兵庫県加古川市|グリーンピース動物病院 の 2013 7月
院長ブログ

月別アーカイブ: 2013年7月

野生鳥獣救急指定動物病院

実は、兵庫県の制度で、私たちのような民間の動物病院を、兵庫県野生鳥獣救急指定動物病院として活用しようという仕組みがあります。

グリーンピース動物病院も、一応社会貢献の一助になるべく、名乗りを上げて指定されておりまして。時々市民の方が持ち込んで来る野生鳥獣の治療や再放鳥獣を行なっております。

しかし、社会が野生鳥獣を保護管理するのに、これで良いのか?と疑問に思うことも再々です。

一次診療としての救急指定動物病院制度は、それはそれで良いことなのかも知れませんが。

鳥獣が野生復帰を果たすために、全県単位でとりあえずの怪我が治った鳥獣を野生復帰に持って行くまでのリハビリ施設とかが必要なんじゃないか?と常々感じております。

最近持ち込まれた動物は、ツバメの雛、コウモリ、カルガモの雛くらいでしょうか?

ツバメの雛は、1ヶ月以上ミルワームを給餌して育てて、ツバメが居る公園に放鳥しました。

でも、放鳥されたツバメは、自力で食べ物を摂ることが出来るのか?外敵から逃げおおせることが出来るのか?

はなはだ疑問を感じながらの放鳥でした。

野生の鳥の雛については、日本野鳥の会が雛を拾わないように一般の人に周知するためのキャンペーンを行なっておりますが。巣立ち直後の雛を、善意に基づく行為とはいえ、無知によって「拉致」してしまう人が多いようです。

今回のツバメも巣立ち直後で、親鳥が何処かで心配して見守っていたのだと思うのですが。保護した人は、周囲に親鳥も居ないし、駐車場で車に轢かれそうだったからと言って、強引に加古川農林事務所に持ち込んだのを、農林事務所も困ってグリーンピース動物病院に連れて来たということでした。

最近も、「ツバメの雛が飛べなくって、困っているようです。そちらに連れて行って良いでしょうか?」という電話連絡があったので。「そのツバメの雛は、巣立ち直後で、親鳥が近くで心配して見守っていますし。親鳥が食べ物を食べさせていますから、貴方が「拉致」さえしなければ無事に成長して行く可能性が高いと思います。それと、いったん人間の手に落ちた野鳥の雛は、野生に戻しても食べ物を探したり、外敵から身を守ったりという教育を受けることが出来ないので、生き延びて子孫を残すところまで行けるかどうか?怪しいですよ。」とお返事したところです。

コウモリは、正確な種類は判りかねましたが。飼いネコが捕まえて遊んでいたのを、猫の飼い主が保護したものでした。

猫の口には、出血性敗血症菌という怖ろしい細菌が常在していて、その菌によって死んでしまう可能性があると判断し。抗菌剤を数日投与しながら、犬猫用の流動食を強制的に食べさせて。元気が回復したよう?なので再放獣しました。

コウモリの場合、元気か?弱っているか?判定が困難でした。何せ何にも表現してくれません。

最後のカルガモの雛は、交通頻繁な市街地の道路で彷徨っているのを保護されたのですが。近くに川も池も無いような道路で、親からもはぐれて、どうしてカルガモの雛が居たのか?不思議です。

もしかして、誰かが飼ってた?

とにかく飛べるようになるまで育てた上で、放鳥することにしました。食べ物は鶏の飼料を使いますが。ボレー粉も添加してカルシウム不足にならないように注意します。

最初から普通に食事を摂って、水もちゃんと飲んで。元気に育っています。

最近たらいをプール代わりにして水浴を楽しめるようになって来ました。

体重も順調に増えて、保護された時には240グラムだった体重も約2週間で440グラムにまで増体しております。

しかし、この鴨、野生復帰出来るでしょうか?

行く末が案じられます。

野生鳥獣救急指定動物病院とは言え、最近県からの通知で、農業被害の著しい猪や鹿、アライグマ、ヌートリア のような特定外来生物は傷病救護の対象から除外するということらしいです。

人間と自然との関わりは、難しいですよね。

過去に、青大将に食べられそうで可哀相だということで、野兎の子を連れて来られた方が居ましたが。食べ物を取り上げられた青大将は可哀相ではないのでしょうか?

見た目で差別するのもどうか?と思います。

あるいは、昔見たアフリカのドキュメンタリー番組で、溺れそうになっているヌーの子供を助けようとした取材班に、「安易に野生に介在しないように。」と制止をかけた現地のレンジャーの考え方が、一見残酷なように見えても最も健全なのかも知れません。

でも、考えようによっては、それも人間の手のほとんど入っていない大自然の中でこそ言えることで、我が国の市街地や里山のように、人間の活動が環境形成に大きな影響を与えている地域の場合にまであてはまるのかどうか?

考え始めたらきりがなくなります。

2016年10月25日追記です。

兵庫県野生動物救急指定動物病院についてですが。 近くで大勢の獣医師を雇用して頑張っている動物病院が、最近は名乗りを上げて受け入れてくれるようになりましたので。 元々少ないスタッフで頑張っていた当院は辞退させていただきました。

 

 

 

 

イングリッシュ・セターの異物誤嚥による腸閉塞

週末に来院したイングリッシュ・セターのローラちゃん。

1週間前から嘔吐と下痢の症状を呈し始め。発症3日目に他院にて診療したのですが。一時好調になったので更に3日間経過を見ていたところ、やはり調子が悪いという事でその動物病院に行くも、そこの先生が週末にどうしても外せない用事があるということで。

当院に受診されたものであります。

血液検査では白血球数、特に好中球数の増加が著明で。持参したエックス線フィルムからは腸閉塞が強く疑われます。

他院で3日目のエックス線フィルムですが、診療初日と同じように胃に内容物が充満しています。

腹部エコー検査を実施してみると、腸管の拡張著しく、拡張した腸管の中に紐のような構造が見られました。

こうなると、少しでも早くに開腹して中を確認するべきと思いますので、残業して手術という事になりました。手術前の数時間は静脈輸液を行ない、少しでも水和状態の改善をはかります。

麻酔導入してお腹を開けて見ると、胃の中には大量の葉っぱ。胃の幽門付近から腸管にかけて撚れて紐状になったタオルのような繊維性異物が詰まってにっちもさっちも行かない状態になっていました。

画像の羅列だけである程度ご理解いただけたと思いますが。手術は無事に終了。本犬は術後から気分良くなって、術後24時間後から飲水し、36時間後には胃腸病用の処方食をモリモリと食べていました。

手術の2日後には元気で退院して行きました。

今日もまたお役に立てて嬉しかったです。紹介状を書いていただいた先生には今から報告をしなければなりません。

 

 

ミニチュアダックスフントの結直腸多発性炎症性ポリープ

2才の頃より当院で健康管理のお手伝いをさせていただいている、ミニチャダックスフントの避妊済み女の子の話しです。今年で8才になります。

実は、この子は従前から免疫に関して怪しいという印象を強く持っておりました。

4才の頃に頑固な慢性嘔吐を発症しまして。内視鏡を持っている近くの先生に依頼して胃の組織生検を実施し、胃炎を患っており、炎症部位に形質細胞や好酸球が浸潤しているという所見が得られていたのです。

胃炎の方は投薬と処方食で何とかコントロール出来て。その後に発症した膀胱炎も何とか上手く管理出来ているという状態だったのですが。

5月23日に来院した時に、5日前から鮮血を混じる下痢をしているということでした。

これが、しかし、通常の下痢セットの処方では全然反応が見られず。

検便も問題無く。原虫や嫌気性菌の感染をコントロールする薬も奏功せず。

試しに与えたステロイドに対してだけかなり良好な反応だったので、大阪府立大学の内科系の先生に一度診てもらおうと飼い主様と相談していた矢先のことでした。

6月27日朝にいきなり直腸脱が生じてしまったのです。

緊急でお昼に手術を行ないました。当日予定していた猫ちゃんの避妊手術は夜に残業して行ないました。

脱出した直腸には、顆粒状の病変が多数見られます。直腸の腺癌のような超悪性の病気を予想して随分ビビリました。

病変部を切除して、縫合が終了したところです。直腸脱の手術は 一番最初に脱出した直腸が2層重なっているのをきちんと拾った支持縫合を実施して、その縫合を頼りに、内層の腸管が、断端が遊離したままお腹の中に戻ってしまわないように、丁寧な全層並置縫合を実施することが、失敗しないコツと言えばコツだと思います。

手術が終了して、直腸をお腹の中に戻してやった状態です。

手術当日に退院させました。

大学の先生のアドバイスもあり、病理検査の結果が出るまで抗菌剤以外にステロイドホルモンを控えめに使用しました。

術後の経過はすごく良好で、下痢も改善しました。

病理検査の結果は。

多発性炎症性ポリープというものでした。

この病気は、最近ミニチュアダックスフントで問題になっている免疫が関与すると言われる炎症性の疾患です。

治療は、ステロイドホルモンと免疫抑制剤の併用で実施します。丁度タイムリーに、6月30日に岡山で受講した動物臨床医学研究所の卒後教育セミナーでこの病気の解説がありました。

診断はきちんとつきましたので、後は上手く管理出来るかどうか?です。今のところ順調なので、何とかなると予想しております。

免疫の病気に負けずに、幸せに長生きして欲しいと切に願いつつ治療を遂行しております。

 

 

 

 

 

エアデールテリアの皮膚扁平上皮癌

もうすぐ11才になるエアデールテリアの男の子の話しですが。

5月21日に、6ヶ月くらい前から左胸の皮膚の腫瘤が自壊してずっと気になるのか?舐めたり咬んだりしているということで相談されました。

針吸引&細胞診をすることと、自壊部分から出る膿の細菌培養と薬剤感受性試験を実施して、抗菌剤を投与しました。

細胞診の結果では、良性の皮膚腫瘍であろうということでした。

しかし、薬剤感受性試験に基づいて利く薬を投与しているのにも関わらず感染のコントロールが出来ません。膿はずっと出続けています。

どうもおかしいな?と感じておりましたが。飼い主様は膿が出続けて生活の質がかなり損なわれていることが可哀相に感じられたようで。
摘出を希望されました。

この子は以前に肝機能障害を患ったことがありましたので。術前検査として全血球計数、血液生化学検査ひと通り、胸部エックス線検査、心電図検査を実施します。

やはり、予想通りGPTが405U/L GOTが50U/L ALPが1272U/L と肝障害が存在しておりました。

一応、幹細胞保護のお薬を2週間内服させてもう一度血液検査を行なうと。
GPTが166U/L GOTが31U/L ALPが882U/L とかなり改善しました。

2回目の血液検査から6日後に手術を実施しました。

高齢の子とか、体力的に不安のある子については、手術当日朝一番にお預かりして、午前中は静脈カテーテルから輸液を行なうことにより体調を整えるのですが。

エアデール君、暴れて静脈輸液を行なうことは適いませんでした。

午後1時頃より麻酔導入して、術野の毛刈り消毒、術者助手の手洗い等基本通りの手抜き無しの手順で進めて行きます。

腫瘤周辺の毛を刈ったところ。

術野の消毒が済んで覆い布をタオル鉗子で止めたところ。

腫瘤を切除したところ。判り難いとは思いますが、垂直方向のマージンとして、皮筋という筋肉を一枚切除しています。治療に対する反応が怪しいので、一応用心して。悪性腫瘍だったとしても後で慌てないように最大限の用心をしております。

切除された腫瘤。これからホルマリンに漬けて、病理検査に出します。

 傷を縫合し終わったところです。この部分に出来た腫瘤は、比較的手術が容易です。

抜糸は術後13日で実施しました。この時に血液検査を行ないましたが。GPTは前回少し下がったのとそう変わらない数値でした。肝細胞保護剤は継続することにしました。

病理検査の結果ですが。扁平上皮癌という悪性度の強い物でした。用心のために大きくマージンを取って正解でした。
扁平上皮癌は転移する率は低いということですが。今後局所再発については注意して行きたいと思います。