぼ全例が無事に回復しています。

犬がマムシに咬まれても重大な結果になり難いのは、反射神経が鋭いために咬まれても瞬間で離れるために、毒の注入量が少ないということなのかも?知れませんね。

私事ですが、私の実兄はマムシを捕まえてマムシ酒を作ったりしてましたが。数回咬まれて、その都度入院して抗毒素血清の注射を受けてました。
最後の入院の際には、「次回には抗毒素血清に対するアレルギー反応で重症になるかも知れません。」と脅かされて、最近はマムシに手を出すのは止めにしたみたいです。

お彼岸の前後からはマムシの繁殖期になりまして。マムシが攻撃的になる季節に入ります。
ワンちゃんと自然豊かな環境に行く際には十分に気を付けてやって下さい。

犬の排卵日特定と人工授精

ワンちゃんと暮らしていると、中には可愛い我が子の子供が見たいと思う方もおられます。

今回の症例は、病気ではないですが。以前に交配を試みたけれども上手く行かなかったというシーズのカップルです。

女の子の方がもう5才になりますので、飼い主様もこの度発情が来たのを最後のチャンスと受け止めておられるようです。

その旨の電話相談が入った際に。私がまずお勧めしたのは、血液中の黄体ホルモンの測定であります。

牝犬は、発情の最初の頃には血液中の黄体ホルモンの量は非常に少ないレベルなのですが。発情が極期に達して排卵が生じると、「LHサージ」と呼ばれる黄体ホルモンの急激な上昇が生じるのです。

そして、犬の卵子は排卵直後はまだ精子を受け入れることが出来ませんで。排卵の2日後くらいで成熟して精子を受け入れる態勢が整うわけです。

そんなわけで、発情犬の血中の黄体ホルモンレベルを測定して、ホルモンレベルの上昇を確認してから交配を実施すれば、妊娠する可能性が非常に高くなるのであります。

残念ながらグリーンピース動物病院には、血中黄体ホルモンの院内測定が出来る機械は置いていませんが。近医にて測定することは可能であります。

そんなわけで、この朝その先生から、「昨日シーズの女の子が来院して、黄体ホルモンレベルの測定をおこなったところ、かなり上昇しかけているという数値が得られたので、排卵は今日くらいに生じると思います。」という電話が入りました。

その後、飼い主様から電話があって。「前回のチャレンジでは自然交配を試みたのだけれども妊娠しなかったので、人工授精でお願いします。」ということでして。

男の子と一緒に来院してもらって、人工授精を行ないました。

人工授精は、まず男の子から採精して、顕微鏡で精子の状態を確認することから始めます。

沢山の精子が活発に動いていました。

ユーチューブに動画は投稿してあるのですが。今回ここに掲載するのが今ひとつ上手く行きませんので、動画は後日見れるようになります。

次に、採取した精液を、女の子の膣の中に入れてやります。

やり方としては、女の子を逆立ちさせておいて、膣鏡で開いた性器に細いカテーテルを用いて、注射器内の精液を膣の奥に注入するという感じです。

大切なことは、精液の注入後に女の子の逆立ちを15分継続させておくことです。

逆立ちさせることで、自然交配での「ロック」と呼ばれる現象に替わる状態を作ってやり、妊娠の可能性をアップさせることが出来るわけです。

そんなわけで。人工授精は無事に終わりました。

後は、中1日か2日でもう1回人工授精を実施すれば、妊娠してくれるものと予想しております。

可愛い子犬がたくさん産まれますように。

 

 

 

ミニチュアダックスフントの難治性下痢症

牝犬の子宮蓄膿症とDIC(播種性血管内凝固)

本日、午前診の時に子宮蓄膿症の手術を受けた柴犬が退院して行きました。

この子は、一昨日に「2日前から急に食べなくなって、元気も無い。」という稟告で来院して来たものです。

症状とか既往を丁寧に聴き取りしていると、少し前に発情があったということです。念のために性器を診てみると。膿性の下り物が観察されます。

発情が終わって、このような下り物があって、元気食欲が急激に低下するとは、子宮蓄膿症の疑いが強くなります。

水を大量に飲んで排尿量が多いという、いわゆる「多尿多飲」の症状もあったということです。

飼い主様には、子宮蓄膿症の疑いがあること。診断を確実にするためには、血液検査、腹部エックス線検査が必須で。必要に応じて腹部エコー検査も実施すべきであると説明し。同意を得て、これらの諸検査を行ないました。

やはり子宮蓄膿症でした。

悪いことに、全血球計数検査において、血小板数がかなり減少しているという所見が見られます。採血は普通にスムーズに出来てますから。キャバリア犬ででもない限り血小板数の異常が見られたらおかしいと思わなければなりません。

何がおかしいか?と言えば。子宮蓄膿症や急性フィラリア症、熱中症のような一般状態が厳しく悪くなる全身疾患の際に、血液凝固系が暴走するDIC(播種性血管内凝固)という状態に陥ることがしばしば生じるのです。

子宮蓄膿症の手術の後にDICに陥った症例は。先週に他院で子宮蓄膿症の手術を受けたが、状態がひどく悪くて心配だということで当院を受診されたわんこがそうでして。
一生懸命に治療して。輸血までやったのですが。結果として亡くなってしまったという症例があります。

その他、他院で熱中症の治療をやって、一旦はそこそこまでは回復したものの、経過がダラダラと悪く。結局死亡してしまった子も診ましたが。これもDIC が強く疑われた症例です。

やはり一般状態の悪い全身性疾患を診る際には、常にDICの可能性を疑って、必要な予防策を講じる必要があると思います。

一旦DICに陥ると、治療はかなり困難で。死の転帰を取ることが多いです。

今回の子もDICを継発していることを念頭に、血液凝固系検査とFDPという項目の検査を外注すると共に。手術前の数時間の静脈輸液の際に低分子ヘパリンの持続点滴を行ないました。

手術は普通に行われて。膿が充満した子宮が摘出されました。

摘出した子宮から少量の膿を採取して、細菌培養と薬剤感受性試験を実施し。翌日からの投薬はその結果に基づいて行ないます。

血液凝固系とFDPの検査結果は、それぞれごく軽度ではありますが、正常値から逸脱しているという報告がなされて来ました。

ただ、教科書を開いてみると、DICの診断基準には総て当てはまる感じではありません。強いて言うならば、DICの前段階程度と考えるべき状態なのかも?知れません。

わんこの一般状態は術後かなり改善して。翌日には少しずつではありますが食べるようになり。最初1μl当たり6万まで低下していた血小板数は、手術の翌日には11万に回復し。本日の時点では15万まで回復しました。なお、犬の血小板数の正常値は、1μl当たり17万5000個以上50万個以下です。

血小板数が完全に正常値ではないので、少し不安はあるにしても。一般状態はかなり良い感じですので。
本日は一応試しに帰宅させて、本格的に食べるかどうか?経過を見ることにしました。
飼い主様には、少しでも状態の悪化とか見られたらすぐに連絡して連れて来るようにお伝えしてあります。

このまま無事に回復しますように。

 

犬の唾液腺嚢胞の手術

犬でときたま見る病気ですが。ある日突然咽喉元に大きな塊りが出現することがあります。

その腫瘤を針で突いてみて。その内容が細胞であって、顕微鏡で見てリンパ球だったらリンパ腫という血液系の腫瘍だったりするのですが。

針で突いて採取した内容が、ドロッとしたゼリー状の物質だったら。唾液腺嚢胞という病気です。

唾液腺嚢胞は、唾液腺から口の中に唾液を運ぶ管が損傷した時に、行き場を失った唾液が溜まったものです。

唾液腺を運ぶ管を修復することは、現在の獣医療では不可能とされてまして。唾液腺嚢胞への対処法は、嚢胞の上流にあたる唾液腺をそっくり切除するという手術のみとなります。

今回の子は、4才4ヶ月令になるトイプードルの去勢済み男の子なのですが。通い付けのトリミングサロンが、最近始めたサービスで、歯石を除去して、その後に定期的に歯を掃除するということをされるようになって、程なく咽喉元にブヨブヨとした腫瘤が出来たという症例であります。

絶対そうだとは言い切れませんが。歯の清掃の際に、何か無理な事をされたのかも知れません。

初診時に細い針で腫瘤を突いて内容を精査しますと、粘液様物質が採取されました。念のために細胞診に出しますと、化膿性顎下腺炎という返答が帰って来ました。

そうなると、原因はどうであれ、手術適応ということになります。

普通に術前検査として、院内の血液検査、胸部エックス線検査、心電図検査を実施して。異常が無い事を確かめ。手術に臨みました。

手術当日は、若い犬で一般状態が良好ということで、午前の静脈内輸液は実施せずに。静脈内輸液は術中に実施しました。

午後から麻酔導入を始めます。麻酔前投薬、静脈カテーテルの留置、各種モニターの装着、最新の導入薬アルファキサンで眠らせての気管挿管、静脈輸液が出来ましたら、術野の毛刈りを始めます。

矢印の先が、唾液腺管が閉塞して行き場を失った唾液が溜まっている部分です。

執刀直前の状態です。手術助手が準備を終えて入って来る直前の画像です。

右の下顎の骨の角張った位置の後ろと第一頸椎の突起のやや下側の間を目安に縦に皮膚を切開して、下顎腺を露出して、血管は吸収糸で結紮したり電気メスで焼いたりしながら周囲組織と分離して行きます。

中央の鉗子でつまんだ組織が下顎腺です。

どんどん分離を進めて行って、下顎腺とつながっている舌下腺も一緒に分離してから切断します。

切除した下顎腺と舌下腺です。唾液腺管の一部も含めて切り取っています。

唾液が溜まった袋状の腫瘤は切除しないで、ペンローズドレインという排液管を留置して置きます。

術後は適切な抗生物質を内服させながら経過を診て行って。ペンローズドレインは、術後3日か4日で抜き。抜糸は10日から14日後に行ないます。

この子はもう手術した側に関しては下顎腺嚢胞に悩まされることはありません。

唾液腺嚢胞は、その他頬骨腺や耳下腺という別の唾液腺で生じる可能性がありますが。それはまた別の術式になります。

ではまた。