兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 院長ブログ

院長ブログ

急性フィラリア症の手術

ここで急性フィラリア症と称している病気は、犬のフィラリア症のひとつの型でして。正式には大静脈症候群と呼ばれているらしいです。

普通に慢性フィラリア症の場合、蚊に刺されることで感染したフィラリアという線虫は、肺動脈に寄生しています。これはこれで感染数が増加すると、肺動脈が炎症や変形を起こしたりして、慢性の咳や削痩、腹水、運動不耐症などの症状が生じて、真綿で首を締め上げられるように苦しみながら徐々に死んで行くのですが。

慢性だったフィラリア症が、虫が肺動脈から右心房、更に大静脈洞に移動することにより急性フィラリア症となると。
犬は急激に苦しみ始めて、1週間から2週間くらいの経過で死んでしまいます。

具体的な症状は。典型例では突然の食欲不振、虚脱衰弱、呼吸困難、濃黄色~赤色からコーヒー色までのいろいろな程度の血色素尿、舌のいろが蒼白になる、などです。
獣医師が聴診器で胸の音を聴いてみると、ガガガガガとかザリザリザリとかゴロゴロゴロというような特徴のある心雑音が聴こえます。

それで、この急性フィラリア症は、早急な手術を実施して、大静脈洞に居るフィラリア虫を釣り出してやらないと、ほとんどの犬が死亡してしまうのです。

手術の危険性は非常に高く。私が10数年前に聴いた話しでは、平均して30%の死亡率だそうです。
ただし、手術を乗り越えて、フィラリア虫がきちんと除去されると。劇的に回復することが多い病気でして。
この急性フィラリア症と子宮蓄膿症は、獣医師が「神の手」となれる疾病の典型なのです。

今回の症例は、8才7ヶ月の柴犬の男の子でした。2日前に少し離れたところにある動物病院に救急で受診して。「急性フィラリア症なので手術が必要である。手術出来る先生が限られているので、その先生を確保する都合上早く手術を決断して欲しい。」と言われたそうなのですが。手術を受けないこととして、副腎皮質ステロイドの注射をしてもらっただけで帰られたとのことです。

その後、飼い主様の息子さんが当院のことを調べて、こちらに行くように勧められたということで、当院に来られたということです。

聴診して、特徴的な心雑音が聴こえることと、発症の状況、他院でのお話しなどなどから、急性フィラリア症は間違いないだろうとお伝えし。手術の危険性などをお伝えしたところ。

飼い主様はいろいろな理由があるみたいですが。手術を相当ためらっておいででした。

その後、飼い主様の息子さんが来られて、いろいろ相談されたようで。結局手術を受けることになりました。

動物看護師には残業をお願いしまして。午後5時前から麻酔導入を始めます。

気管挿管、静脈輸液、各種モニターの装着を済ませてから。術野の毛刈り、消毒、術者、助手の手洗い消毒、術衣手袋の装着と、手術の準備を手早く進めて。
いよいよ執刀準備が整いました。


この手術の術式は非常に簡単です。頸静脈を露出して、小さな穴を開けて。そこからアリゲーター鉗子という先端に鰐口が付いた鉗子を大静脈から出来れば心臓まで差し込んで。フィラリア虫をつまみ出すだけです。

しかし、鉗子の操作が総て手探りで。指先の微妙な感覚だけが頼りですし。強引な操作をすると、静脈壁を突き破ったり、心臓の弁の腱索を引きちぎったりして、わんこは突然に死亡してしまいます。
また、心不全状態の犬に麻酔をかけるわけですから。麻酔導入を試みたらすぐに死んでしまうという事態もあり。
なかなかにストレスフルな手術ではあります。

アリhゲーター鉗子を挿入してすぐにフィラリア虫を掴むことに成功です。

虫を拡大してみます。

1回に5匹か6匹を掴んでいます。

こんな感じで虫を快調に摘出して。そのうちに取れなくなりますので、3回、4回と探ってみて、それでも虫が取れない時には、心音を聴いてみます。

特徴的な心雑音が消えていたら、その時点で虫の釣り出しは終了として、縫合にかかります。

この子も、とりあえずのガリガリ音は聴こえなくなりましたので、縫合して終了としました。

後で勘定したら、摘出した虫の数は、35匹でした。

今回は麻酔導入開始から縫合終了まで約1時間半くらいかかりました。もっと熟練した神の手先生だったらもっと短いかも知れませんが。アベレージ獣医の私ですから、こんなものですね。

麻酔からの覚醒はまあまあでした。術前に相当弱っていましたから、良い方だったかも知れません。

麻酔から醒めた時点でかなり気分はましになっているようだったし。蒼白だった舌の色もきれいなピンク色になってましたが。
さすがにその夜は何回か起きて容態観察をやってました。

明けて翌日。わんこの気分は随分良さそうです。飼い主様が持参された食べ物にもかなり興味を示してましたが。まだ食べるまでには至りませんでした。

もう少し回復して食欲が出て来たら退院です。

今回も手術が上手く行って良かったです。この手術は、症例がかなり減っていて、回数は少ないですが。私の場合今のところ成功率70%は軽くクリヤーして90%くらいは行っていると、自分では思っています。

ではまた。

 

未去勢牡犬の会陰ヘルニア

会陰ヘルニアとは、肛門の横の会陰部というところの筋肉が萎縮したりして弱くなって腹圧に耐えられなくなり、腸管とか膀胱のような腹腔臓器が皮下に脱出する、いわゆる「脱腸」の一形態です。

前回、年末か年明けに高齢雑種犬で会陰ヘルニアと鼠径ヘルニアの併発例の手術を紹介しましたが。
今回の子は、6才のパピヨンの男の子でした。

会陰ヘルニアは、圧倒的に未去勢牡犬に発生する病気で。整復手術をする際に去勢をしないと再発率が有意に高いと言われています。

精巣から分泌される男性ホルモンが、肛門周囲の筋肉群に抑制的に働くのかも知れません。

画像の赤い矢印の辺りがヘルニアで膨れている部分です。

会陰部が膨れたのに気が付いたのは来院の1週間前だったそうです。膨れるだけでなく排便困難も生じつつあって、トイレでいきむけれども便が出ないことが再々あると言われてました。

腹部エックス線検査の画像ですが。赤い矢印の辺りが肛門から出し切れなくて溜まっている糞便です。

この会陰ヘルニアは手術適応であると説明して、飼い主様には納得していただき。
術前検査として、血液検査ひと通り、胸部エックス線検査、心電図検査、血液凝固系検査を実施し。初診から4日目の今日、手術に臨みました。

手術前の4日間は腸管を積極的に動かすお薬と、便を柔らかくするお薬の組み合わせで排便はスムーズになっていたそうです。

朝9時からお預かりして。前腕の静脈に留置したプラスチックカテーテルからリンゲルを輸液します。

午後1時過ぎから麻酔導入を始めて。気管挿管や各種モニター類の装着が出来ると。術野の毛刈り消毒を行ないます。

ヘルニアの部分は筋肉が分離していて穴が開いている状態で。指が容易に入って行きます。

術野の消毒や術者の手洗い術衣の装着等手術の準備が整って、今から切皮にかかるところです。

手術の細かいところは省略です。実際にはいろいろありますが。会陰ヘルニアの整復手術が完了したところです。今から体位を変更して去勢手術を実施するところです。

総て終了して。回復室で休んでいるパピヨンちゃんです。2時間か3時間くらい休めば十分に元気回復しますから、当日退院してもらいます。その方が動物の心理状態が落ち着いて、結果が良好なように感じています。

というわけで。会陰ヘルニアは結構若い犬でも生じることがあるという記事でした。
去勢していれば発生率は大幅に減少するということですし、統計によると、去勢した牡犬は未去勢の牡犬よりも病気が減って長生きするという結果が出ています。

繁殖予定の無い未去勢牡犬を飼育されているかたは、去勢手術を考慮されては如何かと思います。

ではまた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エアデールテリアの子犬が産まれます

数日前に犬友さんから連絡がありました。
私が輸入したエアデールテリアの子らの系統で交配をしたそうです。
出産予定日は?いつだったっけ?後1ヶ月くらいだったと思います。
賢いエアデールテリアの子と一緒に暮らしてみたいという方は、
wkhtdg@hera.eonet.ne.jp宛てにメールをいただければ、繁殖者さんに紹介させていただきます。
では、父犬母犬のキャラクターを掲載しておきます。
父犬

アルデバラン オブ ザナドゥ(牡)

2008年1月1日生れ PD AZ-102257 PAH3
父 ズーコ フォン ハウスシルマー
母 ザナドゥ オブ パドルビー

代表賞歴
2011年度 神奈川県警察犬嘱犬審査会 第3位(選別の部)
2011年度 日本訓練チャンピオン(Gr)(選別の部)
2012年度 JKC 春季本部競技会 理事長賞

母犬

アグリ オブ ラビ シュープリーム(牝)

2006年度10月26日 PD AZ-10154 PSH3
父 ハクスレイ フォン エリクソン
母 クウェーサー オブ パドルビー

2010年度 関東訓練チャンピオンG(1-S)
2011年度 北日本訓練チャンピオンG 2席(プロ1-S)
2012年度 北日本訓練チャンピオンG(プロ1-S)
5年連続 千葉県嘱託警察犬(追及)

母犬が5年連続嘱託警察犬に合格していて、しかもその課目が足跡追求であるっていうのが良いですよね。父犬も全日本の訓練競技会で上位入賞を果たしておりますし。

どちらの犬も、父犬は私が輸入した犬ですし。母犬は私が繁殖した犬であります。

では、また。出産したら、また関連記事を掲載すると思います。

ぷれでたー遠藤の独断的犬論

前十字靭帯断裂関節外法手術の経過

私の飼っている紀州・新田犬雑の牡犬童子の前十字靭帯断裂整復手術を2月21日に実施しましたが。

本日術後10日目になりましたので。術創の状態も良好なこともあり、抜糸しました。

術創を覆っていたフィルムドレッシングを剥がして抜糸してすぐの画像です。
ドレッシングの内側で乾いていた血液が残っていますが。創は綺麗に癒合しています。

傷を舐めないようにと装着していたヒッポカラーも取り外され、ちょっと解放感を感じながら裏のドッグランで一息。

患肢は、ゆっくり歩くような場合は接地し負重もそれなりにしていますが。大方はまだまだかばう仕草を見せています。

これから少しずつ肢を使うようになると期待しています。

運動制限は、3ヶ月はやらなければならないようですし。
山を走れるようになるのは、半年くらい先のことでしょうか?

焦って壊さないように注意しながら診て行きます。

ではまた。

モルモットの繁殖生理の特殊性にびっくり

昨日皮膚の痒みの事で来院のあったモルモット君ですが。

先日パパになったそうです。

パパになったことは、それなりにお目出度いことと思いますが。実は予期せぬ妊娠でして。

そもそも、某ペットショップでモルモットを2匹購入した時に。雄雄だか?雌雌だか?は忘れましたが。「同性の組み合わせです。」という説明で連れ帰り。

しばらく時が経つと、片方の子のお腹が大きくなったので。病気ではないか?と心配になって当院に受診されたわけです。

その時の様子から、もしかして妊娠?あるいは子宮の病気?と心配になって、腹部エコー検査を実施したところ。胎児が確認されました。

その後、無事に2匹の子供を出産して。家族が増えて良かったということになったわけですが。

出産後1ヶ月くらいの後に。赤色尿あるいは下り物があるみたいだし。お腹が膨れて来たので、今度は子宮の病気か?という感じでまた来院されました。

半信半疑で再度腹部エコー検査をやってみると。これがまた。妊娠でした。

ここで再び教科書を開いてみたところ。

モルモットという動物は、出産後すぐに、それこそ産んで2時間後くらいに、発情して交配する動物だという記載があります。

前回の腹部エコーの際にこの文を見落としてました。

飼い主様がパパとママを離したのは、出産を確認してから後のことだったそうです。

最初の妊娠は、ペットショップのチョンボと言っても良かったのでしょうが。2回目の妊娠は、私が教科書の記載を見落としたせいと言っても良いかも知れません。申し訳ありませんでした。

かと言って、生まれたモルモットの赤ちゃんを引き取る気は、正直ありませんが。

エキゾチックペットの繁殖生理は、その種類特有のタイミングとかあるようなので。少々忙しくても、教科書を開く時には、もっと丁寧に読まなければいけないなあと、実感した次第であります。

モルモットちゃんの来院は、正直言いまして、この22年の間で初めてのことでありました。

ではまた。

グリーンピースわんにゃん訪問隊活動

毎月第4金曜日が、犬猫連れ老人ホーム訪問ボランティアの日になっておりますが。
先月と先々月の2ヶ月は、当日にどうしてもやらなければならない手術が入ったりして行けてませんでした。

今日は、久し振りに参加しました。

今日は、私がお産をお手伝いさせてもらったコーギの赤ちゃんが1胎参加されていて。皆さんすごく盛り上がっておりました。

子犬は無条件に可愛いです。

1時間の訪問時間はあっと言う間に過ぎてしまいます。

今日は新しい参加希望者さんが来てられまして。お飼いになっているワンちゃんが適正ありという結果になれば、来月から参加出来るかと思います。
新しい訪問ボランティア希望者さんは有り難いです。

しかし、年月はいつの間にか過ぎて行くもので。この訪問活動も16年が経ったらしいです。園の理事長さんが記録を確認されたそうです。
熱心な訪問ボランティアさんたちと、園のサポートが相まって、このような長期の活動が出来たということなのでしょう。

そして、何よりも園の利用者さん、即ちお年寄りの方の嬉しそうな笑顔が、私たちの励みになって来たのであります。

次は、目指せ20年!!ですね。

 

ではまた。

 

 

油断大敵

今日は午後にジャーマンシェパードドッグの女の子の避妊手術がありました。

手術自体は普通に終わりましたが。

覚醒時に意識の戻り方が急過ぎて、気管チューブを抜こうとすると、わんこがチューブを咬み切ってしまいました。

ところが、さあ大変です。気管チューブの咬み切られた先の方がそこらに見当たりません。

となると、わんこの体内にあると考えるしかないでしょう。

頚部胸部腹部のエックス線検査を行ないました。

胸部気管が妙に真っ直ぐで、直線的になった場所には白っぽく強調された気管チューブの陰影が見られます。

これは内視鏡が無いとどうにもならないですから。市内の内視鏡を持っている動物病院に飼い主様と一緒に行くことにしました。

予め電話連絡をしておいて、午後5時頃グリーンピース動物病院の外来診療を済ませてから、内視鏡のある動物病院に行きます。

受け付けで、電話をしてある旨お伝えして。自動車の中で待っていると、盛んにゲーゲーとえづいていましたが。

何と、わんこは自力で気管チューブの断端を喀出してしまいました。

画像の赤い矢印の先にあるのが、喀出された気管チューブの断端です。

帰ってから、気管チューブの元と先とを並べてみました。左が気管の中に残ってしまった先っぽの方ですが。長さが約18センチメートルあります。さぞかし気持ち悪かったことでありましょう。

このような事故は、私の病院ではこの22年の間で初めてでしたが。行った先の動物病院の院長先生の話しによると、彼が経験したので気管チューブ断端遺残摘出が 3例あるそうですし。内視鏡学会とかに行くとこのような事例は結構多く報告されているということでした。

麻酔をかけるということは、いろいろなリスクを伴いますが。このような気管チューブの切断と断端の遺残も要注意だと、身を持って勉強することになってしまいました。

明日から、2度とこのようなことが生じないように、麻酔覚醒のスピードの調節とか、注意してやります。

今日は結果オーライで本当に有り難いことでありました。

 

犬の前十字靭帯断裂整復(関節外固定法)

今回のわんこは来月で3才半になる紀州犬雑の男の子です。
約3週間前に山に行っていて、膝を痛めたようです。

歩き方を見て、前十字靭帯という膝の靭帯が断裂していると直感しました。

鎮静をかけて、下腿の骨を前に押すようにストレスをかけてエックス線撮影を行なうと。

正常のエックス線画像を見ていないと、「何のこっちゃろ?」という感じですが。下腿の骨が大腿の骨よりも随分前にずれております。
前十字靭帯は、下腿の骨が前にずれないように繋ぎ止めてくれている靭帯でして。人間ではスポーツ選手が切ることが多い組織です。
そう言えば、あのフィギュアのエース高橋大輔選手もこの靭帯の断裂をこうむって、手術で復活してましたね。

前十字靭帯断裂は、当院ではそんなに頻度の高い疾患ではないです。前回の子は6年か7年前に柴犬で断裂した子が居て、その子は大腿筋膜を靭帯の代わりに関節に通すという「関節内法」で治療しました。

4年前くらいに整形外科のセミナーを受講した際に、講師先生が、「今現在関節の中に異物を通すような手術は時代遅れです。」と言い切ってましたが。それはどうかな?と思いながら聴いていました。

人間の前十字靭帯断裂整復術では、筋膜のような自分自身の組織で修復することが普通みたいですし。

まあ、でも、その講師先生の話しも少しは耳に残っておりますので。今回の紀州犬雑の子の場合。ナイロン糸を使用して「関節外法」をやってみることにしました。

手術は、普通に麻酔導入して。術野は特に念入りに毛刈りだけでなく、毛を丁寧に剃って、術野を覆うのはヨード剤を含ませたプラスチックドレープを使用しました。

骨関節の手術の時には特に術後感染の防止に気を使います。

手術は2段階に分けて実施します。第1段階は膝の関節を開けて、靭帯の損傷や半月板の損傷を確認して。傷んだ半月板は切り取ります。

この子の場合、慢性的にストレスがかかって断裂した症例ではないので半月板は問題無しです。

切れた十字靭帯の端がちょっと見えます。

半月板の損傷のチェックが済めば、関節包を縫い合わせて関節を閉じます。

第2段階は、外側腓腹筋種子骨という大腿の裏側外側にある小さな骨の裏を回すようにナイロン糸を通します。ナイロン糸の太さは、70ポンドテストの物を選択しました。糸を種子骨の裏に回すのは湾曲した縫合針を使って行ないます。

画像で見ると何のことか判り難いかも知れませんね。

次いで、糸を前に持って行って。今度は脛骨稜という膝の下のすねの骨が突き出た部分に穴を開け。

脛骨稜の穴と外側腓腹筋種子骨とを支点にしてナイロンで関節を締め上げて固定を完了します。

後は大腿筋膜を少し寄せてきつめに縫い合わせ。皮下縫合、皮膚縫合で手術は完了です。

こんな風に書くと大層ですが。実際にはそんなに難しい手技ではありません。

術後は2週間程度は安静を保つこと。12週程度は歩行のみで駆け足は禁止。という感じでしょうか?

一般に3ヶ月後までに正常歩行に戻り。5ヶ月後にはかなり強い運動も可能になるということです。

この方法の成功率は、教科書に依れば85%から90%ということらしいです。

お友達の獣医さんの話しでは、関節外法は緩むことがあるらしく、その人は筋膜を使った関節内法で良い成績を上げているいうことでした。

私の今回の症例はどうでしょうか? 上手く行って欲しいものであります。

今回の手術で後日緩みが生じるようであれば、関節内法で再手術をするつもりではあります。

ではまた。

 

続けて子宮蓄膿症

先日子宮蓄膿症が久し振りに来院したとの記事を書きましたが。

今日も犬の子宮蓄膿症の来院がありました。

今日の子は、今日が10才の誕生日だというミニチュアシュナウザーです。

1月3日から発情が始まったらしいですが。出血量が多いように感じられて。
1月18日から食欲が低下し。昨日19日にはフラつきだしたということで。いろいろネットで検索して当院にヒットして来院を決断されたということでした。

今回も子宮蓄膿症がまず疑われますので。腹部エコー検査を最初にやりまして。

子宮蓄膿症に特徴的な画像を得ることが出来ました。

飼い主様も随分予習をして来られたようで。なるべく早期の手術を希望されますので。
手術前提の血液検査、胸部腹部のエックス線検査を実施します。

ヘマトクリット値14%というかなりの貧血が判明しました。C反応性蛋白の高値とか白血球数、好中球数の高値は当然に存在してました。

ヘマトクリット14%は、麻酔のリスクファクターになりますので。当院に毎日私のお供で出勤しているベルジアン・マリノワのゴーシュから採血して輸血を実施することにしました。

ゴーシュの血液型は、DEA1.1(+)でして。この子も検査してみると(+)と判明しました。

昼前から輸血を200ミリリットルほど行ったところ、舌の色も随分改善して、かなり良い感じになりました。

ここで、麻酔導入を開始し。気管挿管、各種モニターの装着、静脈輸液を行ないながら、術野の毛剃り、消毒。術者&助手の手洗い滅菌手術衣の装着など準備を整えて。

速攻で子宮と卵巣の摘出を行ないました。

手術は速やかに終了し。麻酔からの覚醒も順調でした。

摘出した子宮は、通常よりもはるかに腫大してまして。

切開してみると膿が大量に出て来ます。

出て来た膿については細菌培養と薬剤感受性試験を行ない。明日以降はその結果に基づいた抗生物質を投薬することになります。

この子は、早ければ明日には退院出来ることと思います。

今日は頑張って元気な血液を提供してくれたゴーシュに感謝しています。今夜は御馳走を食べさせてやろうと思います。

ではまた。

 

久し振りの子宮蓄膿症

今日の症例は、9才8ヶ月令になるミニチュアダックスフントの女の子です。

1週間前からお腹が張った感じになって、食欲が減退しているということです。食欲は全く廃絶しているわけではなくって、1日1回はきちんと食べているし、おやつなど好物は食べるということです。便の状態はやや軟便。嘔吐は無し。

いろいろ症状の聴き取りをしていますと、年末に発情があったということです。発情出血は元々長く続く傾向にあるとのこと。

いろいろ疑う前に、腹部エコーを撮って、まず子宮の状態を見ましょうとご提案して。

腹部エコーでは、膀胱の頭側に尿よりは密度の高い粘調な感じの液体を満たしている袋状の構造が見られました。

画面右側の真っ黒な部分は膀胱です。左側のやや白っぽい円形の構造が問題の異常像であります。

そこからエコーのプローブを頭側に移動して行くと、異常な袋状構造は頭の方に向かって延長しています。

この時点で、ほぼ間違いなく子宮蓄膿症であろうと判断しました。

飼い主様にはその事をお伝えして。詳しく血液検査を行なうと共に、胸部エックス線検査を実施して。麻酔が安全にかかって、かつ醒めることが出来そうかどうか?判断し、午後からお腹を開いてみることをお勧めしました。

飼い主様の同意が得られたので、血液検査とエックス線検査を実施しますと。
血液検査では、白血球数の増加、とりわけ細菌と闘う好中球、慢性炎症の時に上昇する単球の数が増加している他。炎症マーカーであるC反応性蛋白の上昇が著しいというデータが得られました。
胸部エックス線検査には異常はありませんで。一部写っている腹部には太いソーセージ様の陰影が観察されました。

そんなわけで。午前中に静脈カテーテルを留置して静脈輸液を行ない。抗生物質を2剤投与しておいて。

午後から全身麻酔をかけてお腹を開いてみました。

開ければ、当然ですが。大きく腫大した子宮が出て来ました。

取り出した子宮は、こんな感じです。ちょっと気持ち悪いかも知れません。お許し下さい。

で、これを鋭利な刃物で突いてみると、大量の血膿が噴出して来るのです。

この血膿の中には細菌が居りますので。血膿を使って細菌培養と薬剤感受性試験を実施します。

手術が終了すると、無事に覚醒しました。

画像は入院室で麻酔覚醒後の経過を観察しているところです。飼い主様についてもらっていますので、ワンコは比較的落ち着いております。

麻酔からの覚醒も良好ですし。一般状態もそう悪くはないので。今日は夕方に退院出来ると思います。

未避妊の女の子の場合。大きな疾病リスクとして子宮蓄膿症と乳腺腫瘍が存在します。繁殖予定の全く無い子の場合、なるべく早くに卵巣子宮全摘出による避妊手術を実施されるようお勧めいたします。
早くに避妊手術を実施したワンちゃんは、そうしなかったワンちゃんに比べて、健康で1年から1年半くらい長生きするというのは、現代の獣医学的に常識になっております。

ではまた。