兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2014 8月 22
院長ブログ

日別アーカイブ: 2014年8月22日

犬の唾液腺嚢胞の手術

犬でときたま見る病気ですが。ある日突然咽喉元に大きな塊りが出現することがあります。

その腫瘤を針で突いてみて。その内容が細胞であって、顕微鏡で見てリンパ球だったらリンパ腫という血液系の腫瘍だったりするのですが。

針で突いて採取した内容が、ドロッとしたゼリー状の物質だったら。唾液腺嚢胞という病気です。

唾液腺嚢胞は、唾液腺から口の中に唾液を運ぶ管が損傷した時に、行き場を失った唾液が溜まったものです。

唾液腺を運ぶ管を修復することは、現在の獣医療では不可能とされてまして。唾液腺嚢胞への対処法は、嚢胞の上流にあたる唾液腺をそっくり切除するという手術のみとなります。

今回の子は、4才4ヶ月令になるトイプードルの去勢済み男の子なのですが。通い付けのトリミングサロンが、最近始めたサービスで、歯石を除去して、その後に定期的に歯を掃除するということをされるようになって、程なく咽喉元にブヨブヨとした腫瘤が出来たという症例であります。

絶対そうだとは言い切れませんが。歯の清掃の際に、何か無理な事をされたのかも知れません。

初診時に細い針で腫瘤を突いて内容を精査しますと、粘液様物質が採取されました。念のために細胞診に出しますと、化膿性顎下腺炎という返答が帰って来ました。

そうなると、原因はどうであれ、手術適応ということになります。

普通に術前検査として、院内の血液検査、胸部エックス線検査、心電図検査を実施して。異常が無い事を確かめ。手術に臨みました。

手術当日は、若い犬で一般状態が良好ということで、午前の静脈内輸液は実施せずに。静脈内輸液は術中に実施しました。

午後から麻酔導入を始めます。麻酔前投薬、静脈カテーテルの留置、各種モニターの装着、最新の導入薬アルファキサンで眠らせての気管挿管、静脈輸液が出来ましたら、術野の毛刈りを始めます。

矢印の先が、唾液腺管が閉塞して行き場を失った唾液が溜まっている部分です。

執刀直前の状態です。手術助手が準備を終えて入って来る直前の画像です。

右の下顎の骨の角張った位置の後ろと第一頸椎の突起のやや下側の間を目安に縦に皮膚を切開して、下顎腺を露出して、血管は吸収糸で結紮したり電気メスで焼いたりしながら周囲組織と分離して行きます。

中央の鉗子でつまんだ組織が下顎腺です。

どんどん分離を進めて行って、下顎腺とつながっている舌下腺も一緒に分離してから切断します。

切除した下顎腺と舌下腺です。唾液腺管の一部も含めて切り取っています。

唾液が溜まった袋状の腫瘤は切除しないで、ペンローズドレインという排液管を留置して置きます。

術後は適切な抗生物質を内服させながら経過を診て行って。ペンローズドレインは、術後3日か4日で抜き。抜糸は10日から14日後に行ないます。

この子はもう手術した側に関しては下顎腺嚢胞に悩まされることはありません。

唾液腺嚢胞は、その他頬骨腺や耳下腺という別の唾液腺で生じる可能性がありますが。それはまた別の術式になります。

ではまた。