兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 院長ブログ

院長ブログ

犬の爪の損傷

犬の爪の損傷は、意外にありふれたトラブルです。

伸び過ぎた爪は、走ったりする時に何かに引っ掛かり易く。これが折れると相当痛いようです。

ただ、折れた爪が指先から脱落してくれれば、その部分に新しい爪が生えて来て、元通りになるのですが。

爪は折れたものの。半分だけ折れて、残りはきちんと指先にくっついて残っている状態になると。


爪が伸びて、損傷部位が爪の芯の部分を通過してしまえば、神経や血管が分布しているのは爪の芯の部分だけですから、苦痛は消失するでしょうが。

爪が伸びるスピードが1日に0.3ミリくらいとすると、折れた爪による疼痛や違和感が消失するまでには、かなりの日数がかかることが多いです。

そこで、このような症例が来院した場合に、私がやらなければならないことは。折れた爪を除去して、早くに苦痛から解放してやることです。

そのやり方ですが。爪の損傷が大きくて、もう少しで脱落するという状態であって、ちょっとくらいの痛みでは心臓が止まってしまいそうにない強靭なワンコの場合だったら。
ワンコをしっかり保定してもらっておいて、鉗子とかペンチのような道具で爪を把持して、えいやあ!!で取ってしまうということも、時としてやることがあります。

この方法の利点は、全身麻酔をかけないで済むことと、料金がお安く済むということですね。

えいやあ方式が通用しそうにない損傷の程度であるとか。非常にデリケートで、強い恐怖や痛みでショックを起こすかも知れないワンコの場合には。どうしても全身麻酔をかけて、安全に処置を済ませなければなりません。

ここで私が使用する麻酔は。静脈から注入して使用するタイプで、作用時間がせいぜい10分くらいで、その後は速やかに覚醒してしまうものです。この麻酔の特徴は、少々腎臓や肝臓の状態が悪くても、また、ちょっとくらい心臓が弱くっても、比較的安全にかけることが出来るというものです。
もちろん。不測の事態に備えて、必要とあれば気管挿管とか静脈輸液が出来るようにはしておきます。

麻酔をかけて、折れた爪を除去します。同時に化膿止めの抗生物質も注射します。他の爪も随分長く伸びていましたから、爪切りも行ないます。
眠っている間に行なうことですから。ワンコは痛みや恐怖を感じることはありません。

処置が済んで、麻酔の切れる時間が来れば。ワンコは速やかに覚醒します。
注射を打ってから20分か30分も経てば、起立歩行が可能になります。

後は、明日から数日間化膿止めのお薬を内服して。露出した爪の芯が乾いてしまえば。そのうちに、忘れた頃に新しい爪が伸びて来ます。

今日の症例は。大したことではないかも知れませんが。それなりに切実な問題を取り上げてみました。

こういう簡単な症例でも、安全かつ速やかに動物の苦痛を取り除いてやることが大切だと思ってやっております。

ではまた。

 

最近来院した子犬たち

症例の紹介や解説も大切ですが。

時々、日常診療で頭も気持ちも飽和状態になってしまって、病気のことを書くのがしんどいと思うことがあります。

昨日から重症の膵炎疑いの18才猫ちゃんが入院しておりまして。夜間に数回起きて状態を診ていると、どうしても睡眠のリズムが乱れてしまいます。今日は、さすがに眠くてしようがありませんが。ここ数日来院した可愛い子犬たちを紹介してみたいと思います。

まず最初に。生後14日目のシェトランド・シープドッグの赤ちゃんです。
眼がやっと開いて来たところです。

ちいちゃくて、とても頼りなさげなのが、たまりませんね。

お母さん犬は、とても別嬪さんです。話しによると、お父さん犬もナイスな男前だそうですから。
この子も別嬪さんに育つことと思います。

次は、生後2ヶ月令のラブラドールレトリーバーの男の子です。リキという名前は、1年以上前に亡くなった先代のリキの名前を引き継いだものです。

先代のリキは、私が繁殖した犬で、それは素敵な犬でしたが。高齢になり病を得て飼い主様に見守られながら一生を終えました。

飼い主様は、先代リキが亡くなった後、どうしてもリキのことが忘れられずにいて。リキの親犬を私にお世話してくれた奈良県のブリーダーさんにお願いして。1年待った後、先代のリキそっくりな可愛い子犬がやって来たということであります。

この系統のラブは、姿形の美しさもさりながら、気性の素晴らしさが際立っております。イケメンラブに育って行くことと思います。

最後に、4ケ月令のコーギの女の子です。

この子の飼い主様は、ゴールデンレトリーバーの女の子、コーギの母娘、猫ちゃんとの賑やかな生活を楽しんでおられたのですが。年を経て犬たちは全頭亡くなってしまったのです。

わんちゃんたちが全く居なくなってしまって、寂しくなったものですから。もう一度コーギをと。迎え入れたのがこのくるみちゃんであります。

しかし、子犬はどの子も可愛いですね。見ていて飽きません。

この子たちと飼い主様たちが、これから末永く幸せに暮らしていけますように、心から祈っております。

しかし、それにしても、眠いです。膵炎疑い猫ちゃんの状態は、昨日よりも落ち着いて来ているように思われますが。これからどうなっていくのか?まだまだ予断を許しません。元気に退院出来るよう頑張ります。

ではまた。

グリーンピースわんにゃん訪問隊活動

すっかりご無沙汰しております。
4月、5月は狂犬病予防注射やフィラリア予防のシーズンですから。少しだけ余裕が無くなるのが正直なところです。

でも、不思議なことに。この時期は重病の症例がそんなに出ません。わんにゃんたちにとっては過ごしやすい良い季節だということなのでしょうね。

今日は第4金曜日ですので、いつものように特別養護老人ホーム鶴林園に犬猫幼児連れ訪問に行きました。訪問ボランティアの方もいつもの人たちばかりです。

訪問前に集合するようにと決められた午後1時45分に園の庭に行きますと。ボランティアの皆さんは大体集まっていて、犬たちを遊ばせながら談笑しておられます。

私は、久し振りに連れて来たベルジアン・マリノワのゴーシュの簡単な服従訓練とボール遊びをやりました。忙しさにかまけて、彼のトレーニングはほとんどやっていませんが。当面の紐付き服従は完璧にこなしてくれます。

ベルジアン・マリノワは、さすがに防衛訓練のエキスパートというだけあって。動物病院に出入りする業者さんのうち若い元気な人に片袖防御衣を持たせて咬ませてみると、それは、もの凄い威力の咬みを見せてくれるのがゴーシュであります。

ゴーシュはそれでも私のコントロールを完璧に受け入れてくれる素直な犬です。
ただし、私以外の人の言うことは、ほとんど適当に聞き流す程度であります。

動物病院スタッフがシャンプーをするのが困難になってしまったゴーシュを、日陰に止めた自動車に残して。午後2時過ぎから園の2階ホールで触れ合いの時間を持ちますが。あっという間に楽しい時間が過ぎて行きます。

この活動は、訪問を受けるお年寄りばかりが楽しいのではなくって、訪問に来た我々ボランティアも、犬猫幼児たちも、そしてこの活動を手助けする園のスタッフの皆さんも、全員が楽しく過ごすことの出来るということで。

自画自賛になるかも知れませんが。誰も損をしない。我慢しない。すごく有り難い活動なのであります。

この冬に産まれたコーギの赤ちゃんたちも順調に育って、車椅子のお年寄りの膝の上から床に飛び降りることが出来るようになりました。

触れ合いの時間が終わると、1階食堂で園のスタッフさんと訪問ボランティアの皆さんとでミーティングを行ないます。

今日もスタッフさんから、お年寄りの皆さんの毎日の生活の表情とこの訪問の時の表情との差とかのお話しもあり、来月もまた頑張って訪問に来ようと、心を新たにすることでした。

ミーティングが終わると、急いで動物病院に戻って、午後の診療を行ないます。

今日も楽しく過ごすことが出来ました。

ではまた。

猫の歯周病処置

今日は、午後に11才避妊済み雌猫の歯周病処置をやりました。

歯周病は。人間でもそうですが。犬猫でも、歯周病の病巣から細菌が血流に乗って全身に循環して行くという怖ろしい状態になるわけで。
その結果、細菌性心内膜炎、腎盂腎炎、肝膿瘍、椎間板脊椎炎、関節炎、などなどのいろいろな部位の感染性の病気の原因となる可能性があります。

この子は、飼い主様の健康に対する意識が強く、かねてより愛猫ちゃんの歯周病について気にされていました。
先日、術前検査の代わりに当院のシニア健康診断サービスを受けて。

本日麻酔下で歯周病の処置を行なったわけです。

上顎第4前臼歯を中心に歯石が付着しています。これくらい付着するともうブラシでこすったくらいでは落ちてくれません。
上顎の犬歯は口唇の陰で判り難いでしょうが。下顎の犬歯は歯肉の後退が生じつつあります。

超音波スケーラーで歯石を落として。歯肉縁下の汚れをキュレットで除去した後。電動モーターに付けたラバーカップとポリッシングペーストで歯の表面を磨きます。画像でお判りになるかと思いますが。ラバーカップの縁を歯周ポケットに差し込むように操作して、歯肉縁下の歯の表面もなるべく滑らかになるようにします。

一応左側は完了しました。上顎犬歯の立て溝に入り込んだ黒い筋は、かなり薄くにはなりましたが。どうしても完全に除去することは困難です。ただ、これは歯の健全性をそんなに損なうものではないと考えています。

左が済めば、右側も同じようにやってから覚醒させます。

麻酔を行なうに当たっては、当然に術前のいろいろな検査をやるわけですが。シニア健康チェックサービスを活用することにより、効率良く済ませることが出来たと思います。

また、術中のモニター装着、静脈輸液、気管挿管など決して手抜きをすることなく安全第一を心掛けて丁寧に仕事をやっております。

この処置が済めば。後は自宅でのブラッシングなどの日常的なデンタルケアを頑張ってやれば、歯周病の進行は喰い止める、あるいは遅らせることが可能だと思います。

最近は、口腔内の善玉菌を増やすことにより歯周病の進行を抑えるという考え方のサプリメントも製品化されております。そういう物を補助的に使用することも良いかと考えます。

ではまた。

 

 

 

エアデールテリアの子犬が産まれました

3月6日付けのこのブログで出産予定を紹介していた、エアデールテリアの子犬が、3月25日に産まれました。

今のところ、予約にはまだ空きがあるらしいです。

ドイツ訓練系統のエアデールテリアと一緒に人生を過ごしてみたいと思われる方は、このHPのメールもしくは、wkhtdg@hera.eonet.ne.jp 宛てご連絡下さい。

お待ちしています。

秋田犬の前立腺肥大やいろいろ

11才10ヶ月令になる秋田犬の男の子の話しです。

しばらく前から来院していますが。 外耳炎やアレルギー性を疑う皮膚炎や、軽度の肝障害などいろいろ持っているみたいです。

3月9日から、おしっこのトラブルが生じまして。頻尿と赤色尿の稟告で来院されました。

尿検査をしてみると、血尿と判明しました。赤色尿が観察された場合、血尿と血色素尿とでは想定しなければならない疾患が違うのです。

腹部エコー検査を行なってみると、膀胱内には結石とか腫瘍はありません。牡犬ですから前立腺を見るのですが。前立腺はかなり大きくなっている感じです。

前立腺のサイズを計測してみると、腹背のサイズで5.35センチメートルありました。
2週間ほど、抗生物質、止血剤、前立腺を小さくするホルモン剤で治療してみると。

2週間で5.35センチが3.38センチまで小さくなりました。当然血尿も出ていません。
今回の血尿は、前立腺肥大が大きく影響している可能性があるので。今からでも去勢手術をした方が良いとお伝えして。去勢手術を実施することになりました。

術前検査では、心電図検査で左房負荷ツープラスという評価でしたから。心エコー図検査も行ないました。
心臓が軽度に肥大していて、大動脈と左心房のサイズの比が、正常が、1.6までというところを、1.71ということです。心収縮率は21.8%でしたので。大型犬では微妙なところではありますが。拡張型心筋症の初期の疑いと判定しました。

3月29日に、去勢手術を行ないました。

画像は麻酔導入後術野の毛刈りをやっているところです。

無事に手術を終えましたが。左右の精巣の大きさに異常なくらいの差がありました。

台の上の瓶の中にある右側の丸い物体が大きい方の精巣で。左側の物体が小さい方の精巣です。小さい方の精巣は精巣を納めている袋毎摘出してあります。

飼い主様には、一応病理検査をした方が良いと思うとお伝えして。同意を得ました。

検査の結果がどういうものになるのか?腫瘍性疾患で転移が頻繁に生じるものであれば、何か対応を考えないといけないかも知れません。

それにしても、今回の血尿から精巣の異常までは、去勢手術をしていれば生じなかったものであります。

去勢手術を実施した犬とそうでない犬とでは、病気の発生率や寿命の長さにおいて、手術を実施した方が著しく有利であるというのが、現在の獣医学的常識であると確立していることでもあります。

繁殖予定の無い牡犬と暮らしておられる方々においてこの記事を読まれた方は、愛犬の去勢手術を考慮されてはいかがかとご提案させていただきます。

ではまた。

グリーンピースわんにゃん訪問隊

第4金曜日ですので。 いつもの犬猫子供連れ老人ホーム訪問ボランティアに行きました。

少し早く鶴林園に着いたので。ちょっとだけ園庭の花を見てました。

ソメイヨシノはまだ蕾です。でも、随分ほころんで来ています。開花はもうすぐですね。

枝垂れ桜は満開でした。独特の風情があって綺麗です。

桜が咲いているかと思い、近寄ってみると。どこか違うように感じられます。

花のサイズが普通の桜よりも随分大きく感じられます。記憶に間違いがなければ、アーモンドの花です。

訪問ボランティアさんたちが集まって来て。時間が来たので、園の2階ホールに上がります。

コーギの子犬ちゃんが猫ちゃんを見つめています。コーギの子犬ちゃんはすごく可愛いかったです。

お子ちゃまのカバンの中身が気になるミニシュナちゃん。子供と犬の自然な交流は、見ているお年寄りにも笑顔を誘います。

賑やかしく、楽しく、時間が過ぎて行きます。永い永い人生のほんのひとこまですが。幸せを感じることが出来ました。

1時間の訪問時間が終了して、1階食堂でミーティングをやってから、急いでお仕事に戻りました。

仕事も頑張ります。

ではまた。

毛がもつれたチンチラ猫の鎮静下毛刈り

チンチラとかペルシャのような長毛猫は、そのゴージャスな被毛が大きな魅力ではありますが。

時として、ブラッシングやコーミングなどの被毛の手入れをひどく嫌う子が居たりして。

そんな子は、毛がひどく絡まりもつれ、フェルトのような毛玉が身体全体を覆って。それが身体を締め上げて。

苦しいばかりか、毛玉の下の皮膚に炎症が生じたりして、可哀相なことになることもあります。

今回の子も、櫛やブラシを使って被毛を梳いてやることが非常に難しい子でして。
飼い主様はむしろ熱心に取り組もうとしているのですが。

結局、毛玉が出来てしまうという感じなのです。

仕方がないので。当院にて鎮静剤を使用して、毛刈りを実施することになりました。

私が使用する鎮静剤は。拮抗薬が存在してますので、何かおかしな反応が生じたら、速やかに拮抗剤を筋肉注射して醒ましてやることが出来ます。

刈っている時は、こんな感じです。

完成に近くなって来たところです。

終了したところ。

回復室で、飼い主様のお迎えを待っています。

たかが、毛刈りと思うなかれです。長毛猫ちゃんたちにとっては、毛玉の生成は非常に深刻な問題になる可能性があるトラブルなのです。

今日も無事に終わりました。

ではまた。

 

急性フィラリア症の手術

ここで急性フィラリア症と称している病気は、犬のフィラリア症のひとつの型でして。正式には大静脈症候群と呼ばれているらしいです。

普通に慢性フィラリア症の場合、蚊に刺されることで感染したフィラリアという線虫は、肺動脈に寄生しています。これはこれで感染数が増加すると、肺動脈が炎症や変形を起こしたりして、慢性の咳や削痩、腹水、運動不耐症などの症状が生じて、真綿で首を締め上げられるように苦しみながら徐々に死んで行くのですが。

慢性だったフィラリア症が、虫が肺動脈から右心房、更に大静脈洞に移動することにより急性フィラリア症となると。
犬は急激に苦しみ始めて、1週間から2週間くらいの経過で死んでしまいます。

具体的な症状は。典型例では突然の食欲不振、虚脱衰弱、呼吸困難、濃黄色~赤色からコーヒー色までのいろいろな程度の血色素尿、舌のいろが蒼白になる、などです。
獣医師が聴診器で胸の音を聴いてみると、ガガガガガとかザリザリザリとかゴロゴロゴロというような特徴のある心雑音が聴こえます。

それで、この急性フィラリア症は、早急な手術を実施して、大静脈洞に居るフィラリア虫を釣り出してやらないと、ほとんどの犬が死亡してしまうのです。

手術の危険性は非常に高く。私が10数年前に聴いた話しでは、平均して30%の死亡率だそうです。
ただし、手術を乗り越えて、フィラリア虫がきちんと除去されると。劇的に回復することが多い病気でして。
この急性フィラリア症と子宮蓄膿症は、獣医師が「神の手」となれる疾病の典型なのです。

今回の症例は、8才7ヶ月の柴犬の男の子でした。2日前に少し離れたところにある動物病院に救急で受診して。「急性フィラリア症なので手術が必要である。手術出来る先生が限られているので、その先生を確保する都合上早く手術を決断して欲しい。」と言われたそうなのですが。手術を受けないこととして、副腎皮質ステロイドの注射をしてもらっただけで帰られたとのことです。

その後、飼い主様の息子さんが当院のことを調べて、こちらに行くように勧められたということで、当院に来られたということです。

聴診して、特徴的な心雑音が聴こえることと、発症の状況、他院でのお話しなどなどから、急性フィラリア症は間違いないだろうとお伝えし。手術の危険性などをお伝えしたところ。

飼い主様はいろいろな理由があるみたいですが。手術を相当ためらっておいででした。

その後、飼い主様の息子さんが来られて、いろいろ相談されたようで。結局手術を受けることになりました。

動物看護師には残業をお願いしまして。午後5時前から麻酔導入を始めます。

気管挿管、静脈輸液、各種モニターの装着を済ませてから。術野の毛刈り、消毒、術者、助手の手洗い消毒、術衣手袋の装着と、手術の準備を手早く進めて。
いよいよ執刀準備が整いました。


この手術の術式は非常に簡単です。頸静脈を露出して、小さな穴を開けて。そこからアリゲーター鉗子という先端に鰐口が付いた鉗子を大静脈から出来れば心臓まで差し込んで。フィラリア虫をつまみ出すだけです。

しかし、鉗子の操作が総て手探りで。指先の微妙な感覚だけが頼りですし。強引な操作をすると、静脈壁を突き破ったり、心臓の弁の腱索を引きちぎったりして、わんこは突然に死亡してしまいます。
また、心不全状態の犬に麻酔をかけるわけですから。麻酔導入を試みたらすぐに死んでしまうという事態もあり。
なかなかにストレスフルな手術ではあります。

アリhゲーター鉗子を挿入してすぐにフィラリア虫を掴むことに成功です。

虫を拡大してみます。

1回に5匹か6匹を掴んでいます。

こんな感じで虫を快調に摘出して。そのうちに取れなくなりますので、3回、4回と探ってみて、それでも虫が取れない時には、心音を聴いてみます。

特徴的な心雑音が消えていたら、その時点で虫の釣り出しは終了として、縫合にかかります。

この子も、とりあえずのガリガリ音は聴こえなくなりましたので、縫合して終了としました。

後で勘定したら、摘出した虫の数は、35匹でした。

今回は麻酔導入開始から縫合終了まで約1時間半くらいかかりました。もっと熟練した神の手先生だったらもっと短いかも知れませんが。アベレージ獣医の私ですから、こんなものですね。

麻酔からの覚醒はまあまあでした。術前に相当弱っていましたから、良い方だったかも知れません。

麻酔から醒めた時点でかなり気分はましになっているようだったし。蒼白だった舌の色もきれいなピンク色になってましたが。
さすがにその夜は何回か起きて容態観察をやってました。

明けて翌日。わんこの気分は随分良さそうです。飼い主様が持参された食べ物にもかなり興味を示してましたが。まだ食べるまでには至りませんでした。

もう少し回復して食欲が出て来たら退院です。

今回も手術が上手く行って良かったです。この手術は、症例がかなり減っていて、回数は少ないですが。私の場合今のところ成功率70%は軽くクリヤーして90%くらいは行っていると、自分では思っています。

ではまた。

 

未去勢牡犬の会陰ヘルニア

会陰ヘルニアとは、肛門の横の会陰部というところの筋肉が萎縮したりして弱くなって腹圧に耐えられなくなり、腸管とか膀胱のような腹腔臓器が皮下に脱出する、いわゆる「脱腸」の一形態です。

前回、年末か年明けに高齢雑種犬で会陰ヘルニアと鼠径ヘルニアの併発例の手術を紹介しましたが。
今回の子は、6才のパピヨンの男の子でした。

会陰ヘルニアは、圧倒的に未去勢牡犬に発生する病気で。整復手術をする際に去勢をしないと再発率が有意に高いと言われています。

精巣から分泌される男性ホルモンが、肛門周囲の筋肉群に抑制的に働くのかも知れません。

画像の赤い矢印の辺りがヘルニアで膨れている部分です。

会陰部が膨れたのに気が付いたのは来院の1週間前だったそうです。膨れるだけでなく排便困難も生じつつあって、トイレでいきむけれども便が出ないことが再々あると言われてました。

腹部エックス線検査の画像ですが。赤い矢印の辺りが肛門から出し切れなくて溜まっている糞便です。

この会陰ヘルニアは手術適応であると説明して、飼い主様には納得していただき。
術前検査として、血液検査ひと通り、胸部エックス線検査、心電図検査、血液凝固系検査を実施し。初診から4日目の今日、手術に臨みました。

手術前の4日間は腸管を積極的に動かすお薬と、便を柔らかくするお薬の組み合わせで排便はスムーズになっていたそうです。

朝9時からお預かりして。前腕の静脈に留置したプラスチックカテーテルからリンゲルを輸液します。

午後1時過ぎから麻酔導入を始めて。気管挿管や各種モニター類の装着が出来ると。術野の毛刈り消毒を行ないます。

ヘルニアの部分は筋肉が分離していて穴が開いている状態で。指が容易に入って行きます。

術野の消毒や術者の手洗い術衣の装着等手術の準備が整って、今から切皮にかかるところです。

手術の細かいところは省略です。実際にはいろいろありますが。会陰ヘルニアの整復手術が完了したところです。今から体位を変更して去勢手術を実施するところです。

総て終了して。回復室で休んでいるパピヨンちゃんです。2時間か3時間くらい休めば十分に元気回復しますから、当日退院してもらいます。その方が動物の心理状態が落ち着いて、結果が良好なように感じています。

というわけで。会陰ヘルニアは結構若い犬でも生じることがあるという記事でした。
去勢していれば発生率は大幅に減少するということですし、統計によると、去勢した牡犬は未去勢の牡犬よりも病気が減って長生きするという結果が出ています。

繁殖予定の無い未去勢牡犬を飼育されているかたは、去勢手術を考慮されては如何かと思います。

ではまた。